圧迫骨折の治療費は手術・入院費用をあわせると100万円以上!?負担軽減の方法は?
骨粗鬆症の方などが、軽い衝撃を受けた場合、背骨(脊椎)を圧迫骨折してしまうことがあるそうです。
若い方であっても、交通事故などで衝撃を受ければ、背骨を圧迫骨折してしまう可能性があります。
脊椎を圧迫骨折してしまえば、治療のために入院をしたり、その後もリハビリなどを行わなければならず、日常生活や仕事にも大きな影響があるのではないでしょうか。
仕事を休むことになった場合、治療費や生活費も心配ですよね。
そこで今回このページでは、
- 圧迫骨折の治療費
- 治療費の負担を軽減する方法
について、お悩みの皆さまと一緒に勉強してみたいと思います。
なお、専門的な解説は、テレビや雑誌でお馴染みの岡野武志弁護士にお願いしています。
よろしくお願いします。
圧迫骨折を負われ、心身ともにお辛い日々を送られているとお察しします。
また、仕事もできなくなり、当面の治療費や今後の生活費の心配も尽きないはずです。
そのような場合、何か治療費負担軽減の制度などがあれば安心できるのではないでしょうか。
今回は、このページをお読みの方に少しでも安心いただけるよう、わかりやすく解説していきたいと思います。
目次
圧迫骨折とは、主に脊椎=背骨が押しつぶされるように変形してしまった状態のことです。
出典:https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/1/17/Blausen_0250_CompressionFracture_Vertebrae.png
ポキッというより、グシャッというイメージと言えば伝わりやすいでしょうか。
骨粗鬆症を患っている方では、腰の付近が圧迫骨折してしまうことがあります。
事故などの場合には、打ちどころによってどの部分でも起こり得るものです。
骨がつぶれてしまうので、もちろん痛みもあり、日常生活にも影響が出ますし、治療のために仕事も休まなければならないかもしれません。
圧迫骨折の治療法やリハビリ、残ってしまう可能性のある後遺症については、こちらの記事をご覧になってみてください。
圧迫骨折の治療法について抜粋すると、以下の通りになっています。
保存療法 | コルセットなどで固定し安静にする |
---|---|
薬物療法 | 痛み止めや骨粗鬆症の悪化を食い止めるための薬を服用する |
手術 | ・脊椎固定術 ・経皮的椎体形成術(骨セメント注入療法) |
主にはコルセットなどで固定し、安静にする保存療法(痛みがある場合には薬物療法も合わせて)が取られるようですが、症状が重い場合には手術が行われることになります。
最新の治療法は経皮的椎体形成術で、つぶれた骨の中に丈夫な風船を入れて骨の中で膨らませ、潰れを直してから、その空洞の中に骨セメントを充填するという方法です。
出典:https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/0/0e/Vessel-X_container.JPG
手術は20~30分で終了し、ほとんど出血もないため、非常に期待されている治療法のようです。
しかし、入院は必要となるため、治療費以外の出費もかかることになります。
よって、可能な限り自己負担を抑えたいところですよね。
圧迫骨折の治療費は実際のところいくら?
では実際のところ、圧迫骨折の治療にかかる治療費はどれくらいかかるのか…その点から見ていきましょう。
圧迫骨折の治療費の具体例(保存療法の場合)
まず、コルセット(固定帯)などで固定する保存療法の場合、「固定帯固定手技料」として35点、さらに「腰部、胸部又は頸部固定帯加算」として170点の保険点数が加算されるようです。
他に、痛み止めなどを服用する場合は、「消炎鎮痛等処置」として1日分につき35点がかかることになります。
保険の点数が1点=10円で計算すると、(35+170+35)×10=2400円程度が基本的な治療費となります。
ただし、痛み止めの薬の量や処方された日数によって、消炎鎮痛等処置の点数が高くなるはずです。
また、病院ごとに決められた診療などが加算されることになるため、5000円以上となることがほとんどでしょう。
圧迫骨折の治療費の具体例(手術療法の場合)
次に、最新の治療法である経皮的椎体形成術(骨セメント注入療法)にかかる治療費についてです。
経皮的椎体形成術の保険の点数としては、19,960点となっているそうです。
1点=10円として計算すると、20万円程度が治療費ということになります。
ただし、手術を含めて4日~7日間程度の入院が必要となります。
入院にかかるのは治療費だけでない
病院に入院することになった場合、治療費以外にも以下のような費用がかかります。
治療費 |
---|
投薬や注射、点滴などを含むさまざまな処置のほか、各種検査費用。 手術やリハビリが必要であればその費用も含む。 |
入院基本料 |
入院した場合に1日ごとに計上される基本料金。 医師の診察、看護師の看護、部屋代や寝具代などすべて含んだ費用。 病院ごとに費用に差がある。 |
食事代 |
毎日の食事代。 病気によって食材を選別したり、高齢の方に食べやすい状態に調理したような「特別食」の場合は、通常の食事よりも割高となる。 |
差額ベッド代 |
部屋代は入院基本料に含まれるが、「大部屋」ではなく個室や少人数の部屋を希望した場合に発生する費用。 |
その他 |
着替えなどの衣類、退屈しのぎに読む書籍や雑誌。 テレビが有料制の場合はその費用。 病院食だけで足りない場合は、別途食費など。 |
よって、全てを合わせると100万円以上になることも少なくないようです。
入院期間 | 手術費用 (入院費含む) |
|
---|---|---|
1椎間 | 約7日 | 100万円~120万円 |
※ 椎間数に応じて金額の増加あり
圧迫骨折をした骨が数ヶ所にも及ぶ場合は、さらに治療費がかかることになります。
さらに、術後にリハビリを行ったりすればその分の料金が加算されることになります。
そのような高額な治療費を、何の問題もなく支払える方は少ないはずです。
高額な圧迫骨折の治療費の負担はどうすれば?
