交通事故にあったら検査は念のためでも必要?何科の病院に行くべき?内容・費用は?
「交通事故にあった場合、特に痛みを感じていなくても、検査は念のため受けておいた方がいいの?」
「交通事故の検査は何科の病院で受けるのがいいの?」
「交通事故にあった場合に行う主な検査の内容や費用の相場は?」
交通事故にあったものの、特に痛みを感じていないため、検査を受けに行った方がいいか迷われている方もいらっしゃるかもしれません。
そんな方のために、このページでは、
- 交通事故にあった場合に検査を受けることの重要性
- 交通事故の検査を何科の病院で受けるべきか
- 交通事故にあった場合に行う主な検査の内容や費用の相場
についてご紹介していきたいと思います!
専門的な部分や実務的な部分は交通事故と刑事事件を数多く取り扱っている岡野弁護士に解説をお願いしております。
弁護士の岡野です。よろしくお願いします。
交通事故にあった場合は、特に痛みを感じていない場合でも、検査を念のためにでも受けておくことが重要といえます。
とはいえ、痛みを感じていない場合は特に、検査を何科の病院で受ければいいかよくわからないという方もいらっしゃるかと思います。
また、検査の内容や費用についてよくわからず心配だという方もいらっしゃるでしょう。
そういった交通事故の検査に関する疑問や心配事を少しでも解消できるよう、できるだけわかりやすくお伝えしていければと思います。
交通事故にあった場合、検査を念のために受けられる方も数多くいらっしゃるかと思います。
https://twitter.com/yamasan4129/status/972992925020733442
病院なう。交通事故、どうもないけど念のために検査!
— くろうさぎ愛好推進協議会 (@toooru2011) August 8, 2011
一方で、交通事故にあったものの、特に痛みも感じていないため、検査が面倒なので行かなくてもいいのではないかと思われる方もいるかもしれません。
では、交通事故にあった場合には、検査は念のためにでも必ず受けるべきなのでしょうか?
交通事故にあった場合の検査
交通事故の検査は念のためでも絶対にすべき!
結論から申し上げますと、交通事故にあった場合、検査は念のためにでも絶対に受けるべきといえます。
交通事故では、事故直後は痛みを感じていなくても後から痛みが出てくる場合も珍しくないようです。
交通事故という特殊な状況下では、人間は意識せずとも興奮状態になっていることがあります。
そのような状態の場合、人間の体内にはアドレナリンやβエンドルフィンという物質が分泌され、痛みを感じにくくなると言われています。
実際、twitter上でも、事故直後はあまり痛みを感じていなかったものの、翌日検査してみたら、靭帯損傷していたという話も聞かれます。
自転車通勤の会社の人が昨日車とぶつかって、その時はあまり痛くないと言ってたけど念のため今日病院行って検査したら靭帯損傷してたって…交通事故こわいね…
— エルフィ (@stellar_sety) December 23, 2014
また、交通事故による具体的な症状が出るまでに時間が掛かるようなケースもあります。
例えば、交通事故で頭をぶつけ脳内出血を起こした場合、出血が始まってから溜まった血液が脳を圧迫し、症状が出るまでに多少時間が掛かります。
しかし、検査を念のためにでも早期に受けていれば、脳内出血を早期に発見でき、症状が深刻化する前に適切な処置を取ることができます。
交通事故で検査入院することになるケースも!
このように、交通事故で特に頭をぶつけたような場合には、後から深刻な症状が出てくる場合も考えられます。
そのため、交通事故では、脳の精密検査を行うためなどの目的で、検査入院をすることになるケースも比較的多いと考えられます。
実際、交通事故直後はそれほど痛みを感じていなかったものの、検査入院をすることになった実体験をブログで書かれている方もいらっしゃいます。
交通事故の検査入院は、たとえ元気そうであっても念のため行われることもあります。
父が交通事故に遭って、念のため検査入院だと…当日は足の親指骨折とだけあって痛そうだったけれど、相手の車にめっちゃ怒っていて元気そうだったぞ!
