後遺障害8級の慰謝料|弁護士基準の相場と5つの判例での金額を紹介!
このページをご覧になっているということは、ご自身またはご家族が交通事故の被害に遭われて、後遺障害8級のお怪我を負われたということでしょうか。
交通事故に遭ってしまうと、ただでさえ入院や通院で大変であるにも関わらず、事故後の対応に追われ、心身ともに負担がかかってしまいますよね。
8級の後遺障害が残ってしまうと、生活にも大きく影響してしまいます。
将来のことを考えると、肉体的・身体的苦痛に対して十分に慰謝料は支払われるのか不安を抱いている方は多いのではないでしょうか?
このページでは、後遺障害8級の慰謝料でお悩みの方のお役に立つように、私たち弁護士カタログの編集部が行なった判例調査の結果をまとめてあります。
法律的な部分の解説は、テレビや雑誌でもおなじみの岡野武志弁護士にお願いしています。
よろしくお願いします。
これまで事務所で取り扱った事例や裁判所が判断した判例にもとづいて、しっかりと解説していきたいと思います。
それでは、後遺障害8級の慰謝料の相場をみてみましょう!
後遺障害8級の慰謝料相場は830万円
そもそも交通事故の慰謝料はどうやって決まるの?
交通事故にあった場合、慰謝料がもらえるというのをご存知のかたは多いかと思います。
でも、慰謝料の相場ってどのくらいなのでしょうか?
後遺障害8級が認定されると、どのくらいの慰謝料が支払われるのかなんて、普通の人はなかなか知らないですよね。
慰謝料の金額がどうやって決まるか、専門家の先生に聞いてみましょう。
慰謝料の決まり方には、3つの種類があります。
①自賠責基準、②任意保険基準、③弁護士基準と呼ばれるものです。
慰謝料の計算方法を自賠責保険の基準に拠るのか、任意保険の基準に拠るのか、弁護士(裁判所)の基準に拠るのかによって①②③の違いが生じます。
慰謝料の計算の基礎になるのは、ケガや後遺障害の程度といった事実関係です。
慰謝料の計算の仕方にもいろいろとあるのですね。
後遺障害が残ってしまった場合、仕事や学校、日常生活などさまざな場面で支障が出てしまいますよね。
交通事故の被害者としては、被害者にとって一番有利な基準を採用して欲しいものです。
簡単に慰謝料の計算をしてみたい方は、以下の「交通事故慰謝料の相場計算機」を試してみてください^^
この相場計算機は、③の弁護士基準を採用するものなので、保険会社が提示する慰謝料よりも大きな金額になる可能性が大きいです!
慰謝料相場は弁護士基準が一番高額
慰謝料の決まり方には3つの種類があるということが分かりました。
ここで興味があるのは、私たち事故の被害者にとって一番有利な基準はどれなのか?ということですよね。
8級の後遺障害が残ることは、心身ともに非常に大きな負担になります。
被害者にとって一番有利な慰謝料の基準を教えてください。
裁判所でも採用される弁護士基準が被害者の方にとって一番有利です。
③の弁護士基準は、民事裁判になった時も採用される、一番公平で、かつ公正な基準です。
これに対して、②の任意保険基準は、保険会社が業界で勝手に採用する基準です。
任意保険基準は、支払われる慰謝料などが低くなる点で、被害者にとって不利です。
慰謝料や示談金の増額が可能なのは、弁護士が示談交渉をすることで、②の任意保険基準から③の弁護士基準に慰謝料の計算方法を変えることが可能だからです。
裁判所も採用する弁護士基準が、私たち事故の被害者にとっては一番有利ということなんですね。
弁護士基準だと、民事裁判になったときも採用されるということで、安心ですよね。
慰謝料の計算基準についてより詳しく知りたい方のために、以下に関連ページをまとめておきました。
後遺障害8級のケガと慰謝料金額
慰謝料相場や慰謝料計算の一般論についてはよく分かりました。
後遺障害8級に特化したポイントは、どのような点になるのでしょう?
