23歳大学院生の交通事故慰謝料|8322万円の判例を弁護士が解説
このページでは、男子大学院生の事故の判例についてご紹介します。
交通事故によって大切なご家族や身近な方を亡くすことは、非常に受け入れがたいことです。
遺族の方々にとっては、納得のいく慰謝料が支払われるのか不安になりますよね。
こちらの判例では、慰謝料やその他の損害についてどのような点が考慮されたのか、弁護士の先生の解説とともにご説明いたします。
法律的な部分の解説は、テレビや雑誌でもおなじみの岡野武志弁護士にお願いしています。
よろしくお願いします。
これまで事務所で取り扱った実例と、裁判所が判断した判例にもとづいて、しっかりと解説していきたいと思います。
目次
それではまず、交通事故の内容から見ていきましょう。
大学院生(男・23歳)損害額8322万9275円の判例
こちらは、大阪地方裁判所の判決、平成14年(ワ)第6034号事件です。
主な怪我の内容は四肢多発性骨折となっており、これらの怪我に基づく肺塞栓症により亡くなった事故となります。
交通事故の基本情報
事故の内容は「信号待ちをしていた加害車が、交差点で未だ対面信号が赤色であるにもかかわらず交差点に進入したため、被害車と衝突した。」というものです。
交通事故の基本情報は?
属性 | 大学院生 |
---|---|
性別 | 男 |
年齢 | 23歳 |
事故の内容 | 加害車が交差点において信号待ちのため停止していたが、未だ対面信号が赤色であるにもかかわらず、西から東に向けて交差点に進入したため、南から北に向けて交差点に進入してきた被害車と衝突した。 |
傷害の内容 | 四肢多発性骨折など |
入院 | 18日 |
被害者は、事故から17日後に亡くなってしまったようです。
判例で認められた賠償金・慰謝料
それでは、認められた損害額を見てみましょう。
判例で認められた賠償金・慰謝料は?
損害総額 | 8322万9275円 |
---|---|
うち慰謝料 | 2520万円 |
うち葬儀関係費 | 136万5930円 |
うち逸失利益 | 5608万5115円 |
損害総額は8322万9275円でした。
ざっくりまとめると…
被害者の損害額は総額8322万9275円になりました。
- 慰謝料としては、傷害慰謝料が20万円、亡くなったことに対する慰謝料が2000万円、両親固有の慰謝料が各200万円、兄固有の慰謝料が100万円認められました。
- 葬儀関係費としては、遺体搬送費が16万5930円、葬儀関係費が120万円となりました。
- 逸失利益は、男子の大卒全年齢平均賃金671万2600円を基礎収入とし、大学院卒業の24歳から67歳まで43年間就労可能とし、生活費控除率は50%として算定し、5608万5115円が認められました。
弁護士による解説
弁護士先生、こちらの大学院生は加害者の信号無視による事故のようですが、この判例のポイントはどのような点になりますか?
加害者による信号無視の点は、明確には慰謝料の増額事由として言及はされていません。
本件で特徴的なのは、被害者の兄の固有の慰謝料として100万円が認定されたことです。
兄は、家庭の資力にゆとりがなかつたため、自らは大学院進学を断念して就職し、大学院へ行く夢を弟に託して、弟の将来に期待していたことが判断のポイントになったと考えられます。
交通事故の慰謝料の計算方法をおさらい
はじめての慰謝料計算
交通事故の慰謝料の計算方法、よく分からないですよね。
ポイントを整理すると、
- 保険会社が提示する慰謝料と、弁護士や裁判所が認定する慰謝料は、大きく異なる。
- 法律的に正しい慰謝料は、弁護士や裁判所が認定する慰謝料の方。
- 正しい慰謝料を請求するためには、法的な手続きを利用する必要がある。
の三点が重要です。
慰謝料の計算方法については、このページがよくまとまっています。
記事の構成は、
- 弁護士介入後に慰謝料が増額する理由
- 交通事故被害者の慰謝料はどのようにして決まるの?
- 慰謝料よりも高額な「逸失利益」とはどういうもの?
となっています^^
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- 保険会社と話し合う前に、自分の慰謝料の概算を知りたい
- 保険会社から提示されている金額が、法律的に正しいかどうか知りたい
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といった人たちです。
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保険会社から低い金額を提示されている場合は、素人の知識不足に漬け込んで騙されている可能性があります。
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代表岡野武志(第二東京弁護士会)
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大学院生の慰謝料計算の特徴は?
大学院生の慰謝料を計算するにあたって、ポイントとなる点はありますか?
大学院生といっても、その専門分野によって活動内容や将来的に就く職業はさまざまです。
ポイントとしては、活動内容や将来就職する可能性が高い分野等を具体的に主張していくことです。
事故の影響で論文が作成できず、留年してしまったり、研究活動に支障が出ていることが証明できれば、賠償額が増額できる余地があります。
また、上に書かれている判例のように、内定が決まっていたり、就職する可能性が高い分野を証明できれば、内定先の会社や就職する可能性が高い分野の収入が、将来の収入源をカバーする逸失利益の計算の基礎となり、賠償額が増額する余地があります。
ただし、今申し上げたポイントは一般的・総論的なお話であり、上に挙げられている判例のように、事故に遭われた方のご事情はさまざまですので、まずは一度弁護士等の専門家に相談してみることをおすすめします。