— あきにゃん (@ak12n) October 4, 2014
交通事故被害者の病院での入院・通院の検査費用は、念のため行った結果、異状なしでも加害者側の保険に請求できます。
そのため、冒頭でお伝えしたとおり、交通事故で、被害者自身は怪我なしと感じていても、検査は念のためにでも必ず受けるべきといえます。
交通事故で検査を受けないとこんなリスクが…
もし、交通事故の被害者の方が検査を受けないと、以下のようなリスクが生じます。
①後遺障害が残ってしまうリスク
まず、交通事故による後遺障害が残ってしまうリスクが、検査を受けないことにより高まります。
例えば、脳の検査を行わず、脳内出血の発見が遅れることにより、高次脳機能障害などの重い後遺障害が残るリスクが高まります。
交通事故で検査を念のためにでも受けることは、何よりご自身の体のために重要といえます。
②因果関係が認められないリスク
また、交通事故で検査を念のためにでも受けていないと、後から痛みが出てきた場合、治療費や慰謝料等との因果関係が認められないリスクが生じます。
交通事故にあってから、はじめて検査を病院で受けるまでの期間が空いてしまうと、痛みの原因が交通事故以外ではないかとの疑いが生じます。
交通事故で検査を念のためにでも受けることは、交通事故に伴う入院や通院に関する費用をしっかりと払ってもらうためにも重要といえます。
③後遺症認定に不利に働くリスク
さらに、交通事故の後遺症認定の面でも、検査を念のためにでも受けておくことは重要といえます。
後ほど詳しくお伝えしますが、頸椎捻挫の検査のためにMRIを撮影した結果、いわゆるヘルニアが見つかることがあります。
しかし、交通事故からMRI撮影までの期間が空くにつれて、ヘルニアが事故によるもの(外傷性)かの判断が難しくなってきます。
一方、交通事故直後にMRI撮影をすれば、新鮮なヘルニアの場合、水分含有量から白く写るため、ヘルニアが事故によるものであると判断できます。
このように、交通事故で検査を念のためにでも受けておかないと、後遺症認定の面で不利に働くリスクもあります。
交通事故の検査は、たとえ事故直後に痛みを感じていない場合でも必ず受けるべきといえます。
まず何より後遺障害を残さないなど、ご自身の体のために検査を受けることは重要といえます。
また、交通事故による適切な補償を受けるためにも、検査を念のためにでも受けておくことは重要になります。
番号 | 内容 | 理由・詳細 |
---|---|---|
① | 後遺障害が残る | ・脳内出血は症状出るまでに時間が掛かる ・脳内出血の発見遅れると重い後遺障害残るおそれ |
② | 因果関係が認められない | 痛みの原因が交通事故以外ではないかと疑われる |
③ | 後遺症認定に不利に働く | MRI検査が遅れると外傷性ヘルニアかの判断が困難になる |
交通事故の検査は何科の病院で行うべき?
交通事故にあった場合、検査は念のためにでも必ず受けておくべきということはお分かりいただけたのではないかと思います。
もっとも、検査を受けるために病院に行くとしても、病院には様々な診療科があります。
では、交通事故の検査は何科の病院で受けるべきなのでしょうか?
交通事故は整形外科で検査を基本的に行うべき
結論から申し上げますと、交通事故では、まず整形外科で検査を受けるのが基本であると考えられます。
交通事故にあった場合、身体に強い衝撃を受けることになるため、その結果
- 身体の芯になる骨・関節などの骨格系
- それを取り囲む筋肉
- それらを支配する神経系
からなる「運動器」に異常が発生する可能性が高いため、運動器の疾患を扱う診療科である整形外科で検査すべきといえるからです。
日本整形外科学会のHP上でも、以下のとおり交通外傷を取り扱うことを明記しています。
Q整形外科のかかりかた
――整形外科ではどのような病気を診てくれますか?
A
整形外科は運動器の疾患を扱う診療科です。
(略)
交通外傷(略)に代表される打撲、捻挫、骨折などの外傷学(略)を扱います。
子供が被害者なら検査は何科の病院ですべき?
