交通事故の現場検証とは|弁護士が10個の疑問に回答します

  • 交通事故,現場検証

この記事のポイント
  • 交通事故の現場検証とは、当事者の主張や目撃者の話を聴いた上で、事故時の車両の位置関係や事故状況を記録することをいう
  • 交通事故の現場検証は、当日実施されることが多いが、当事者が怪我の治療で病院に搬送された場合など後日実施されることもある
  • 交通事故の現場検証には極力立ち合いをすべきであり、警察官の現場検証は基本的にやり直しができないので慎重に対応すべき

交通事故の現場検証に関する疑問を解決したい被害者の方は、特に必見の記事になります。

author okano
岡野武志弁護士
交通事故と刑事事件を専門とするアトム法律事務所の代表弁護士。

交通事故が発生した場所で、警察官たちが現場検証をしている場面を目撃したことがある方も少なくないかと思います。

もっとも、現場検証の流れなど詳しいことはご存じでない方がほとんどかと思います。

そこで、こちらの記事では、交通事故の当事者及びそうなる可能性のある全ての人に向けて、弁護士が疑問に回答していきます。

交通事故の現場検証に関するよくある疑問につき、できるだけ簡潔かつ分かりやすく回答をしていきます。

交通事故の現場検証の意味や目的とは?

交通事故の現場検証の意味や目的とは?

交通事故の現場検証とは、当事者の主張や目撃者の話を聴いた上で、事故時の車両の位置関係や事故状況を記録することをいいます。

現場検証の本来の目的は、刑事事件の終局処分の判断や刑事裁判に用いる証拠作成のためです。

もっとも、交通事故の当事者にとっては、過失割合の認定における有力な証拠を作成してもらうという目的もあります。

交通事故の現場検証は、チョークで路面に印をつける、メジャーで距離を確認する、事故車両の写真を撮るなどの方法で行われます。

現場検証の結果は、実況見分調書などの書類の形で記録され、証拠化されます。

被害者と加害者の過失割合の程度は、被害者が受け取れる慰謝料などの賠償金額を大きく左右します。

被害者は、相手の保険会社との示談交渉において不利な過失割合が認定されると損をしてしまうことになります。

過失割合は事故状況から客観的に判断されますが、事故状況を証明する証拠は非常に限定的です。

そんな中、現場検証の結果が記載された実況見分調書は、数少ない事故状況を証明する重要な証拠の一つになります。

実況見分調書の主な記載内容は以下のとおりです。

実況見分調書の記載内容
  • 事故の発生日時、当時の天候、検証の日時、場所、立会人の名前
  • 現場道路の状況

(路面状況、明るさ、見通し、速度や一時停止等の交通規制など)

  • 車両の状況(車種やナンバー、衝突の部位・程度・状況など)
  • 立会人の指示説明(最初に相手を発見した地点や、ブレーキを踏んだ地点、衝突した地点と、各地点の距離など)
  • 交通事故現場の見取図
  • 上記に関連する写真

これらの情報は、基本過失割合を決定付ける事故状況の認定や修正要素の有無の判断に役立つ証拠となります。

そのため、交通事故の当事者にとっては、現場検証は過失割合認定における証拠を作成してもらうという目的もあります。

このように、交通事故の現場検証は、刑事事件の終局処分の判断や裁判に用いる証拠作成という本来の目的を超えた意味を有します。

現場検証と実況見分は何か違いがある?

現場検証と実況見分は何か違いがある?

法的には両者の違いは裁判官の発付する令状の有無になります。

裁判官の発付する令状に基づき行われるのが(現場)検証、関係者の同意を得て任意で行われるのが実況見分です。

ただし、一般的に交通事故の現場検証といわれているものは、実況見分の形で行われているものがほとんどです。

そのため、交通事故においては

現場検証≒実況見分

として扱われています。

交通事故の現場検証はいつ実施される?

交通事故の現場検証はいつ実施される?