8級の後遺障害は以下の表にあるように全10種類があります。
ただし、神経障害のようなメジャーな類型がないため、8級そのものの後遺障害に該当する例はあまり多くないのが実情です。
8級に認定される場面として多いのが、たとえば9級と12級の後遺障害が残った場合に、2つの後遺症を合わせて併合8級と認定される場合です。
後遺障害8級に該当するケガには、つぎの10パターンがあるようです。
後遺障害8級 | |
---|---|
1 | 一眼が失明し、又は一眼の視力が0.02以下になったもの |
2 | 脊柱に運動障害を残すもの |
3 | 一手のおや指を含み二の手指を失ったもの又はおや指以外の三の手指を失ったもの |
4 | 一手のおや指を含み三の手指の用を廃したもの又はおや指以外の四の手指の用を廃したもの |
5 | 一下肢を五センチメートル以上短縮したもの |
6 | 一上肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの |
7 | 一下肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの |
8 | 一上肢に偽関節を残すもの |
9 | 一下肢に偽関節を残すもの |
10 | 一足の足指の全部を失ったもの |
後遺障害の慰謝料は、等級ごとに相場が決められています。
8級の慰謝料の相場は弁護士基準で830万円とされていますが、これはあくまで相場にすぎないので、具体的な慰謝料額はケースバイケースとなっています。
たとえば、8級が認定された際、複数の後遺障害があるため併合8級の認定を受けた事例が多いため、相場基準よりも高くなることも多いです。
なぜなら、後遺障害が複数あればその分、等級以上に精神的苦痛も大きくなる傾向にあることが考慮されるからです。
しかし、被害者がこれらの知識を知らずに自力で保険会社と交渉していると、保険会社から相場を大幅に下回る500万円の慰謝料を提示されることがあるので、事前に弁護士に相談することをおすすめします。
場合によっては、弁護士基準の相場よりも高い慰謝料がもらえる可能性があるのですね。
後遺障害8級の慰謝料の相場や計算についてより詳しく知りたい方のために、関連ページをまとめておきました。
後遺障害8級の判例での慰謝料総額は?
①障害等級8級(男・症状固定時39歳)損害額8857万8454円の判例
まず、大阪地方裁判所の判決、平成16年(ワ)第5755号事件をご紹介します。
有限会社代表取締役の男性が左肩挫傷などのケガを負った事故です。
(傷害部分については示談が成立しており、後遺障害に関して訴訟になったものです。)
属性 | 有限会社代表取締役 |
---|---|
性別 | 男 |
年齢 | 症状固定時39歳 |
事故の内容 | 東から北に向かって右折した加害車両と交差点の北詰横断歩道上を西から東に直進した被害自転車が衝突した。 |
傷害の内容 | 左膝関節内脛骨外顆粉砕陥没骨折、左肩挫傷 |
後遺障害等級 | 8級7号 |
入院 | 133日 |
損害総額 | 8857万8454円 |
---|---|
うち慰謝料 | 800万円 |
うち企業損害 | 0円 |
うち逸失利益 | 8044万9740円 |
ざっくりまとめると…
被害者の損害額は総額8857万8454円になりました。
- 慰謝料としては、後遺障害の慰謝料が800万円認められました。
- 逸失利益としては、労働能力喪失率は後遺障害8級に相当する45%とし、被害者が事故前に得ていた月額100万円の役員報酬は、実質的に被害者がすべての業務を行っていたことが認められるため、月額100万円全額を基礎収入として算定されました。
弁護士先生、こちらの男性は事故により左膝の関節に8級の後遺障害が残ってしまったようです。
この判例のポイントはどのような点になりますか?