もっとも、子供を検査のため病院に連れて行くとなると、まず小児科が思い浮かぶのではないかと思います。
では、交通事故にあったのが子供の場合は、整形外科と小児科のどちらで検査すべきなのでしょうか?
小児科とは一般的に小児内科のことを指し、15歳以下の子供の病気を専門とする診療科になります。
そのため、小児科(小児内科)は交通事故などによる外傷については専門外ということになります。
また、小児外科という診療科も存在しますが、以下の表のとおり、病院や診療所において小児外科を標榜しているところはごくわずかです。
施設 | 小児科 | 小児外科 |
---|---|---|
病院 | 2592 (35.3%) |
376 (5.1%) |
診療所 | 19647 (19.4%) |
369 (0.4%) |
※厚生労働省「平成29年(2017)医療施設(静態・動態)調査・病院報告の概況」参照
※( )内の数値は全体の施設に占める割合
さらに、小児外科では、交通事故で一番問題になりやすい整形外科の病気についてはほとんど取り扱わないようです。
日本小児外科学会のHPには、小児外科の治療対象について、以下のように掲載されています。
小児外科はもう少し詳しくいえば「小児一般外科」です。
一般外科の受け持ち範囲は呼吸器(気管・肺など)・消化器(食道から肛門までの消化管・肝臓・膵臓など)・その他のお腹の中の臓器(腎臓・脾臓など)・皮膚軟部組織(皮膚・皮下組織・筋肉など)などです。
これらの臓器の外科的な病気,腫瘍などを治療します.
(略)
整形外科の病気は小児外科で扱うことはほとんどありません。
また、脳神経外科の病気も小児外科の対象ではありません。
出典:日本小児外科学会HP
ただし、普段からかかりつけの小児科がある場合、そのかかりつけの小児科へまず連絡して、どのようにすべきかを相談することは当然可能です。
検査を何科の病院で受ければいいかわからない場合、まずは小児科に相談するというのも方法の一つであると考えられます。
交通事故にご自身の子供があってしまった場合、検査に小児科であっても整形外科であってもすぐに連れて行くというのが何より重要といえます。
耳鳴りについての検査は何科の病院ですべき?
お伝えのとおり、交通事故では整形外科で検査を受けるのが基本ですが、怪我をした部位によっては、別の科で検査すべき場合もあります。
たとえば、交通事故により耳鳴りが発症した場合、まずは耳鼻科で検査すべきと考えられます。
耳鼻科において行われる、耳鳴りの検査の内容としては
- ピッチ・マッチ検査
- ラウドネス・バランス検査
が考えられます。
ピッチマッチ検査では、耳鳴りの音質を、ラウドネス・バランス検査では、耳鳴りの音量をそれぞれ検査します。
② ピッチマッチ検査
ピッチとは音の高さの感覚のことです。
自分の耳鳴りがどのくらいの音の高さなのかを検査機械の音と比べて調べるものです。
さらに耳鳴りの音色を調べる場合もあります。
一般的には専用の耳鳴検査装置を使いますが、普通の聴力検査の装置を使う場合もあります。
この検査により耳鳴りの部位がある程度わかる場合もあります。
また、難聴との関係を見ることもできます。
③ ラウドネス・バランス検査
ラウドネストは音の大きさの感覚のことです。
② のピッチマッチテストと組み合わせて耳鳴りの音の高さでどのくらいの大きさなのかを測る検査です。
自分の感じている音と装置から出る音を聞き比べて耳鳴りの音の大きさを判断します。
(以下略)
出典:http://tinnitus.sakura.ne.jp/examn/
ただし、交通事故により耳鳴りが発症する原因が、脳内の聴覚神経の損傷である場合が考えられます。
そのような疑いがある場合には、脳神経外科や神経耳鼻科で耳鳴りの原因を探るための検査を改めて受ける必要があります。
このように、交通事故による耳鳴りの検査を何科の病院で受けるべきかは、その原因によっても変わってくるといえます。
脳が心配な場合の検査は何科の病院ですべき?
