交通事故裁判の流れ|期間は判決まで平均1年以上?出廷は何回?慰謝料額は?
「交通事故の民事裁判を提起しようと考えているのだけれど、流れがよくわからない・・・」
「交通事故の民事裁判は判決までどれくらいの期間が掛かるの?」
「交通事故には裁判基準っていうものがあると聞いたけど、いったい何のこと?」
「交通事故の民事裁判を提起するにはいくら位の費用が掛かるの?」
「交通事故の民事裁判を提起するならやっぱり判例を調べたりする必要があるの?」
交通事故の被害者になられた方の中には、裁判を提起したいと考えているけれど、わからないことが多く迷われている方もいるかもしれません。
このページでは、そんな方のために
- 交通事故の民事裁判・訴訟の流れ
- 交通事故の民事裁判・訴訟に要する期間
- 交通事故の裁判基準とは何か
- 交通事故の民事裁判・訴訟に要する費用の相場
- 交通事故の民事裁判・訴訟における判例の重要性
といった事柄について、徹底的に調査してきました!
専門的な部分や実務的な部分は交通事故と刑事事件を数多く取り扱っている岡野弁護士に解説をお願いしております。
よろしくお願いします。
交通事故の裁判を提起したいと考えているけれど、わからないことが多く迷われている被害者の方もいるかもしれません。
交通事故の裁判を提起するかどうかは様々な事情を考慮して慎重に検討する必要があります。
こちらで、交通事故の裁判に関する知識を押さえた上で、交通事故の裁判を提起するかどうかをよく考えて結論を出せるようにしましょう。
目次
多くの人にとっては、交通事故の裁判と言われても、漠然としたイメージしか持てず、具体的な流れまではご存じないかと思います。
そこで、まずは交通事故の民事裁判・訴訟の流れについて確認していきたいと思います!
交通事故の民事裁判・訴訟の流れについて
示談がまとまらない場合は加害者を被告に裁判
交通事故の場合、いきなり裁判を提起することはほとんどありません。
通常はまず加害者と示談交渉をすることになります。
交通事故の場合、多くは示談により解決に至り、裁判にまではならないことがほとんどです。
もっとも、加害者と慰謝料の金額や過失割合などの点で、示談交渉の最後まで折り合いがつかず示談がまとまらない場合も存在します。
そのような場合にはじめて、交通事故の被害者が加害者を被告にして裁判・訴訟を提起するという流れになります。
ただし、示談がまとまらない場合、裁判を提起する前に調停という手続きがとられることもあります。
交通事故の調停に関しては、以下のページに詳しく記載されていますので、興味のある方は是非ご覧になってみて下さい。
いずれにせよ、交通事故の裁判は当事者間での話し合いがまとまらない場合に、当事者間の紛争を最終的に解決するための手続きであるといえます。
交通事故の民事裁判で争われる問題は損害賠償
実は、交通事故の裁判には大きく分けて
- 民事裁判
- 刑事裁判
という二種類のものが考えられます。
一般の方々が裁判と聞いてイメージされるものは刑事裁判の方の裁判だと思われますので、刑事裁判のほうからご説明していきたいと思います。
刑事裁判
交通事故の刑事裁判で争われる問題は加害者に刑罰を負わせるべきかどうか及び量刑になります。
そして、刑事裁判を提起できるのは検察官だけになります。
民事裁判
一方、交通事故の民事裁判で争われる問題は加害者の被害者に対する損害賠償義務の有無及び金額になります。
そして、民事裁判は誰でも提起することができる点で刑事裁判とは異なります。
つまり、交通事故の被害者が加害者を被告にして提起する裁判は民事裁判ということになります。
民事裁判 | 刑事裁判 | |
---|---|---|
争われる問題 | 損害賠償義務の有無及び金額 | 刑罰を負わせるべきかどうか及び量刑 |
提起権者 | 誰でも | 検察官のみ |
具体的な民事裁判・訴訟の流れ
それでは、ここからは交通事故の被害者の方がもっとも気になっているであろう民事裁判・訴訟の流れをお伝えしたいと思います。
交通事故の裁判の流れは大まかには以下の表のようになります。
ここからは、上の表に沿って、それぞれの流れを個別にみていきたいと思います。
①裁判所に訴状を提出
訴状の提出先
民事裁判・訴訟を提起する場合には、訴状という書類を裁判所に提出する必要があります。
具体的には
- 被害者の住所
- 被告となる人の住所
