物損事故で慰謝料がもらえた事例はある?原則として慰謝料の請求不可?
Q1.物損事故と人身事故の違いは?
交通事故による死傷があるかないかという損害の違いで、物損事故と人身事故を分けることができます。
物損事故は車やバイク、腕時計やスマホといった財産に被害を受けた事故のことをいいます。一方、人身事故は怪我を負ったり、死亡したり人の身体に被害を受けた事故のことをいいます。
人身事故の場合は物損を伴うことも多いので、このような場合は人身部分・物損部分と呼び分けることが便宜上、多くなっています。
Q2.物損事故で慰謝料がもらえないって本当?
物損事故では原則として慰謝料がもらえません。交通事故における慰謝料は、事故を原因に死傷したことで被った精神的苦痛に対して支払われるものだからです。死傷のない物損事故では慰謝料は基本的に認められません。
もっとも例外として、物損事故でも「特段の事情」があると判断されれば、慰謝料が認められることになるでしょう。
特段の事情
①社会通念上認められる特別な主観的・精神的価値を有し、財産的損害の賠償を認めただけでは足りないこと
②加害行為が著しく反社会的で財産に対する金銭賠償では償えないほどの精神的苦痛を受けたこと
Q3.物損事故で例外的に慰謝料がもらえた事例は?
特段の事情があると判断されて慰謝料が認められた事例をいくつか紹介します。
▼墓石が倒壊した(大阪地方裁判所 平成12年10月12日判決)
霊園にあった墓石が衝突事故で骨壺が露出するほど倒壊した事案で、裁判所は墓地等が先祖や個人の眠る場所として所有者にとって敬愛追慕の強い念をもつ対象となると判断し、慰謝料10万円を認めています。
▼ペットが死亡した(東京高等裁判所 平成16年2月26日判決)
交通事故によって犬が死亡した事案で、裁判所は長年、家族同様に飼ってきたことを理由に葬儀費用のほか、慰謝料5万円を認めています。
▼芸術作品が壊れた(東京地方裁判所 平成15年7月28日判決)
交通事故によって陶芸作品が壊れた事案で、裁判所は代替性のない芸術作品であること、被害者が自ら制作したことを理由に、慰謝料100万円を認めています。
Q4.物損事故でもらえる損害賠償の項目の内訳は?
物損事故における損害賠償の内訳は、被害状況によってさまざまです。もっとも、メインとなる損害賠償としては車などの「修理費用」があげられるでしょう。修理するよりも買い替えたほうが安くつく場合は「買替差額」が認められます。
その他にも、車両が使えなくなったことで代車を借りるなどした費用として「代車使用料」、運送業など営業車として使用できず休業せざるを得なくなった補償として「休車損害」なども代表的な損害項目です。
この記事の監修弁護士
岡野武志弁護士
アトム法律事務所弁護士法人
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-11-28 合人社東京永田町ビル9階
第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。