本件の被害者は、左ひざに重度の障害を残し、慰謝料額と労働能力喪失率ともに8級の相場通り認定されました。
被害者はいわゆる個人企業の経営者であり、従前の役員報酬全額が逸失利益として認められるかが問題の一つとなりましたが、本件では認められております。
被害者が経営者の場合、このように役員報酬全額が逸失利益として認められるか否かが問題となることも多いですが、認められるか否かは個別に判断されることになります。
したがって、逸失利益を計算する基礎となる収入の計算は時として複雑なので、弁護士に相談するのが良いでしょう。
②障害等級8級(男・12歳)損害額6905万8378円の判例
次に、岡山地方裁判所倉敷支部の判決、平成20年(ワ)160号・平成22年(ワ)537号事件をご紹介します。
男子中学生が、左大腿骨開放骨折などのケガを負った事故です。
属性 | 中学生 |
---|---|
性別 | 男 |
年齢 | 12歳 |
事故の内容 | 被害者運転の自転車の左側面が、対向してきた加害車両の左側と接触して転倒した。 |
傷害の内容 | 左大腿骨開放骨折、左下肢デグロービング損傷など |
後遺障害等級 | 併合8級(左膝関節機能障害:10級11号、左足関節機能障害:10級11号、左右下肢長差による障害:13級9号、背部及び臀部の醜状障害:14級、右下肢の醜状障害:12級、左下肢の醜状障害:12級) |
入院 | 525日 |
損害総額 | 6905万8378円 |
---|---|
うち慰謝料 | 1450万円 |
うち付添看護費 | 684万0400円 |
うち逸失利益 | 4075万5301円 |
ざっくりまとめると…
被害者の損害額は総額6905万8378円になりました。
- 慰謝料としては、入院・通院に対する慰謝料が550万円、後遺障害の慰謝料が900万円認められました。
- 付添看護費としては、本件事故日から平成18年6月20日までの入院期間中は、近親者の入院付添看護の必要があったものと認められるが、徐々に付添介護の必要な程度も減少していったものとして算定されました。
- 逸失利益としては、後遺障害の程度や、被害者の状態に照らすと、労働能力喪失率は45%と認められ、基礎収入は被害者らの主張する男子全年齢賃金月額である41万5400円、労働能力喪失期間は67歳までの49年間として算定されました。
弁護士先生、こちらの男子中学生は事故により下肢に大きなケガを負い、併合8級が認定されたようです。
この判例のポイントはどのような点になりますか?
被害者の負った後遺障害は、主に加害車両と接触した左脚に集中しております。
慰謝料は障害の部位や程度等を考慮して8級の基準より若干増額され、他方将来の労働能力喪失率は8級の基準で認定されました。
ただ、本件の被害者が県立高校に入学できなかった精神的苦痛は、本件後遺障害の慰謝料の計算から除外されています。
このように事故後、入学試験や資格試験に合格できなかった場合、その原因が事故であるとして慰謝料計算に考慮してもらうことは困難なことも少なくないです。
③障害等級8級(女・症状固定時50歳)損害額6444万2248円の判例
3つ目に、東京地方裁判所の判決、平成11年(ワ)第8211号事件をご紹介します。
有職主婦が、右大腿骨開放性骨折などのケガを負った事故です。
属性 | 有職主婦 |
---|---|
性別 | 女 |
年齢 | 症状固定時50歳 |
事故の内容 | T字路交差点で、加害者1の車両が横道から後退して、加害者2の車両が走行する車線上に進出したため、対向車線上に出た加害者2の車が、対向車線を走行してきた被害自動二輪車に衝突した。 |
傷害の内容 | 右大腿骨開放性骨折、右頸骨高原骨折(開放性)、右膝ACL(前十字靭帯)・PCL(後十字靭帯)断裂、右膝腸頸靭帯断裂、右膝関節襄損傷、右脛骨腓骨開放性骨折など |
後遺障害等級 | 併合8級(右膝関節機能障害、右足関節機能障害、右下肢醜状障害) |
入院 | 284日 |
損害総額 | 6444万2248円 |
---|---|
うち慰謝料 | 1390万円 |
うち休業損害 | 1741万5769円 |
うち逸失利益 | 1444万5150円 |
ざっくりまとめると…
被害者の損害額は総額6444万2248円になりました。
- 慰謝料としては、傷害慰謝料が440万円、後遺障害の慰謝料が950万円が認められました。
- 休業損害としては、入院期間については100%の休業損害を認め、通院期間に関しては、労働能力喪失率は80%とするのが相当とされました。
- 逸失利益としては、基礎収入は女性の学歴計50歳ないし54歳平均年収額366万0800円とし、就労可能年齢である50歳より67歳までの17年間、9級の35%程度労働能力を喪失したものとして、1444万5150円認められました。
弁護士先生、こちらの女性は、右足の後遺障害によって日常生活にも大きな支障が出てしまったようです。
この判例のポイントはどのような点になりますか?