- 交通事故の発生場所
を管轄するいずれかの裁判所に提出することになります。
また、請求をする金額が
- 140万円以下の場合簡易裁判所
- 140万円を超える場合地方裁判所
に提出することになります。
提出物
提出する訴状には
- 当事者の住所氏名
- 請求する金額
- 事故の内容
- 請求金額の内訳(内容)
などを記載する必要があります。
また、代理人を選定した場合などは委任状などの必要書類も併せて提出します。
さらに、訴状を提出する際には、同時に所定の費用の印紙・郵便切手も提出する必要があります。
②第1回口頭弁論期日
訴状を提出すると1〜2ヶ月後に第1回口頭弁論期日が裁判所から指定されます。
指定された期日に裁判所に行くことになります。
被告は、第1回口頭弁論期日は、訴状に対する回答書面である答弁書を裁判所に提出しておけば、出席する必要はありません。
被告が、第1回口頭弁論期日までに争う意思を示さなかった場合、裁判は終了し、請求した内容どおりの判決が出される流れになります。
一方、被告が争う意思を示した場合には、次の手続きに進む流れになります。
③争点整理・証拠の提出
その後は1月に1回くらいのペースで裁判所での期日が開かれ、お互いが主張をし、何が争いになっているのかを整理していきます。
同時に、争いになっている部分を中心にお互いが自分の主張を裏付ける証拠を提出します。
証拠の収集は当事者が行わなければ行けませんが、裁判の場合には
送付嘱託
などの方法により、裁判所を通じて
- 検察庁などに刑事記録の送付を依頼
- 病院にカルテ開示を依頼
することなどもあります。
④和解協議
争点が整理され、証拠が出揃うと、裁判所が和解案を提示する和解勧告がなされます。
この和解案を元に当事者双方が和解できるかどうかを協議します。
訴訟上の和解が成立すれば、和解調書が作成され、裁判は終了という流れになります。
和解で定められた金銭が支払われれば、紛争は解決となります。
和解が成立しなければ、次の手続きに進む流れになります。
なお、訴訟上の和解に関しては、以下のページに詳しく記載されていますので、もっと詳しく知りたいという方はぜひご覧になってみて下さい。
⑤尋問
和解が成立しなかった場合、通常、判決を出す前に尋問が行われます。
尋問とは、簡単に言うと
法廷の場で、当事者や裁判官からの質問に回答する
ことをいいます。
交通事故の場合
本人尋問
以外に、過失割合や因果関係などに争いがある場合
- 事故の目撃者
- 医師
などに証人尋問をすることがあります。
なお、尋問の手続きが終わったあと、判決を出す前に改めて和解協議をすることも多いようです。
⑥判決
ここまでの手続きで和解に至らなかった場合には弁論が終結し、1〜2ヶ月後に判決期日が言い渡されます。
そして、判決期日において判決が言い渡されますが、判決期日は当事者が出廷しなくてもよい事になっています。
判決内容に不服がある場合には、判決送達日(判決書を受け取った日)から2週間以内に控訴状という書類を裁判所に提出する必要があります。
控訴状が提出された場合には、次の手続きに進む流れになります。
一方、2週間以内に控訴状が提出されない場合には判決が確定し、裁判は終了となります。
判決が確定すると、加害者が任意保険会社に加入している場合、任意保険会社から判決で定められた賠償額が支払われ、紛争は解決となります。
加害者が任意保険に加入していない場合、判決が確定しても、判決で定められた賠償額を支払ってこない可能性があります。
その場合には、判決に基づいた強制執行の手続きに進み、賠償額の回収を目指す流れになります。
⑦控訴・上告
そして、控訴提起後、50日以内に控訴理由書という書面の提出が求められます。
その後は、最初(一審)の裁判所同様、当事者が主張立証した上で、和解協議をし、和解できなければ判決という流れになります。
なお、制度上は控訴審での判決に不服がある場合、上告という不服申立制度がありますが、交通事故において上告が認められるのはまれなようです。
ここまで交通事故の裁判の流れをご説明してきましたが、より詳しく知りたいという方は、以下のページも是非参考にしてみて下さい。
色々とご説明してきましたが、大まかな裁判の流れを知っているだけでも、何も知らない場合より裁判に対する不安はだいぶ解消されると思います。
こちらで交通事故の裁判の大まかな流れだけはおさえておきましょう。
