肋骨骨折の治療費は入院期間次第で意外と高額に…!?その場合に使える保険は?
交通事故の被害にあったり、何かにぶつかってしまったときなどに、肋骨骨折の怪我をしてしまうことがあります。
肋骨を骨折してしまえば、治療のために入院をしたり、その後もリハビリなどを行わなければならず、日常生活や仕事にも大きな影響があるのではないでしょうか。
肋骨骨折の為、今日は通院だった。仕事は休みをもらった。
— Daisuke (@dxixuke) May 24, 2017
仕事を休むことになった場合、治療費やその間の生活費も心配ですよね。
そこで今回このページでは、
- 肋骨骨折の治療費
- 治療費の負担を軽減する方法
について、お悩みの皆さまと一緒に勉強してみたいと思います。
なお、専門的な解説は、テレビや雑誌でお馴染みの岡野武志弁護士にお願いしています。
よろしくお願いします。
肋骨骨折を負われ、心身ともにお辛い日々を送られているとお察しします。
また、仕事もできなくなり、当面の治療費や今後の生活費の心配も尽きないはずです。
そのような場合、何か治療費負担軽減の制度などがあれば安心できるのではないでしょうか。
今回は、このページをお読みの方に少しでも安心いただけるよう、わかりやすく解説していきたいと思います。
目次
肋骨は、骨折しやすい部位であると言われています。
というのも、触ってわかるように肋骨は1本1本が細長く、衝撃に弱い構造となっています。
よって、机やタンスの角にぶつけたような軽度の外傷や咳などで骨折してしまうこともあります。
もちろん、交通事故や高所からの転落といった大きな力が加わった場合にも骨折してしまうことになります。
出典:https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/e/e0/Ribs_lateral.png
肋骨が1本折れただけでも、痛みを感じるはずです。
しかし、事故などで大きな衝撃を受けた場合、複数本の肋骨が折れてしまうこともあり、その場合には激痛を感じるはずです。
肋骨骨折の治療法としては、手術などではなく、ギプスで胸部を固定する保存療法が取られることがほとんどということですが…。
保存療法であっても日常生活にも影響が出ますし、仕事も休まなければならない可能性もあり、やはり治療費の負担は心配ですよね。
ではまず、肋骨骨折の治療にかかる治療費はどれくらいのものなのか…その点から見ていきましょう。
肋骨骨折の治療費はいくらかかる?
軽度の肋骨骨折であれば、2~3週間で完治するそうです。
一方、複数本の肋骨が完全に折れてしまったような重症の場合には、完治までに2ヶ月以上かかってしまうこともあります。
肋骨骨折の治療費の具体例
肋骨骨折で手術をすることは非常に稀なため、基本的にはギプスで骨折部分を固定する骨折非観血的整復術と呼ばれる保険点数が請求されることになります。
この点数は、「鎖骨、膝蓋骨、手、足その他の骨折」の場合には1440点(2018年3月現在)となっています。
また、体幹ギプス包帯をする場合には、さらに1250点の点数がかかります。
仮に、保険の点数1点=10円とすると、肋骨骨折でギプス固定した場合、(1440+1250)×10=26,900円ほどかかることになります。
他に、骨折の状況を確認するために、レントゲン撮影を行った場合には、プラス数千円の費用がかかることになります。
治療にかかるのは治療費だけでない
ただし、重症の肋骨骨折の場合、病院に入院する必要があるかもしれません。
入院した場合、治療費以外にも多くの費用が発生することになります。
具体的には以下のような費用がかかります。
治療費 |
---|
投薬や注射、点滴などを含むさまざまな処置のほか、各種検査費用。 手術やリハビリが必要であればその費用も含む。 |
入院基本料 |
入院した場合に1日ごとに計上される基本料金。 医師の診察、看護師の看護、部屋代や寝具代などすべて含んだ費用。 病院ごとに費用に差がある。 |
食事代 |
毎日の食事代。 病気によって食材を選別したり、高齢の方に食べやすい状態に調理したような「特別食」の場合は、通常の食事よりも割高となる。 |
差額ベッド代 |
部屋代は入院基本料に含まれるが、「大部屋」ではなく個室や少人数の部屋を希望した場合に発生する費用。 |
その他 |
着替えなどの衣類、退屈しのぎに読む書籍や雑誌。 テレビが有料制の場合はその費用。 病院食だけで足りない場合は、別途食費など。 |
肋骨骨折で入院した方の中には、80万円ほどの治療費がかかったという方もいらっしゃいました。
昨年、旦那がバイク事故で肋骨五本骨折し救命病室に個人部屋で三泊四日で、金額79万弱でした。
色々細かい検査を沢山やったからだと思います。
因みに手術などは一切していません。
(略)
10万位かと軽い気持ちでいたので金額を聞いた時はビックリしました。
そして、肋骨骨折でギプス固定を行った場合、行動が制限されることになります。
固定中、身体を動かせないため、全身の筋力や心配機能なども低下してしまう恐れがあり、その後のリハビリも必要となります。
リハビリをすることになれば、さらに費用が発生することになります。
このような高額な治療費を、何の問題もなく支払える方は少ないはずです。
肋骨骨折の治療費の負担はどうすれば?
