交通事故の介護費用|家族の介護費用の金額・損賠賠償請求の際の問題点・判例を紹介!

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交通事故の介護費用|家族の介護費用の金額・損賠賠償請求の際の問題点・判例を紹介!

交通事故によって家族による介護が必要になってしまったら、介護費用総額でどれ位受け取れるの?」

「実際に介護費用の損害賠償を請求しようと思ったら、どんなことが問題になるの?」

「交通事故の介護費用の問題点について、判例ではどのような判断がされているの?」

交通事故で重い後遺障害が残り、介護が必要になってしまった家族がいる方は、肉体的・精神的負担は勿論ですが、金銭的負担も気になるかと思います。

このページでは、そんな方のために、

交通事故において認められる介護費用の金額や計算方法

介護費用の損害賠償を請求する際の問題点

交通事故の介護費用の問題点についての判例

についてご紹介していきたいと思います!

専門的な部分や実務的な部分は交通事故と刑事事件を数多く取り扱っている岡野弁護士に解説をお願いしております。

回答者:アトム法律事務所の岡野弁護士

弁護士の岡野です。よろしくお願いします。

交通事故の介護費用は、被害者の方にとって一生続く問題であり、どれ位の金額を受け取れるかは非常に重要な問題といえます。

しかしながら、交通事故の損害賠償において、介護費用は将来の問題であることもあり、争いになりやすい損害項目の一つになっています。

そのため、交通事故の介護費用において、過去の判例が下している判断は非常に参考になります。

こちらで交通事故の介護費用についてしっかり理解し、適正な損害賠償を受けられるようにしましょう。

交通事故において、介護費用とは、通常重い後遺障害が残ってしまった方の症状固定後の将来分の介護費用(将来介護費のことをいいます。

そのため、ここから出てくる「介護費用」とは、症状固定後の将来分の介護費用(将来介護費)のことになります。

まずは、交通事故において認められる介護費用の金額や計算方法について確認していきたいと思います。

交通事故の介護費用の金額

交通事故の介護費用の金額

家族が行う場合の介護費用の額

交通事故により、被害者が介護を要する状態となった場合、その介護を家族が行うという場合も多いと考えられます。

しかし、家族による介護は通常無償で行われるので、損害賠償としての介護費用の金額が問題になります。

この点につき、交通事故の損害賠償額算定基準が掲載されている赤い本では1日につき8000円とされています。

ただし、上記の金額はあくまで基準であり、具体的看護の状況により増減されることになります。

具体的看護状況から想定される介護する家族の肉体的・精神的負担の程度から介護費用が算定されますが、主な考慮要素としては以下のものになります。

被害者の後遺障害の内容・程度

被害者の要介護状態・日常生活の自立の程度

必要とされる介護の内容・程度

介護のために必要な時間

介護する家族の属性(性別・年齢・健康状態)

介護仕様の家屋の建築

介護用具の使用

例えば、後遺障害等級別表1では、常に介護を要するもの(1級)と随時介護を要するもの(2級)に区別されています。

そして、随時介護(2級)の場合には、介護に要する時間等を考慮して、上記の基準である8000円から減額される場合も多いようです。

職業介護の場合の介護費用の額

一方で、交通事故により、被害者が介護を要する状態となった場合、その介護を介護士などの職業付添人に依頼する場合も多いと考えられます。

介護を介護士などの職業付添人に依頼する場合は当然、介護士などの職業付添人に報酬などの費用(実費)を支払う必要があります。

そのため、交通事故の損害賠償額算定基準が掲載されている赤い本でも職業付添人の介護費用実費全額が原則とされています。

もっとも、職業付添人の介護費用は一律ではなく、依頼するところ(人)によっては一般的な相場よりもかなり高額になる場合があります。

また、介護費用は将来を含む長期間にわたる問題のため、実際に必要となる介護費用の見積もりが難しい場合もあります。

そのため、実費が高額な場合は、全額認められるかどうかが争いになることもあり、判例においてもその結論は様々です。

では、職業付添人の介護費用として認められる具体的な金額の相場のようなものはあるのでしょうか?

