大学院生の交通事故の慰謝料相場ランク、判例から厳選した5選
このページをご覧になっているということは、大学院生の方が交通事故に遭われたということでしょうか…
大学院生であるならば、研究や将来設計、恋愛など希望に満ち溢れた毎日を送っていたことと思います。
そんなときに交通事故に遭ってしまったら、長期間にわたる治療によって研究や就職に遅れをとってしまい将来に影響が出るのではないかと心配になるでしょう。
今後のことを考えると、示談金や慰謝料は一体どのくらい支払われるのか気になりますよね。
このページでは、大学院生の交通事故でお困りの方のお役に立てるようにと、大学院生の交通事故の慰謝料相場を判例をもとにまとめてみました。
法律的な部分の解説は、テレビや雑誌でもおなじみの岡野武志弁護士にお願いしています。
よろしくお願いします。
これまで事務所で取り扱った実例と、裁判所が判断した判例にもとづいて、しっかりと解説していきたいと思います。
大学院生の交通事故の慰謝料相場を判例をもとにまとめました!
それでは、慰謝料の相場をみてみましょう。
そもそも交通事故の慰謝料はどうやって決まるの?
交通事故にあった場合、慰謝料がもらえるというのは、ある程度一般的な知識だと思います。
でもちょっと待ってください。
そもそも、交通事故の慰謝料って誰がどのようにして決めているのでしょうか?
大学院生の交通事故の慰謝料の決まり方なんて、あまり知られていませんよね。
慰謝料の金額がどうやって決まるか、専門家の先生に聞いてみましょう。
慰謝料の決まり方には、3つの種類があります。
①自賠責基準、②任意保険基準、③弁護士基準と呼ばれるものです。
慰謝料の計算方法を自賠責保険の基準に拠るのか、任意保険の基準に拠るのか、弁護士(裁判所)の基準に拠るのかによって①②③の違いが生じます。
慰謝料の計算の基礎になるのは、けがや後遺障害の程度といった事実関係です。
慰謝料の計算の仕方にもいろいろとあるのですね。
大学院生の場合は、失った学生生活や就職などの将来のこともしっかり考慮されるのでしょうか…
交通事故の被害者としては、被害者にとって一番有利な基準を採用して欲しいものです。
簡単に慰謝料の計算をしてみたい方は、以下の「交通事故慰謝料の相場計算機」を試してみてください^^
この相場計算機は、③の弁護士基準を採用するものなので、保険会社が提示する慰謝料よりも大きな金額になる可能性が大きいです!
任意保険基準と慰謝料相場の関係は?
慰謝料の決まり方には3つの種類があるということが分かりました。
ここで興味があるのは、私たち事故の被害者にとって一番有利な基準はどれなのか?ということですよね。
特に、大学院生の交通事故の場合は、将来への影響がとても大きいので重要です!
被害者にとって一番有利な慰謝料の基準を教えてください。
裁判所でも採用される弁護士基準が被害者の方にとって一番有利です。
③の弁護士基準は、民事裁判になった時も採用される、一番公平で、かつ公正な基準です。
これに対して、②の任意保険基準は、保険会社が業界で勝手に採用する基準です。
任意保険基準は、支払われる慰謝料などが低くなる点で、被害者にとって不利です。
慰謝料や示談金の増額が可能なのは、弁護士が示談交渉をすることで、②の任意保険基準から③の弁護士基準に慰謝料の計算方法を変えることが可能だからです。
裁判所も採用する弁護士基準が、私たち事故の被害者にとっては一番有利ということなんですね。
弁護士基準だと、民事裁判になったときも採用されるということで、安心ですよね。
慰謝料の計算基準についてより詳しく知りたい方のために、以下に関連ページをまとめておきました。
それでは、本題です。
大学院生の交通事故の慰謝料相場を判例にもとづいてみていきましょう。
大学院生の慰謝料の計算で、ポイントとなるのはどのような点でしょうか?
