男子大学院生の交通事故慰謝料|2610万円の判例を弁護士が解説
このページでは、男子大学院生の事故の判例についてご紹介します。
交通事故に遭ってしまうと、入院や通院などで身体的に大きな負担がかかってしまう上に、精神的にもつらい思いをしてしまいます。
こちらの判例の被害者は大学院生ですが、大学院生であると事故の影響が就職や学業にも出てきてしまうかもしれません。
判決としては、約2610万円の損害賠償金が認められたようですが、算定においてどのような点がポイントになったのでしょうか。
法律的な部分の解説は、テレビや雑誌でもおなじみの岡野武志弁護士にお願いしています。
よろしくお願いします。
これまで事務所で取り扱った実例と、裁判所が判断した判例にもとづいて、しっかりと解説していきたいと思います。
目次
それではまず、交通事故の内容から見ていきましょう。
大学院生(男・症状固定時28歳)損害額2610万3796円の判例
こちらは、大阪地方裁判所の第15民事部の判決、平成20年(ワ)第5237号事件です。
この事故での主な怪我の内容は、右足関節開放性脱臼骨折となっています。
交通事故の基本情報
事故の内容は「被害者運転の普通自動二輪車が交差点を直進しようとしたところ、同方向に進行していた加害者運転の普通貨物車が交差点を左折してきたため衝突した。」というものです。
交通事故の基本情報は?
属性 | 大学院生 |
---|---|
性別 | 男 |
年齢 | 症状固定時28歳 |
事故の内容 | 被害者運転の普通自動二輪車が交差点を直進しようとしたところ、同方向に進行していた加害者運転の普通貨物車が交差点を左折してきたため衝突した。 |
傷害の内容 | 右足関節開放性脱臼骨折 |
後遺障害等級 | 10級11号 |
入院 | 82日 |
被害者は右足関節の機能障害によって後遺障害10級が認定されたとのことです。
判例で認められた賠償金・慰謝料
それでは、認められた損害額を見てみましょう。
判例で認められた賠償金・慰謝料は?
損害総額 | 2610万3796円 |
---|---|
うち慰謝料 | 890万円 |
うち休業損害 | 7万5600円 |
うち逸失利益 | 1318万9536円 |
損害総額は2610万3796円でした。
ざっくりまとめると…
被害者の損害額は総額2610万3796円になりました。
- 慰謝料としては、入院・通院に対する慰謝料が290万円、後遺障害の慰謝料が600万円認められました。
- 休業損害としては、家庭教師のアルバイト代7万5600円が認められました。
- 逸失利益は、男子の労働者企業規模1000人以上大学・大学院卒の平均賃金775万0800円を基礎収入とし、労働能力の10%を喪失したものと認められ、67歳までの39年を労働能力喪失期間として算定し、1318万9536円が認められました。
弁護士による解説
弁護士先生、こちらの男性は事故により足に大怪我を負い、10級の後遺障害が認められました。
この判例のポイントはどのような点になりますか?
本件の被害者は、大学院生のときの事故で右足の関節が曲がりにくくなる後遺症を負いました。
被害者は、事故後に上場企業に入社したため、基礎収入は775万円と認定されました。
しかし、右足の障害が昇進や昇給に与える影響が明確には把握できないこと、上場企業であるから転職の可能性が低いことなどを理由に、労働能力喪失率は10%にとどまると判断されました。
10級の労働能力喪失率は、標準で27%であるため、10%という認定は被害者にとって非常に厳しい判断といえます。
交通事故の慰謝料の計算方法をおさらい
はじめての慰謝料計算
交通事故の慰謝料の計算方法、よく分からないですよね。
ポイントを整理すると、
- 保険会社が提示する慰謝料と、弁護士や裁判所が認定する慰謝料は、大きく異なる。
- 法律的に正しい慰謝料は、弁護士や裁判所が認定する慰謝料の方。
- 正しい慰謝料を請求するためには、法的な手続きを利用する必要がある。
の三点が重要です。
慰謝料の計算方法については、このページがよくまとまっています。
記事の構成は、
- 弁護士介入後に慰謝料が増額する理由
- 交通事故被害者の慰謝料はどのようにして決まるの?
- 慰謝料よりも高額な「逸失利益」とはどういうもの?
となっています^^
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また、慰謝料自動計算機(計算ソフト)を使うと、慰謝料の計算が5秒で完了して便利です。
計算ソフトの利用をおすすめするのは、
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- 保険会社から提示されている金額が、法律的に正しいかどうか知りたい
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といった人たちです。
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大学院生の慰謝料計算の特徴は?
大学院生の慰謝料を計算するにあたって、ポイントとなる点はありますか?
大学院生といっても、その専門分野によって活動内容や将来的な就職分野は様々です。
ポイントとしては、活動内容や将来就職する可能性が高い分野等を具体的に主張していくことです。
事故の影響で論文が作成できず、留年してしまったり、研究活動に支障が出ていることが証明できれば、賠償額が増額できる余地があります。
また、上に書かれている判例のように、内定が決まっていたり、あるいは就職する可能性が高い分野を証明できれば、内定先の会社や就職する可能性が高い分野の収入が、将来の収入源をカバーする逸失利益の計算の基礎となり、したがって、賠償額が増額する余地があります。
ただし、以上のポイントは一般的な話であり、上に挙げられている判例のように、事故に遭われた方のご事情は様々であり、それによって妥当な金額も変わってきます。
したがって、より正確な金額を知りたい方は、まず弁護士等の専門家に相談してみることをおススメします。