交通事故の民事裁判・訴訟の期間について
交通事故裁判の平均審理期間は約1年
裁判所の統計データによりますと、交通事故裁判の第一審の訴えを提起してから終局するまでの平均審理期間は12.4か月です。
半年から1年以内に終局する事案が最も多い一方、2年を超える長期事案は全体の6%程度になります。
具体的な統計は以下の表のとおりです。
6月以内 | 19.7% |
---|---|
6月超1年以内 | 41.3% |
1年超2年以内 | 32.7% |
2年超3年以内 | 5.3% |
3年超5年以内 | 1.0% |
5年を超える | 0.04% |
※「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書(第8回)」(最高裁判所・令和元年7月19日)資料2-1-1参照
さらに、裁判の各手続段階の平均期間は以下の表のようになります。
訴え提起~第1回口頭弁論 | 3.0か月 |
---|---|
第1回口頭弁論~人証調べ開始 | 12.0か月 |
人証調べ開始~終了 | 0.2か月 |
人証調べ終了~弁論終結 | 1.6か月 |
弁論終結~判決 | 1.9か月 |
※「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書(第8回)」(最高裁判所・令和元年7月19日)資料2-1-1参照
先ほどご紹介した終局までの平均審理期間は、和解で終局したような事案も含んだものになります。
そのため、判決までとなると平均して1年半程度の期間を要することになります。
裁判の期間は和解なら短く、控訴なら長くなる
先ほどの統計データの交通事故の民事裁判・訴訟の終局までの平均審理期間は、和解で終局したような事案も含んだものになります。
そして、先ほどお伝えしたとおり、判決までとなると平均して1年半程度の期間を要することになります。
そのため、正確な統計データはないものの、交通事故の民事裁判・訴訟が和解で終局する場合の期間は平均審理期間よりもやや短めと考えられます。
つまり、交通事故の民事裁判・訴訟が和解で終局する場合に要する期間は平均して1年以内と考えられます。
一方、先ほどの統計データはあくまで交通事故の民事裁判・訴訟の第一審での期間のものになります。
しかし、交通事故の当事者が第一審の裁判所の判決の結果がおかしいと考えた場合は控訴という手続きをとることになります。
そして、控訴という流れになった場合、交通事故の損害賠償の争いが終了するまでの平均的な期間は1年半よりも長くなると考えられます。
交通事故の裁判の回数や1回あたりの時間は?
交通事故の民事裁判への出廷回数
ここまでで、交通事故の民事裁判・訴訟の判決までの期間や和解などで愁傷する場合の期間についてはわかりました。
しかし、被害者や加害者にとっては、裁判になったらどれ位裁判所に出廷しなければいけないのかも気になるかと思います。
こちらについても、統計データがあり、以下の表のようになります。
口頭弁論期日 | 2.1回 |
---|---|
争点整理期日 | 5.5回 |
つまり、裁判を提起すると平均して7~8回程度裁判所に出廷する必要があります。
交通事故の裁判は平日日中にしか行われないので、お仕事をされている方などは7~8回も裁判所に出廷する時間を作るのは大変かと思います。
もっとも、弁護士に代理人を依頼すれば、原則として当事者の方は裁判所への出廷が不要になります。
ただし、弁護士に依頼した場合でも、本人尋問期日は必ず出廷する必要があり、証人尋問や和解期日にも出廷を求められることがあります。
1回あたりの裁判に要する時間は
裁判所に出廷する時間を作る都合上、1回あたりの裁判に要する時間が気になるという方もいるかと思います。
こちらは統計データが見つかりませんでしたので、専門家にお尋ねしてみましょう。
裁判所は通常、1つの期日につき、30分~1時間程度の時間を設けています。
ただし、本人尋問や証人尋問の期日はより長い時間が設けられ、場合によっては1日がかりになることもあります。
交通事故の裁判基準って何?
交通事故の裁判における慰謝料等の金額の基準
このように、交通事故の民事裁判・訴訟は解決までにかなりの期間を要することがわかりました。
では、そのような期間を要してまで、裁判を提起するメリットはどんなところにあるのでしょうか?