本件被害者は、上記障害により右膝、右足首に相当重度の機能障害を負ってしまいました。
後遺障害の慰謝料という面からみれば、後遺障害の部位や程度と日常生活への支障等から一般的な8級の相場よりも増額され認定されています。
一方、醜状障害は直接労働能力に影響を与えないとして、労働能力喪失率は、醜状障害を除いた9級相当の基準で算定されています。
このように、特に醜状障害は労働能力喪失が認められないことが多いので注意が必要です。
④障害等級8級(女・症状固定時7歳)損害額6038万1684円の判例
4つ目に、大阪地方裁判所の判決、平成12年(ワ)第14174号事件をご紹介します。
小学1年生の女の子が右足第4、第5趾切断などのケガを負った事故です。
属性 | 小学1年生 |
---|---|
性別 | 女 |
年齢 | 症状固定時7歳 |
事故の内容 | 歩道上を歩行中の被害者が車道上に出たところ、加害車両によって右足を轢かれた。 |
傷害の内容 | 右足第4、第5趾切断、右足関節部および右足裏部皮膚消失、右足第1趾脱臼など |
後遺障害等級 | 8級(右足第4、第5趾喪失、右足第1ないし第3趾機能障害、右足指痛、右足底部痛、右足荷重困難、歩行時疼痛等) |
入院 | 98日 |
損害総額 | 6038万1684円 |
---|---|
うち慰謝料 | 1120万円 |
うち付添看護費 | 175万5180円 |
うち逸失利益 | 2374万4029円 |
ざっくりまとめると…
被害者の損害額は総額6038万1684円になりました。
- 慰謝料としては、入院・通院に対する慰謝料が270万円、後遺障害の慰謝料が850万円認められました。
- 付添看護費としては、入院および通院に際しては親族による付添の必要性があったというべきであると認められました。
- 逸失利益としては、被害者は後遺障害によって、一般的に稼働可能と考えられる67歳までの期間を通じ、労働能力を45%喪失したものと認められました。
弁護士先生、こちらの女の子は、事故によって足の指が切断されてしまったようです。
この判例のポイントはどのような点になりますか?
本件の被害者は、右足の指の欠損障害で8級に認定されました。
後遺障害慰謝料について、本件において8級の相場よりも増額が認められたのは、将来的に手術が予想されるといった事情等を考慮したことによります。
慰謝料は精神的苦痛に対し支払われますが、本件のように将来手術その他による苦痛が予想されるケースでは慰謝料が増額されることもあるのです。
⑤障害等級8級(男・23歳)損害額5548万4955円の判例
最後に、東京地方裁判所の民事第27部の判決、平成23年(ワ)12752号事件をご紹介します。
男子大学生が、右肘・腰部挫傷などのケガを負った事故です。
属性 | 大学4年生 |
---|---|
性別 | 男 |
年齢 | 23歳 |
事故の内容 | 信号機による交通整理の行われていない交差点で、南北道路を南進する被害者運転の自転車と東西道路を東進する加害者車両が出合い頭に衝突した。 |
傷害の内容 | 右肘・腰部挫傷、右肩・頭部挫傷、脳挫傷 |
後遺障害等級 | 併合8級(高次脳機能障害:9級10号、嗅覚障害:12級) |
入院 | 0日 |
損害総額 | 5548万4955円 |
---|---|
うち慰謝料 | 1005万円 |
うち休業損害 | 93万5420円 |
うち逸失利益 | 4345万6895円 |
ざっくりまとめると…
被害者の損害額は総額5548万4955円になりました。
- 慰謝料としては、通院に対する慰謝料が175万円、後遺障害の慰謝料が830万円認められました。
- 休業損害としては、居酒屋のアルバイトで1日当たり少なくとも8630円の収入を得ていたことが認められ、また、大学卒業後の試用期間の満了から症状固定までの4か月間についても休業損害の発生が認められました。
- 逸失利益は、被害者が症状固定時24歳であったことから男子の学歴計全年齢平均賃金550万3900円を基礎収入とし、労働能力喪失率は後遺障害が併合8級であることから45%、労働能力喪失期間は症状固定時24歳から67歳までの43年間として算定されました。
弁護士先生、こちらの男子大学生は事故によって高次脳機能障害になってしまったようです。
この判例のポイントはどのような点になりますか?
本件は、後遺障害の慰謝料および労働能力喪失率ともに8級の基準に沿って認定されています。
このように多くの事例では、認定された等級によって慰謝料や逸失利益の労働能力喪失率が決まってくることになり、高次脳機能障害のような精神障害でも原則として同様です。
したがって、適正な等級を認定してもらうことが非常に重要ということがよく分かりますね。
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この記事の監修弁護士
岡野武志弁護士
アトム法律事務所弁護士法人
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