回答者:アトム法律事務所の岡野弁護士

職業付添人の介護費用は、依頼する日数・時間・必要となる人数に大きく影響されるため、相場を一概に判断することはできません。

ただし、後遺障害等級1級の場合、東京地裁では日額1万5000円~2万円程度が認められることが多いようです。

日額2万円を超える介護費用が認められた例は少ないですが、全くないわけではなく、具体的事情次第ですので、まず弁護士に相談してみましょう。

交通事故の介護費用の金額の相場
介護主体 金額
家族 日額8000円※1
職業付添人 実費全額※2

※1 具体的看護の状況により増減

※2 日額1万5000円~2万円が多く、全額認められない場合もある

受け取れる介護費用の総額|定期金賠償の場合は?

そして、交通事故介護費用の計算方法は以下のようになっています。

(介護費用の日額)×365×(介護費用が認められる期間の年数に対応するライプニッツ係数)

ここからは、各項目の説明や問題となる点についてお伝えしたいと思います。

介護費用の日額

介護費用の日額について、介護主体が家族か職業付添人かで金額が変わることについては先ほどお伝えしたとおりです。

しかし、実際の介護においては、どちらか一方だけが介護主体になるのではなく、家族介護と職業介護を併用する例も多いと考えられます。

具体的には

ⅰ平日日中は職業介護、夜間・早朝や休日は家族介護

ⅱ一定の曜日だけ職業介護を利用

ⅲ当面は家族介護だが、介護主体の家族が高齢化した段階で職業介護に切り替え

などが考えられます。

この場合、各介護主体ごとの介護が行われる時間・日数・期間ごとに分けて計算を行い、その合計額が損害賠償としての介護費用になります。

なお、親族が夜間・早朝に介護する部分については、日中より負担が大きいと考えられるため、その時間の部分の日額が増額される場合があります。

また、上記ⅲについては、後ほどご紹介する介護の態様の問題点のところで詳しく説明したいと思います。

年数に対応するライプニッツ係数

交通事故の介護費用は上記のとおり、「(介護費用の日額)×365」に単純に「介護費用が認められる期間の年数」を掛けて計算するのではなく、

介護費用が認められる期間の年数に対応するライプニッツ係数

を掛けて計算されることになります。

ライプニッツ係数とは

詳しく説明しますと、介護費用は将来必要となる分の介護費用もまとめて一括で支払われる形になります。

しかし、実際に金銭が手元にあれば、第三者に貸したり、預金したりすることで利息が得られることになります。

にもかかわらず、将来必要となる分の介護費用全額の金銭を一括でもらってしまうと、被害者が利息分を余計に受領することになってしまいます。

このように利息分を余計に受領することを防ぐために、介護費用が支払われる段階で、本来受け取る時期までの利息分を控除する必要があります。

このことを中間利息の控除といいます。

そして、この逸失利益から中間利息を控除し、一時金に換算するために用いられる数値がライプニッツ係数になります。

このライプニッツ係数は法定利率である年5%を複利計算した中間利息を控除するために用いられる係数です。

具体的な労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数の一部が以下の表になります。

ライプニッツ係数表※
労働能力喪失期間 ライプニッツ係数
0.9524
1.8594
2.7232
3.546
4.3295
10 7.7217
15 10.3797
20 12.4622
25 14.0939
30 15.3725
35 16.3742
40 17.1591

※一部を抜粋

この年数に対応するライプニッツ係数を掛けて計算した介護費用は、単純に年数を掛けて計算した場合と大きな差が生じます。

たとえば、交通事故により介護が必要となった人を、家族介護で40年間介護する場合の両者の計算式による介護費用は以下の表のとおりです。

中間利息控除の有無による介護費用の比較
中間利息控除有 中間利息控除無
計算式 8000円×365×17.1591 8000円×365×40
介護費用の額 50104572 11680万円

※日額は家族介護の相場を採用

何と、中間利息を控除するかどうかで倍以上の約6000万円もの差が生じてしまうんですね!

