巻き込み事故|過失割合はバイクと自転車で違いはある?慰謝料相場は?

  • 巻き込み事故

この記事のポイント
  • 巻き込み事故とは、主に自動車が交差点を左折する際、同一方向に直進中のバイクや自転車と接触する交通事故のことをいう
  • 左折巻き込み事故の基本過失割合は、被害者がバイクの場合には10~20%自転車の場合には0~10%
  • 巻き込み事故の慰謝料相場は、後遺障害・死亡の有無や基準により異なり、最終的に受け取れる金額は過失割合により異なる

巻き込み事故の被害者となられた方も加害者となられた方も、この記事や当サイトの関連記事をぜひご覧下さい。

author okano
岡野武志弁護士
交通事故と刑事事件を専門とするアトム法律事務所の代表弁護士。

巻き込み事故とは、交通事故の代表的な類型の一つになります。

もっとも、自分の交通事故が巻き込み事故に該当する事故なのかがはっきりと分からないという方もいるかと思います。

そこで、まずは巻き込み事故の意味といった基本的知識を確認していきたいと思います。

巻き込み事故の意味・点数・原因・防止

巻き込み事故の意味・点数・原因・防止

巻き込み事故とは?右折時も起こる?

巻き込み事故の意味広義に捉えると以下のとおりです。

巻き込み事故とは(広義)

車両が右左折時に同一方向に進行中の者と衝突・接触する交通事故

広義の意味では、巻き込み事故は右折時にも起こる可能性があり、歩行者が被害者となるケースも考えられます。

もっとも、巻き込み事故の意味を狭義に捉えると以下のようになります。

巻き込み事故とは(狭義)

自動車が交差点の左折時に同一方向に進行中の二輪車と衝突・接触する交通事故

なお、巻き込み事故に関して、公益財団法人交通事故総合分析センターでは、以下のように解説されています。

「左折巻込み」とは、車両が左折時に順行中の相手(同一方向に進行中(横断中を除く。)の者)と衝突又は接触した後、相手の人体を車輪に巻き込んだ交通事故をいう(歩道が設置されている場合における歩道を進行中の者は含まない。)。

この記事では、巻き込み事故を狭義の意味で捉えたものにつき解説していきます。

巻き込み事故時の違反点数や罰金は?

巻き込み事故の加害者となった場合には

  1. 慰謝料や損害賠償の支払いという民事責任
  2. 罰金や懲役などの刑罰を科せられる刑事責任
  3. ③ 運転免許の違反点数が加算される行政責任

という3つの責任に問われる可能性があります。

そのうちの③の免許の違反点数は、被害者の被害の程度(死亡したか否かや治療に要する期間)や不注意の程度によって異なります。

具体的には以下の表のとおりです。

被害の程度による運転免許の付加点数一覧
被害の程度 不注意
専ら それ以外
死亡 20 13
・治療に要する期間が3月以上
又は
・後遺障害が残存する
13 9
治療に要する期間が30日以上3月未満 9 6
治療に要する期間が15日以上30日未満 6 4
治療に要する期間が15日未満 3 2

※基礎点数(安全運転義務違反なら2点)に加算される点数

詳細については、以下の警視庁のサイトから確認ができます。

そして、被害者の被害の程度が大きい場合や加害者の不注意の程度が大きい場合、過失運転致死傷罪に問われ、②の刑事責任として

7年以下の懲役若しくは禁錮

又は

100万円以下の罰金

が科せられる可能性があります(自動車運転処罰法第5条)。

巻き込み事故はバイクや自転車が悪いの?

twitter上では、巻き込み事故が起きるのはバイクが悪い・自転車が悪いという声が多いようです。

もっとも、状況にもよりますが、巻き込み事故が起きる原因には、

  • 左折の合図を出すのが遅い
  • 道路の左側端への寄りが不十分
  • 前方の横断歩道上の歩行者などに気を取られ、後方確認が不十分

などの左折車の行動や安全確認不足にあるケースも多いようです。

巻き込み事故防止の対策・対処法は?

巻き込み事故防止の対策や対処法としては、

  1. ① 交差点手前30mから左折の合図を出す
  2. ② できる限り道路の左側端に沿って徐行する
  3. ③ サイドミラーやルームミラーだけでなく、直接目視で後方確認する

といった方法が考えられます。

このうち、①・②については道路交通法で義務付けられた左折方法になっています。

車両は、左折するときは、あらかじめその前からできる限り道路の左側端に寄り、かつ、できる限り道路の左側端に沿つて(道路標識等により通行すべき部分が指定されているときは、その指定された部分を通行して)徐行しなければならない。

1 車両(自転車以外の軽車両を除く。次項及び第四項において同じ。)の運転者は、左折し(略)ながら進路を変えるときは、手、方向指示器又は灯火により合図をし、かつ、これらの行為が終わるまで当該合図を継続しなければならない。

(略)

3 前二項の合図を行う時期及び合図の方法について必要な事項は、政令で定める。

(以下略)