そのカギは裁判基準にあります!
とはいっても、裁判基準とはいったい何なのかがそもそもわからないという方も多いかと思います。
裁判基準とは、交通事故の裁判において慰謝料等の損害賠償の金額を計算する際に用いられる基準になります。
本来は、交通事故は一つ一つ事情が異なるので、裁判においても個別に事情を踏まえた上で計算する必要がありますが、それだと
- 金額のばらつきが大きくなり、不公平となるおそれがある
- 解決までに時間がかかってしまう
ため、公平かつ迅速に交通事故の賠償問題を解決するため、裁判基準という損害賠償の金額の基準が定められています。
交通事故の裁判基準とは裁判所の裁判例の集積
裁判基準は毎年赤本で公開される
交通事故の慰謝料などの裁判基準は、弁護士が編集委員となり毎年改訂版が発行されている
「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」
という本にて公開されています。
この書籍は表紙が赤くなっていることから、通称
赤本
とも呼ばれています。
交通事故の赤本について詳しく知りたい方は、以下の記事をぜひご覧ください。
この赤本は弁護士などの専門家向けの書籍であり、一般の書店では販売されておりません。
裁判基準とは過去の裁判例の集積
この赤本に記載されている裁判基準は、過去の裁判所の裁判例の慰謝料等の金額を調査・分析した上でまとめられたものです。
東京地裁の実務に基づき賠償額の基準を示し、参考になる判例を掲載しております。
なお、この裁判基準は弁護士が慰謝料などの損害賠償を交渉する際にも用いられるため、弁護士基準とも呼ばれています。
交通事故の裁判基準は最も高額な損害賠償基準
交通事故の慰謝料等の基準は3つ
交通事故の慰謝料などの損害賠償の金額の基準には、裁判基準以外にも
- 自賠責保険に請求する場合
- 任意保険会社が提示する場合
の基準も存在し、合計で3つの基準が存在しています。
自賠責基準
自賠責基準とは、その名のとおり、加入が義務付けられている自賠責保険から支払われる保険金額を計算する際に用いる基準のことをいいます。
自賠責保険は、被害者の損害を最低限度保障するための保険であることから、自賠責基準での損害賠償額は低額なものになっています。
任意保険基準
任意保険基準とは、その名のとおり、各任意保険会社が慰謝料などの損害賠償を提示する際に用いる基準のことをいいます。
任意保険基準は、保険会社ごとに基準が異なり、かつ非公開とされているので、詳細はわかりません。
もっとも、かつては各任意保険会社共通の基準が存在し、現在もその基準が基礎になっていると考えられています。
その基準においては、自賠責基準よりも若干高い程度のものでした。
裁判基準は最も高額な損害賠償基準
そして、この後詳しく申し上げますが、裁判基準は上の二つの基準と検証して、最も高額な損害賠償の基準となっています。
いつ用いられるか | 金額 | |
---|---|---|
自賠責基準 | 自賠責への請求 | 低い |
任意保険基準 | 任意保険の提示 | 自賠責基準より高い |
裁判基準 | ・裁判 ・弁護士の交渉 |
最も高い |
むちうちなどの慰謝料の裁判基準
赤本に掲載されている傷害慰謝料の裁判基準には二種類あります。
その一つである、むちうち・打撲で他覚所見のない場合の入通院慰謝料の表は以下の表のようになっています。
表の見方としては、たとえば入院はせず(入院0ヶ月)、通院を1ヶ月した場合には、19万円の入通院慰謝料が支払われることになります。
裁判基準の入通院慰謝料は、入通院期間を基礎に金額が定められています。
ただし、通院が長期にわたる場合には
実通院日数の3〜3.5倍を慰謝料算定のための通院期間の目安とすることがあります。
それ以外の傷害慰謝料の裁判基準
続いて、先ほどの場合以外の通常の傷害慰謝料の表は以下の表のようになっています。
表の見方としては、たとえば入院を5ヶ月、通院を12ヶ月した場合には、280万円の入通院慰謝料が支払われることになります。
先ほどの表に比べると、かなり金額が高くなっていますね!
