高次脳機能障害の障害者手帳|障害年金・給付金とは無関係!?失語症などの認定基準は?

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高次脳機能障害の障害者手帳|障害年金・給付金とは無関係!?失語症などの認定基準は?

交通事故の被害に遭い、頭を強く打ってしまった…。

幸い命は取り留めたものの、性格が以前と変わってしまったような気がする…。

そういった症状がある場合、高次脳機能障害である可能性が疑われます。

もしもそうなってしまった場合、事故の相手側からの補償を受け取るのはもちろん障害者手帳を申請すれば様々な支援・サービスを受けられる可能性があります。

しかし実際のところ、

  • 障害者手帳を申請した方が良いのだろうか?
  • 高次脳機能障害で交付される可能性がある障害者手帳の種類やその等級は?
  • 障害者手帳が交付されないと障害年金給付金は受け取れないの?

など、わからないことがたくさんあると思います。

そこで今回このページでは、高次脳機能障害の障害者手帳の等級申請や障害年金との関係について、お悩みの皆さまと一緒に勉強していきたいと思います。

なお、専門的な解説は、テレビや雑誌でお馴染みの岡野武志弁護士にお願いしています。

よろしくお願いします。

高次脳機能障害の後遺症については、ご本人に加え、ご家族の方への負担も非常に大きいものと考えられます。

これからもリハビリなどを続けていくためには、事故の相手側から受けられる損害賠償の他にも、受けられる支援があれば望ましいはずです。

そこで今回は、高次脳機能障害の障害者手帳に関して、可能な限りわかりやすく解説していきたいと思います。

最近ではGlobeのKEIKOさんが高次脳機能障害になったことで、なんとなく聞いたことがあるという方もいらっしゃるかもしれません。

音楽活動からの引退を表明した音楽プロデューサー小室哲哉さん(59)の十九日の記者会見は、長期にわたる家族の介護の苦労も浮き彫りにした。くも膜下出血の後遺症で脳の機能障害が進む妻KEIKOさん(45)の状況を、赤裸々に説明した小室さん。同じ境遇にある人々から同情の声が相次いだ。

(略)

小室さんによると、七年前に発症したKEIKOさんは、身体的な障害はないが、高次脳機能障害で音楽への関心が徐々に失われ、日常会話も困難に。音楽への関心を取り戻してもらおうと努力したが、「五年近く、歌うことはもうなくなりました」。(以下省略)

とはいえ、あまり聞きなれない言葉ではありますよね。

まずは、高次脳機能障害の症状などについて見ていきましょう。

高次脳機能障害の障害者手帳に関する基礎知識

高次脳機能障害の障害者手帳に関する基礎知識

「高次脳機能障害」の原因や症状とは

高次脳機能障害とは、交通事故でくも膜下出血となった場合や、病気で脳梗塞となった場合のように脳に損傷が生じた場合に発症する可能性があるものです。

脳の損傷により、意識不明の状態となり、幸い意識が回復した後に、

  • 思ったことをうまく言葉で伝えられない
  • 思うように体を動かせず、作業がうまく進まない
  • 以前よりも、仕事のやる気や集中力が続かない

といった症状を感じることがあるかもしれません。

感じると言っても、実は被害者であるご本人は事故前との違いを認識していないことがほとんどなのだそうです。

よって、ご家族の方が症状に気づくことが多いようです。

他に考えられる主な症状としては、以下のようなものがあるようです。

高次脳機能障害の症状

症状 症状例
失語症 ・相手の言葉を理解できない
・うまく言葉が出てこず、なめらかに話せない
記憶障害 ・自分が何者でどこにいるのかわからない
・今がいつなのかわからなくなる
病識欠如 ・以前の人格と違うことに気づかない
失行症 ・体を思うように動かせず、道具をうまく使えない
失認症 ・物の形や色、触っているものが何かわからない
意欲・発動性低下 ・以前と比べてやる気が沸かない
・すぐ眠ってしまう