大学院生といっても、その専門分野によって活動内容は様々ですね。
理系の研究科で、研究室に入って実験を行っている大学院生もいれば、私達のような法律家になるためにロースクールに入って勉強をしている大学院生もいます。
交通事故においてポイントになるのは、慰謝料と逸失利益でしょう。
学業や研究活動に遅れが生じた場合に慰謝料をどのように考えるのか。
後遺症が残ったときの逸失利益を計算する上で、大学院生の将来の年収をどのように考えるのか。
この辺りを具体的な判例にもとづいてみていきましょう。
判例から厳選した大学院生の交通事故の慰謝料ランク5選
①大学院生(男・症状固定時27歳)損害額3億3398万0289円の判例
まず、東京地方裁判所の判決、平成13年(ワ)第17934号事件をご紹介します。
大学院生の男性が急性硬膜下血腫などのけがを負った事故です。
属性 | 大学院博士課程 |
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性別 | 男 |
年齢 | 症状固定時27歳 |
事故の内容 | 高速道路において、加害者がスピードの出し過ぎによるハンドル操作ミスにより、車両を転覆回転させ、車両の助手席に同乗していた被害者が負傷した。 |
傷害の内容 | 急性硬膜下血腫、脳挫傷、肋骨骨折、外傷性くも膜下出血、肺挫傷、両側前腕開放骨折 |
後遺障害等級 | 併合1級(頭部外傷に伴う歩行障害、記憶障害、認知障害、外傷性てんかん、失調性、構音障害、嗅覚障害等神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、常時介護を要するものとして1級3号、半盲症について9級3号) |
入院 | 545日 |
損害総額 | 3億3398万0289円 |
---|---|
うち慰謝料 | 4400万円 |
うち将来介護費 | 1億0765万3173円 |
うち逸失利益 | 1億5074万9519円 |
ざっくりまとめると…
被害者の損害額は総額3億3398万0289円になりました。
- 慰謝料としては、入院・通院に対する慰謝料が600万円、後遺障害の慰謝料が3000万円、両親の慰謝料が各400万円認められました。
- 将来介護費としては、被害者の母親による介護が可能な期間、家族介護と職業介護を併用する期間、職業介護のみの期間でそれぞれ算定し、1億0765万3173円が認められました。
- 逸失利益としては、被害者は卒業後Y製薬会社で勤務予定であったため、基礎収入を60歳までY製薬勤務を前提に算定し、28歳からY製薬において就労を開始し、60歳までの32年間就労可能であったと認められ、労働能力喪失率は100%として計算され、1億5074万9519円が認められました。
弁護士先生、こちらの大学院生の男性は、卒業後に製薬会社で働くことが決まっていたようですが、この判例のポイントはどのような点になりますか?
本件では、大学院博士課程の被害者が、製薬会社への内定が決まっていたものの、事故による後遺症の影響で幼児の人格に変わってしまいました。
裁判所は、慰謝料の算定にあたって事故前の輝かしい生活と洋々たる前途を一瞬にして奪われたことなどを考慮しました。
本人の慰謝料を総額で3000万円、両親の慰謝料をそれぞれ400万円認め、合計3800万円の慰謝料を認定しました。
逸失利益の計算においては、被害者が製薬会社の次長にまで昇進するという前提で、大卒の男性労働者の平均年収の1.4倍にあたる944万円という高額な年収を認定しました。
②大学院生(男・症状固定時30歳)損害額1億0908万3361円の判例
次に、名古屋地方裁判所の判決、平成13年(ワ)第2140号事件をご紹介します。
大学院生の男性が右大腿骨骨幹部骨折などのけがを負った事故です。
属性 | 大学院修士課程 |
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性別 | 男 |
年齢 | 症状固定時30歳 |
事故の内容 | 片側1車線の追越禁止規制のあるカーブした道路で、駐車車両を避け中央線をはみ出し進行してきた加害車(普通自動車)と反対方向から制限速度を超えて進行してきた被害車(自動二輪車)が衝突した。 |
傷害の内容 | 右大腿骨骨幹部骨折、右踵部挫滅創など |
入院 | 946日 |
損害総額 | 1億0908万3361円 |
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うち慰謝料 | 1500万円 |
うち休業損害 | 955万0322円 |
うち逸失利益 | 7140万9759円 |
ざっくりまとめると…
被害者の損害額は総額1億0908万3361円になりました。
- 慰謝料としては、入院に対する慰謝料が350万円、後遺障害の慰謝料が1150万円認められました。
- 休業損害としては、955万0322円が認められました。
- 逸失利益としては、被害者は下肢に後遺障害が残ったが、内定している会社での労働は頭脳労働であるとして、労働能力喪失割合は、障害等級7級相当の喪失割合(56%)と8級相当の喪失割合(45%)のおよそ中間値である50%とし、就職予定の会社の平均収入を考慮して、7140万9759円が認められました。
弁護士先生、こちらの男性は事故により足や股関節に大怪我を負われていますが、この判例のポイントはどのような点になりますか?