以上のように高額となる可能性もある治療費ですが、全て自己負担しなければならないのでしょうか?
①公的医療保険を利用する
もちろんそういうわけではなく、まず、肋骨骨折を負ったのが勤務外の病気や怪我、自損事故の場合は公的医療保険が適用されます。
健康保険 | 会社員など |
---|---|
船員保険 | 船員 |
共済組合 | 公務員、教職員 |
国民健康保険 | 上記以外の自営業者、専業主婦など |
※ この他、「退職者医療制度」や、中小企業が加入する「協会けんぽ」、大手企業の社員などが加入する「健康保険組合」などがある。
保険が適用できれば、自己負担となるのは、1~3割の医療費と入院時の食事代の一部のみとなります。
つまり、たとえ80万円の治療費が請求されたとしても、窓口で支払うのは80,000円~240,000円程度になります。
それでも、安いと言いきれる金額ではありませんよね。
②公的医療保険の「高額医療」制度を利用する
そのような場合、公的医療保険の制度の1つに「高額療養費制度」というものがあります。
高額医療という言葉の方が馴染みがあるかもしれませんね。
高額療養費制度とは、医療機関や薬局の窓口で支払った額が、自己負担限度額を超えた場合に、その超えた金額を支給する制度です。
毎月の自己負担限度額は、加入者の年齢や所得水準によって設定されています。
また、いくつかの条件を満たせば、さらに負担を軽減する仕組みも設けられているそうです。
年収約1160万円~ | |
---|---|
【外来(個人ごと)/毎月(世帯ごと)】 252,600円+(医療費-842,000)×1% |
|
年収約770万円~約1160万円 | |
【外来(個人ごと)/毎月(世帯ごと)】 167,400円+(医療費-558,000)×1% |
|
年収約370万円~約770万円 | |
【外来(個人ごと)/毎月(世帯ごと)】 80,100円+(医療費-267,000)×1% |
|
年収156万~約370万円 | |
【外来(個人ごと)】 18,000円 (年間上限144,000円) |
【毎月(世帯ごと)】 57,600円 |
住民税非課税世帯 | |
【外来(個人ごと)】 8,000円 |
【毎月(世帯ごと)】 24,600円 |
年金収入80万円以下など | |
【外来(個人ごと)】 8,000円 |
【毎月(世帯ごと)】 15,000円 |
※1 1つの医療機関での自己負担(院外処方代を含む)では上限額を超えない場合、同じ月の別の医療機関での自己負担を合算することが可能。その合算額が上限額を超えれば、高額療養費の支給対象となる。
※2 入院時の食費負担や差額ベッド代などは含まない。
年収約1,160万円~ |
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252,600円+(医療費-842,000)×1% |
年収約770~約1,160万円 |
167,400円+(医療費-558,000)×1% |
年収約370~約770万円 |
80,100円+(医療費-267,000)×1% |
~年収約370万円 |