また、先ほどお伝えしたとおり、交通事故で頭を打ち付けた場合には脳の検査を念のためにでも受けておくべきといえます。
そして、脳の検査は脳神経外科のある病院で受けるのが望ましいと考えられます。
まずは、整形外科で検査を行い、脳への異常が疑われる場合には、脳神経外科への紹介状を書いてもらうという流れになることが多いかと思います。
その他、怪我をした体の部位に応じ、何科の病院で検査すべきかについては、大まかには以下の表のようになります。
怪我をした部位 | 診療科 |
---|---|
頭 | 脳神経外科 |
顔 | 形成外科 |
眼 | 眼科 |
耳や鼻の中 | 耳鼻咽喉科 |
口 | 口腔外科・歯科 |
皮膚表面 | 形成外科・皮膚科 |
それ以外 | 整形外科 |
※あくまで大まかな傾向
交通事故の検査を何科の病院で受けるべきかは、当然症状により異なりますが、まずは整形外科で検査を受けるべきと考えられます。
そして、自分の交通事故の状況や症状をしっかりと伝えた上で、何科の病院で改めて検査すべきかの指示を医師に求めるのが良いでしょう。
自身の症状に適したところで検査を受けないと、後遺障害が残るリスクが高まるなど不利益を受けるおそれがあるので、十分注意しましょう。
交通事故で行う主な検査の内容・費用相場
交通事故の検査について、基本的にはまず整形外科で受けるべきということがお分かりいただけたのではないかと思います。
もっとも、実際に行われる検査の内容や費用の相場についてもあらかじめわかっていればより安心ではないでしょうか?
そこで、最後に交通事故で行われるおもな検査の内容や費用の相場についてお伝えしていきたいと思います!
最初の検査はレントゲンが多い
まず、交通事故の検査として、整形外科では、被害者が事故時に打ち付けたと申告した体の部位のレントゲンを撮ることが多いです。
その理由としては
- ① 骨の全体像が分かる
- ② どの整形外科にもある
- ③ 他の画像検査に比べて費用が安い
- ④ ほかの画像検査に比べて検査に要する時間が短い
などが挙げられます。
①骨の全体像が分かる
交通事故による外傷としてまず疑わなければいけないのは、受傷部位の骨折になります。
打撲や捻挫ではなく骨折であった場合には、治療方法も異なり、放置しておくと変形して癒合してしまうなどの後遺障害が残るリスクもあります。
そこで、交通事故により受傷部位を骨折していないかを確認するための検査として、通常、受傷部位のレントゲン撮影(X線検査)が行われます。
ただし、ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、レントゲン撮影には放射線(X線)が使用されます。
そのため、妊婦の方が交通事故にあった場合の検査は、胎児への影響を考え、レントゲン撮影を行うかどうかは慎重に判断されます。
妊娠中にエックス線検査を行っても胎児への影響はないでしょうか?
妊娠中にエックス線検査を受けた場合の胎児への影響は、胎児が直接エックス線を受けた場合に問題となります。
(略)
通常日常的に行われているエックス線検査では、検査による被ばくが原因となって胎児に形態異常が発生することはないと考えられます。
(略)
ただし、妊娠中の女性もしくは妊娠の可能性がある女性は、放射線検査実施の前に、医師、看護師や放射線技師に必ずその旨を申し出てください。
しきい線量以下とはいっても、胎児の被ばくについては考慮しなければなりません。
検査による胎児の被ばく量、検査の必要性を考慮し、総合的に患者さん(胎児)へのメリットがデメリットを上回ると判断された場合のみ検査を実施することになります。
また、同様の理由で、乳児や赤ちゃんが交通事故にあった場合の検査でレントゲン撮影も慎重に判断されます。
一方、ある程度の年齢の子供の場合の検査にレントゲン撮影(X線検査)を用いることについては、過度に心配しすぎる必要はないようです。
むしろ、交通事故の検査でレントゲン撮影(X線検査)を行わないことによる先ほどお伝えしたようなリスクの方が高い場合が多いと考えられます。
また、レントゲンで撮影できるのは、骨の大まかな部分だけになります。
つまり、レントゲンでは、骨のひび(不全骨折)や骨挫傷の有無までは確認できない場合もあります。
また、レントゲンでは、骨以外の椎間板・筋肉・靱帯・半月板・神経などの軟部組織の損傷の確認ができません。
そのため、さらに詳しい検査として後ほどご紹介するCTやMRI検査が必要になる場合があります。
②どの整形外科にもある
また、どの整形外科にもレントゲンの撮影機器はあると考えられます。
一方、CTやMRIを撮影する機器は個人の小さな整形外科にはない場合も多いと考えられます。