以上のように高額となる可能性もある治療費ですが、全て自己負担しなければならないのでしょうか?
①公的医療保険を利用する
もちろんそういうわけではなく、まず、圧迫骨折を負ったのが勤務外の病気や怪我、自損事故の場合は公的医療保険が適用されます。
健康保険 | 会社員など |
---|---|
船員保険 | 船員 |
共済組合 | 公務員、教職員 |
国民健康保険 | 上記以外の自営業者、専業主婦など |
※ この他、「退職者医療制度」や、中小企業が加入する「協会けんぽ」、大手企業の社員などが加入する「健康保険組合」などがある。
保険が適用できれば、自己負担となるのは、1~3割の医療費と入院時の食事代の一部のみとなります。
経皮的椎体形成術については、以前は自由診療や先進医療として行なわれてきた手術でした。
しかし、安全性と有効性が高まったことで、2012年4月より保険適用の対象となっています。
つまり、たとえ120万円の治療費が請求されたとしても、窓口で支払うのは120,000円~360,000円となります。
とはいえ、それでも安いと言いきれる金額ではありませんよね…。
②公的医療保険の「高額医療」制度を利用する
そのような場合、公的医療保険の制度の1つに「高額療養費制度」というものがあります。
高額医療という言葉の方が馴染みがあるかもしれませんね。
高額療養費制度とは、医療機関や薬局の窓口で支払った額が、自己負担限度額を超えた場合に、その超えた金額を支給する制度です。
毎月の自己負担限度額は、加入者の年齢や所得水準によって設定されています。
また、いくつかの条件を満たせば、さらに負担を軽減する仕組みも設けられているそうです。
年収約1160万円~ | |
---|---|
【外来(個人ごと)/毎月(世帯ごと)】 252,600円+(医療費-842,000)×1% |
|
年収約770万円~約1160万円 | |
【外来(個人ごと)/毎月(世帯ごと)】 167,400円+(医療費-558,000)×1% |
|
年収約370万円~約770万円 | |
【外来(個人ごと)/毎月(世帯ごと)】 80,100円+(医療費-267,000)×1% |
|
年収156万~約370万円 | |
【外来(個人ごと)】 18,000円 (年間上限144,000円) |
【毎月(世帯ごと)】 57,600円 |
住民税非課税世帯 | |
【外来(個人ごと)】 8,000円 |
【毎月(世帯ごと)】 24,600円 |
年金収入80万円以下など | |
【外来(個人ごと)】 8,000円 |
【毎月(世帯ごと)】 15,000円 |
※1 1つの医療機関での自己負担(院外処方代を含む)では上限額を超えない場合、同じ月の別の医療機関での自己負担を合算することが可能。その合算額が上限額を超えれば、高額療養費の支給対象となる。
※2 入院時の食費負担や差額ベッド代などは含まない。
年収約1,160万円~ |
---|
252,600円+(医療費-842,000)×1% |
年収約770~約1,160万円 |
167,400円+(医療費-558,000)×1% |
年収約370~約770万円 |
80,100円+(医療費-267,000)×1% |
~年収約370万円 |
57,600円 |
住民税非課税者 |
35,400円 |
※1 1つの医療機関での自己負担(院外処方代を含む)では上限額を超えない場合、同じ月の別の医療機関での自己負担(21,000円以上)を合算することが可能。その合算額が上限額を超えれば、高額療養費の支給対象となる。
※2 入院時の食費負担や差額ベッド代などは含まない。
かかった医療費(10割負担)が120万円だった場合、69歳以下で年収が370万円~770万円の方であれば、通常の健康保険適用では3割負担で36万円かかります。
一方、高額医療制度を利用できれば、80,100+(1.200,000-267,000)×1%=89,430円のみの自己負担で済むことになります。
限度額適用認定証
しかし、基本的には支払った治療費が後から戻ってくる制度ではあります。
低所得者の方については、加入している保険窓口に事前に申請し「限度額適用認定証」の交付を受け、医療機関に提示すれば、支払いの時点で限度額までとできるようです。
また、「高額療養費資金貸付制度」といった貸付制度がある場合もあります。
この制度を利用できれば、高額療養費支給見込額の8~9割を無利子で借りることが可能です。
詳しくは、区市町村担当課、全国健康保険協会の都道府県支部、勤務先健康保険組合などの各窓口に確認してみてください。
③生命保険や自動車保険からの保険金を利用する
また、ご自身が加入されている生命保険や傷害保険などからの保険金を受け取ることができます。
交通事故が原因の場合には、それに加えて相手側の自動車保険や、ご自身の加入されている自動車保険からも保険金(損害賠償金)を受け取ることができます。
圧迫骨折で具体的に受け取れる保険金の詳細については、こちらの記事をご覧になってみてください。
それらの保険金を、治療費や治療中の生活費に充てることができれば、大きく負担が軽減できるはずです。
④障害者手帳の交付を受け行政の支援やサービスを受ける