57,600円 |
住民税非課税者 |
35,400円 |
※1 1つの医療機関での自己負担(院外処方代を含む)では上限額を超えない場合、同じ月の別の医療機関での自己負担(21,000円以上)を合算することが可能。その合算額が上限額を超えれば、高額療養費の支給対象となる。
※2 入院時の食費負担や差額ベッド代などは含まない。
同じ月内でかかった医療費(10割負担)が800,000円だった場合、69歳以下で年収が370万円~770万円の方であれば、通常の健康保険適用では3割負担で240,000円かかります。
一方、高額医療制度を利用できれば、80,100+(800,000-267,000)×1%=85,430円のみの自己負担で済むことになります。
限度額適用認定証
しかし、基本的には支払った治療費が後から戻ってくる制度ではあります。
低所得者の方については、加入している保険窓口に事前に申請し「限度額適用認定証」の交付を受け、医療機関に提示すれば、支払いの時点で限度額までとできるようです。
また、「高額療養費資金貸付制度」といった貸付制度がある場合もあります。
この制度を利用できれば、高額療養費支給見込額の8~9割を無利子で借りることが可能です。
詳しくは、区市町村担当課、全国健康保険協会の都道府県支部、勤務先健康保険組合などの各窓口に確認してみてください。
③労働者災害補償保険(労災)からの補償を利用する
次に、肋骨骨折を負ったのが業務中や通勤中であった場合、労働者災害補償保険(労災)が適用されます。
労災が適用されれば、療養(補償)給付(業務中)や、療養給付(通勤時)が支給され、治療費に関する自己負担はゼロということになります。
雇用主が労災保険未加入の場合や、アルバイト、パートタイマーといった雇用形態の場合などに関係なく、仕事中の病気や怪我が原因であれば、労災保険は適用されます。
治療費 |
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診察代や手術代、投薬代や入院代の費用など。 【支払い基準】 治療のためにかかった必要かつ妥当な実費。 |
ちなみに、通勤中の満員電車で圧迫されたことが原因で肋骨骨折をした方が、労災認定されたこともあるそうです。
もしも…と思っているケースがあったら、お住まいの都道府県の労働局や、労基署などに確認してみてください。
④自分の生命保険からの保険金を利用する
また、生命保険に加入されているという方も多いのではないでしょうか。
生命保険とは、実は病気だけでなく、不慮の事故などの災害によって死亡した場合などにも保険金が支払われるものとなっています。
さらに、死亡保険金だけでなく医療保険金も受け取れるんですね!
(死亡保険) |
---|
被契約者が死亡もしくは高度の障害状態に陥った際に保険金が支払われるもの。 |
医療保険 |
入院時や手術時に保険金が支払われるもの。 日本国民は基本的に健康保険に加入しているが、それではカバーされない差額ベッド代や、入院時の生活費、先進医療費などに備える保障。 |
生命保険であっても、治療費を受け取れるとは知りませんでした…!!