本件では、大学院修士過程に在学中の被害者が、大手IT企業への内定が決まっていたケースです。
裁判所は、逸失利益の計算にあたって、当該企業の修士課程卒業社員の平均年収である868万円を基礎にしました。
なお、本件の被害者は7級相当の股関節や膝の機能障害が残っていました。
通常、7級の労働能力喪失率は56%ですが、SEとしての業務内容が肉体労働ではなく頭脳労働であることを考慮して、今回のケースでは50%と認定されました。
③大学院生(男・23歳)損害額8322万9275円の判例
3つ目に、大阪地方裁判所の判決、平成14年(ワ)第6034号事件をご紹介します。
大学院生の男性が、四肢多発性骨折等のけがを負い、これらのけがに基づく肺塞栓症により17日後亡くなった事故です。
属性 | 大学院生 |
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性別 | 男 |
年齢 | 23歳 |
事故の内容 | 加害車が交差点において信号待ちのため停止していたが、未だ対面信号が赤色であるにもかかわらず、西から東に向けて交差点に進入したため、南から北に向けて交差点に進入してきた被害車と衝突した。 |
傷害の内容 | 四肢多発性骨折など |
入院 | 18日 |
損害総額 | 8322万9275円 |
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うち慰謝料 | 2520万円 |
うち葬儀関係費 | 136万5930円 |
うち逸失利益 | 5608万5115円 |
ざっくりまとめると…
被害者の損害額は総額8322万9275円になりました。
- 慰謝料としては、傷害慰謝料が20万円、亡くなったことに対する慰謝料が2000万円、両親固有の慰謝料が各200万円、兄固有の慰謝料が100万円認められました。
- 葬儀関係費としては、遺体搬送費が16万5930円、葬儀関係費が120万円となりました。
- 逸失利益は、男子の大卒全年齢平均賃金671万2600円を基礎収入とし、大学院卒業の24歳から67歳まで43年間就労可能とし、生活費控除率は50%として算定し、5608万5115円が認められました。
弁護士先生、こちらの大学院生は加害者の信号無視による事故で、17日後に亡くなっています。
この判例のポイントはどのような点になりますか?