人格が変わってしまうほど重い後遺症であり、ご本人だけでなく、ご家族の方にも大きな影響が出てくるはずです。

交通事故による脳損傷が原因で高次脳機能障害となった場合、そのことに対する補償は、加害者や相手側の保険会社から受け取ることができます。

高次脳機能障害となった場合の保険金には、ご自身側の保険会社から受け取れるものもあります。

しかし、治療費や慰謝料を受け取ったからといって、全てが解決できるものではありませんよね。

高次脳機能障害が完治するまで、ずっと付き合っていかなければならないことになります。

保険会社からの補償だけでなく、その他にも支援を受けられるのであれば非常にありがたいはずです。

その一つの方法として、障害者手帳の交付を受けることが考えられます。

障害者手帳の交付を受ければ、以下のような支援サービスを受けられることになります。

身体障害者手帳取得により受けられるサービス(一例)
医療費などの助成
・医療費の助成
・車椅子や補聴器などの補装具の助成
・リフォーム費用の助成
税金の軽減
・所得税
・住民税
・自動車税など
公共料金の割引サービス
・公共交通機関の運賃割引
・高速道路の利用料金割引
・NHKの放送受信料割引
・携帯電話会社の料金割引
・美術館や博物館、動物園など公共施設の入場料割引
障害者雇用での就職
一般採用だけでなく、障害者雇用での募集にも応募可能

※ 各自治体により対象者、サービス内容は異なる場合があるため、居住地域の福祉担当窓口に問い合わせが必要。

障害者手帳と一言で言いましたが、実は精神障害者保健福祉手帳療育手帳といった精神に関するものと、身体障害者手帳という身体に関するものがあります。

そして、高次脳機能障害の場合、すべての障害者手帳が交付される可能性があります。

高次脳機能障害に対する障害者手帳の種類
精神障害者保健福祉手帳 精神障害、精神障害+発達障害、発達障害
療育手帳 知的障害、知的+発達障害
身体障害者手帳 身体障害、内部障害

では、それぞれの手帳について詳しく見ていきましょう。

高次脳機能障害の障害者手帳①精神障害者保健福祉手帳

まず、「精神障害者保健福祉手帳」とは、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)により、精神障害発達障害のある方が、各種サービスを受けやすくすることを目的に交付されるものです。

精神保健福祉法

精神障害者の医療・保護、社会復帰の促進、自立への援助、発生の予防などを行い、福祉の増進と国民の精神的健康の向上を図ることを目的とした法律。

ただし2年毎に手帳の更新義務があり、そのたびに診断書の提出が必要になるそうです。

交付の対象

なんらかの精神疾患を持つ方が対象となります。

対象となる精神疾患には、以下のようなものがあるそうです。

精神障害者保健福祉手帳の対象となる精神疾患
具体例
・統合失調症
・非定型精神病
・そううつ病
・てんかん
・中毒精神病
・精神遅滞を除く器質精神病
高次脳機能障害
・精神神経症状をともなう発達障害

ただし、交付判定には細かい基準が設けられているようなので、詳しくはお住まいの市区町村の障害福祉担当窓口に相談していただくのが確実です。

さらに、精神障害者保健福祉手帳を受けられるのは、精神疾患があると診断された日から6ヶ月以上経過している場合となります。

申請方法

申請については、お住まいの市区町村の窓口にすることになります。

必要書類は、各市区町村ごとで異なるようですが、下記の書類は必ず必要となるようです。

必要書類
  1. ① 障害者手帳申請書
  2. ② 診断書
  3. ③ 本人の写真

(更新申請をする場合)