民間の医療保険の医療特約に加入している場合、手続きに必要な診断書を書いてもらうことで、まだ入院中であっても入院給付金や手術給付金が支給されることもあります。
この点についても、保険契約証書を確認してみたり、加入されている医療保険会社に確認してみてください。
また、医療特約以外にも特約を付加すれば、より手厚い保障内容にすることができます。
災害入院特約 |
---|
怪我で入院した場合に入院給付金が支給されるもの。 |
傷害特約 |
交通事故などの突発的で偶然起きる外来的な事故によって所定の障害状態になった場合は、その障害の程度に応じて給付金が支払われる。 |
上記の特約は、交通事故での確率をもとに作られているため、年齢も関係なく、保険料も安価となっているようです。
ただし、たとえば交通事故による怪我の場合、特約を付けなくても、生命保険や自動車保険から怪我に対する補償を受け取ることは可能です。
特約に加入していれば、もちろん保険金を受け取ることはできますが、保険料の無駄が発生しているとも考えられます。
事故への保障に偏った保険となっていないか、検討してみるのも良いかもしれません。
⑤自分の傷害保険からの保険金を利用する
生命保険ではなく、傷害保険(損害保険)に加入されている方もいらっしゃるかもしれません。
また、傷害保険も、不慮の事故による死亡・傷害・怪我を保障するためのものであり、契約内容に応じて死亡保険金や障害保険金、入院保険金などが支払われます。
ただし生命保険とは違い、傷害保険の保障対象は「不慮の事故によって発生した損害」に限定されており、病気による死亡・障害については一切保障されません。
もっとも、交通事故や転倒などが原因で肋骨骨折を負った場合には、保険金を受け取れることになります。
傷害保険から受け取れる保険金としては、以下のようなものが挙げられます。
入院保険 |
---|
不慮の事故によって傷害を負った場合、入院日数に応じて保険金が支払われるもの。 支給条件として、事故から入院までの経過日数に制限が設けられている。 |
通院保険 |
不慮の事故によって傷害を負った場合、通院日数に応じて保険金が支払われるもの。 支給条件として、事故から入院までの経過日数に制限が設けられている。 |
手術保険 |
入院保険金が支払われる場合に、その怪我の治療のために所定の手術を受けた場合に保険金が支払われるもの。 支給条件として、手術の種類や1事故あたりの保険金の支給回数に制限が設けられている。 |
ギプス固定中は、病院に行かなくても通院日数にカウントされる!?
ところで、軽度の肋骨骨折の場合には、骨折部位をギプスなどで固定して、後は自宅で安静にし、ほとんど通院しないケースもあるのではないかと思います。
しかし、骨折の場合、ギプスで固定中には、通院日数にカウントできるようです。
例として、損保ジャパンの傷害保険の約款を見てみました。
被保険者が通院しない場合においても、骨折、脱臼、靱じん帯損傷等の傷害を被った別表3の1.から3.までに掲げる部位を固定するために被保険者以外の医師の指示によりギプス等(注2)を常時装着したときは、その日数について、(略)通院をしたものとみなします。
(略)
(注2)ギプス等
ギプス、ギプスシーネ、ギプスシャーレ、シーネその他これらに類するものをいいます。
出典:http://www.sjnk.co.jp/~/media/SJNK/files/kinsurance/yakkan/kokunai1409_yakkan.pdf
別表3 ギプス等の常時装着により通院をしたものとみなす部位
1.長管骨または脊せき柱
2.長管骨に接続する上肢または下肢の3大関節部分。ただし、長管骨を含めギプス等(注)を装着した場合にかぎります。
3.肋ろっ骨・胸骨。ただし、体幹部にギプス等(注)を装着した場合にかぎります。
出典:http://www.sjnk.co.jp/~/media/SJNK/files/kinsurance/yakkan/kokunai1409_yakkan.pdf
つまり、ほとんどの場合、肋骨骨折でギプス固定をしている場合には通院日数とカウントされ、その日数に応じた保険金が支払われることになりそうです。
ただし、支払い基準は保険会社により異なる可能性がありますので、ご自身の加入されている保険に確認してみてください!
交通事故が原因で肋骨骨折を負った場合の治療費は誰が支払う?
机にぶつけた場合や、咳でも骨折してしまう可能性がある肋骨ですが、交通事故による衝撃でも発生することが多くあります。
交通事故の場合、自分だけの責任ではないと思うのですが、その場合の治療費は誰が支払うのでしょうか?