誤って違う方の表を使ってしまうと、慰謝料の見通しが大幅に狂うことになるので注意しましょう。
後遺障害慰謝料に関する裁判基準
交通事故による入通院を続けても、怪我をした箇所に痛みや痺れなどの後遺症が残ってしまうことがあります。
そういった場合、後遺障害申請というものを行い、第三者機関によって、残っている症状が後遺障害に該当するかを判断されます。
後遺障害には1級から14級までの等級があり、どの等級になるかによって、慰謝料の金額が決まります。
そして、後遺障害慰謝料の裁判基準は以下の表のようになっています。
表の見方としては、たとえば入院を5ヶ月、通院を11ヶ月した場合には、160万円の入通院慰謝料が支払われることになります。
上位の等級になると慰謝料が1000万円を超えることもあるんですね!
後遺障害の等級が認定されると慰謝料は大幅に増額するので、適切な後遺障害等級を獲得することが重要になってきます。
死亡した場合の慰謝料の裁判基準
被害者が死亡してしまった場合にも慰謝料の請求が認められます。
そして、死亡した場合の慰謝料の裁判基準は以下の表のようになります。
なお、検証のため自賠責基準及び任意保険基準の死亡慰謝料も併せて記載してみました。
被害者の立場 | 自賠責基準※ | 任意保険基準 | 裁判基準 |
---|---|---|---|
一家の支柱 | 350万 | 1500万〜2000万 | 2800万 |
母親、配偶者 | 350万 | 1200万〜1500万 | 2500万 |
その他 | 350万 | 1300万〜1600万 | 2000万〜2500万 |
※別途遺族の慰謝料請求可
表をご覧いただいてお分かりのとおり、どの基準を用いるかで慰謝料などの損害賠償の金額は大きく変わってきます。
交通事故において、解決までに長い期間を要するにもかかわらず、裁判を提起することの大きなメリットとは
裁判基準が適用されることにより慰謝料などの損害賠償の金額の大幅な増額が見込める
点にあるといえます。
裁判基準(弁護士基準)の慰謝料についてもっと知りたいという方は、以下のページに詳しく記載されていますので、ぜひご覧ください。
なお、上記のページに詳しく記載されていますが、弁護士に依頼した場合、裁判をしなくても裁判基準をベースにした示談の可能性が高いです。
裁判基準の慰謝料を簡単に計算できる方法が!
交通事故の慰謝料等の損害賠償の金額を裁判基準で計算すると大幅に増額することはお分かりいただけたかと思います。
でも、ご自身で慰謝料を一つ一つ裁判基準で計算するのは手間が掛かりますよね。
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注意すべきなのは、慰謝料計算機で算出される金額はあくまで裁判基準に基づく目安となる金額に過ぎないということです。
実際に裁判となった場合にどれ位の慰謝料等の損害賠償が認められるかは事案によって異なることになります。
より正確な裁判になった場合の慰謝料等の損害賠償額の見込みを知りたいという方は、直接弁護士に相談してみましょう。
交通事故の民事裁判・訴訟の費用相場は?
交通事故の民事裁判・訴訟を提起することで慰謝料などの損害賠償の金額の大幅な増額の可能性があることはわかりました。
もっとも、慰謝料などの損害賠償の金額が増額しても、それ以上に裁判の費用が掛かってしまっては意味がないですよね。
また、そのような費用倒れにはならない場合であっても、裁判を提起するのにどれ位の費用が掛かるかはやはり気になるところかと思います。
そこで、ここからは、交通事故の民事裁判・訴訟の費用相場について検討していきたいと思います。
裁判所に納める印紙郵券代は?
民事裁判・訴訟の流れでも少し触れましたが、裁判・訴訟を提起する際、裁判所に所定の印紙郵券代(費用)を納める必要があります。
印紙代について
そして、印紙代(費用)がいくらになるかは、民事裁判・訴訟においていくら請求するかという訴額に応じて定まります。
具体的には以下の表のようになっています。
死亡事故などの場合には訴額が1億を超えるような場合もありますが、訴額が1億だと印紙代(費用)だけで32万円も掛かるんですね!