④ 現在所持している手帳の写し

診断書については、高次脳機能障害の診断・治療に従事している医師に記載してもらう必要があるそうです。

具体的には、高次脳機能障害の診断・治療に従事している精神科医のほか、リハビリテーション科医神経内科医脳外科医などになります。

また、既にお伝えの通り、診断書の作成日は初診日から6ヶ月が経過していることが必要となります。

高次脳機能障害の障害者手帳②療育手帳

一方、知的障害のある方やそのご家族をサポートするために、「療育手帳」というものもあります。

都道府県ごとに手帳の名前が違うので、療育手帳のことを「愛の手帳」や「みどりの手帳」と呼ぶ自治体もあるようです。

療育手帳の制度は、精神障害者保健福祉手帳のように法律で定められた制度というわけではありません。

とはいえ、この手帳は公的な知的障害者向け福祉サービスを受ける際に必要な「証明書」となります。

交付の対象

知的障害者、もしくは知的障害を伴う発達障害者の方が対象となります。

ただし、申請すれば必ず取得できるというものではなく、障害の程度や知能指数によって判定されることになります。

具体的には、標準化された知能指数がIQ75もしくはIQ70以下の場合には交付される可能性があります。

申請方法

申請については、お住まいの市区町村の窓口にすることになります。

ただし、申請に際しては、18歳未満の方は児童相談所、18歳以上の方は知的障害者更生相談所で障害の程度などの判定を受ける必要があります。

判定を受けたい場合は、直接電話で判定機関に予約を行ってみてください。

高次脳機能障害の障害者手帳③身体障害者手帳

最後に身体障害者手帳は、事故や病気により身体障害を負った場合に、身体障害者福祉法に基づいて都道府県知事が交付する全国共通のものです。

身体障害者福祉法

身体障害者の自立と社会経済活動への参加を促進するため、身体障害者を援助、及び必要に応じて保護し、身体障害者の福祉の増進を図ることを目的とした法律。

交付の対象(等級「1級~6級」まで)

なんらかの身体障害を持つ方が対象となります。

身体障害としては、言語障害や内臓障害、手足の麻痺など、様々なものが挙げられます。

身体障害の等級表をご覧になりたい方はコチラの障害名をクリック↓↓
視覚障害
聴覚又は平衡機能の障害
音声機能、言語機能又はそしゃく機能障害
上肢不自由障害
下肢不自由障害
体幹不自由障害
脳原性運動機能障害
心臓機能障害
じん臓機能障害
呼吸器機能障害
ぼうこう又は直腸の機能障害
小腸機能障害
免疫機能障害
肝臓機能障害

そして、身体障害者手帳では、その障害の程度に応じて1級~7級までの等級が定められているそうです。

障害の程度は、等級の数字が小さいほど重く、大きくなるほど障害の程度は軽くなります。

身体障害者手帳の等級が1級、2級だと、重度の障害となります。

ただし、3級でも内部障害の場合は重度の障害と扱われる場合もあります。

7級の等級もありますが、7級では法律上の障害者とは認定されず、身体障害者手帳は交付されません。

1級~6級の方が、身体障害者福祉法での障害者として認定され、障害者手帳が交付されるのですね。

7級の認定であっても、7級の障害が2つ以上重複してある場合は6級となり、身体障害者手帳がもらえることになるそうです。

ちなみに、18歳未満で身体に障害がある方のための法律は、児童福祉法になるそうです。

注意

高次脳機能障害の場合、精神的な症状が現れることがほとんどですが、失語症や身体の麻痺といった症状を伴うことがあるそうです。

そういった場合に、身体障害者手帳が交付される可能性があります。

一方で、身体的な障害を伴わない高次脳機能障害については、身体障害者手帳による福祉サービスの対象になりません。

申請方法

調べてみたところ、提出先は、住んでいる市区町村の障害福祉の担当窓口 (福祉事務所福祉担当課になるそうです。

申請の際には、基本的に以下の4つが必要となります。

必要書類
  1. ① 交付申請書
  2. ② 身体障害者診断書・意見書
  3. ③ 印鑑
  4. ④ マイナンバー

(代理人が申請する場合)

⑤ 代理権の確認書類(委任状や申請者本人の健康保険証など)

