後遺障害9級の交通事故慰謝料|3999万円の判例を弁護士が解説
このページでは、後遺障害9級の判例についてご紹介します。
交通事故によって後遺障害が残ってしまった場合、被害者の生活は大きく変わってしまうことがあります。
今後の仕事や生活のことを考えると、十分な慰謝料は支払われるのか気になりますよね。
この判例では、総額3999万円の損害賠償金が認められたようですが、算定においてどのような点がポイントになったのでしょうか。
法律的な部分の解説は、テレビや雑誌でもおなじみの岡野武志弁護士にお願いしています。
よろしくお願いします。
これまで事務所で取り扱った実例と、裁判所が判断した判例にもとづいて、しっかりと解説していきたいと思います。
目次
それではまず、交通事故の内容から見ていきましょう。
障害等級9級(男・症状固定時30歳:中国人通訳、帰化申請中)損害額3999万2659円の判例
こちらは、東京地方裁判所の判決、平成18年(ワ)第16910号事件です。
この事故での主な怪我の内容は、両肩打撲となります。
交通事故の基本情報
事故の内容は「商店街の交差点を青信号で左折中の加害車両(普通乗用車)と、左折先横断歩道を右から左へ直進していた被害車両(自転車)が衝突した。」というものです。
交通事故の基本情報は?
属性 | 会社員 |
---|---|
性別 | 男 |
年齢 | 症状固定時30歳 |
事故の内容 | 商店街の交差点を青信号で左折中の加害車両(普通乗用車)と、左折先横断歩道を右から左へ直進していた被害車両(自転車)が衝突した。 |
傷害の内容 | 両肩打撲、頸椎捻挫、頭部打撲、脳震盪、難聴 |
後遺障害等級 | 9級9号 |
入院 | 0日 |
被害者は幸い入院はしなかったものの、ケガによって右耳の聴力を完全に失ってしまったようです。
判例で認められた賠償金・慰謝料
それでは、認められた損害額を見てみましょう。
判例で認められた賠償金・慰謝料は?
損害総額 | 3999万2659円 |
---|---|
うち慰謝料 | 760万円 |
うち休業損害 | 65万9847円 |
うち逸失利益 | 3155万5112円 |
損害総額は3999万2659円でした。
ざっくりまとめると…
被害者の損害額は総額3999万2659円になりました。
- 慰謝料としては、通院に対する慰謝料が60万円、後遺障害の慰謝料が700万円認められました。
- 休業損害としては、症状固定日までの69日間を休業日数、日額9563円(事故前3か月の平均日額)を基礎収入として算定されました。
- 逸失利益は、被害者は同時通訳という業務に従事していたことと後遺障害の内容を考慮すると、労働能力の35%程度を喪失、喪失期間は症状固定時の30歳から67歳までの37年間として算定されました。
弁護士による解説
弁護士先生、こちらの男性は日本の大学を卒業して、日本国内で就職し、帰化申請中だったようですね。
この判例のポイントはどのような点になりますか?
本件では、被害者が事故により頭部を打撲し、その後に片耳が全く聞こえなくなった結果、9級の後遺障害が認定されました。
加害者側は事故と難聴との間の因果関係を争いましたが、裁判所は因果関係を認める判断を行いました。
事故により脳や神経の損傷がなくても、事故後に実際に難聴が生じ、事故以外に原因が考えられない場合には因果関係が認められることもあります。
交通事故の慰謝料の計算方法をおさらい
はじめての慰謝料計算
交通事故の慰謝料の計算方法、よく分からないですよね。
ポイントを整理すると、
- 保険会社が提示する慰謝料と、弁護士や裁判所が認定する慰謝料は、大きく異なる。
- 法律的に正しい慰謝料は、弁護士や裁判所が認定する慰謝料の方。
- 正しい慰謝料を請求するためには、法的な手続きを利用する必要がある。
の三点が重要です。
慰謝料の計算方法については、このページがよくまとまっています。
記事の構成は、
- 弁護士介入後に慰謝料が増額する理由
- 交通事故被害者の慰謝料はどのようにして決まるの?
- 慰謝料よりも高額な「逸失利益」とはどういうもの?
となっています^^
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- 保険会社から提示されている金額が、法律的に正しいかどうか知りたい
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後遺障害9級の慰謝料計算の特徴は?
9級の慰謝料を計算するにあたって、ポイントとなる点はありますか?
一口に9級と言っても各号ごとに症状は様々ですが、原則として慰謝料は等級に応じて定められ、9級の場合、裁判基準では690万円となっております。
特に争いになりやすいのは逸失利益の項目であり、9級6号の咀嚼障害、9級16号の外貌醜状や9級17号の生殖器の障害の場合、仕事には支障がないとして、逸失利益を保険会社が否定してくることも多いです。
また、9級の場合、自賠責基準では計算の基礎となる労働能力喪失率を35%としていますが、実際にはそこまでの仕事への支障がないとして、保険会社が自賠責基準よりも低く主張してくることもあります
そのような場合には、職務内容や職務にどのような支障が出ているかを具体的に主張する必要があることがポイントです。
なお、9級10号の高次脳機能障害については、後遺障害申請の際に提出する書類の記載内容によっては、実際に残存する障害に見合った等級よりも低い等級として認定されている可能性があるので、注意が必要です。
ただし、これらのポイントはあくまで一般論であり、上にご紹介した裁判例のように、事故に遭われた被害者の方の事情は様々です。
これらの事情を考慮した上で妥当な金額を計算されたい場合、まずは弁護士等の専門家に相談してみるのがおススメです。