障害年金ってなに?交通事故における後遺障害と年金の関係とは?
交通事故に遭い後遺障害が残ってしまったら、被害者の方はその後遺障害と一生付き合っていかなくてはなりません。
特に重い後遺障害が残ってしまった場合、生活も大きく一変してしまいます。
保険会社以外から何か補償はしてもらえるのか、気になるところですよね。
- 障害年金というものがあるみたいだけど、どういうものなの?
- 障害年金は後遺障害が残った人なら誰でも対象になるの?
- どのようにして障害年金の申請をすればいいの?
- 後遺障害が重く、家族の介護にも限界がある…国から何か支援制度はないの?
など、後遺障害が残ってしまった人に向けて、障害年金についてのさまざまな疑問について解説していきたいと思います。
なお、法律的な部分や実務的な部分については、テレビや雑誌でお馴染みの岡野弁護士に解説をお願いしています。
弁護士の岡野です。よろしくお願いします。
交通事故などによって重篤な後遺障害が残ってしまうと、被害者やご家族への負担は非常に大きなものとなってしまいます。
後遺障害が残ってしまった際に利用できる制度はあるものの、認知度が低いというのが現状です。
ここでは、障害年金とは一体どういう制度でどのようにして申請するのか等について、しっかりと解説していきたいと思います。
目次
「年金」という言葉は、よく耳にする言葉ですが障害年金はあまり馴染みのない言葉ですよね。
知っている方はいるのか、インターネット上で探してみました!
これね、気をつけろっていうか事故とかで後遺障害とか残って申請すると障害年金がおりるわけだけど未納だとおりないから年金ははらっといたほうがいいよ。人生なにがあるかわからん。
— ま や ん (@mmmayang) October 27, 2011
障害年金未受給の障害約300人を対象とした調査によれば受給していない理由について 制度を知らなかった ・・・ 19% 該当しないと思った ・・・ 13% #障害年金
— 野村俊一 (@mansaqu) January 15, 2015
ご存知の方もいらっしゃるようですが、やはり認知度は低いようですね。
それでは、早速障害年金について見ていきましょう!
障害年金とはどんなもの?
「年金」と聞くと、65歳以上になった際に支払われるものとイメージする方が多いのではないでしょうか?
障害年金は、年金加入者で重篤な後遺障害が残っている方に対して支払われる年金のことをいいます。
保険会社から支払われる賠償金とは異なり、障害年金は定期的に支払われます。
あまり馴染みのない障害年金ですが、知っておくべき制度の1つといえます。
ただし、後遺障害が残っていれば誰でも支給対象になるわけではありません。
それでは、受給するための要件について見ていきましょう。
障害年金の対象となる要件とは?
要件①
初診日(初めて医師の診察を受けた日 ) に、国民年金・厚生年金に加入していること。
要件②
初診日から1年6ヶ月が経過していること。
要件③
一定以上保険料をおさめていること。
要件④
重い後遺障害が残っているということ。
障害年金を受給するには、これら4つの要件を満たしていなければならないようです。
初診日から1年6ヶ月を経過した日までに、これらの障害が認められた日を障害認定日といいます。
なお、要件③について、以下のケースに該当する場合は1年6ヶ月経過していなくても請求手続きを進められるようです。
- 人工透析療法を行っている場合は、透析を初めて受けた日から起算して3ヶ月を経過した日
- 人工骨頭又は人工関節をそう入置換した場合は、そう入置換した日
- 心臓ペースメーカー、植え込み型除細動器(ICD)又は人工弁を装着した場合は、装着した日
- 人工肛門の造設、尿路変更術を施術した場合は、造設又は手術を施した日から起算して6ヶ月を経過した日
- 新膀胱を造設した場合は、造設した日
- 切断又は離断による肢体の障害は、原則として切断又は離断した日
- 喉頭全摘出の場合は、全摘出した日
- 在宅酸素療法を行っている場合は、在宅酸素療法を開始した日
それでは次に、要件④の重い後遺障害とは一体どの程度の障害のことをいうのか見ていきましょう。
障害年金の対象となる後遺障害とは?