⑥代理人の身元確認書類

15歳未満の児童の場合は、保護者が申請することになります。

交付申請書や身体障害者診断書の名称や書式は、市区町村によって異なる可能性があります。

また、必ずしも①~⑥が必要とも限りませんので、詳しくはお住まいの市区町村の障害福祉担当窓口に確認してみてください。

指定医による診断書・意見書が必要

ただし、どの市区町村においても、診断書や意見書は、指定医に記入してもらうことが必須となっています。

指定医とは、身体障害者用の診断書を作成できる県知事が指定した医師のことです。

よって、医師なら誰でも診断書が出せるわけではありません。

一方、交通事故の相手側に損害賠償を請求する際にも診断書が必要となります。

その場合は通常、ご自身の担当医師に記入してもらうことになります。

また、精神障害者保健福祉手帳の診断書は、高次脳機能障害の診断・治療に従事している医師に記入してもらう必要があります。

そのため、様々な申請をするにあたって、診断書を記載してもらう医師が異なる場合があります。

交通事故(自賠責保険)の後遺障害診断書は、書式や書き方にも異なる部分があるので、その点にも注意が必要です。

なお、手間を省くため、損害賠償請求に必要な診断書を身体障害の指定医師に記入してもらうことも、その医師が同意すれば不可能ではないそうです。

とはいえ、適正な損害賠償を受け取るためには、これまでの経過などを詳しく記入してもらう必要があり、それにはやはり担当医に記載してもらった方が良いでしょう。

高次脳機能障害で障害者手帳を持つメリットとデメリット

以上、高次脳機能障害の後遺症が残った場合に交付される可能性がある障害者手帳について見てきました。

手帳が交付されれば、医療費の助成税金の軽減など、多くの支援・サービスを受けられるというメリットがあるんでしたよね。

一方で、障害者手帳を持ち「障害者」になることを躊躇う方もいらっしゃるかもしれません。

その場合には、手帳を持つことはデメリットとなってしまうかもしれません。

もちろん、手帳を持つことが嫌なのであれば、申請しなくても問題ありません。

ただし、手帳がなければ行政からの支援を受けることはできません。

症状の改善に向けてリハビリなどの治療を続けるためにも、障害者手帳を持つことを検討してみるのも一つの方法ではあるかと思います。

高次脳機能障害ではどのような障害者等級が認定される?

高次脳機能障害ではどのような障害者等級が認定される?

障害者手帳が交付されれば、様々な支援やサービスを受けられることがわかりました。

ただし、その内容や税金の軽減率などは、認定される等級によって変わってくるそうです。

では、高次脳機能障害の場合には、どのような障害者等級が認定されるのでしょうか?

精神障害者保健福祉手帳

まず、精神障害者保健福祉手帳の等級は、1級~3級までとなっているそうです。

精神障害者保健福祉手帳の等級
1 精神障害であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの
精神障害が原因で、常に誰かの援助がなければ生活を送ることが難しいと感じられる状態。
たとえば、外出や食事の用意、入浴などの身の回りの動作を一人では行うことができない場合など。
2 精神障害であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの
誰かの助けがなくても1人で外出したり、障害者自立支援法に基づく就労支援、小規模作業所などに参加して単純な仕事をすることは可能。
しかし、予想外のできごとの発生など、少なからず本人がストレスを感じる状況に直面した場合には対処しきれない傾向がある。
3 精神障害であって、日常生活若しくは社会生活が制限を受けるか、又は日常生活若しくは社会生活に制限を加えることを必要とする程度のもの
1人で外出したり、障害者自立支援法に基づく就労支援や、小規模作業所などに参加したりすることは可能。
また、一定の配慮がある職場では一般就労をすることも可能なケースあり。

高次脳機能障害の場合、1級~3級すべてが認定の対象となり得ます。

ただし、上記の判定基準はあくまで目安となっています。

申請後に、各都道府県ごとの精神保健センターで審査があり、そこで何級に当てはまるかが初めて決まることになります。

療育手帳

療育手帳の等級(認定区分)は、自治体ごとに異なっているようです。

重度Aとそれ以外のBに分ける自治体が多いようですが、「A~C」や「1度~4度」と区分する自治体もあります。

また、軽度の知的障害の場合には、手帳が交付される自治体と交付されない自治体があるとのことです。

認定区分一例

A1:重度の知的障害(IQ35以下)

A2:中度の知的障害(IQ36~50)であって、3級以上の身体障害を合併している者

B1:中度の知的障害(IQ36~50)

B2:軽度の知的障害(IQ51~75)

18歳未満の場合は児童相談所、18歳以上の場合は知的障害者更生相談所などで、自治体指定の心理判定員や小児科医がIQや日常動作を見て、総合的に判定されることになります。

身体障害者手帳

高次脳機能障害で、失語症や手足の麻痺などの障害を併発している場合には、身体障害者手帳も交付される可能性があるということでしたね。

ということで、失語症と麻痺に対する等級について簡単にご説明します。

失語症の認定基準

まず失語症については、以下のような等級が認定される可能性があります。

音声機能、言語機能又はそしゃく機能の障害
3級:音声機能、言語機能又はそしゃく機能の喪失
音声を全く発することができない、もしくは発声しても言語機能が失われている場合
4級:音声機能、言語機能又はそしゃく機能の著しい障害
音声もしくは言語機能の障害のため、音声、言語のみを用いて意思を疎通することが難しい場合

