後遺障害等級1級|1級1号~6号の認定基準・慰謝料・自賠責と労災との違い

  • 後遺障害,1級

この記事のポイントをまとめると
  • 後遺障害1級は、後遺障害等級の中でも最も深刻な症状について認定されるものであり、介護の要否により別表1と別表2に認定基準が分かれている
  • 後遺障害等級1級の慰謝料の相場は一番高額な裁判基準で2800万であり、逸失利益を計算するための労働能力喪失率は100%
  • 労災で後遺障害等級1級が認定された場合、慰謝料は受け取れない反面、年金の形式で受け取れる金額がある

後遺障害等級の1級について詳しく知りたい方はぜひご一読下さい。

author okano
岡野武志弁護士
交通事故と刑事事件を専門とするアトム法律事務所の代表弁護士。

交通事故における後遺障害等級には1級から14級まであり、その中で最も重度後遺障害といえるのが1級の症状です。

もっとも、後遺障害等級の1級がどのような場合に認定されるかを詳しくご存知でない方も多いかと思います。

そこで、まずは、後遺障害等級1級の認定基準についてお伝えしていきたいと思います。

後遺障害等級1級の認定基準

後遺障害等級1級の認定基準

交通事故の後遺障害等級1級の認定率は1.47%

お伝えしたとおり、後遺障害の等級には1級14級までありますが、その認定率(構成比率)は等級により大きく異なります。

具体的な後遺障害の等級の1級~14級までの認定率(構成比率)は、以下の表のようになっています。

後遺障害の等級別認定件数及び認定率(構成比率)
等級 認定件数 認定率
1級(別表第1 874 1.41%
2級(別表第1 462 0.75%
1級(別表第2 36 0.06%
2級(別表第2 108 0.17%
3 316 0.51%
4 180 0.29%
5 405 0.65%
6 528 0.85%
7 1008 1.63%
8 1984 3.20%
9 2200 3.55%
10 2020 3.26%
11 4369 7.05%
12 10592 17.08%
13 592 0.95%
14 36335 58.60%
合計 62009 100.00%

※損害保険料率算出機構「2016年度 自動車保険の概況」参照

後ほど詳しくお伝えしますが後遺障害1級には別表1と別表2のものがあるところ、後遺障害1級の認定率(構成比率)は合計すると1.47%になります。

表全体をご覧頂ければわかるかと思いますが、後遺障害等級1級の認定率は、等級全体の中では高いとはいえません。

もっとも、重度後遺障害の中では、1級は後遺障害等級2級や3級よりも認定率が高く、下位等級である後遺障害13級よりも高くなっています。

後遺障害1級1号・2号(別表1)の認定基準は?

では、後遺障害等級の1級の認定基準を満たす症状とはどのようなものになるのでしょうか?

先ほども少しお伝えしましたが、自賠責における後遺障害1級には、別表第1と別表第2の二種類が存在します。

このうち、別表第1には、介護を要する後遺障害が規定されています。

さらに、自賠責保険における後遺障害等級の1級の別表1には、1級1号2号の二種類が規定されています。

そこで、まずは後遺障害等級1級別表第1の1号及び2号の各号の認定基準を満たす症状について、具体的にお伝えしていきたいと思います。

後遺障害1級1号

自賠責保険では、後遺障害1級1号(別表第1)は

「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの」

と定められており、生命維持に必要な身のまわり処理の動作について常に他人の介護を要する状態のものが該当するとされています。

交通事故により、上記の状態になってしまう可能性がある具体的な症状としては

  • 高次脳機能障害
  • 脳損傷や脊髄損傷による麻痺

が考えられます。

高次脳機能障害

後遺障害の1級1号が、高次脳機能障害により認められるためには、

  • 重篤な高次脳機能障害のため、食事・入浴・用便・更衣等に常時介護を要する場合
  • 高次脳機能障害による高度の認知症や情意の荒廃があるため、常時監視を要する場合

に該当する必要があります。

なお、高次脳機能障害の後遺障害に関しては、以下の記事に詳しく記載されていますので、興味のある方はぜひご覧になってみて下さい。

脳損傷や脊髄損傷による麻痺

後遺障害の1級1号が、脳損傷や脊髄損傷による麻痺がある場合に認められるためには、

  1. ① 高度の四肢麻痺が認められる状態
  2. ② 中等度の四肢麻痺で、食事・入浴・用便・更衣等について常時介護を要する状態
  3. ③ 脳損傷による高度の片麻痺で、食事・入浴・用便・更衣等について常時介護を要する状態
  4. ④ 脊髄損傷による高度の対麻痺が認められる状態
  5. ⑤ 脊髄損傷による中等度の対麻痺で、食事・入浴・用便・更衣等について常時介護を要する状態