障害年金の対象となるには、厚生年金の場合は、1級、2級、3級の後遺障害、国民年金の場合は、1級、2級の後遺障害が残っていることが要件となります。
それでは、1~3級の障害等級はどのくらいの程度なのか見ていきましょう。
1級にあてはまる後遺障害
身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とし、介助を受けなければ日常生活が不可能である程度の症状のもの。
たとえば、身のまわりのことはかろうじて出来るが、それ以上の活動はできない、または行ってはいけない程度のことです。
●1級にあてはまる後遺障害の一部例
- 両上肢の機能に著しい障害を有するもの
- 両下肢の機能に著しい障害を有するもの
- 両眼の視力の和が0.04以下のもの(原則として矯正視力)
- 両耳の聴力レベルが100デシベル以上のもの
2級にあてはまる後遺障害
身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が、 日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度の症状のもの。
●2級にあてはまる後遺障害の一部例
- 1上肢の機能に著しい障害を有するもの
- 1下肢の機能に著しい障害を有するもの
- 両眼の視力の和が0.05以上0.08以下のもの(原則として矯正視力)
- 両耳の聴力レベルが90デシベル以上のもの
3級にあてはまる後遺障害
労働が著しい制限を受けるか又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの。
または、
ケガが治っていない場合は労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度の症状もの。
●3級にあてはまる後遺障害の一部例
両眼の視力が0.1以下のもの(原則として矯正視力)
事後重症による請求
厚生年金の場合、障害認定日に障害等級1~3級の状態に該当しなかった場合でも、その後症状が悪化し1級~3級の障害状態になった際には請求により障害年金が受けることができます。
ただし、それには一定の資格期間が必要であり、また、65歳の誕生日の前々日までに請求書を提出する必要があるようです。
障害手当金というものもある!
1~3級の後遺障害に該当しない障害が残った場合、一時金として障害手当金を受給できることもあるようです。
ただし、この障害手当金は厚生年金にしかありません。
また、受給するための要件として、以下の3つとなっているようです。
- 要件①初診日に厚生年金に加入していること。
- 要件②一定以上保険料をおさめていること。
- 要件③初診日から5年を経過するまでに症状固定に至り、一定の障害が残っていること。
それでは一定の障害とはどの程度のことをいうのか以下の表を見ていきましょう。
部位 | 障害の状態 |
---|---|
眼 | 両眼の視力が0.6以下に減じたもの |
1眼の視力が0.1以下に減じたもの | |
両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの | |
両眼による視野が2分の1以上欠損したもの又は両眼の視野が10度以内のもの | |
両眼の調節機能及び輻輳(ふくそう)機能に著しい障害を残すもの | |
耳 | 1耳の聴力が、耳殻に接しなければ大声による話を解することができない程度に減じたもの |
そしゃく・ 言語 |
そしゃく又は言語の機能に障害を残すもの |
鼻 | 鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの |
脊柱 | 脊柱の機能に障害を残すもの |
骨 | 長管状骨に著しい転位変形を残すもの |
上肢 | 1上肢の3大関節のうち、1関節に著しい機能障害を残すもの |
1上肢の2指以上を失ったもの | |
1上肢のひとさし指を失ったもの | |
1上肢の3指以上の用を廃したもの | |
ひとさし指を併せ1上肢の2指の用を廃したもの | |
1上肢のおや指の用を廃したもの | |
下肢 | 1下肢の3大関節のうち、1関節に著しい機能障害を残すもの |
1下肢が3センチメートル以上短縮したもの | |
1下肢の第1趾又は他の4趾以上を失ったもの | |
1下肢の5趾の用を廃したもの | |
精神・神経 | 精神又は神経系統に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの |
– | 前各号に掲げるもののほか、身体の機能に、労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの |
障害年金の認知度は低い
障害年金についてはお分かりいただけましたでしょうか?
要件をクリアすると、障害年金として保険会社から支払われる損害賠償金とは別に受給することが可能となるようです。
重い後遺障害が残ってしまうことは、経済的にも大きな負担となります。
このような制度があることを認知しておくことも必要といえます。
障害年金は、請求しなければ受給することができません。
しかし、「障害年金」という制度を知らない方は多くいらっしゃいます。
年金を支払っており、要件を満たしていれば受給することができるので、後遺障害が残ってしまった方は積極的に請求することをおすすめします。
障害年金の請求方法とは?
それでは、次に障害年金の請求方法について見ていきましょう。
障害年金請求の流れ
請求に必ず必要なもの
まず、障害年金を請求するには、必要書類を提出しなければなりません。
請求において、国民年金・厚生年金に関わらず以下のものが必要になります。
- ① 年金手帳
- ② 戸籍謄本、戸籍抄本、戸籍の記載事項証明、住民票、住民票の記載事項証明書のいずれか
生年月日について明らかにすることができるものが必要であり、受給権発生日以降で提出日から6ヶ月以内に交付されたものでなければならないようです。
③ 医師の診断書(所定の様式あり)
障害認定日より3ヶ月以内の現症のものでなければならないようです。
また、障害認定日と年金請求日が1年以上離れている場合は、直近の診断書(年金請求日前3ヵ月以内の現症のもの)も併せて必要となります。
- ④ 受診状況等証明書
- ⑤ 病歴・就労状況等申立書
⑥受取先金融機関の通帳等(本人名義)
⑦印鑑(認印可)
必要書類一式がそろったら、年金事務所等の窓口にも備え付けてある年金請求書とともにお近くの年金事務所に提出します。
書類に不備があった場合、受付されないケースがあるようです。
記入漏れ・期限切れ・添付資料の不足等がないか十分に確認するようにしましょう。
書類提出後の流れ
書類提出後、障害基礎年金なら3ヶ月、障害厚生年金なら3ヶ月半ほどで審査結果が届くようです。
受給が決まった場合は、
- 年金証書
- 年金決定通知書
が郵送され、その約1~2ヶ月後に初回の年金が振込まれるようになります。
その後からは、偶数月に2か月分が振込まれます。
なお、障害年金の受給が認められない場合は不支給決定通知書が送付されます。
障害年金はいつ受け取れるの?