完全な失語症の場合3級が、疎通が難しい程度であれば4級の等級が認定されることになるでしょう。

手足の麻痺の認定基準

続いて、手足の麻痺が残った場合、麻痺してしまったのが手の場合は「上肢不自由障害」の等級表の、足の場合は「下肢不自由障害」の等級表の認定基準を満たせば、、1級~7級が認定される可能性があります。

ただし、お伝えの通り、7級の場合には身体障害者手帳が交付されません。

他の障害と併せて、6級に繰り上がった場合のみ、交付されることになります。

障害者手帳と交通事故の後遺障害の等級認定の関係

以上のような障害者手帳ですが、事故の損害賠償請求と同時に申請を行うことも可能です。

高次脳機能障害に対する損害賠償請求を行うにあたっては、後遺症の等級認定を受ける必要があると思うのですが…。

その際、障害者手帳の等級認定や交付の有無が、損害賠償請求に何か影響するのでしょうか?

行政が判断する障害者手帳と交通事故の損害賠償請求は全く別物です。

障害者手帳の等級認定は、様々な法律によって行政から受けることができるサービスや支援の内容を判断するためのものです。

一方、交通事故の後遺症の等級認定は、将来得られたはずの利益の損失額や慰謝料を決定するためのものになります。

つまり、障害者手帳の交付は受けられなかったとしても、交通事故の損害賠償請求には影響はないということですね。

高次脳機能障害の障害者手帳が交付されれば障害年金・給付金が受け取れる?

高次脳機能障害の障害者手帳が交付されれば年金が受け取れる?

ところで、障害者手帳と併せて障害年金という言葉もお聞きになったことがあるのではないでしょうか。

障害年金とは障害者手帳が交付されたことで受けられる支援の一部なのか、それとは別に金銭の支援を受けられるものなのかどうか…。

ここから詳しく見ていきましょう。

障害者手帳と障害年金は別物

まず、障害者手帳と障害年金とはまったく別物なのだそうです。

障害者手帳による医療サービスと障害年金を混同している方も多くいらっしゃるかと思いますが、障害者手帳は地方公共団、障害年金はの制度となっています。

そして、高次脳機能障害については、障害者手帳だけでなく、障害年金の支給対象疾患にもなっているようです。

ただし、単に申請書類を提出すればもらえるものではなく、日本年金機構の定める一定の基準を満たしている必要があります。

障害年金とは

障害年金とは、病気や怪我によって生活や仕事などが制限されるようになった場合に、現役世代の方も含めて受け取ることができる年金です。

障害年金には「障害基礎年金」と「障害厚生年金」があるようです。

障害年金の支給対象者
障害基礎年金
初診日に国民年金に加入していた方
障害厚生年金
初診日に厚生年金に加入していた方

そして、障害年金を受給するためには、おおまかにいうと2つの条件を満たしている必要があるそうです。

障害年金を受給するための条件
初診日の前日時点で、初診日の月の前々月までの公的年金の加入期間の2/3以上の期間について、保険料が納付または免除されていること。
もしくは、初診日において65歳未満であり、初診日の月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと。
障害の程度が日本年金機構の定める基準に該当していること。

① の要件を満たしていなければ、どんなに症状が重くても障害年金を受給することはできないそうです。

ご自身が保険料の納付要件を満たしているかどうかは、お近くの年金事務所で確認することができます。

① の要件を満たしていることがわかった場合には、②の要件を満たしているかどうかが重要となってきます。

それでは、実際どのくらいの症状であれば認定されるのでしょうか。

ここからは高次脳機能障害の認定基準についてご説明します。

高次脳機能障害の障害年金の等級

高次脳機能障害に関する、日本年金機構の定める障害等級は以下の通りになっています。

高次脳機能障害の障害年金の基準
等級 障害の状態
1 高度の認知障害、高度の人格変化、その他の高度の精神神経症状が著明なため、 常時の援助が必要な場合
2 認知障害、人格変化、その他の精神神経症状が著明なため、日常生活が著しい制限を受ける場合
3 認知障害、人格変化は著しくないが、その他の精神神経症状があり、労働 が制限を受けるもの 認知障害のため、労働が著しい制限を受ける場合
障害手当金※ 認知障害のため、労働が制限を受ける場合