①相手側の保険会社からの損害賠償を利用する
自賠責保険
まず、自損事故以外の交通事故の場合には、自賠責保険が適用となり、治療費などの損害賠償を受け取ることができます。
自賠責保険とは、自動車やバイクを運転する方に加入が義務付けられている保険です。
ただし、あくまでも事故被害者の方への最低限の補償を目的とした保険となっています。
よって、入通院にかかわる損害賠償(治療関係費、文書料、休業損害、慰謝料)に対する限度額は、合わせて120万円までとなっています。
中でも治療費に関わる補償の支払い基準は以下のようになっています。
治療費 |
---|
診察代や手術代、投薬代や入院代の費用など。 【支払い基準】 治療のためにかかった必要かつ妥当な実費。 |
看護料 |
原則として12歳以下のお子様に近親者の方が付き添った場合や、医師が看護の必要性を認めた場合の、入院中の看護料や自宅看護料、通院看護料。 【支払い基準】 ・入院の場合:4100円/日 ・自宅看護もしくは通院の場合:2050円/日 ・それ以上の収入減の立証で近親者の場合:19000円 ・それ以外:地域の家政婦料金が限度 |
諸雑費 |
入院中に要した雑費。 【支払い基準】 原則として1100円/日。 |
通院交通費 |
通院に要した交通費。 【支払い基準】 通院のためにかかった必要かつ妥当な実費。 |
義肢等の費用 |
義肢や義眼、めがね、補聴器、松葉杖などの費用。 【支払い基準】 必要かつ妥当な実費。 めがねの費用は50000円が限度。 |
慰謝料 |
事故で怪我をしたことによる精神的・肉体的な苦痛に対する補償。 【支払い基準】 4200円/日。 対象日数は被害者の怪我の状態や実治療日数などを考慮して治療期間内で決められる。 |
とはいえ、賠償金を受け取れるまでには時間がかかる場合もあります。
その間にも治療費は発生してしまうので、非常に心配ですよね。
そのような場合の、治療費などの当座の費用として「仮渡金制度」というものがあるそうです。
仮渡金制度
仮渡金制度とは、損害賠償の額が確定する前であっても、将来損害賠償として支払われるであろう当座の資金の支払いを自賠責保険会社に対して請求できるという制度です。
そして、肋骨骨折の場合でも完治までに2~3週間かかるということだったので、受け取れる可能性があります。
40万円/人 |
---|
・脊柱の骨折で脊髄を損傷したと認められる症状を有する場合 ・上腕又は前腕骨折で合併症を有する場合 ・大腿又は下腿の骨折 ・内臓破裂で腹膜炎を起こした場合 ・14日以上入院を要する傷害で30日以上の医師の治療が必要な場合 |
20万円/人 |
・脊柱の骨折 ・上腕又は前腕の骨折 ・内臓破裂 ・入院を要する傷害で30日以上の医師の治療を必要とする場合 ・14日以上の入院を必要とする場合 |
5万円/人 |
・11日以上の医師の治療を必要とする場合 |
任意保険
以上、自賠責保険による治療費の補償について見てきました。
軽度の肋骨骨折であれば、自賠責の補償限度額120万円以内で収まることもあるかもしれません。
しかし、折れた骨が内臓を傷付けてしまうほどの重症の場合、自賠責の補償限度額(120万円)を超えてしまうことがあるはずです。
自賠責の支払限度額を超える場合や自損事故で怪我をした場合には、任意保険からの補償を受ける必要があります。
任意保険から受け取れる慰謝料は弁護士に依頼するかどうかで大きく変わることがあります。
というのも、交通事故の慰謝料は弁護士基準で計算すると増額が大幅に見込めるからです。
自賠責での入通院慰謝料は4200円/日と決められていますが、任意保険ではある程度の相場が存在しています。
ただし、弁護士に示談交渉を任せた場合、この相場が弁護士基準のものまで高まることがほとんどなのです。
弁護士基準となった場合の入通院慰謝料の相場は以下の通りです。
一目瞭然ですが、加害者が任意保険に加入している場合には、弁護士基準での慰謝料を獲得すべきです。
よって、自動車保険会社との示談交渉にあたっては、ぜひ弁護士に相談してみてくださいね!!