法第五十三条第一項に規定する合図を行う時期及び合図の方法は、次の表に掲げるとおりとする。

合図を行う場合

左折するとき

合図を行う時期

その行為をしようとする地点(交差点においてその行為をする場合にあつては、当該交差点の手前の側端)から三十メートル手前の地点に達したとき。

合図の方法

(略)左側の方向指示器を操作すること。

(以下略)

① ・②の方法を取ることで、バイクや自転車が左側をすり抜けようと考えず、実際にもすり抜けられなくなる可能性が高くなります。

そして、サイドミラーやルームミラーで確認できる後方には限界があり、後方左側はミラーの死角になっていることが多いです。

そのため、死角になっている後方左側を直接目視することで、後方確認が十分なものになり、巻き込み事故の防止につながります。

【交通事故コラム】トラック巻き込み事故の防止策

トラック、特に8トンを超す大型トラックは

  • 車高が高いため、死角となる部分が大きい
  • 内輪差が大きく、左折時に後輪が前輪よりも2m以上内側を通る
  • 接触・衝突した際の衝撃が大きい

ため、巻き込み事故が起こりやすく、死亡事故につながりやすいという特徴があります。

実際に、左折時の自転車巻き込み事故で死亡につながったケースの9割が大型トラックによるという国交省の調査結果も出ています。

これを受けて、国交省では、左折巻き込み事故防止の対策として、大型トラックに警報装置の取付けを義務化する方針を固めました。

国土交通省は(略)8トンを超す大型トラックを対象として、自転車などが側面に接近したことを運転手に知らせる警報装置の取り付けを義務化する方針を固めた。

左折時の巻き込み事故を防ぐ狙いで、2022年1月以降の新車や、モデルチェンジされる車種から適用する予定だ。

(略)

警報装置は、トラックが時速30キロ以下で走行中、左側を走る自転車などを検知。

左折すると衝突の恐れがある場合に警報音を鳴らしたり、車内のランプを光らせたりして運転手に気付かせる。

(以下略)

巻き込み事故とは、様々な要素が重なり合って発生する事故です。

一人一人が安全確認を十分にすることで、巻き込み事故発生を防止できる可能性を高めることができます。

この記事から情報を得て、適切な巻き込み事故防止の対策をとれるようにしておきましょう。

左折巻き込み事故の過失割合の基準は?

左折巻き込み事故の過失割合の基準は?

左折巻き込み事故の過失割合には一定の基準があり、被害者が

  • バイク・原付
  • 自転車

のいずれかにより、基本過失割合や修正要素に違いがあります。

ここからは被害者がバイク・自転車の場合に分けてお伝えします。

被害者がバイクの巻き込み事故の過失

バイク・原付が左折巻き込み事故の被害者のケースでは、左折車が

  • 単車(バイク・原付)に先行していた
  • 単車(バイク・原付)を追越しようとしていた

という状況の違いによって基本過失割合は変わってきます。

具体的には以下の表のとおりです。

直進単車と左折自動車との巻き込み事故
事故状況 基本過失割合
単車 自動車
自動車が単車に先行 20 80
自動車が単車を追越※ 10 90

※信号待ちで単車・自動車双方停止していた状況にも適用される

ただし、最終的な過失割合は、以下の修正要素の有無によって決定されます。

上記事故の過失割合の修正要素(加算)
単車 自動車
単車の著しい前方不注視 10
単車の15㎞以上の速度違反 10
単車の30㎞以上の速度違反 20
・自動車の大回り左折
・自動車の進入路鋭角
10
自動車の合図遅れ 5
自動車の合図なし 10
自動車直近左折 10
自動車徐行なし 10
著しい過失 10
重過失 20

被害者が自転車の巻き込み事故の過失

自転車が左折巻き込み事故の被害者のケースでも、左折自動車が

  • 自転車に先行していた
  • 自転車を追越しようとしていた

という状況の違いによって基本過失割合は変わってきます。

具体的には以下の表のとおりです。

直進自転車と左折自動車の巻き込み事故
事故状況 基本過失割合
自転車 自動車
自動車が自転車に先行 10 90
自動車が自転車を追越※ 0 100

ただし、最終的な過失割合は、以下の修正要素の有無によって決定されます。

上記事故の過失割合の修正要素(加算)
自転車 自動車
自転車が児童等・高齢者 5
・自動車の大回り左折
・自動車の進入路鋭角
10
自動車の合図遅れ 5
自動車の合図なし 10
自転車が自転車横断帯通行※ 5
著しい過失・重過失 510