その他に、身体障害者手帳の交付を受けることで、様々な支援やサービスを受けることができます。
圧迫骨折で交付される障害者手帳や、受けられる支援・サービスに関しては、こちらの記事をご覧になってみてください。
身体障害者手帳をお持ちになることに抵抗がある方もいらっしゃるかもしれませんが、取得しなければ支援やサービスを受けることはできません。
交通事故が原因の場合、損害賠償金が支払われた後の治療費などについても、負担を軽減できる可能性があるので、取得することを検討してみるのも良いかもしれません。
⑤医療費控除を受ける
他にも、医療費をたくさん支払っている場合、確定申告時に「医療費控除」を申請することで、所得税や住民税の金額を減額することが可能となっています。
所得税や住民税が減額されるというのは、非常にありがたい制度です。
医療費控除の対象となる医療費は、以下の通りとなっています。
医療費控除の対象
- 納税者が、自己又は自己と生計を一にする配偶者やその他の親族のために支払った医療費
- その年の1月1日から12月31日までの間に支払った医療費
つまり、自分の医療費だけではなく、同一生計のご家族の医療費を支払った場合にも、医療費控除(限度額200万円)が受けられるんですね。
ご家族の方が圧迫骨折による治療を続けている場合、こちらの制度を使えば治療費の負担にもつながるはずです。
損害賠償金と医療費控除の関係
そのような制度があるとわかったところで…病気や通常の怪我とは違い、交通事故では加害者側から損害賠償金の一環として治療費を受け取れるということでした。
損害賠償で治療費を受け取っている場合でも、医療費控除は受けられるのでしょうか?
治療費を損害賠償として受け取った場合のように、医療費の一部について補填された場合は、「保険金などで補填される金額」に該当し、補填された金額を支払った医療費から差し引く必要があります。
やはり、損害賠償として受け取った分は差し引かれるのですね。
もちろん、病気や怪我の場合であっても、生命保険などから保険金を受け取った場合には、その分が差し引かれることになります。
医療費控除の計算方法は、以下の通りとなっています。
医療費控除の計算式
医療費控除=(実際に支払った医療費の合計額-①)-②
- ① 保険金などで補填される金額
- ② 10万円(例外:総所得金額等が200万円未満の場合は総所得金額等の5%の金額)
ちなみに、「総所得金額等」とは以下の金額を指します。
総所得金額等
- 純損失、雑損失、その他各種損失の繰越控除後の総所得金額
- 特別控除前の分離課税の長(短)期譲渡所得の金額
- 株式等に係る譲渡所得等の金額
- 上場株式等に係る配当所得の金額
- 先物取引に係る雑所得等の金額
- 山林所得金額及び退職所得金額
の合計額
以上、改めてわかった通り、
治療費を加害者側から受け取った場合や生命保険などから保険金を受け取った場合は、治療費の領収書があったとしても医療費控除は受けられない
ということになります。
計算例
では、具体的な計算例を見てみましょう。
たとえば、総所得金額300万円の方が、全て自己資金で医療費30万円を支払った場合、
医療費控除金額=300,000−100,000=200,000円
となり、20万円の医療費控除が受けられることになります。
一方、総所得金額が150万円の方の場合には、
医療費控除金額=300,000−(150,000×5%)=225,000円
となり、22.5万円の医療費控除が受けられることになります。
しかし、保険金などで治療費20万円が全て支払われている場合には控除は受けられません。
ただし、保険金で治療費を全額カバーできていない場合には、医療費控除を受けられる可能性があります。
たとえば、総所得金額300万円の方が、医療費200万円を支払い、保険会社から120万円の保険金しか回収できなかった場合には、
医療費控除金額=(2,000,000-1,200,000)-100,000=700,000円
となり、70万円の医療費控除を受けられることになります。
不明点などがある場合は、税務署に問い合わせてみてください。
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それでは、最後になりますが、圧迫骨折の治療費に関してお悩みの方に一言アドバイスをお願いします!
圧迫骨折の治療には費用もかかりますが、生命保険や傷害保険、交通事故であれば自動車会社からの損害賠償などの補償を受けられる可能性があります。
よって、どのような補償内容の保険に加入していて、どのような時に保険金が受け取れるのか、きちんと確認し、整理しておくことをお勧めいたします。
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まとめ
いかがでしたでしょうか?
最後までお読みいただけた方には、
- 圧迫骨折の治療費の金額やそれに対する保障
- 交通事故が原因の場合の治療費の負担者や負担支援制度
について、理解を深めていただけたのではないかと思います。
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