政府保障事業
ところで、残念ながら自動車保険に未加入の人もいるのが現実です。
もしも事故の相手が無保険車、もしくはひき逃げや盗難車であった場合には、何も補償が受けられなくなってしまうのでしょうか…。
その場合には、政府保障事業というものを利用することができます。
政府保障事業とは、政府が実施している交通事故の被害者の方に対する最低限の補償制度です。
- 相手が自賠責保険に加入していない場合
- ひき逃げなどで相手が特定できず補償をまったく受けられない場合
に利用することができるそうです。
政府保障事業による補償金の金額は、自賠責と同じ基準になるようです。
自賠責と同じく、十分とは言えないかもしれませんが、何ももらえないよりは良いに決まっています。
利用したい場合は、損害保険会社が窓口となって対応してくれるそうなので、お近くの窓口に相談に行ってみてください。
②自分の任意保険からの保険金を利用する
次に、被害者の方が加入している任意保険に人身傷害補償保険が付いていれば、被害者の方の治療費であっても、被害者の方の保険会社が支払ってくれます。
他に、搭乗者傷害保険や自損事故保険、無保険車傷害保険金が付いていれば、治療費の実費が支払われるわけではありませんが、保険金を受け取れる可能性があります。
よって、その受け取った保険金を治療費として利用することも可能となりますね。
人身傷害補償保険金 |
---|
過失割合に関わらず、保険会社の基準によって支払われる保険金(実損害額)。 同乗者の損害は、基本的に無条件に補償される。 |
搭乗者傷害保険金 |
自分の車に乗っている人(運転者・同乗者)が死亡、怪我をしてしまった場合に、自賠責保険や対人賠償保険などとは別に支払われる保険金。 |
無保険車傷害保険金 |
賠償能力が十分でない車の過失による事故に巻き込まれた場合に支払われる保険金。 |
自損事故保険金 |
運転手自身の責任で起こした事故により、運転手自身が死亡、怪我をしてしまった場合に支払われる保険金。 |
以上の保険に加入していれば、ご自身に過失がある場合や、相手が無保険だった場合、自動車運転中ではなかった場合にも、治療費の実費などがカバーされる可能性があります。
一度、ご自身の自動車保険契約内容を確認してみるのも良いかもしれません。
ただし、ご自身の保険を利用すると次回からの保険料が上がってしまうこともあるので、その点は要注意ですね。
交通事故でも健康保険が使える?
ちなみに、肋骨骨折の原因が交通事故である場合、健康保険などを利用することはできないと思われている方もいらっしゃるようですが、実際には交通事故でも健康保険は使えることとなっています。
厚生労働省も、以下のように交通事故でも公的医療保険を使えるという通達(通知)を出しています。
犯罪や自動車事故等の被害を受けたことにより生じた傷病は、医療保険各法(健康保険法、船員保険法、国民健康保険法及び高齢者の医療の確保に関する法律)において、一般の保険事故と同様に、医療保険の給付の対象とされています
ただし、公的医療保険で診療を受ける場合には、「第三者の行為による傷病届」を、
- 区市町村担当課
- 全国健康保険協会の都道府県支部
- 勤務先健康保険組合
などの各保険者に提出する必要があります。
また、交通事故の場合、健康保険だけでなく、生命保険、傷害保険からも治療費などが支給されますので、忘れないようにしてくださいね!
自動車保険でもギプス固定中は通院日数にカウントされる?
ちなみに、自動車保険においても、骨折によりギプスなどを常時装着した場合には、その日数も通院日数にカウントされる場合があるようです。
ただし、ギプス固定中に病院への入通院があった場合、重複して対象日とはなりません。
とはいえ、被害者の方だけで保険会社と交渉しても認められないことがほとんどだということです。
納得がいかないことがある場合は、ぜひ弁護士などの専門家に相談してみてください!
その他、高額な治療費に対する支援は?
以上、治療費の負担を少しでも軽減する方法について見てきました。
他にも、何か支援やサービスを受けることはできるのでしょうか?