※ 障害基礎年金の場合は障害手当金は支給されない。

障害厚生年金では、障害等級の3級よりも軽い障害が残った場合に、一時金として障害手当金が支給されるそうです。

また、障害基礎年金については、3級の場合には障害年金が支給されません。

障害年金の支給対象者
障害基礎年金
日本年金機構の定める障害等級1級~2級に認定された方
障害厚生年金
日本年金機構の定める障害等級1級~3級に認定された方

失語症や麻痺が残った場合は別途申請の必要あり

そして、高次脳機能障害では失語症や手足の麻痺などの障害を併発しているケースもあるということでした。

その場合、失語症や手足の麻痺については、別途申請する必要があるそうです。

そうすれば、それぞれの障害について等級が認定され、併合認定されることになります。

併合認定とは、複数の障害をまとめて1つの障害として認定するものです。

高次脳機能障害で失語症や手足の麻痺を併発している場合には、併合して等級が上がる可能性も考えられます。

よって、合わせて申請することをおすすめします。

失語症や麻痺についての認定基準は、以下の通りになっています。

失語症の障害年金の基準
2 音声または言語機能に著しい障害を有するもの
発音に関わる機能を喪失するか、話すことや聞いて理解することのどちらか又は両方がほとんどできないため、日常会話が誰とも成立しない場合
3 言語の機能に相当程度の障害を残すもの
話すことや聞いて理解することのどちらか又は両方に多くの制限があるため、日常会話が互いに内容を推論したり、たずねたり、見当をつけることなどで部分的に成り立つ場合
障害手当金 言語の機能に障害を残すもの
話すことや聞いて理解することのどちらか又は両方に一定の制限があるものの、日常会話が互いに確認することなどである程度成り立つ場合
手足の麻痺の障害年金の基準
1 1上肢及び1下肢の用を全く廃したもの
②四肢の機能に相当機能の障害を残すもの
①日常生活の動作のすべてが一人で全くできない場合又はこれに近い場合
②日常生活の動作の多くが一人で全くできない場合又は一人でできるが非常に不自由な場合
2 1上肢及び1下肢の機能に相当程度の障害を残すもの
②四肢に機能障害を残すもの
①日常生活の動作の多くが一人で全くできない場合又は一人でできるが非常に不自由な場合
②日常生活の動作の一部が一人で全くできない場合又はほとんどが一人でできてもやや不自由な場合
3 1上肢及び下肢に機能障害を残すもの
日常生活の動作の一部が一人で全くできない場合又はほとんどが一人でできてもやや不自由な場合

障害年金の金額は?

では、障害年金を受け取れることになった場合、どれほどの金額が支給されるのでしょうか?

障害基礎年金は定額

障害基礎年金については定額で、計算式は以下のようになっているそうです。

障害基礎年金の計算式
計算式
1 779,300円×1.25+子の加算
2 779,300円+子の加算
子の加算 第一子 224,300
第二子
第三子以降 74,800

障害厚生年金は収入により異なる

一方の障害厚生年金については、厚生年金に加入していた期間や納めた保険料などで異なるそうです。

障害厚生年金の計算式
計算式
1 報酬比例の年金額×1.25+障害基礎年金1 +配偶者の加算
2 報酬比例の年金額+障害基礎年金2
3 報酬比例の年金額(最低保障額585,100円)
配偶者の加算 224,500

特別障害給付金とは

特別障害給付金とは、特別な事情により障害年金を受給できない一定の障害者の方に対し、福祉的措置として支払われ給付です。

具体的な支給条件や支給額については、以下をご覧ください。

交通事故により高次脳機能障害の後遺症が残ってしまった場合、受けられる支援は受けられた方が良いはずです。

障害者手帳や障害年金・給付金の申請手続きに関しては、被害者の方ご自身で動くことも多くなってしまうかもしれません。

とはいえ、金銭的な支援が受けられることは、今後のリハビリなどにも大きく影響してくるものなので、申請を検討してみてください。

一方、交通事故に対する損害賠償を受けるにあたっては、弁護士に依頼するメリットが大きいといえます。

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以上、高次脳機能障害障害者手帳障害年金との関係について理解を深めていただけたでしょうか。