交通事故の検査として、整形外科でまずレントゲンが撮影されるのには、このような現実的な問題もあります。
③他の画像検査に比べ費用が安い
さらに、交通事故で主に行われる画像検査のうち、費用面でレントゲン撮影(X線検査)はCTやMRI検査に比べて安いということも挙げられます。
交通事故の検査費用には、診療報酬点数が定められており、健康保険を使用する場合はその点数の10倍が費用になります。
ただし、健康保険を使用する場合の本人負担する費用の割合は費用総額の3割になります。
レントゲン撮影に関わる診療報酬点数には
- 画像診断料
- 撮影料
- 電子画像管理加算
がありまず。
そのうち、画像診断料及び撮影料は、撮影部位及び枚数によって違いがあります。
例えば、胸部のレントゲンを1枚撮影した場合の診療報酬点数は以下の表のとおり合計210点であり、健康保険を使用した場合の負担額は630円です。
画像診断料 |
---|
85点 |
撮影料 |
68点 |
電子画像管理加算 |
57点 |
合計点数 |
210点 |
本人費用負担額※ |
630円 |
※健康保険(3割負担)使用の場合
④他の画像検査に比べ時間が短い
そして、交通事故で主に行われる画像検査のうち、要する時間の面でレントゲン撮影はCTやMRI検査に比べ一般的に短いということも挙げられます。
さらに検査が必要ならCT撮影
また、交通事故にあった場合に行われる画像検査としてはCT検査が考えられます。
CT検査とは、X線を利用して、物体を透過したX線の量をデータとして集めて、コンピュータで処理することによって、物体の断面画像を得る検査です。
交通事故の検査としてのCT検査は以下のような場合に用いられます。
骨折の精密検査
先ほど、骨折の検査としてレントゲン撮影をしても、骨のひび(不全骨折)や骨挫傷の有無までは確認できない場合もあるとお伝えしました。
そこで、
- レントゲンでは分からないような骨折を探すため
- レントゲンで明らかに骨折しているがさらに詳細に調べるため
の検査として、CT撮影が用いられる場合があります。
脳の検査のため
また、交通事故により頭部を強く打ち付け、脳出血が疑われるような場合の検査として、頭部CT検査が有用であると考えられています。
CT検査は、クモ膜下出血、脳出血、外傷による出血などの出血に対する診断能力が非常に優れていると考えられているからです。
また、検査の時間や費用の面でも、MRI検査に比べれば、短くかつ安く済むというメリットもあります。
具体的には、一回の撮影時間は検査内容で異なるものの、単純検査で5~10分、造影検査で5~20分程度が一般的です。
また、検査費用は、以下の表のとおり、単純CTの場合、診療報酬点数は合計1470点であり、健康保険を使用した場合の負担額は4410円です。
画像診断料 |
---|
900点※1 |
撮影料 |
450点 |
電子画像管理加算 |
120点 |
合計点数 |
1470点 |
本人費用負担額※2 |
4410円 |
※1 16列以上64列未満のマルチスライス型の機器による場合
※2 健康保険(3割負担)使用の場合
放射線について
なお、レントゲンもCTも検査のために放射線が使用される点では、共通しています。
しかし、レントゲンに比べCTの放射線使用量はかなり高くなっています。
そのため、妊婦・乳児・赤ちゃんは勿論のこと、レントゲンの場合と異なり、子供の場合もCT検査の実施には慎重な判断が必要です。
検査にMRI検査が使われる場合
さらに、交通事故にあった場合に行われる画像検査としてはMRI(磁気共鳴画像法)検査が使われる場合があります。
MRI検査とは、磁石と電波を使って、体内の水素原子の位置を解析することにより、体の内部情報を画像化する検査です。
交通事故の検査としてのMRI検査は以下のような場合に用いられます。
軟部組織の検査
先ほど、レントゲン検査では、骨以外の椎間板・筋肉・靱帯・半月板・神経などの軟部組織の損傷の確認ができないとお伝えしました。
それに対し、MRI検査は椎間板・筋肉・靱帯・半月板・神経などの軟部組織に対する診断能力が非常に優れていると考えられています。
例えば、追突により、軟部組織である椎間板が神経部分を圧迫しているかどうかをMRI検査であれば診断することが可能になります。
脳の検査でのMRIとCTの使い分け
また、脳の検査にもMRI検査は使われる場合があります。
しかし、脳の検査にはCT検査が使われる場合があると先ほどお伝えしました。
では、脳の検査において、MRI検査とCT検査はどのように使い分けされているのでしょうか?