当日(交通事故後すぐ)実施されることが多いですが、後日に日を改めて実施されるケースもあります。

現場検証の目的である事故状況の記録には、事故後すぐに実施するのが一番望ましいので、特に問題なければ当日実施されます。

もっとも、交通事故では、当事者が怪我の治療のため、病院に搬送されることになるケースも多いです。

このようなケースでは、現場検証を実施するのが後日になる可能性もあります。

交通事故で行われる現場検証の流れは?

交通事故で行われる現場検証の流れは?

交通事故で行われる現場検証の大まかな流れは以下のとおりです。

① 現場に到着した警察官による事故現場を保全するための交通規制

② 現場の客観的な状況(天候、路面状況、標識、見通し等)の確認

③ 当事者の主張や目撃者の話に基づく事故態様の確認

(④翌日以降、現場検証(③)のため当事者や目撃者を呼び出し)

⑤ 現場検証の結果をもとにした警察官による実況見分調書の作成

④ は、交通事故後に当事者双方が病院に搬送されたケース以外に、

  • ③で被害者、加害者の一方からしか話を聴けなかった
  • 後日、目撃者が判明した

ようなケースでも行われます。

つまり、現場検証の回数は1回だけとは限らず、2回目以降の実施も可能性があるということです。

https://twitter.com/Katu5421/status/217601800914731009

その後、警察から事情聴取をしたいという連絡が入り、供述調書が作成されるという流れになります。

交通事故の現場検証を実施するのは誰?

交通事故の現場検証を実施するのは誰?

交通事故では、警察が実施する現場検証が一般的ですが、保険会社から依頼を受けた調査会社や弁護士が実施するケースもあります。

加害者側の保険会社が調査会社に依頼して現場検証を実施するのは過失割合のためです。

保険会社は、被害者と主張に食い違いがある場合、自分たちの主張する過失割合を認定し、支払額を減らすために依頼をするのです。

また、警察の現場検証の内容に納得がいかないという被害者の依頼を受けて弁護士が現場検証をするケースもあります。

このように、警察以外が現場検証を実施するケースもあります。

交通事故の現場検証には立ち会うべき?

交通事故の現場検証には立ち会うべき?

現場検証への立会いは任意なので、拒否すること自体は可能です。

とはいえ、極力立ち会うべきと考えられます。

通常、立ち合いを拒否するメリットよりもデメリットの方が大きいからです。

現場検証への立会いを拒否するメリット・デメリットは以下の表のとおりです。

現場検証への立会い拒否
メリット ・時間を取られない
デメリット ・自分の過失割合の主張に対する証拠が得られない

被害者が現場検証への立会いを拒否すると、実況見分調書に加害者の主張する事故状況しか記載されないことになります。

このケースで、他に有力な証拠がない場合、加害者の主張する事故状況を前提とした過失割合になる可能性があります。

現場検証を後日行う際、呼び出しを受けた日時が仕事などで都合が悪い場合、日時の変更も可能なので、極力立ち会いをしましょう。

現場検証に立会いをする時の注意点は?

現場検証に立会いをする時の注意点は?