郵券代について
また、郵券代(費用)がいくらになるかは、裁判所によって異なることになります。
例えば、東京地裁の場合には、以下のように定められています。
1 当事者(原告,被告)がそれぞれ1名の場合
合計 6,000円
内訳 500円×8枚
100円×10枚
82円×5枚
50円×5枚
20円×10枚
10円×10枚
2円×10枚
1円×20枚
2 当事者が1名増すごとに2,144円(内訳500円 4枚,50円 2枚,10円 4枚,2円 2枚)を1の額に加える(ただし,原告が複数であっても,共通の代理人がいる場合は,加える必要はありません。)。
出典:http://www.courts.go.jp/tokyo/saiban/syoutei_osirase/l4/Vcms4_00000320.html
このように郵便切手の内訳も決められていることが多いので、裁判・訴訟の提起前に提出先の裁判所への事前の確認を必ず行いましょう。
交通事故の裁判・訴訟の弁護士費用の相場は?
交通事故の民事裁判・訴訟は本人訴訟という形でも行えますが、弁護士を代理人に選任して行うことがほとんどです。
交通事故の裁判で有利な結論を得るには、適切な主張・立証が必要であり、そのためには弁護士の有する専門的な知識と経験が必要だからです。
実際、以下の表のとおり、交通事故の場合、訴訟代理人を選任している事案がほとんどで、双方とも本人訴訟の事案はわずか0.6%です。
以下の表からもわかるとおり、交通事故裁判は民事裁判全体と検証しても圧倒的に訴訟代理人を付けていることが多くなっています。
民事裁判全体 | 交通事故 | |
---|---|---|
双方訴訟代理人 | 45.5% | 92.8% |
原告のみ訴訟代理人 | 38.6% | 5.6% |
被告のみ訴訟代理人 | 2.7% | 0.9% |
双方本人訴訟 | 13.2% | 0.6% |
※「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書(第8回)」(最高裁判所・令和元年7月19日)資料2-1-1参照参照
そして、交通事故の民事裁判・訴訟の代理人を弁護士に依頼する場合には当然弁護士費用が掛かります。
では、交通事故の民事裁判・訴訟の弁護士費用に相場はあるのでしょうか?
現在、弁護士費用は自由化されており、弁護士費用は各弁護士事務所ごとに設定されています。
もっとも、以前は日弁連が弁護士報酬基準を統一的に定めており、弁護士費用が自由化された現在も旧基準のまま報酬を定めている事務所も多いです。
この旧日弁連弁護士報酬基準に従って弁護士費用を決定した場合の金額は以下の表のようになります。
経済的利益 | 総額 | 着手金 | 成功報酬 |
---|---|---|---|
100万円 | 約28万円 | 約11万円 | 約17万円 |
200万円 | 約52万円 | 約17万円 | 約35万円 |
300万円 | 約78万円 | 約26万円 | 約52万円 |
400万円 | 約94万円 | 約31万円 | 約63万円 |
500万円 | 約110万円 | 約37万円 | 約73万円 |
1000万円 | 約191万円 | 約64万円 | 約127万円 |
1500万円 | 約272万円 | 約91万円 | 約181万円 |
2000万円 | 約353万円 | 約118万円 | 約235万円 |
もっとも、最近では交通事故の事案の場合、着手金無料、成功報酬を22万円+賠償額の11%(税込)としている弁護士事務所が多いようです。
また、裁判前に相手方保険会社から賠償額提示がある場合着手金無料、成功報酬を22万円+増額分の22%(税込)とすることもあるようです。
これらの報酬基準で弁護士費用を計算した場合は以下の表のようになります。
賠償額(増額) | ・22万円+賠償額の11% ・22万円+増額分の22% |
---|---|
200万円(100万円) | 44万円 |
400万円(200万円) | 66万円 |
600万円(300万円) | 88万円 |
800万円(400万円) | 110万円 |
1000万円(500万円) | 132万円 |
2000万円(1000万円) | 242万円 |
3000万円(1500万円) | 352万円 |
4000万円(2000万円) | 462万円 |
※金額は税込の金額
※裁判の場合、追加の弁護士費用が発生する事務所もある
交通事故の裁判・訴訟を弁護士を代理人に選任して行うかどうかは、弁護士費用が裁判による損害位賠償額の増額分を上回るいわゆる
費用倒れ
にならないかどうかを慎重に決定した上で決定する必要があるといえます。
交通事故の裁判の弁護士費用負担をなくす保険