理論的には、利息が付けば同じ金額になるとはいえ、実際には年5%の利息を付ける(運用する)のは極めて困難と考えられます。

そうだとすれば、実際には介護費用として受け取れる損害賠償金だけでは、実際に介護に必要となる費用を賄いきれないことになってしまいます。

定期金賠償方式による支払

こういった問題を回避し、被害者の実際の介護費用を賄うことができる損害賠償の支払方法があります。

それが「定期金賠償方式」という支払方法です。

これは、その名のとおり、介護費用について一括で支払うのではなく、月ごとなど定期的に支払う損害賠償の支払方式です。

この方法には、被害者にとって、実際に受け取れる将来介護費の総額が大幅に増えるだけでなく

介護状況の変化による毎月の介護費用の増額に柔軟に対応しやすい

介護費用を実際に介護に必要な時期(近い時期)に受け取れるので、費消により介護費用が支払えないという事態が生じにくい

という長所もあります。

また、加害者側にとっても、被害者が亡くなってしまい、介護費用が掛からなくなった後は支払の必要がなくなるという長所があるといえます。

このように、定期金賠償方式による損害賠償の介護費用の支払には様々な長所があります。

もっとも、定期金賠償方式にも短所がないわけではありません。

定期金賠償方式の短所

定期金賠償方式の短所としては主に

ⅰ将来的な加害者側の資力の悪化により損害賠償の履行が困難になるおそれ

ⅱ加害者側との接触が定期的に継続されることによる被害者側の心理的負担

ⅲ賠償義務者の管理コストの増大

が挙げられます。

ⅰについては、加害者が任意保険会社に加入している場合は問題ないという見方もありますが、大手保険会社でも長期的将来どうなるかはわかりません。

ⅱについては、加害者側との接触を定期的に継続しなければならないことにより、ずっと交通事故のことを忘れられなくなることが懸念されています。

ⅲについては、一時金賠償なら一回で済む支払手続きを将来にわたって定期的に管理しなければならないという賠償義務者の負担の問題があります。

なお、定期金賠償方式の採用についての態度は裁判官によって様々で、裁判官の中には、定期金賠償方式の採用に消極的な方もいるようです。

反対に、被害者が定期金賠償方式を希望しない場合でも、裁判官の判断で定期金賠償方式による支払を命じることができるかという問題があります。

回答者:アトム法律事務所の岡野弁護士

交通事故の介護費用の日額は一定の基準があるものの、具体的に介護費用を計算するには、実態に即した様々な検討が必要になります。

また、一時金賠償の方式によるべきか定期金賠償の方式によるべきかは、双方の長所と短所を踏まえた上で、慎重に検討する必要があります。

具体的な介護費用の計算や支払方式の決定は、交通事故の損害賠償において極めて重要なので、まずは弁護士に相談してみることをおすすめします。

定期金賠償方式による長所と短所
長所 短所
受け取れる将来介護費の増加 将来の履行が困難になるおそれ
実態に即した介護費用の算定 被害者側の心理的負担の継続
介護費用が払えないリスク低下 賠償義務者の管理コスト

介護費用の損害賠償を請求する際の問題点

介護費用の損害賠償を請求する際の問題点

交通事故において認められる介護費用の金額や計算方法についてはお分かりいただけたのではないかと思います。

しかし、実際に交通事故における損害賠償として介護費用を請求するにあたっては、様々な問題が生じます。

そこで、ここからは、介護費用の損害賠償を請求する際に、よく問題となる点についてお伝えしていきたいと思います。

①介護の必要性|要介護認定なしなら?

まず、交通事故損害賠償において介護費用が認められるには、症状固定後も将来的に介護が必要であるといえる必要があります。

そして、将来的に介護が必要であるかは、

被害者に残存した後遺障害の状況

それにより被害者が受けている日常生活動作の制限の程度

などを考慮して判断されることになります。

必要性が原則的に認められる場合

まず、後遺障害の等級が別表1の1級又は2級の場合には、原則として介護の必要性は認められることになります。

この場合、後遺障害の等級認定時に「介護を要するもの」という判断を受けていることになるからです。

ただし、随時介護である2級の場合、介護費用が1級の場合よりも減額される可能性が高まることについては、先ほどお伝えしたとおりです。

要介護認定のない後遺障害の場合は?

では、上記のような要介護認定のない後遺障害の場合には、介護の必要性は認められないのでしょうか?

