バイクがすり抜けをしたときに交通事故が発生…バイク側の過失割合は?
この記事のポイント
- バイクによるすり抜け行為は、行われた方法や場所・結果などの状況によっては道路交通法違反に問われる可能性がある
- バイクがすり抜けをしたときに事故が起きた場合、バイク側にも一定の責任があるが、具体的な過失割合はケースにより異なる
- 追突事故であっても、すり抜けによる割込み後に発生したケースの場合、追突されたバイク側にも過失が認められる可能性がある
バイクがすり抜けをしたときに発生した交通事故における、バイク側の責任や過失割合を知りたい人におススメの記事です。
目次
バイクによるすり抜けは、いわゆる巻き込み事故やサンキュー事故の原因となる可能性の高い運転行為です。
上記の動画のコメントや投稿欄では、バイク側と自動車側のどちらが悪いかについて意見が分かれているようです。
こちらの記事では、バイクによるすり抜けは違反なのかや交通事故が発生した場合のバイク側の過失割合などの情報をお伝えします。
バイクのすり抜けは道路交通法違反?
すり抜けが違反になるかは状況次第
バイクによるすり抜けは、法律上グレーゾーンだといわれることが多いです。
バイクのすり抜けについて調べてたらグレーゾーンばっかりでなんだかな~って感じになってる
— ますた (@kjhsodlf) October 2, 2018
これは、道路交通法上、「すり抜け」そのものを禁止している条文が存在していないことが理由と考えられます。
もっとも、すり抜けの方法や行った場所、すり抜けをした後の結果など状況次第では、道路交通法違反に問われる可能性があります。
そこで、どのようなすり抜けが違反となるかを、道路交通法の条文から考えていきたいと思います。
車線変更を伴うすり抜けは追い越し
道路交通法において、すり抜けを含む行為の中で明確に定義されている行為は追い越しです。
追越し 車両が他の車両等に追い付いた場合において、その進路を変えてその追い付いた車両等の側方を通過し、かつ、当該車両等の前方に出ることをいう。
すり抜けも「追い付いた車両等の側方を通過し、かつ、当該車両等の前方に出る」行為なので、追い越しに当たる可能性があります。
もっとも、追い越しというためには「進路を変えて」という要件も満たす必要があります。
四輪車の場合、車線変更をしなければ、追い付いた車両等の側方を通過し、前方に出ることは困難です。
しかし、車幅の狭いバイクの場合、車線変更をせずに、すり抜けて追い付いた車両等の側方を通過し、前方に出ることも可能です。
このような車線変更を伴わないすり抜け行為を一般的には追い抜きと呼びます。
左側からの追い越しは基本的に禁止
そして、道路交通法では、追い越しの方法について、以下のように規定しています。
車両は、他の車両を追い越そうとするときは、その追い越されようとする車両(以下この節において「前車」という。)の右側を通行しなければならない。
出典:道路交通法第28条1項
つまり、追い越しをする際には、基本的に右側からでなければ違法となってしまいます。
ただし、上記の条文の次の項の条文では、以下のように規定されています。
車両は、他の車両を追い越そうとする場合において、前車が第二十五条第二項又は第三十四条第二項若しくは第四項の規定により道路の中央又は右側端に寄つて通行しているときは、前項の規定にかかわらず、その左側を通行しなければならない。
出典:道路交通法第28条2項
上記条文の「第二十五条第二項又は第三十四条第二項若しくは第四項の規定」とは、自動車や原付が右折をするときの規定です。
つまり、前方の自動車や原付が右折しようとしているときには左側から追い越しをしなければ、反対に違法となってしまいます。
法律上すり抜けができない場所は?
道路交通法では、追い越しを禁止する場所について、以下のように規定しています。
車両は、道路標識等により追越しが禁止されている道路の部分及び次に掲げるその他の道路の部分においては、他の車両(軽車両を除く。)を追い越すため、進路を変更し、又は前車の側方を通過してはならない。
一 道路のまがりかど附近、上り坂の頂上附近又は勾こう配の急な下り坂
二 トンネル(車両通行帯の設けられた道路以外の道路の部分に限る。)
三 交差点(略)、踏切、横断歩道又は自転車横断帯及びこれらの手前の側端から前に三十メートル以内の部分
出典:道路交通法第30条
さらに、道路交通法38条3項では、横断歩道等の手前30m以内での追い抜きも禁止されています。
すり抜けによる割込みは法律違反!