まず、MRI検査は、
- 急性脳梗塞(症状が出現して6時間程度のもの)
- しびれやめまいなどの脳幹部梗塞(近くに骨が集中している部分のため、骨の影響を受けるCTでの診断が困難)
- 脳動脈瘤(血管のこぶ)や脳腫瘍の詳細な診断(位置や種類の推定ができる)
などの細かい部分の検査に関して、非常に優れているといえます。
一方で、MRI検査は、CT検査に比べ、時間や費用が掛かる(時間は30分程度・費用は以下の表のとおり)というデメリットがあります。
そのため、まずはCT検査を行い、CTだけでは不十分な場合にMRI検査を行うという使い分けがされる場合があります。
画像診断料 |
---|
1330点※1 |
撮影料 |
450点 |
電子画像管理加算 |
120点 |
合計点数 |
1900点 |
本人費用負担額※2 |
5700円 |
※1 1.5テスラ以上3テスラ未満の機器による場合
※2 健康保険(3割負担)使用の場合
放射線なしという長所とある短所
さらに、MRI検査には、レントゲンやCT検査と異なり、放射線の被ばくがないという長所もあります。
そのため、妊婦の方が交通事故の被害者の場合に、レントゲンやCT検査はできなくても、MRI検査は可能という場合もあります。
一方で、MRI検査には、工事現場のような大きな音が聞こえる狭いところで30分程度じっとしていなければならないという短所もあります。
そのため、子供にとっては、放射線の影響を考えなくていいものの、じっとしてられず、現実的に検査が困難な場合もあります。
最後に、レントゲン、CT、MRIという各種画像検査の比較を表にまとめてみましたので、参考にしてみて下さい。
レントゲン | CT | MRI | |
---|---|---|---|
撮影原理 | X線の吸収 | X線の吸収 | 磁気の共鳴 |
検査に向いている部位 | 骨 | 骨、脳 | 脳、軟部組織 |
検査費用 | 安め | 中間 | 高め |
検査の一般的な時間 | 3~10分程度 | 10~15分程度 | 30分程度 |
骨の影響 | ある | ある | なし |
放射線被ばく | ある | ある | なし |
上記の交通事故で行われる画像検査は、それぞれの費用やメリット・デメリットなどを考慮して、過不足なく行う必要があります。
また、子供の場合など、被害者によっては、放射線の影響なども別途考慮に入れる必要があります。
交通事故の後遺症認定においても画像検査は非常に重要になるので、後遺障害が残る可能性がある方は特にすぐ弁護士に相談するのがいいでしょう。
交通事故に多い頸椎捻挫の検査
もっとも、交通事故に一番多い追突による頚椎捻挫の場合、検査としてレントゲンやCTを撮影しても異常は発見できません。
また、MRI検査をしても、椎間板が神経部分を圧迫しているかどうかを十分確認できない場合もあります。
そのような場合に、神経部分に異常がないかを確認するための検査として、以下のような神経学的検査が行われる場合があります。
①スパーリングテスト
スパーリングテストとは、神経根(脊髄から枝分かれした頸髄神経)の障害を調べる神経学的テストのことをいいます。
具体的には、医師が患者の頭部を押さえ、下方に押し付けることにより、神経根の出口を狭めます。
この際、神経根に異常があれば、神経根の支配領域(肩から指先にかけた上肢)に放散痛や痺れが生じ、患者は通常以上の違和感や痛みを訴えます。
このことにより、神経根の障害の有無を検査することができます。
なお、同じ目的の検査として、ジャクソンテストというものもあります。
②握力検査
神経に異常をきたすと、握力にも異常がでることがあります。
利き手の方が握力が低い場合には神経系に異常が生じている証拠となります。
ただし、握力検査は自分の意思で変動させることができるため、後遺症認定の関係では、握力検査はあまり参考にされないようです。