結論から申し上げますと、要介護認定のない後遺障害であっても、具体的な状況から何らかの介護が必要と判断できれば、介護の必要性は認められます。

要介護に匹敵する状況ではない場合でも、介護費の調整で妥当な結論が図れるため、介護の必要性についてはある程度広く認められるようです。

要介護認定のない後遺障害のうち介護費用が問題になりやすいものの一つに、3級や5級の高次脳機能障害があります。

この場合、身体介護の必要性は少なくても、見守り(看視)・声かけ(指示)が日常生活を送る上で重要な場合があります。

そして、こうした他者による看視や声掛けについても、一種の介護であるとして、必要がある場合には、介護の必要性が認められる傾向にあります。

ただし、金額については、家族介護の場合なら、赤い本の基準である日額8000円から減額されてしまうことがほとんどのようです。

植物状態で入院中の家族介護の必要性

植物状態になって施設に入所している場合、加害者側から

被害者の生命維持は施設が主体となって行う

被害者が日常生活動作を行わない

ため、家族の介護の必要性がないと主張されることが多くあります。

もっとも、この場合においても、家族の介護の必要性は否定できないとする判例が比較的多いようです。

たとえ植物状態となり、家族の通常の介護が必要ない場合でも、体位の変換や声かけにより被害者が回復する可能性も否定できないと考えるようです。

ただし、この場合の家族介護費用は、一般的な家族介護費用よりも減額されることが多いようです。

②介護の態様

介護の必要性が認められても、介護の主体が家族かどうかや介護の場所などの介護の態様により、介護費用が大きく変わるため問題になります。

介護の主体について

一般的に家族による介護の方が介護費用が低く計算されることになるため、介護の主体は、損害賠償において問題となる点といえます。

家族介護ではなく、介護士などの職業付添人による介護の蓋然性(必要性)があるといえるかどうかは

ⅰ被害者の要介護状態(後遺障害の内容・程度、被害者の状態・生活状況、必要とされる介護内容など)

ⅱ被害者と同居する家族の有無及びその身体的な介護能力(年齢、体格、体調など)