主な注意点には

  1. ① 嘘をついたり誇張をしたりしない
  2. ② 警察官に対し曖昧な回答をしない
  3. ③ 主張の食い違いは特に気にしない

ことがあげられます。

①嘘をついたり誇張をしたりしない

交通事故の当事者は、お互い自分には非がないと考えがちです。

また、交通事故の被害者にとっては慰謝料などの金額に、加害者にとっては刑事事件に影響する過失割合はお互い抑えたいものです。

そんな気持ちから、つい嘘をついたり、誇張をしたりしたくなってしまうかもしれませんが、絶対にしないようにしましょう。

嘘や誇張が判明すると、嘘をついたり誇張をしたりした部分だけでなく、その当事者の主張全体が信用されなくなってしまいます

その結果、本来の事故状況以上に不利な結果を招いてしまう可能性があるからです。

②警察官に対し曖昧な回答をしない

現場検証における警察官からの質問に対し

「そうだったかもしれない」

といった曖昧な回答をしてしまうと、そのことが事実であることを前提とした実況見分調書が作成されてしまう可能性があります。

特に、実況見分調書は、供述調書と異なり、完成前に内容を確認させてもらえる機会が保障されていません

違うことは「違う」、わからないことは「わかりません」、覚えていないことは「覚えていません」とはっきり回答しましょう。

③主張の食い違いは特に気にしない

交通事故の現場検証では、当事者の主張に食い違いが生じることも珍しくはありません。

そのような場合、自分の主張が正しいと警察官や相手方に言いたくなってしまいがちですが、そういった必要はありません。

現場検証は、過失割合の証拠にはなりますが、過失割合を決める場ではなく、警察官が過失割合を認定するわけでもないからです。

現場検証で大事なのは、事故状況についての自分の主張が実況見分調書に正確に記録されることです。

当事者の主張の食い違いが大きい場合、実況見分調書には、双方の主張が記載されるので、食い違いを気にすることはありません。

交通事故の現場検証に要する時間は?

交通事故の現場検証に要する時間は?

所要時間は、事故状況や目撃者の有無などにより大きく変わりますが、1時間前後は掛かるものと考えておいた方がいいでしょう。

現場検証は、事故現場の確認や撮影、当事者の主張や目撃者の話を聴くなど様々なことをする必要があるため、時間も掛かります。

現場検証は、警察官にとっても時間や労力の掛かる手続きのため、できるだけ現場検証しないケースにしようとすることがあります。

警察の現場検証はやり直し請求できる?

警察の現場検証はやり直し請求できる?

交通事故の当事者には、警察による現場検証のやり直しを請求する法的権利はありません

現場検証は、警察や検察が刑事事件の証拠を集めるための捜査活動の一つです。

そして、いつどのような捜査活動を行うかは、警察や検察といった捜査機関の裁量にゆだねられているからです。

警察による現場検証のやり直し請求が認められる可能性がないわけではありません。

とはいえ、お伝えしたとおり、やり直しを請求する法的権利はない以上、やり直しはできないものと思って慎重に対応しましょう。

交通事故で現場検証しないケースは?

交通事故で現場検証しないケースは?

物損事故は現場検証しないケースの典型例です。

現場検証は、刑事事件のための捜査であるところ、物損事故は原則として刑事事件にならないからです。

また、現場検証はするものの、被害者立会いの現場検証はしないというケースもあります。

交通事故において、現場検証をするかしないかは、その事故が刑事事件の対象になるかどうかによります。

つまり、物損事故から人身に変更ができた場合、刑事事件の対象になるので、後日現場検証が行われることになります。

物損事故から人身事故に切り替えるための手続きについて知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

警察において、物損事故扱いになっているか人身事故扱いになっているかは、交通事故証明書を見れば確認することができます。

また、現場検証は、あくまで加害者の刑事事件の処分を決めるのに必要な限度で行われるものです。

そのため、人身事故でも、警察や検察が不要であると判断すれば、被害者立会いの現場検証はしないというケースもあります。

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なお、弁護士費用特約のメリットは、以下の動画でも弁護士が解説をしているので、興味のある方はそちらもぜひご覧下さい。

最後に一言アドバイス

それでは、最後に、交通事故の現場検証につき、アドバイスを一言お願いします。

交通事故の現場検証は、本来刑事事件のための手続ですが、民事の慰謝料に影響する過失割合の証拠作成という側面も有しています。

警察の現場検証は、原則やり直しができないので、立会いの際には、自分の主張が正確に記録されるよう気を付けて対応しましょう。

疑問点がある場合は、実際の現場検証への立会いに臨む前に弁護士に相談して疑問点を解決しておくのがいいでしょう。

まとめ

いかがだったでしょうか。

このページを最後までお読みの方は、

  • 交通事故の現場検証の意味や目的
  • 交通事故の現場検証がいつ実施されるか
  • 現場検証への立会いの要否や注意点

などについて理解を深めていただけたのではないかと思います。

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