手帳や年金とは別に、事故の相手側からしっかりとした損害賠償を受け取るためには、弁護士に相談した方が良いと思われた方もいらっしゃるはずです。

しかし、弁護士の知り合いなんていないし、全国に約4万人いる弁護士の中から、誰に相談すれば良いのかなんてわかりませんよね。

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最後に一言アドバイス

それでは、最後になりますが、高次脳機能障害の障害者手帳申請や損害賠償請求に関してお悩みの方に一言アドバイスをお願いします!

まずは医師の診断を受け、じっくり療養し、お大事になさってください。

それでも残念なことに、高次脳機能障害の後遺症が残ってしまった場合、損害賠償請求に関しては弁護士に相談することをお勧めします。

なぜなら、日常生活に支障が及ぶような後遺症が残るような場合、適正な金額の補償を受けるべきだからです。

しかし、保険会社から示談金を提示され、書類にサインしてしまうと、あらためて慰謝料などを請求することは極めて困難になります。

そうなる前に、ぜひ弁護士無料相談を活用してみてください。

面倒な手続きや交渉などのお力にもなれるはずです。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

最後までお読みいただけた方には、

  • 高次脳機能障害障害者手帳を申請した場合のメリットやデメリット
  • 高次脳機能障害で交付される可能性がある障害者手帳の種類やその等級
  • 高次脳機能障害の障害者手帳と障害年金・給付金の関係

などについて、理解を深めていただけたのではないかと思います。

また、損害賠償請求に関して少しでも不明な点がある場合には、弁護士に相談した方が良いと感じた方もいらっしゃるかもしれません。

自宅から出られない方や、時間のない方は、便利なスマホで無料相談を利用するのがおすすめです!

そうではなく、やっぱり直接会って話がしたいという場合は、全国弁護士検索を使って弁護士を探してみてください。

また、このホームページでは、後遺症や身体障害者手帳に関するその他関連記事も多数掲載していますので、ぜひ参考にしてみてください!

高次脳機能障害の障害者手帳についてのQ&A

高次脳機能障害で交付される障害者手帳は?

高次脳機能障害の場合、①精神障害者保健福祉手帳②療育手帳③身体障害者手帳の三種類のどれかが交付されます。障害によってそれぞれ種類も申請方法も異なりますので注意が必要です。障害者手帳をもつことで行政や公共施設から支援サービスが受けられます。 高次脳機能障害の障害者手帳に関する基礎知識

障害者手帳と後遺障害の等級認定は同じ?

全くの別物です。障害者手帳の等級認定は、法律によって行政からサービスや支援が受けられる内容を判断するためのものです。一方、交通事故の後遺症の等級認定は、将来得られたはずの利益の損失額や慰謝料を決定するためのものになります。そのため障害者手帳の交付は受けられなくても、交通事故の損害賠償請求には影響はないです。 高次脳機能障害で認定される障害者等級は?

障害者手帳を交付されたら給付金がもらえる?

障害年金がもらえます。高次脳機能障害については、障害者手帳だけでなく、障害年金の支給対象疾患にもなっています。障害年金とは、病気や怪我によって生活や仕事などが制限された場合に、年齢関係なく受け取ることができる年金です。金額は障害者等級や年金加入期間などに応じて異なります。また事情により障害年金を受給できない一定の障害者の方に対して特別障害給付金が支給されます。 障害者手帳の交付で受けとれる給付金

障害者手帳の申請のほかに何をすべき?

交通事故に対する損害賠償の手続きをしなければなりません。障害者手帳の申請と慰謝料に関する交渉は全くの別物です。被害者の方が障害者手帳や障害年金・給付金の申請に注力するためにも、事故の賠償金は弁護士に相談するのがおすすめです。 高次脳機能障害の損害賠償請求を弁護士相談

この記事の監修弁護士

岡野武志弁護士

アトム法律事務所弁護士法人
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-11-28 合人社東京永田町ビル9階

第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。

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