ⅲ被害者と同居する家族の就労の有無、就労の意向、就労準備状況、就労の実績など

を総合的に考慮して判断するものとされています。

多くの場合、同居の家族がおり、仕事や家庭状況により介護ができないと判断される場合でなければ、家族介護を前提とした判断がされるようです。

もっとも、その場合でも、補助的な職業付添人による介護の併用については、ある程度柔軟な対応がなされているようです。

また、介護は相当な肉体的・精神的負担を伴うため、家族が高齢になった場合、家族介護の継続は現実的には困難となる場合も多いと考えられます。

そのため、家族介護を行っている場合でも、介護主体の家族が労働可能年齢の67歳を超えた以降は職業付添人による介護を認めることが多いです。

介護の場所について

また、交通事故損害賠償では、在宅介護か施設介護かという介護の場所も問題になることがあります。

一般的には在宅介護による方が、施設介護による場合よりも介護費用関連の総額が高額になる場合が多いからです。

被害者やその家族が在宅介護を希望するのは心情的には当然ともいえ、その意向については十分配慮する必要があるといえます。

一方で、施設介護に比べ、在宅介護は家族の負担が大きく増すことや、十分な在宅介護の体制が整っているかについても考慮する必要があります。

なお、施設介護を行っている場合でも、その状態が将来長期にわたって継続するかどうかは慎重に検討する必要があります。

③介護の期間

介護は、被害者が生存している限り、一生続く問題であることから、介護費用損害賠償額算定における介護の期間

被害者の平均余命まで

が原則になります。

植物状態となった際の介護の期間

そして、この介護の期間が問題となることが多いのは、被害者が交通事故により植物状態となった場合についてです。

この場合、加害者側から平均余命までの生存可能性が少ないため、介護の期間を短期間にすべきだとして争われることがあります。

これに対する判例の判断は様々です。

被害者が死亡した以降の介護費用

また、交通事故の被害者は、残念ながら介護の期間中に、平均余命を待たずに死亡してしまう場合があります。

この場合、死亡の原因が交通事故によるものかどうかを問わず、死亡以降の介護費用は発生しないことになります。

つまり、損害賠償の支払前に被害者が死亡した場合、支払われる介護費用は、症状固定日から被害者の死亡日までの期間に限られます。

回答者:アトム法律事務所の岡野弁護士

これには損害賠償における介護費用の種類が関係しています。

介護費用は、交通事故により、実際に支出が必要となった費用を補填するための積極損害に分類されます。

そのため、死亡により実際の支出が必要なくなった分については、損害が生じたとはいえなくなります。

ただし、一時金として介護費用を受領した後、被害者が平均余命前に死亡した場合、損害賠償金の一部を返還する必要はありません。

これは、賠償義務者にとって不合理のようにも思えますが、こういった不合理を避けるには、先ほどの定期金賠償方式による支払という方法があります。

介護費用の損害賠償の問題点についての原則と例外
問題点 原則 例外
①介護の必要性 等級が別表11級又は2 ・要介護以外の後遺障害でも認められる場合あり
・植物状態で入院中の家族介護は争いあり
②介護の態様 家族介護可能なら家族介護 介護者67歳超えたら職業介護
③介護の期間 平均余命まで ・植物状態の場合争いあり
・死亡した場合は死亡時まで

交通事故の介護費用の判例

交通事故の介護費用の判例

このように、交通事故損害賠償請求において、介護費用には様々な争点があります。

では、そういった介護費用の争点について、実際の判例ではどのように判断されているのでしょうか?

最後に、交通事故の介護費用の問題点に関する判例の判断についてご紹介したいと思います。

①介護の必要性についての判例

先ほどお伝えしたとおり、要介護認定のない後遺障害であっても、具体的な状況から何らかの介護が必要と判断できれば、介護の必要性は認められます。

3級以下の高次脳機能障害の判例

こちらも先ほどお伝えしたとおり、要介護認定のない後遺障害のうち介護費用が問題になりやすいのは、3級以下の高次脳機能障害です。

そして、5級2号の高次脳機能障害につき、随時声掛け・看視が必要として、平均余命まで日額3000円の介護費用を認めた判例が以下のものです。

(1) 原告X1の後遺障害の程度について

(略)

原告X1は、(略)高次脳機能障害等の症状を残し,症状固定した旨の診断を受けた。

また、自賠責後遺障害等級認定において,後遺障害等級表別表第二第5級2号の認定を受けた。

(略)

現在は、リハビリにより、症状の改善がある程度認められ、小学校に復学後、中学校の普通学級に進学してはいるが、易怒性、性格の異常等の人格の変化、記銘記憶力、認知力、言語力、理解力、判断力に問題があり、集中力に欠ける状況であり、高次脳機能障害の著しい障害が残存したものといえる。

もっとも,動作は左上肢の企図振戦の神経症状のほかは明確な障害は認められず、また、親や教師の支援の下、1人で通学を継続している。

以上の事実を総合すると、原告X1は、単純繰り返し作業に限定すれば、一般就労ができない又は極めて困難であると評価することはできない。

したがって、原告X1は、頭部外傷後の神経系統の機能又は精神の障害について、後遺障害等級第5級相当の後遺障害が残存したものと認める。

(略)

(2) 介護の必要性と相当性

原告X1は、日常生活動作は自立しているが、未だ中学3年生と若く、今後日常生活ないし社会生活を送るにあたり、将来にわたり、随時、見守り、声かけによる指示を行う必要がある。

したがって、原告X1には、随時、看視や声かけが必要である。

(略)

ケ 将来付添費 2114万4231円

(略)原告X1は、重篤な高次脳機能障害を負っており、日常生活にも重大な障害があるから、今後一生にわたり、随時看視、声かけを要する。

その付添費は,日額3000円が相当であり,症状固定日における原告X1の平均余命である69.52年の間,必要となる。

(計算式) 3,000円×365日×19.3098(69年のライプ)=21,144,231円

この判例の被害者は、大きな身体障害はなく、1人で通学するなど日常生活動作は自立して行えています。

しかし、高次脳機能障害による具体的な症状から、随時、看視や声かけが必要であるとして、介護の必要性を認めています。

その上で、日額について3000円と赤い本の基準よりも低くすることで、具体的な妥当性を図っているといえます。

要介護状態以外の身体障害の判例

また、高次脳機能障害以外の要介護状態以外の身体障害の場合でも、具体的状況から何らかの介護が必要と判断できれば、介護の必要性は認められます。

併合5級の両下肢の機能障害につき、歩行不能で日常生活に付添介助を要するため、平均余命まで日額3000円の介護費用を認めた判例が以下のものです。

原告(大正7年○月○日生)は、平成12年6月12日,症状が固定し、その後、自動車保険料率算定会から、次のとおり、自賠等級現症併合第5級、既存障害第8級の加重障害との認定を受けた(略)。

