妊娠中の交通事故慰謝料|95万円の判例を弁護士が解説
このページでは、妊娠中の事故の判例についてご紹介します。
妊娠中に交通事故に遭ってしまった場合、何よりも心配になるのは胎児のことですよね。
妊婦の方の交通事故では、どのような点がポイントになり、慰謝料等が計算されるのでしょうか。
弁護士の先生の解説とともに、こちらの判例に基づいて詳しく見ていきましょう。
法律的な部分の解説は、テレビや雑誌でもおなじみの岡野武志弁護士にお願いしています。
よろしくお願いします。
これまで事務所で取り扱った実例と、裁判所が判断した判例にもとづいて、しっかりと解説していきたいと思います。
目次
それではまず、交通事故の内容から見てみましょう。
妊婦(女・31歳)損害額95万5389円の判例
こちらは、東京地方裁判所の判決、平成20年(ワ)第27233号事件です。
この事故での主な怪我の内容は、両下腿打撲となっています。
交通事故の基本情報
事故の内容は「T字路交差点の直線道路に沿う横断歩道上を走行中の被害自転車に、突き当たり道路から交差点に進入しようとした加害普通貨物車が衝突した。」というものです。
交通事故の基本情報は?
属性 | 妊婦 |
---|---|
性別 | 女 |
年齢 | 31歳 |
事故の内容 | T字路交差点の直線道路に沿う横断歩道上を走行中の被害自転車に、突き当たり道路から交差点に進入しようとした加害普通貨物車が衝突した。 |
傷害の内容 | 両下腿打撲、左下腿挫創、右肘挫傷 |
入院 | 0日 |
被害者は事故により、体調に影響が出てしまったようです。
判例で認められた賠償金・慰謝料
それでは、認められた損害額を見てみましょう。
判例で認められた賠償金・慰謝料は?
損害総額 | 95万5389円 |
---|---|
うち慰謝料 | 70万円 |
うち休業損害 | 10万2000円 |
うち逸失利益 | 0円 |
損害総額は95万5389円でした。
ざっくりまとめると…
被害者の損害額は総額95万5389円になりました。
- 慰謝料としては、事故により流産したと断定することは困難であるが、子宮外妊娠や切迫流産がなかったともいえないとして、70万円が認められました。
- 休業損害としては、17日間休み賃金が支給されなかったため、過去3か月の賃金合計は36万4725円であるから、稼働日数1日当たり6000円とし、10万2000円が認められました。
弁護士による解説
弁護士先生、こちらの妊婦の方は、両膝や右手にケガを負ってしまったようですが、この判例のポイントはどのような点になりますか?
本件では、裁判所は事故と流産との因果関係は否定しました。
しかし、妊婦が事故の影響で体調を崩し、不正出血や切迫流産などに至る可能性がある点を考慮して、通院慰謝料を通常の相場よりも増額して認定しました。
慰謝料の金額は、裁判官の裁量が大きく影響する事項であるため、裁判を起こしてみないといくらの慰謝料が得られるか予測することは難しいのが実情です。
交通事故の慰謝料の計算方法をおさらい
はじめての慰謝料計算
交通事故の慰謝料の計算方法、よく分からないですよね。
ポイントを整理すると、
- 保険会社が提示する慰謝料と、弁護士や裁判所が認定する慰謝料は、大きく異なる。
- 法律的に正しい慰謝料は、弁護士や裁判所が認定する慰謝料の方。
- 正しい慰謝料を請求するためには、法的な手続きを利用する必要がある。
の三点が重要です。
慰謝料の計算方法については、このページがよくまとまっています。
記事の構成は、
- 弁護士介入後に慰謝料が増額する理由
- 交通事故被害者の慰謝料はどのようにして決まるの?
- 慰謝料よりも高額な「逸失利益」とはどういうもの?
となっています^^
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計算ソフトの利用をおすすめするのは、
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- 保険会社から提示されている金額が、法律的に正しいかどうか知りたい
- 相手方に請求できる(または相手方から請求される)慰謝料の金額を知りたい
といった人たちです。
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保険会社から低い金額を提示されている場合は、素人の知識不足に漬け込んで騙されている可能性があります。
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妊娠中の慰謝料計算の特徴は?
妊娠中の慰謝料を計算するにあたって、ポイントとなる点はありますか?
妊婦の方が交通事故に遭うと、流産や早産など胎児への影響が起きる点が問題になります。
交通事故が原因で流産してしまった場合に、慰謝料についてどう考えるのかについて整理しておく必要がありますね。
また、母親の健康に支障がなくても、胎児に障害が残ってしまった場合の補償をどのように考えるかも難しい問題といえます。
妊婦の方本人の問題としては、特に出産前後は治療に行きたくても行けずに、治療の間隔が空いてしまったり、実通院日数が少なくなったりして、保険会社から提示される賠償額が減らされることがあります。
そのような場合は、出産が理由で通院できなかったことをしっかりと反論する必要があります。
また、妊婦の方は、レントゲン撮影ができず、後遺障害申請の際、その事が不利に働く場合がありますが、妊娠が理由でレントゲンが撮影できなかったことをしっかりと主張する必要があります。
ただし、これらのポイントは一般的な話であり、上に挙げた判例のように、事故に遭われた方の事情は個別に異なりますので、まずは弁護士等の専門家に相談してみるのがよいでしょう。
まとめ
この記事の監修弁護士
岡野武志弁護士
アトム法律事務所弁護士法人
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-11-28 合人社東京永田町ビル9階
第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。