加害者による信号無視の点は、明確には慰謝料の増額事由として言及はされていません。
本件で特徴的なのは、被害者の兄の固有の慰謝料として100万円が認定されたことです。
兄は、家庭の資力にゆとりがなかつたため、自らは大学院進学を断念して就職し、大学院へ行く夢を弟に託して、弟の将来に期待していたことが判断のポイントになったと考えられます。
④大学院生(男・29歳)損害額2949万3613円の判例
4つ目に、東京地方裁判所の判決、平成17年(ワ)第24355号事件をご紹介します。
大学院生の男性が左鎖骨骨折などのけがを負った事故です。
属性 | 大学院生 |
---|---|
性別 | 男 |
年齢 | 29歳 |
事故の内容 | 加害者が普通乗用車を時速100kmで走行し被害者オートバイを追い越そうとした際、追突し、被害者は加害車のフロントガラスに頭から衝突し、ボンネット上から路上に落下したうえ、加害車に約40m引きずられた。 |
傷害の内容 | 左鎖骨骨折、脳震盪、頭部打撲、全身打撲、両手足擦過傷、両膝挫傷、鞭打ち損傷 |
後遺障害等級 | 12級12号 |
入院 | 2日 |
損害総額 | 2949万3613円 |
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うち慰謝料 | 490万円 |
うち休業損害 | 440万7200円 |
うち逸失利益 | 1562万4542円 |
ざっくりまとめると…
被害者の損害額は総額2949万3613円になりました。
- 慰謝料としては、傷害慰謝料が200万円、後遺障害の慰謝料が290万円認められました。
- 休業損害としては、被害者は事故により1年卒業が遅れたため、休業損害も1年間として、基礎収入は男子大卒25歳~29歳の平均年収440万7200円とされました。
- 逸失利益は、基礎収入は男子の大卒全年齢平均賃金674万4700円とし、後遺障害等級は12級12号であるが、客観的所見や症状に照らすと容易に回復するとは言いがたいとして67歳までの36年間を労働能力喪失期間を認め、労働能力喪失率は14%として算定し、1562万4542円が認められました。
弁護士先生、こちらの大学院生は加害車に約40mもひきずられ、12級の後遺障害が残ってしまったようです。
この判例のポイントはどのような点になりますか?
そのような事故態様で大きなケガを負った影響で、翌年には大学院博士後期課程を修了し、稼働していたはずが、博士課程論文作成が遅れ、修了できませんでした。
そのため、留年が必要になる1年間の休業損害が認められました。
しかし、被害者が理学修士、工学博士号を取得し、学会で発表するなどの業績を残していた点は休業損害においてはほとんど考慮されませんでした。
大学院生といえども、具体的に企業への内定が決まっているなどの事情がなければ、高額な基礎収入を認定してもらうことは難しいようですね。
⑤大学院生(男・症状固定時28歳)損害額2610万3796円の判例
最後に、大阪地方裁判所の第15民事部の判決、平成20年(ワ)第5237号事件をご紹介します。
大学院生の男性が右足関節開放性脱臼骨折のけがを負った事故です。
属性 | 大学院生 |
---|---|
性別 | 男 |
年齢 | 症状固定時28歳 |
事故の内容 | 被害者運転の普通自動二輪車が交差点を直進しようとしたところ、同方向に進行していた加害者運転の普通貨物車が交差点を左折してきたため衝突した。 |
傷害の内容 | 右足関節開放性脱臼骨折 |
後遺障害等級 | 10級11号 |
入院 | 82日 |
損害総額 | 2610万3796円 |
---|---|
うち慰謝料 | 890万円 |
うち休業損害 | 7万5600円 |
うち逸失利益 | 1318万9536円 |
ざっくりまとめると…
被害者の損害額は総額2610万3796円になりました。
- 慰謝料としては、入院・通院に対する慰謝料が290万円、後遺障害の慰謝料が600万円認められました。
- 休業損害としては、家庭教師のアルバイト代7万5600円が認められました。
- 逸失利益は、男子の労働者企業規模1000人以上大学・大学院卒の平均賃金775万0800円を基礎収入とし、労働能力の10%を喪失したものと認められ、67歳までの39年を労働能力喪失期間として算定し、1318万9536円が認められました。
弁護士先生、こちらの男性は事故により足に大怪我を負い、10級の後遺障害が認められました。
この判例のポイントはどのような点になりますか?
本件の被害者は、大学院生のときの事故で右足の関節が曲がりにくくなる後遺症を負いました。
被害者は、事故後に上場企業に入社したため、基礎収入は775万円と認定されました。
しかし、右足の障害が昇進や昇給に与える影響が明確には把握できないこと、上場企業であるから転職の可能性が低いことなどを理由に、労働能力喪失率は10%にとどまると判断されました。
10級の労働能力喪失率は、標準で27%であるため、10%という認定は被害者にとって非常に厳しい判断といえます。
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