a 現症 Ⅰ、Ⅱ及びⅢを併合し、併合第5級

Ⅰ 左下肢(左膝及び足関節)の機能障害 第6級7号

Ⅱ 右下肢の機能障害 第11級

右膝関節の機能障害(第12級7号)と右足関節の機能障害(第12級7号)の併合

Ⅲ 右下肢の変形障害 第12級8号

b 既存障害

左下肢(左膝関節)の機能障害 第8級7号

(略)

(10) 将来の付添費 778万3260円

(略)によれば、原告は、歩行不能の後遺障害のため、日常生活に付添介助を要することになり、現在は長女の介護を受けていることを認めることができる。

そして、原告の後遺障害(略)の内容、程度を考慮すると、将来の付添費として1日について3000円を認めるのが相当である。

そして、症状固定時の原告の平均余命は9年である(略)から、1年間の付添費合計にそのライプニッツ係数である7.108を乗ずると、上記金額となる。

3000円×365日×7.108

この判例の被害者は、要介護状態の後遺障害の等級ではないものの、両下肢の機能障害のため、歩行不能の状態にあったようです。

そういった交通事故の後遺障害による具体的な症状から、日常生活に付添介助が必要であるとして、介護の必要性を認めています。

その上で、日額について3000円と赤い本の基準よりも低くすることで、具体的な妥当性を図っているといえます。

②介護の態様についての判例

介護の主体に関する判例

先ほど、家族介護の場合でも、補助的な職業付添人による介護の併用については、ある程度柔軟な対応がなされているとお伝えしました。

実際に、補助的な職業付添人による介護の併用を前提として、介護費用の日額を判断した判例が以下のものです。

(11) 将来介護費・・・・8131万5138円

原告X1の請求は、近親者67歳までは原告X3の休日年80日,近親者日額1万5000円で,その余の285日については、職業介護人3万円(近親者が補完する分を含む。)で計算し、原告X3が稼働年齢を超えた時から平均余命まで職業介護人3万円(前同)の計算によっている。

しかしながら,原告X3は美容師として稼働していたことが認められるが(略)、原告X1の介護のためやむなく休職中であるとしても、現実にこれまで3年半以上にわたり、原告X3が介護に当たっている以上、直ちに、平日において職業介護人の介護が必要となるとは思われない。

将来介護費の算出に当たっては、家族による介護を原則とし、具体的事案に則し、職業介護人による介護を依頼することがやむを得ない時に限り、これを前提とする加算がされるべきものであり、さらに、職業介護人による介護費用に、これを補完する家族による介護の費用を加算するのは相当でない。

これまでの具体的な介護態様によれば、一般には、1日8000円という介護費用が通常の基準として採用されているが、前記認定の原告X1の現状とこれに対する介護の必要性の程度、介護者の負担を考慮し、1日1万2000円を認めるのが相当である。

職業介護人に依頼するか否かは、具体的な状況の変化に応じて決められるべきであり、将来においては、その必要を肯定できるが、この点をも考慮して上記金額を相当と判断した。

(以下略)

この判例では、家族介護が可能であるとして、原告の職業介護人による介護を前提とする介護費用の請求は認めませんでした。

もっとも、具体的事案に則し、職業介護人による介護を依頼することがやむを得ない時に限り、これを前提とする加算がされるべきであるとしました。

具体的には、日額について、家族介護の場合の相場である8000円を上回る1万2000円とすることで、具体的な妥当性を図っているといえます。

介護の場所に関する判例

先ほど、在宅介護につき、家族の負担が大きく増すことや、十分な在宅介護の体制が整っているかについても考慮する必要があるとお伝えしました。

実際、現状では自宅介護に切り替えられず、自宅介護の具体的予定も立たないとして、自宅介護を前提とする介護費用を否定した判例が以下のものです。

2 自宅介護の可能性

(略)