たとえ費用倒れにならないとしても、交通事故の民事裁判・訴訟の弁護士費用は被害者にとってかなりの負担になるかと思います。
もっとも、被害者の自動車の任意保険のオプションとして弁護士費用特約が付いている場合、保険会社や保険の内容にもよりますが、基本的に
上限300万円までの弁護士費用を保険会社が負担
してくれる内容になっています。
弁護士費用特約が使用できる場合、被害者は交通事故の裁判を弁護士費用の負担なくして弁護士を代理人に選任して行うことができます。
なお、弁護士費用特約は使用しても保険の等級はダウンせず、翌年以降の保険料も上がらないので、金銭的な不利益はありません。
また、被害者自身のお車の保険以外でも、被害者の
- 同居の家族
- 独身の方の場合は別居している両親
の車についている弁護士特約を利用できることがあります。
交通事故の弁護士費用特約は、過失割合が10対0のような事案の裁判でも使用することができます。
費用の点から弁護士への依頼を迷われている方は、まずご自身の保険に弁護士費用特約が付いていないかよく確認してみることをおすすめします。
弁護士費用特約については、以下の動画でも弁護士がわかりやすく解説しています。
交通事故の民事裁判・訴訟の判例の重要性
交通事故の民事裁判・訴訟を提起するにおいて、過去に裁判所が下した判断である裁判例はとても重要になります。
そこで、最後に交通事故の民事裁判・訴訟における判例の重要性についてご説明していきたいと思います。
交通事故の裁判での過失割合の主張根拠になる
交通事故の民事裁判・訴訟においては、過失割合が大きく争われる事案も多く存在します。
そして、慰謝料等の裁判基準同様、大量の同種事案を公平・迅速に処理すべく、事故の類型毎に基本的な過失割合の基準が存在します。
その過失割合の基準は、東京地裁で民事交通訴訟を集中して担当する専門部の裁判官が中心となり作成した認定基準が実務上用いられています。
その認定基準は、「別冊判例タイムズ 民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」という書籍において公表されています。
このように、交通事故の裁判において、裁判所が過失割合を決める際にも一定の基準は存在します。
とはいえ、その基準はあくまで事故の類型毎の基本的な過失割合の基準であり、同じ類型の事故でも細かな部分は交通事故毎に異なります。
そこで、被害者の実際の事故に近い交通事故の裁判の判例を調査し、その判例で下された過失割合の判断を自身の主張の根拠にすることがあります。
その意味において、交通事故の民事裁判・訴訟における判例は重要であるといえます。
交通事故の裁判での慰謝料等の主張根拠になる
裁判基準のところでお伝えしたとおり、交通事故の民事裁判・訴訟においては、慰謝料等の損害賠償の金額の基準が定められています。
とはいえ、その裁判基準は「基準」であり、裁判においてその「基準」以上の金額が絶対にも認められないわけではありません。
実際に裁判で被害者の被った精神的苦痛を詳細に主張・立証することで、裁判基準の金額以上の損害賠償額が下された判例も多数あります。
そこで、被害者の実際の事案に近い判例を調査し、その判例で下された判断や金額を自身の慰謝料等の損害賠償の主張の根拠にすることがあります。
その意味において、交通事故の民事裁判・訴訟における判例は重要であるといえます。
裁判の見通しを立てる|福井のニュースを例に
交通事故の民事裁判・訴訟においては、法律上はっきりしていない事項や実務上争いのある事項について判断を下した判例があります。
ここでは、ニュースでも話題になった福井県のセンターラインオーバーの交通事故の裁判を例に挙げてみたいと思います。
こちらの裁判は色々な意見や解釈がありますが、確実なこととしては
センターラインをオーバーした車両の相手方車両の自賠責保険の適用の余地がある
ということです。
通常、センターラインをオーバーした車両の相手方車両には過失が認められず、自動車損害賠償保障法3条但書により、自賠責保険の適用外になります。
もっとも、自動車損害賠償保障法3条但書は、今回でいえばセンターラインをオーバーした車両の相手方車両側に無過失の立証責任を負わせています。
そして、上記の裁判は、センターラインオーバーの車両の相手方車両が無過失とまではいえないとして、自動車損害賠償保障法3条の適用を認めました。
つまり、上記の判例を前提とすれば、センターラインをオーバーした車両でも自賠責保険に請求する余地があるという裁判の見通しが立てられます。
このように、実際に裁判を提起した場合の見通しを立てる上で、交通事故の民事裁判・訴訟における判例は重要であるといえます。
自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。
ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと(略)を証明したときは、この限りでない。
出典:自動車損害賠償保障法第3条
このように、交通事故の民事裁判・訴訟において、判例を調査・分析することは重要ですが、一般の方が判例を調査・分析するのはかなり困難です。
その意味においても、交通事故の民事裁判・訴訟においては、弁護士を代理人に選任する必要性が高いと考えられます。
① | 過失割合の主張根拠になる |
---|---|
② | 慰謝料の主張根拠になる |
③ | 裁判の見通しを立てる材料になる |
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最後に一言アドバイス
それでは、最後になりますが、交通事故でお悩みの方に一言アドバイスをお願いします。
交通事故の裁判の提起は慰謝料などの損害賠償額の大幅な増額の可能性といったメリットがあります。
一方で、裁判を提起すれば、解決までに長い期間を要することや費用が発生するということも考慮する必要があります。
交通事故の裁判を提起すべきかどうかお一人では中々決められないという方は、上記のサービスなどを利用してまずは弁護士に相談してみましょう。
まとめ
いかがだったでしょうか。
このページを最後までお読みの方は、
- 交通事故の民事裁判・訴訟の流れ
- 交通事故の民事裁判・訴訟に要する期間は平均で約1年だが、判決までとなると約1年半
- 交通事故の裁判基準とは、裁判で用いられる最も高額な慰謝料等の損害賠償の金額を計算するための基準
- 交通事故の民事裁判・訴訟に要する費用の相場
- 交通事故の民事裁判・訴訟における判例の重要性
について理解を深めていただけたのではないかと思います。
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皆さまのお悩みが早く解決するよう、お祈りしています。
交通事故裁判の流れについてのQ&A
交通事故の裁判では何を決めるの?
裁判には民事裁判と刑事裁判の2つがあります。民事裁判は、加害者から被害者への損害賠償義務の有無や金額についてあらそいます。刑事裁判は、加害者に刑罰を負わせるべきか、量刑はどうなるかをあらそいます。民事裁判は誰でも提起できますが、刑事裁判は検察官のみ提起できます。つまり、交通事故被害者が起こす裁判は、民事裁判です。もっとも、交通事故の損害賠償については、まず示談による解決をこころみることが基本です。 刑事裁判と民事裁判の違い
交通事故の裁判では何を準備すればいい?
多くの交通事故の裁判は民事訴訟になるため、訴状という書類を裁判所に提出する必要があります。提出する訴状には①当事者の住所氏名、②請求金額、③請求金額の内訳、④事故内容を主に記載しなくてはなりません。代理人がいる場合は委任状などの必要書類があります。 交通事故の民事裁判・訴訟の流れを確認
裁判の期間を短くするには?
裁判の期間は和解案を受け入れれば短くなります。裁判の判決まで待つとなると平均1年半の期間を必要とします。また、もし当事者が判決に納得できず、控訴という流れになった場合、争いが終了するまでの期間はさらに長くなる可能性が高くなります。 交通事故の民事裁判・訴訟の期間について
交通事故で裁判をするメリットは何?
裁判を起こすメリットは、慰謝料などの損害賠償の大幅な増額が見込める可能性が高いことにあります。賠償金額を裁判基準で請求することができるため、金額が大きく変わる見込みが大いにあります。その金額は自賠責基準や任意保険基準よりも高いことが多いです。 交通事故の裁判基準って何?
弁護士費用を抑えるには?
自動車事故の任意保険に弁護士費用特約が付いているか確認しましょう。もし弁護士費用が内容に含まれている場合、基本的に上限300万円まで保険会社が負担してくれます。また被害者ご自身の自動車保険以外でも、同居家族に付いている弁護士特約が利用できる可能性が高いです。 弁護士費用特約について解説
交通事故の裁判の判例は自分で調べられる?
極めて難しいと言えます。交通事故の民事裁判・訴訟をするにあたって、慰謝料や過失割合の主張するために、過去の判例を調査・分析することは大変重要になります。しかし一般の方が判例を調査・分析するのはかなり困難です。代理人として弁護士に任せることをおすすめします。 交通事故の民事裁判・訴訟の判例の重要性
この記事の監修弁護士
岡野武志弁護士
アトム法律事務所弁護士法人
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-11-28 合人社東京永田町ビル9階
第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。