③徒手筋力検査
徒手筋力検査とは、個々の筋肉で筋力が低下しているかどうかを徒手的に評価する検査方法です。
神経が障害を受けると、その神経が支配している筋の筋力が低下するため、徒手筋力検査により、神経の障害の有無を検査することができます。
ただし、徒手筋力検査は、検査者の主観によって評価が分かれる可能性があるため、後遺症認定の関係では、あまり重視されないようです。
④筋委縮検査
神経の障害により、麻痺が起きている状態が長時間続いてしまうと筋は萎縮してしまいます。
そのため、筋萎縮検査により、神経の障害の有無を検査することができます。
具体的には、両腕の肘間接の上下10cmのところに位置する上腕部と前腕部の周囲をメジャーで測定します。
この部位が痩せていれば有効な他覚的所見(本人以外が確認出来る状態)となります。
被害者の意思や検査者の主観に左右されるものではないため、後遺症認定の関係でも、筋委縮検査の結果は重視されているようです。
⑤知覚検査
知覚検査の方法は様々ですが、医療の現場では馬の毛でできた筆を使用して表在知覚のみを検査するのが一般的なようです。
神経に異常をきたすと、知覚障害を起こす場合があるため、知覚検査により、神経の障害の有無を検査することができます。
ただし、知覚検査は、後遺症認定の関係では、あまり重視されないようです。
⑥深部腱反射
末梢神経である神経根に異常が認められる場合、その神経根が支配する筋の筋収縮が低下、消失します。
そのため、深部腱反射検査により、神経の障害の有無を検査することができます。
具体的には、腱をゴムハンマーで叩き、筋に進展刺激を与えることにより、その反射の反応を診ることになります。
この反射の反応が鈍く又はなくなっていれば、神経根の異常を示す有効な他覚的所見(本人以外が確認出来る状態)となります。
反射は生理的なものであり、被害者の意思ではコントロールできないため、後遺症認定の関係でも深部腱反射の結果は重視されているようです。
交通事故で、追突により、頚椎捻挫となった場合、痛みがひどいようであれば、画像検査としてMRI検査をすることが望ましいと考えられます。
併せて、後遺症認定を行う場合に備える意味でも、上記の神経学的な検査をすることが望ましいといえます。
上記の神経学的な検査のうち、
- スパーリングテスト
- 筋委縮検査
- 深部腱反射
は後遺症認定の関係でも重視されることになるので、特に検査をしておくべきと考えられます。
高次脳機能障害を判定する検査
交通事故により脳を損傷した場合に、高次脳機能障害という後遺障害が残ってしまうことがあります。
この高次脳機能障害の有無を判断する検査として、まず、レントゲン、MRI、CT等により脳損傷、脳萎縮の有無の確認が行われます。
その上で、高次脳機能障害の有無及び程度を判定するには、大きく分けて
- 意思疎通能力(記銘・記憶力、認知力、言語力)
- 問題解決能力(理解力、判断能力)
- 遂行能力(作業負荷に対する持続力・持久能力)
- 社会行動能力(社会適合性、協調性)
という4つの能力の低下を計ります。
このうち、意思疎通能力・遂行能力については、以下の表のような検査により数値化することが可能になります。
ミニメンタルステート(MMSE)検査 |
長谷川式簡易知能評価(HDS-R) |
レーブン色彩マトリックス(RCPM)検査 |
ウェクスラー成人知能(WAIS-R)検査 |
幼児~児童用の知能検査(WPPSI、WISCⅢ、K-ABC、新K式発達検査) |
コース立方体組み合わせテスト(Khos) |
標準失語症(SLTA)検査 |
WAB失語症検査 |
日本版ウェクスラー記憶(WMS-R)検査 |
リバーミード行動記憶(RBMT)検査 |
三宅式記名検査 |
ベントン視覚記銘検査 |
レイ複雑図形再生課題(ROCFT) |
トレイルメイキングテスト(TMT) |