※追越のケースでは、自転車に加算修正がされる場合にのみ適用

巻き込み事故の慰謝料・損害賠償の相場

巻き込み事故の慰謝料・損害賠償の相場

巻き込み事故に遭った被害者は、相手方と示談交渉を行い、示談が成立すれば慰謝料や損害賠償金を受け取れます。

そして、その慰謝料には一定の相場が存在します。

そこで、最後に巻き込み事故の慰謝料相場についてお伝えします。

交通事故慰謝料及び損害賠償金の内訳

巻き込み事故を含む交通事故慰謝料には、大きく分けて

  1. ① 入通院慰謝料
  2. ② 後遺障害慰謝料
  3. ③ 死亡慰謝料

の3種類があります。

そして、交通事故慰謝料は損害賠償金の一部であり、それ以外にも

  • 治療関係費
  • 休業損害
  • 逸失利益

といった項目の損害賠償金を受け取れる可能性があります。

上記のうち、後遺障害慰謝料・後遺障害逸失利益は、巻き込み事故の被害者が後遺障害認定されたケースでしか受け取れません。

また、死亡慰謝料・死亡逸失利益は、巻き込み事故の被害者が死亡したケースでしか受け取れません。

このように、巻き込み事故の慰謝料・損害賠償金相場は、後遺障害や死亡の有無によって大きな違いが出てきます。

慰謝料相場はどの基準かにより異なる

巻き込み事故の慰謝料相場は、その計算に

  • 自賠責基準(自賠責保険から払われる金額計算に使われる基準)
  • 任意保険基準(任意保険会社が示談交渉の際に用いる基準)
  • 弁護士基準(弁護士依頼の際や裁判の際に用いられる基準)

のうちどの基準を用いるかにより金額には大きな違いがあります。

この記事では、最も受け取れる金額が高くなる可能性の高い弁護士基準の慰謝料相場をお伝えします。

それ以外の基準の相場を知りたい方は

の記事をご覧下さい。

①入通院慰謝料の相場

入通院慰謝料の計算方法には、治療期間に対応した慰謝料算定表が用いられます。

慰謝料算定表には

があり、重傷の表の一部を抜粋したものは以下のとおりです。

重傷の入通院慰謝料相場(弁護士基準)
0 1 3 6
0 0 53 145 244
1 28 77 162 252
2 52 98 177 260
3 73 115 188 267
4 90 130 196 273
5 105 141 204 278
6 116 149 211 282
7 124 157 217 286
8 132 164 222 290
9 139 170 226 292
10 145 175 230 294
11 150 179 234 296
12 154 183 236 298

※縦は通院月数、横は入院月数、慰謝料の単位は万円

②後遺障害慰謝料の相場

後遺障害慰謝料の相場は認定された後遺障害等級に応じて、以下のように定められています。

後遺障害慰謝料の相場
等級 慰謝料
1 2,800
2 2,370
3 1,990
4 1,670
5 1,400
6 1,180
7 1,000
8 830
9 690
10 550
11 420
12 290
13 180
14 110

※慰謝料の単位は万円

より詳しく知りたい方は、「後遺障害慰謝料は弁護士基準(裁判基準)だといくら?等級ごとにご紹介!」の記事をご覧下さい。

③死亡慰謝料の相場

死亡慰謝料の相場は被害者の立場に応じて以下のように定められています。

死亡慰謝料の相場
被害者の立場 慰謝料
一家の支柱 2,800
母親・配偶者 2,500
独身・子ども 2,250

※慰謝料の単位は万円

お伝えしてきた各慰謝料相場の金額に加え、弁護士基準で計算した

  • 休業損害
  • 逸失利益

を合計した金額については、以下の慰謝料計算機で簡単に確認することができます。

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受け取れる慰謝料の相場は、被害の程度が同じでも、弁護士に依頼するかどうかで金額が大きく変わる可能性が高いです。

示談前に弁護士にご相談いただければ、弁護士に依頼した方がいいかどうかのアドバイスをすることも可能です。

この後お伝えする無料相談などを上手く活用して、適切な損害賠償金を受け取れるようにしましょう。

最終的な金額は過失割合により異なる

注意が必要なのは、上記の慰謝料計算機で計算できるのは被害者に過失割合が認められないケースの金額であるということです。

巻き込み事故では被害者にも一定の過失割合が認められるケースが多いです。

そのようなケースでは、被害者が最終的に受け取れる損害賠償金額は被害者の過失割合分を差し引いた金額になってしまいます。

つまり、最終的に受け取れる損害賠償金は、被害の程度が同じでも被害者の過失割合により大きく異なるということです。

弁護士に示談交渉を依頼することにより、被害者の過失割合が有利に修正できたというケースも多いです。

相手の保険会社が主張する過失割合が適切かどうかよくわからないという方は、ぜひ弁護士に相談してみて下さい。

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最後に一言アドバイス

それでは、最後になりますが、巻き込み事故に遭われた方に向けたアドバイスをお願いします。

巻き込み事故は、死亡事故に発展する可能性もある事故類型です。

しかし、被害に遭われたバイクや自転車の方が悪いと言われがちな事故でもあるため、過失割合の基準を知っておくことは大事です。

適切な過失割合を主張することが、適切な慰謝料相場での損害賠償金を受け取れる可能性を高めることになるからです。

まとめ

いかがだったでしょうか。

このページを最後までお読みの方は、

  • 巻き込み事故とは何かといった基本的知識
  • 左折巻き込み事故の過失割合の基準
  • 巻き込み事故の慰謝料相場

などについて理解を深めていただけたのではないかと思います。

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