医療費控除を受ける
他にも、医療費をたくさん支払っている場合、確定申告時に「医療費控除」を申請することで、所得税や住民税の金額を減額することが可能となっています。
所得税や住民税が減額されるというのは、非常にありがたい制度です。
医療費控除の対象となる医療費は、以下の通りとなっています。
医療費控除の対象
- 納税者が、自己又は自己と生計を一にする配偶者やその他の親族のために支払った医療費
- その年の1月1日から12月31日までの間に支払った医療費
つまり、自分の医療費だけではなく、同一生計のご家族の医療費を支払った場合にも、医療費控除(200万円限度)が受けられるんですね。
ご家族の方が肋骨骨折による治療を続けている場合、こちらの制度を使えば治療費の負担にもつながるはずです。
損害賠償金と医療費控除の関係
そのような制度があるとわかったところで…病気や通常の怪我とは違い、交通事故では加害者側から損害賠償金の一環として治療費を受け取れるということでした。
損害賠償で治療費を受け取っている場合でも、医療費控除は受けられるのでしょうか?
治療費を損害賠償として受け取った場合のように、医療費の一部について補填された場合は、「保険金などで補填される金額」に該当し、補填された金額を支払った医療費から差し引く必要があります。
やはり、損害賠償として受け取った分は差し引かれるのですね。
医療費控除の計算方法は、以下の通りとなっています。
医療費控除の計算式
医療費控除=(実際に支払った医療費の合計額-①)-②
- ① 保険金などで補填される金額
- ② 10万円(例外:総所得金額等が200万円未満の場合は総所得金額等の5%の金額)
ちなみに、「総所得金額等」とは以下の金額を指します。
総所得金額等
- 純損失、雑損失、その他各種損失の繰越控除後の総所得金額
- 特別控除前の分離課税の長(短)期譲渡所得の金額
- 株式等に係る譲渡所得等の金額
- 上場株式等に係る配当所得の金額
- 先物取引に係る雑所得等の金額
- 山林所得金額及び退職所得金額
の合計額
以上、改めてわかった通り、治療費を加害者側から受け取った場合は、治療費の領収書があったとしても医療費控除は受けられないということになります。
計算例
では、具体的な計算例を見てみましょう。
たとえば、総所得金額300万円の方が、交通事故による怪我ではなく、病気の治療などで医療費30万円を支払った場合、
医療費控除金額=300,000−100,000=200,000円
となり、20万円の医療費控除が受けられることになります。
一方、総所得金額が150万円(200万円以下)の方の場合には、
医療費控除金額=300,000−(1,500,000×5%)=225,000円
となり、22.5万円の医療費控除が受けられることになります。
しかし、交通事故による怪我の治療で、治療費30万円を損害賠償などで受け取っている場合には控除は受けられません。
ただし、治療費が非常に高額で、自賠責の上限を超えてしまい、任意保険からも回収できていない場合には、医療費控除を受けられる可能性があります。
たとえば、総所得金額300万円の方が非常に重症の肋骨骨折を負い、医療費140万円を支払ったとします。
しかし、保険会社から120万円しか回収できなかった場合には、
医療費控除金額=(1,400,000-1,200,000)-100,000=100,000円
となり、10万円の医療費控除を受けられることになります。
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最後に一言アドバイス
それでは、最後になりますが、肋骨骨折の治療費に関してお悩みの方に一言アドバイスをお願いします!
交通事故の場合、相手側保険会社からの損害賠償以外に、自分の自動車保険や生命保険、医療保険などからも補償を受けられる可能性があります。
よって、どのような補償内容の保険に加入していて、どのような時に保険金が受け取れるのか、きちんと確認し、整理しておくことをお勧めいたします。
一方、自動車保険への損害賠償請求に関しては、被害者の方だけで交渉しても、思ったよりも低い示談金しか受け取れない可能性もあります。
しかし、保険会社から示談金を提示され、書類にサインしてしまうと、あらためて慰謝料などを請求することは極めて困難になります。
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まとめ
いかがでしたでしょうか?
最後までお読みいただけた方には、
- 肋骨骨折の治療費の金額やそれに対する保障
- 交通事故が原因の場合の治療費の負担者や負担支援制度
について、理解を深めていただけたのではないかと思います。
相手側の保険会社から適正な損害賠償を受け取るためには、弁護士に相談した方が良いと感じた方もいらっしゃるかもしれません。
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