パサート(PASAT) |
注意機能スクリーニング(D-CAT)検査 |
標準注意検査法・標準意欲評価法(CAT・CAS) |
ウィスコンシン・カード・ソーティングテスト(WCST) |
日本版遂行機能障害症候群行動評価(BADS) |
これらは、高次脳機能障害による適切な後遺症認定の関係でも重要な検査になってきます。
ただし、上記の検査をすべて行うわけではありません。
上記の神経心理学的検査の中から必要な検査の組み合わせを考えて、脳神経外科医や言語聴覚士に検査を依頼する必要があります。
この点、交通事故に強い弁護士などの専門家に後遺症認定の手続を依頼すれば、どの検査をすべきかについてのアドバイスがもらえるかと思います。
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最後に一言アドバイス
それでは、最後になりますが、交通事故でお悩みの方に一言アドバイスをお願いします。
まず、交通事故にあった場合、検査は念のためにでも必ず受けておくべきといえます。
その上で、自身の症状や状況に適した検査を受けられる病院や検査の内容を理解しておくことが重要になります。
交通事故でしっかりとした検査を受けられないによる不利益を回避するためにも、お困りのことがあれば、まず弁護士などに相談してみましょう。
まとめ
いかがだったでしょうか。
このページを最後までお読みの方は、
- 交通事故にあった場合に検査を受けることの重要性
- 交通事故の検査を何科の病院で受けるべきか
- 交通事故にあった場合に行う主な検査の内容や費用の相場
について理解を深めていただけたのではないかと思います。
これを読んで弁護士に相談した方が良いと思った方も多いハズです。
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また、このホームページでは、交通事故に関する関連記事も多数掲載していますので、ぜひ参考にしてください!
皆さまのお悩みが早く解決するよう、お祈りしています。
交通事故後の検査についてのQ&A
交通事故後に検査を受けないことのリスクは?
3つのリスクが考えられます。1つ目は、後遺障害が残ってしまうリスクです。検査を受けないことで、後遺障害のリスクが高まります。2つ目は、痛みの原因と事故の因果関係が認められないリスクです。交通事故から検査まで期間が空くと、痛みが発生した時に、事故との因果関係の立証が難しくなります。3つ目は、後遺症認定に不利に働くリスクです。事故から検査の期間が開くと、後遺症の認定が難しくなります。 事故後に検査を受けないことで生じるリスク
交通事故の検査は何科の病院に行くべき?
基本的には、整形外科に検査を受けるべきです。交通事故に遭った場合、骨格系、筋肉、神経系からなる運動器に異常が発生する可能性が高く、整形外科が適しています。脳の損傷が心配な時は、脳神経外科での検査が望ましいです。一般的には、整形外科で検査を行い、脳への異常が疑われる場合には、脳神経外科への紹介状を書いてもらいます。 交通事故後の検査に適した診療科について
交通事故後に行う検査とは?
レントゲンによる検査が一般的です。レントゲン検査は、どの整形外科でも受診可能で、安価で、短い時間で検査が済むため多用されます。骨折の精密検査や脳の検査など、より詳しい検査が必要な場合は、MRIやCTが使用されます。頸椎捻挫など画像で異常を確認できない場合は、神経学的検査が行われます。 交通事故に行う主要な検査の詳細
この記事の監修弁護士
岡野武志弁護士
アトム法律事務所弁護士法人
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-11-28 合人社東京永田町ビル9階
第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。