原告X1の現在の症状は(略)何かあれば駆けつけて対応できるように常に誰かが付き添って様子をうかがっていなければならない状態であり、原告X2自身現状で自宅介護に切り替えることは無理であると考えていることを考慮すれば、現時点の原告X1の状態で自宅介護に切り替えることはできない状態であると認められる。

(略)原告X1は(略)主治医であるA医師と自宅介護に切り替える相談をしているものの、具体的な計画はたっていない状態である。

そして、原告X1の病状については、現在までの経過から考えると今後も症状の回復を予測することは困難で,このような状態が今後も長期間続くと推測されている。

すなわち、原告らにとって、原告X1を現在の症状のまま自宅介護に切り替ることはできず、自宅介護に切り替るためには原告X1の症状が相当程度回復することが必要であるが、今後も現在の状態が長期にわたって続くことが予測されるため、自宅介護の具体的な予定が立っていないものである。

ウ このような状態に鑑みれば、将来原告X1の症状が回復し、自宅介護へ切り替ることができるようになる可能性は十分院(ママ)認められるものの、現時点で自宅介護への切り替える具体的な見通しは立っていないと言わざるを得ない。

(略)

(6)将来の看護費用、福祉用具、自宅改造費、将来の通院交通費、将来の通院治療費

これらはいずれも、自宅介護を前提とするものであるところ、前記2のとおり、現時点で自宅介護の見込みは立っておらず、したがって、自宅介護を前提とした介護費用が損害として発生するとの蓋然性も認められないから、これらの費用を被告に対して請求することはできない。

この判例では、被害者の具体的な状態を踏まえたうえで、現状では自宅介護に切り替えられず、自宅介護の具体的予定も立っていないと判断しました。

③介護の期間についての判例

植物状態の場合の介護期間の判例

先ほど、交通事故により植物状態となった被害者の介護期間を短期間に制限すべきかどうかにつき、判例の判断は様々であるとお伝えしました。

この点につき、植物状態でも、当分生命の危険を推認させる事情がないことから、平均余命までの期間の介護費用を認めた判例が以下のものです。

原告X1は、平成17年12月1日に症状固定と診断された。

原告X1は、低酸素性脳症、外傷性てんかん、背部熱傷、鉄欠乏性貧血の傷害を負っており、意識回復の見込みはほとんどなく、意識障害の程度は痛み刺激により四肢を少し動かす程度で、意思疎通は不可能で、植物状態であると診断された(略)

被告らは、原告X1は重傷であり、感染症等を発症する可能性が高く、回復力も劣っていると認められるから、平均余命は15年とみるべきである旨主張する。

そして(略)独立行政法人自動車事故対策センター(現,自動車事故対策機構)が作成した寝たきり者に関するデータ(略)では、3歳の寝たきり者の15年後の死亡率は0.551、平均余命は13.4年と報告されていること並びに原告X1が入院していた三島救急センター及び高槻病院の医師が、同原告については今後感染症ないし合併症による生命の危険がないではない旨述べていることが認められる。

しかしながら(略)原告X1はいわゆる植物状態にあるものの、症状は一応安定しており、当分生命の危険を推認させる事情は認められない。

医師の前記回答書も,現在の原告X1の状態に照らせば、感染症等の可能性がある旨を一般論として述べるに止まっており、同原告について具体的な生命の危険があること、あるいはこれが迫っていることを指摘するものではない。(略)さらに、被告らの指摘する上記統計調査結果は、なるほど相当大規模な統計資料ではあるものの、上記個別事情と対比し、なお原告X1の余命を推定するに足る証拠とは認められない。