バイクが、赤信号で渋滞する車の左側をすり抜けていく場面はよく見かけると思います。
しかし、それによって赤信号で停車している車両の前に出てしまうと、道路交通法違反に問われる可能性があります。
車両は、法令の規定若しくは警察官の命令により、又は危険を防止するため、停止し、若しくは停止しようとして徐行している車両等又はこれらに続いて停止し、若しくは徐行している車両等に追いついたときは、その前方にある車両等の側方を通過して当該車両等の前方に割り込み、又はその前方を横切つてはならない。
出典:道路交通法第32条
上記のとおり、すり抜けをした結果、前方に割り込みをしたと判断されてしまうと、法律違反ということになってしまいます。
路肩のすり抜けは法律違反でない!?
道路の端の部分にある路肩の走行規制は、道路交通法でなく、車両制限令という法令によって、以下のように規定されています。
歩道、自転車道又は自転車歩行者道のいずれをも有しない道路を通行する自動車は、その車輪が路肩(路肩が明らかでない道路にあつては、路端から車道寄りの〇・五メートル(略)の幅の道路の部分)にはみ出してはならない。
出典:車両制限令第9条
この条文だけみると、バイクは路肩を走行できないように見えますが、実はバイクが路肩を走行することは禁止されていません。
車両制限令の「自動車」は「二輪のものを除く」と定義されているからです(2条2号)。
そのため、バイクが路肩をすり抜けていたとしても、それが直ちに法律違反になるわけではありません。
路側帯のすり抜けは?
路肩に似た道路の端の部分にあるものとして、路側帯があります。
この路側帯の走行規制は、道路交通法によって、以下のように規制されています。
車両は、歩道又は路側帯(略)と車道の区別のある道路においては、車道を通行しなければならない。
道路交通法の「車両」にはバイクも含まれる(2条8号)ので、バイクが路側帯をすり抜けることは基本的に違法となります。
なお、自転車は、道路交通法の「車両」に含まれますが、例外的に路側帯の走行が認められています(17条の2)。
以上の情報を表にまとめると、以下のようになります。
路肩 | 路側帯 | |
---|---|---|
四輪車 | ✖ | ✖ |
バイク | 〇 | ✖ |
自転車 | 〇 | 〇 |
すり抜けでミラーに傷をつけたら?
バイクがすり抜けする際、車のミラーと接触して傷をつけたにもかかわらず、それに気が付かず行ってしまうケースがあるようです。
このケースはいわゆる当て逃げに当たり、道路交通法上の報告義務違反に問われる可能性があります。
交通事故があつたときは、(略)当該車両等の運転者(略)は、(略)直ちに最寄りの警察署(略)の警察官に当該交通事故が発生した日時及び場所、(略)損壊した物及びその損壊の程度(略)を報告しなければならない。
出典:道路交通法第72条1項
少しミラーに傷をつけただけでも、当て逃げと判断された場合は、一発で免許停止処分を受ける可能性が高いので、注意しましょう。
すり抜け時の過失割合をケース別に紹介
バイクのすり抜けは、法律違反の可能性もある危険な行為であり、それにより交通事故が起きた場合、バイク側にも責任があります。
もっとも、一方的にバイク側が悪いのではなく、当然自動車側にも責任が認められます。
では、双方の過失割合が具体的にどうなるのか、すり抜け時に発生しやすい代表的な交通事故のケース別に紹介していきます。
すり抜けをする直進バイクと左折車
出典:https://atomfirm.com/wp-content/uploads/atom_ji-h213.png
バイクのすり抜け時に発生しやすいのは、以下のような事故です。
秩父渋滞、ヒドかったな
そんで目の前でバイクと車が事故るところを見た
バイクの左側のすり抜け
車の突然の左折この結果、事故ってたね
同じく事故を目撃した、見ず知らずのライダーさんと
助けるか相談したけど
歩けていたからそのままにしました単独なら助けるけどさ
— ZAN@/MT-25 (@ZAN_x_TKY) June 3, 2017
バイクが自動車の左側をすり抜けようとした際に、先行左折四輪車と衝突するいわゆる巻き込み事故のケースです。
- 場所は交差点
- A:直進バイク
- B:先行左折四輪車
このケースの基本過失割合及び修正要素は、以下のとおりです。
A | B | |
---|---|---|
基本過失割合 | 20 | 80 |
著しい前方不注視 | +10 | |
速度違反 (15㎞以上) |
+10 | |
速度違反 (30㎞以上) |
+20 | |
大回り左折 進入路鋭角 |
+10 | |
合図遅れ | +5 | |
合図なし | +10 | |
直近左折 | +10 | |
徐行なし | +10 | |
著しい過失 | +10 | |
重過失 | +20 |
別冊判例タイムズ38号図【213】参照
交差点の手前での追い越しや横断歩道の手前での追い抜きは法律上禁止されており、すり抜けようとしたバイクには過失があります。
