後遺障害9級の交通事故慰謝料|5591万円の判例を弁護士が解説
このページでは、後遺障害9級の判例についてご紹介します。
9級は、部位や症状によって1~17号に分けられています。
その中でも、高次脳機能障害やうつ病、脊髄障害など10号の神経系統または精神の機能障害が件数としてはもっとも多いといわれています。
後遺障害によって今までのような生活が送れなくなってしまうことは、とてもつらいことです。
この判例では、総額5591万円の損害賠償金が認められましたが、どのような点が考慮されたのか、弁護士の先生の解説とともに見ていきましょう。
法律的な部分の解説は、テレビや雑誌でもおなじみの岡野武志弁護士にお願いしています。
よろしくお願いします。
これまで事務所で取り扱った実例と、裁判所が判断した判例にもとづいて、しっかりと解説していきたいと思います。
目次
それではまず、交通事故の内容から見てみましょう。
障害等級9級(男・56歳)損害額5591万7811円の判例
こちらは、大阪地方裁判所の第15民事部の判決、平成18年(ワ)第9064号事件です。
この事故での主な怪我の内容は、脊髄損傷となります。
交通事故の基本情報
事故の内容は「交差点で赤信号無視の加害普通乗用車が、青信号で進行した被害原付自転車と衝突した。」というものです。
交通事故の基本情報は?
属性 | 会社員 |
---|---|
性別 | 男 |
年齢 | 56歳 |
事故の内容 | 交差点で赤信号無視の加害普通乗用車が、青信号で進行した被害原付自転車と衝突した。 |
傷害の内容 | 脊髄損傷、右肋軟骨損傷、左上腕打撲および左大腿挫傷 |
後遺障害等級 | 9級10号 |
入院 | 不明 |
被害者は脊髄損傷によって、介護が必要な状態になってしまったようです。
判例で認められた賠償金・慰謝料
それでは、認められた損害額を見てみましょう。
判例で認められた賠償金・慰謝料は?
損害総額 | 5591万7811円 |
---|---|
うち慰謝料 | 890万円 |
うち将来の介護費 | 2014万5956円 |
うち逸失利益 | 2002万4494円 |
損害総額は5591万7811円でした。
ざっくりまとめると…
被害者の損害額は総額5591万7811円になりました。
- 慰謝料としては、890万円が認められました。
- 将来の介護費は、被害者1人で服の脱着、荷物の持ち運び、字を書くこと、入浴時の身体を洗うこと等が困難で随時妻の付添介護を必要としており、妻の介護に対し1日当たり4000円が認められました。
- 逸失利益としては、学歴計男性57歳に相当する634万4100円の収入を基礎収入とし、労働能力喪失率は35%、労働能力喪失期間は平均余命の2分の1の12年で算定されました。
弁護士による解説
弁護士先生、こちらの男性は、脊髄損傷によって左上下肢の後遺障害が9級に認定されたようです。
この判例のポイントはどのような点になりますか?
通常、9級の後遺障害では、将来介護費が認められるケースはほとんどありません。
本件においては、妻による入浴時やその他の動作における介助の必要性を認め、1日当たり4000円の介護費用が認められました。
9級の事例でここまで多くの介護費用を認めるのは異例ともいえますが、裁判では個別的に権利を主張すれば、損害として認められる場合もあります。
交通事故の慰謝料の計算方法をおさらい
はじめての慰謝料計算
交通事故の慰謝料の計算方法、よく分からないですよね。
ポイントを整理すると、
- 保険会社が提示する慰謝料と、弁護士や裁判所が認定する慰謝料は、大きく異なる。
- 法律的に正しい慰謝料は、弁護士や裁判所が認定する慰謝料の方。
- 正しい慰謝料を請求するためには、法的な手続きを利用する必要がある。
の三点が重要です。
慰謝料の計算方法については、このページがよくまとまっています。
記事の構成は、
- 弁護士介入後に慰謝料が増額する理由
- 交通事故被害者の慰謝料はどのようにして決まるの?
- 慰謝料よりも高額な「逸失利益」とはどういうもの?
となっています^^
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後遺障害9級の慰謝料計算の特徴は?
9級の慰謝料を計算するにあたって、ポイントとなる点はありますか?
一口に9級と言っても各号ごとに症状は様々ですが、原則として慰謝料は等級に応じて定められ、9級の場合、裁判基準では690万円となっております。
特に争いになりやすいのは逸失利益の項目であり、9級6号の咀嚼障害、9級16号の外貌醜状や9級17号の生殖器の障害の場合、仕事には支障がないとして、逸失利益を保険会社が否定してくることも多いです。
また、9級の場合、自賠責基準では計算の基礎となる労働能力喪失率を35%としていますが、実際にはそこまでの仕事への支障がないとして、保険会社が自賠責基準よりも低く主張してくることもあります
そのような場合には、職務内容や職務にどのような支障が出ているかを具体的に主張する必要があることがポイントです。
なお、9級10号の高次脳機能障害については、後遺障害申請の際に提出する書類の記載内容によっては、実際に残存する障害に見合った等級よりも低い等級として認定されている可能性があるので、注意が必要です。
ただし、これらのポイントはあくまで一般論であり、ご紹介した裁判例のように、被害を受けられた方の事情によっては金額が増減するのが普通です。
したがって、まずは専門家である弁護士に相談してみることで正確な金額を知ることができるでしょう。