(略)したがって,被告らの上記主張は採用できない。

この判例では、被告側は寝たきり状態の平均余命の統計データや医師が感染症の可能性を否定できないとした回答書を証拠に挙げています。

しかし、これらの証拠については、あくまで一般論にとどまり、それよりも具体的な被害者の状態を優先すべきであると、この判例は判断しています。

この判例からは、植物状態の場合の介護期間については、あくまで具体的な被害者の状態から検討すべきであることを学び取ることができます。

被害者死亡以降の介護費用の判例

先ほど、死亡の原因が交通事故によるものかどうかを問わず、死亡以降の介護費用は発生しないことをお伝えしました。

この点についての判断を下した最高裁判例が以下のものになります。

死亡後の介護費用を損害と認めた部分は是認することができない。その理由は、次のとおりである。

(略)介護費用の賠償については、逸失利益の賠償とはおのずから別個の考慮を必要とする。すなわち、

(一) 介護費用の賠償は、被害者において現実に支出すべき費用を補てんするものであり、判決において将来の介護費用の支払を命ずるのは、引き続き被害者の介護を必要とする蓋然性が認められるからにほかならない。

ところが、被害者が死亡すれば、その時点以降の介護は不要となるのであるから、もはや介護費用の賠償を命ずべき理由はなく、その費用をなお加害者に負担させることは、被害者ないしその遺族に根拠のない利得を与える結果となり、かえって衡平の理念に反することになる。

(二) 交通事故による損害賠償請求訴訟において一時金賠償方式を採る場合には、損害は交通事故の時に一定の内容のものとして発生したと観念され、交通事故後に生じた事由によって損害の内容に消長を来さないものとされるのであるが、右のように衡平性の裏付けが欠ける場合にまで、このような法的な擬制を及ぼすことは相当ではない。

(三) 被害者死亡後の介護費用が損害に当たらないとすると、被害者が事実審の口頭弁論終結前に死亡した場合とその後に死亡した場合とで賠償すべき損害額が異なることがあり得るが、このことは被害者死亡後の介護費用を損害として認める理由になるものではない。

以上によれば、交通事故の被害者が事故後に別の原因により死亡した場合には、死亡後に要したであろう介護費用を右交通事故による損害として請求することはできないと解するのが相当である。

この結論の理由として、判例は、先ほど専門家からの解説にも合ったとおり、逸失利益との損害の種類の違いを挙げています。

介護費用と逸失利益は将来発生する損害という点では共通しています。

しかし、介護費用は積極損害、逸失利益は消極損害とあくまで異なる損害の種類となるため、その扱いも異なることになります。

回答者:アトム法律事務所の岡野弁護士

このように、介護費用の問題点に関する判例を知ることは、ご自身が受け取れる介護費用の見通しを立てる上で重要といえます。

しかし、一般の方ですと、介護費用に関する判例の検索や分析を行うのはなかなか難しいところもあると思います。

この点、専門家である弁護士に依頼すれば、介護費用の迅速・適切な検索・分析が行われる可能性が高いため、依頼のご検討をおすすめします。

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最後に一言アドバイス

それでは、最後になりますが、交通事故でお悩みの方に一言アドバイスをお願いします。

回答者:アトム法律事務所の岡野弁護士

交通事故の損害賠償請求において、介護費用は非常に大きな割合を占めることになる項目になります。

そのため、加害者側も介護の必要性や日額・期間などについて大きく争い、介護費用の総額を減らそうとしてくることが予想されます。

介護費用につき、適切な主張立証を行い、適正な損害賠償を受けられるようにすべく、お悩みやお困りのことがあれば弁護士に相談してみましょう。

まとめ

いかがだったでしょうか。

このページを最後までお読みの方は、

交通事故において認められる介護費用の金額や計算方法

介護費用の損害賠償を請求する際の問題点

交通事故の介護費用の問題点についての判例

について理解を深めていただけたのではないかと思います。

これを読んで弁護士に相談した方が良いと思った方も多いハズです。

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また、このホームページでは、交通事故に関する関連記事も多数掲載していますので、ぜひ参考にしてください!

皆さまのお悩みが早く解決するよう、お祈りしています。

この記事の監修弁護士

岡野武志弁護士

(アトム法律事務所弁護士法人)

第二東京弁護士会所属弁護士。大阪府生。高校卒業後渡米。ニューヨークから帰国後、司法試験に合格し、アトム東京法律事務所を設立。誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応するために、全国体制の弁護士法人を構築。年中無休24時間体制で活動を続けている。

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