もっとも、四輪車に左寄り不十分等の過失があることに加え、
- 直進車優先
- 事実上、左側車線はバイクの走行車線
ことからバイク側の過失割合の方が小さいと考えられています。
なお、上記の基本過失割合は、四輪車の左寄せが不十分だった場合を前提としています。
そのため、四輪車が十分左寄せをしていたのに、バイクがすり抜けようとした場合、バイクの基本過失割合が上記より高くなります。
渋滞中にすり抜けるバイクと右折車
渋滞中にバイクが自動車の左側をすり抜けていると、対向車線からの右折車と気付くのがお互いに遅れ、事故になりやすいです。
- 場所は交差点
- バイク側の車線が渋滞中
- バイク側車線の自動車が、対向右折車を先に行かせるため停止
- バイクⒶが停止した自動車の左側をすり抜けて直進
- 右折車Ⓑが渋滞車両の間を右折した先でⒶと衝突
このようないわゆるサンキュー事故と呼ばれるケースでのバイクと右折車の基本過失割合及び修正要素は以下の表のとおりです。
A | B | |
---|---|---|
基本過失割合 | 30 | 70 |
著しい前方不注視 | +10~20 | |
著しい過失 重過失 |
+20 | |
交差点以外の場所 | +5~10 |
別冊判例タイムズ38号図【217】参照
バイク側には、渋滞中に前方を空けて停止している車がある場合、間から車がくるのを予想できるのにそれを怠った過失があります。
一方、自動車側にも、右折を急いだあまり、バイクに対する注意を怠った過失があります。
気が付きにくいというのは双方同様なので、右直事故における原則どおり、直進車であるバイクの過失割合の方が小さくなります。
なお、上記の基本過失割合は、渋滞中の車の左側がバイクがやっと走行できる広さだった場合を前提としています。
そのため、左側にバイク専用車線や十分な広さがあった場合には、バイクの基本過失割合が10%低くなる可能性があります。
すり抜けをするバイクとドア開放車
バイクがすり抜けをする際に特有の事故として、四輪車のドア開放時の接触事故があります。
バイクが自動車の横を走行しようとしたときに、停車中の四輪車のドアが開き、バイクとドアが接触するという事故です。
このケースの基本過失割合及び修正要素は以下の表のとおりです。
A | B | |
---|---|---|
基本過失割合 | 10 | 90 |
夜間 | +5 | |
合図なし (ハザード等) |
+5 | |
直前ドア開放 | +10 | |
ドア開放を予測 させる事情あり |
+10 | |
速度違反 (15㎞以上) |
+10 | |
速度違反 (30㎞以上) |
+20 | |
著しい過失 重過失 |
+10~20 |
別冊判例タイムズ38号図【233】参照
すり抜けによる割込み後の追突事故
バイクが停車中に追突された場合、バイク側の過失割合は0になるのが原則です。
もっとも、追突がすり抜けによる割込み後に発生したようなケースでは、バイク側にも過失割合が認められる可能性があります。
同様のケースにおいて、バイクにも過失割合が認められると判断をした裁判例があるからです。
Dは、信号待ちで停車していたC車の左前に後から割り込むようにしてD車を停止させているが、このような行為は、D車が停車しているところにC車がその後に停車した場合と異なり、C車からみるとそれまで前方に停車していなかった車両が突然前方に発生することになるから、C車にとってはD車の発見を難しくするものであるうえ、(略)、オートバイが停車中にその間に割り込んでくることが困難であったことからすると、このようなD車の行動は、通常の追突事案と比較してD側の落ち度は大きいと評価されても致し方ないというべきである。
以上に検討したところによると、D及びCのいずれについても過失があり、その過失割合は、Cが70、Dが30とするのが相当である。
出典:東京地裁平成21年12月25日判決
上記のとおり、停車中に追突された事故にもかかわらず、バイク側にも30%の過失割合が認められています。
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最後に一言アドバイス
それでは、最後に、バイクのすり抜けについて、アドバイスを一言お願いします。
バイクのすり抜けは、交通事故に発展しやすいですので、ライダーとドライバーの双方が気を付ける必要があります。
そして、実際に交通事故に発展してしまった場合は、どちらが悪いのか過失割合が争いになるケースが多いです。
相手の保険会社から提示された過失割合に納得がいかない場合は、示談をしてしまう前に弁護士に相談してみましょう。
まとめ
いかがだったでしょうか。
このページを最後までお読みの方は、
- バイクによるすり抜けが法律違反になるケース
- バイクによるすり抜け時に起きやすい交通事故の過失割合
- 追突事故の過失割合にすり抜けが及ぼす影響
などについて理解を深めていただけたのではないかと思います。
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