基本的には、障害認定日の翌月から障害年金を受け取ることができるようです。
ただし、資料を集めたり、医師の診断書の作成期間等を考慮すると、すぐに請求できるわけではないようです。
また、請求から審査結果が出るまで早くても3ヶ月程度かかることも念頭に置いておいたほうが良さそうです。
障害年金請求のポイント
障害年金の請求をスムーズに行うためにも、
- すべての要件を満たしているか?
- 事前にどのような種類の書類が必要なのか?
という点についてしっかり把握しておくことが重要といえます。
障害年金はさかのぼって請求することができます。
ただし、時効による消滅のため、さかのぼることができる年金の金額は5年分が限度となっています。
また、「年金決定通知書」に記載の等級や障害年金額等について不服がある場合は、不服の申立をすることができます。
以下のページにおいても、障害年金についてより詳しく解説しているので、ぜひご参照下さい。
国民年金の請求についてのリンクはこちら
厚生年金の請求についてのリンクはこちら
まとめ
障害年金の請求方法
必要なもの | ①年金手帳 ②戸籍謄本や住民票など生年月日がわかる公的な書類 ③医師の診断書 ④受診状況等証明書 ⑤病歴・就労状況等申立書 ⑥受取先金融機関の通帳等(本人名義) ⑦印鑑(認印可) ⑧年金請求書 |
---|---|
提出先 | 年金事務所 |
審査期間 | 最低3ヶ月程度 |
振込 | 初回以降偶数月に2か月分振込 |
後遺障害が残った際に国から受けられる支援制度とは?
交通事故などで後遺障害が残ってしまった場合、経済面以外にも身体的にも非常に大きな負担がかかってしまいます。
国土交通省のHPでは、交通事故により後遺障害が残ってしまった方に向けて、さまざまな支援制度を案内しているページがあるようです。
今回はこの中の障害福祉サービスについてご紹介します。
障害福祉サービス
障害福祉サービスは各地方公共団体によるものであり、障害のある方々が自立した生活を送れるよう支援することを目的としています。
この障害福祉サービスには、自立支援給付と地域生活支援事業の2つがあります。
自立支援給付の主なサービス
自立支援給付には主に以下のようなサービスがあります。
- 介護給付(ホームヘルプ、重度訪問介護など)
- 訓練等給付(自立訓練、グループホームなど)
- 相談支援給付
- 自立支援医療
- 補装用具の給付
地域生活支援事業の主なサービス
地域生活支援事業には主に以下のようなサービスがあります。
- 障害者の方やその家族等からの相談に対応している相談支援
- 地域活動支援センター
- 福祉ホーム
重い後遺障害が残ってしまった場合、被害者の方やご家族にしか分からない辛いことやお悩み等もあるかと思います。
そのようなときは、相談支援などを積極的に活用するといいかもしれません。
お近くの役所に問い合わせてみよう!
障害福祉サービスをご検討をされている場合は、一度お住まいの市区町村の障害福祉担当部署に詳細をお問い合わせしてみるとよいでしょう。
また、上記でご紹介したサービスの対象者や利用方法、料金などについては以下のパンフレットに詳しく記載されているようです。
まとめ
種類 | 支援内容 | 主体 |
---|---|---|
経済的支援 | ・障害年金 ・障害手当金 |
日本年金機構 |
福祉的支援 | ・自立支援給付 ・地域生活支援事業 |
地方公共団体 |
後遺障害が認定されたらスグに弁護士に相談!
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ここまで、障害年金や福祉サービスのご紹介をしてまいりました。
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最後に一言アドバイス
では、岡野先生、最後にまとめの一言をお願いします。
重い後遺障害が残り働けなくなってしまってしまった場合、将来への不安は非常に大きいものです。
障害年金をはじめ、事故被害者やそのご家族のための支援は実は多くあるのです。
少しでも負担を減らすためにも、色々な機関のさまざまなサービスを受けたほうがいいでしょう。
しかし、どのような支援があるのか分からない方もいらっしゃるかと思います。
そのような場合は、後遺障害等についても詳しい弁護士に相談してみましょう。
まとめ
この記事の監修弁護士
岡野武志弁護士
アトム法律事務所弁護士法人
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-11-28 合人社東京永田町ビル9階
第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。