妊娠中の交通事故慰謝料|224万円の判例を弁護士が解説
このページでは、妊娠中の事故の判例についてご紹介します。
考えたくはありませんが、妊娠中の方が交通事故に遭ってしまった場合、胎児にも影響が出てしまうことがあります。
こちらの判例の被害者は事故によって流産してしまったようです。
お腹の子を失った精神的苦痛に対する慰謝料はどのようにして計算されるのでしょうか。
法律的な部分の解説は、テレビや雑誌でもおなじみの岡野武志弁護士にお願いしています。
よろしくお願いします。
これまで事務所で取り扱った実例と、裁判所が判断した判例にもとづいて、しっかりと解説していきたいと思います。
目次
それではまず、交通事故の内容から見ていきましょう。
妊婦(女・41歳)損害額224万6030円の判例
こちらは、大阪地方裁判所の判決、平成16年(ワ)第11827号事件です。
この事故での主な怪我の内容は、頸椎捻挫となっています。
交通事故の基本情報
事故の内容は「事故当時18歳未満の加害者が車を運転し、制限速度時速30kmを超える時速で、一時停止規制を無視して交差点に進入し、被害車に衝突させた。」というものです。
交通事故の基本情報は?
属性 | 妊婦 |
---|---|
性別 | 女 |
年齢 | 41歳 |
事故の内容 | 事故当時18歳未満の加害者が車を運転し、制限速度時速30kmを超える時速で、一時停止規制を無視して交差点に進入し、被害車に衝突させた。 |
傷害の内容 | 頸椎捻挫、両手・両下腿挫傷 |
入院 | 0日 |
被害者は結果的に流産となってしまったようです。
判例で認められた賠償金・慰謝料
それでは、認められた損害額を見てみましょう。
判例で認められた賠償金・慰謝料は?
損害総額 | 224万6030円 |
---|---|
うち慰謝料 | 200万円 |
うち休業損害 | 0円 |
うち逸失利益 | 0円 |
損害総額は224万6030円でした。
ざっくりまとめると…
被害者の損害額は総額224万6030円になりました。
慰謝料としては、事故により被害者が流産したこと、また、加害車は制限速度を大幅に超えて事故を起こしたこと、加害者が事故後逃走して救護義務を怠ったこと、など一切の事情を考慮され、200万円が認められました。
弁護士による解説
弁護士先生、こちらの妊婦の方は事故と流産の因果関係が争われたようですが、この判例のポイントはどのような点になりますか?
被害者側は、事故による腰や下腹部への衝撃により流産してしまったと主張しており、事故と流産との因果関係が争点となりました。
裁判所は、本件事故による衝撃が相当強く、事故以外に流産を引き起こす原因が考えにくいとして、事故により流産に至った可能性が高いと判断しました。
その点も考慮して、被害者側の慰謝料として200万円が認められました。
流産の慰謝料が200万円というのは低すぎるように思われる方も多いと思います。
裁判では、胎児の妊娠週数・月数によって流産の慰謝料額が決められます。
本件では妊娠12週の早期での流産であったため、それほど高額な慰謝料額は認定されなかったと考えられます。
交通事故の慰謝料の計算方法をおさらい
はじめての慰謝料計算
交通事故の慰謝料の計算方法、よく分からないですよね。
ポイントを整理すると、
- 保険会社が提示する慰謝料と、弁護士や裁判所が認定する慰謝料は、大きく異なる。
- 法律的に正しい慰謝料は、弁護士や裁判所が認定する慰謝料の方。
- 正しい慰謝料を請求するためには、法的な手続きを利用する必要がある。
の三点が重要です。
慰謝料の計算方法については、このページがよくまとまっています。
記事の構成は、
- 弁護士介入後に慰謝料が増額する理由
- 交通事故被害者の慰謝料はどのようにして決まるの?
- 慰謝料よりも高額な「逸失利益」とはどういうもの?
となっています^^
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- 保険会社から提示されている金額が、法律的に正しいかどうか知りたい
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といった人たちです。
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保険会社から低い金額を提示されている場合は、素人の知識不足に漬け込んで騙されている可能性があります。
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妊娠中の慰謝料計算の特徴は?
妊娠中の慰謝料を計算するにあたって、ポイントとなる点はありますか?
妊婦の方が交通事故に遭うと、流産や早産など胎児への影響が起きる点が問題になります。
交通事故が原因で流産してしまった場合に、慰謝料についてどう考えるのかについて整理しておく必要がありますね。
また、母親の健康に支障がなくても、胎児に障害が残ってしまった場合の補償をどのように考えるかも難しい問題といえます。
妊婦の方本人の問題としては、特に出産前後は治療に行きたくても行けずに、治療の間隔が空いてしまったり、実通院日数が少なくなったりして、保険会社から提示される賠償額が減らされることがあります。
そのような場合は、出産が理由で通院できなかったことをしっかりと反論する必要があります。
また、妊婦の方は、レントゲン撮影ができず、後遺障害申請の際、その事が不利に働く場合がありますが、妊娠が理由でレントゲンが撮影できなかったことをしっかりと主張する必要があります。
ただし、以上のポイントはあくまで一般論であり、上に挙げられている判例のように、事故に遭われた方の事情によって妥当な金額も変わってきます。
そこでまずは、弁護士等の専門家に相談してみると妥当な金額がいくらかを確認することができます。