であることが必要となります。

麻痺の種類については、以下のイラストのとおりです。

麻痺の種類

また、麻痺の程度についても、厚生労働省の通達により、具体的な基準が定められています。

麻痺の程度について、詳細を知りたい方は、以下の記事をぜひご覧ください。

後遺障害1級2号

また、自賠責保険では、後遺障害の1級2号(別表第1)は

「胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの」

と定められているところ、こちらは1級1号と同じく

生命維持に必要な身のまわり処理の動作について常に他人の介護を要する状態

のことをいうとされており、具体的には

呼吸器の障害により呼吸機能が低下し、常時介護が必要な状態となった場合

が該当します。

後遺障害1級1号~6号(別表2)の認定基準は?

一方、自賠責後遺障害1級別表第2には、常時介護は要しないものの、社会生活を送るのが困難な重度後遺障害が規定されています。

そして、自賠責保険における後遺障害等級の1級の別表第2では、1級1号から6号まで規定されています。

そこで、続いては、後遺障害等級1級別表第2の1号~6号の各号の認定基準を満たす症状について、具体的にお伝えしていきたいと思います。

後遺障害1級1号

まず、交通事故における後遺障害の1級1号(別表第2)は、

「両眼が失明したもの」

と定められています。

「失明」とは、全く明暗を区別できないいわゆる全盲の状態だけでなく、

  • 両眼の眼球を亡失(摘出)
  • 明暗のみを区別できる状態(光覚弁)や眼前の手の動きのみを認識できる状態(手動弁)

ものも含まれ、目の前の指の本数を数えられる状態(指数弁)でなくなったかどうかが判断の基準になります。

両眼が失明してしまえば、常時介護は要しないものの、単独で通常の社会生活を送るのは困難となります。

そのため、重度後遺障害として、1級が認定されることになります。

後遺障害の1級1号(別表第2)は、両方の眼球の視力障害に区分されます。

後遺障害1級2号

次に、交通事故における後遺障害の1級2号(別表第2)は、

「咀嚼及び言語の機能を廃したもの」

と定められています。

咀嚼機能の障害

「咀嚼…の機能を廃したもの」とは、具体的には

流動食以外は摂取できない

場合のことをいいます。

言語機能の障害

「言語の機能を廃したもの」とは

4種の子音のうち、3種以上が発音できない状態

のことをいい、4種の子音とは具体的には以下の表のとおりです。

子音の種類と構音部位ごとの分類
種類 構音部位
口唇音 ま行、ぱ行、ば行、わ行、ふ
歯舌音 な行、た行、だ行、ら行、さ行、しゅ、し、ざ行、じゅ
口蓋音 か行、が行、や行、ひ、にゅ、ぎゅ、ん
喉頭音 は行

1級2号(別表第2)はこの咀嚼機能の障害と言語機能の障害が両方ある場合に認定されることになります。

後遺障害の1級2号(別表第2)は、口のそしゃく及び言語機能障害に区分されます。

後遺障害1級3号

そして、交通事故における後遺障害の1級3号(別表第2)は、

「両上肢をひじ関節以上で失ったもの」

と定められており、「上肢をひじ関節以上で失」うとは、具体的には以下のいずれかに該当するものをいいます。

  • 肩関節において肩甲骨と上腕骨を離断
  • 肩関節とひじ関節との間において上肢を切断
  • ひじ関節において、上腕骨と橈骨及び尺骨とを離断

後遺障害の1級3号(別表第2)は、上肢の欠損障害に区分されます。

後遺障害1級4号

また、交通事故における後遺障害の1級4号(別表第2)は、

「両上肢の用を全廃したもの」

と定められており、具体的には

両方の3大関節(肩関節、ひじ関節及び手関節)のすべてが強直し、かつ、手指の全部の用を廃したもの(上腕神経叢の完全麻痺含む)

のことをいいます。

そして、「関節の強直」とは

可動域が健康な方の上肢の可動域角度の10%程度以下に制限

されることをいいます。

さらに、肩関節の場合はこれに加えて、肩甲上腕骨折の骨性強直がレントゲン写真により確認できることも必要となります。

具体的な上肢の3大関節の可動域制限が問題となる運動や参考可動域角度を前提とした「強直」に該当する角度は以下のとおりです。

肩関節の強直

まず、肩関節が強直したかは

  • 屈曲(前方に腕を挙げる)
  • 外転(側方に腕を挙げる)

の運動の可動域制限が問題となり、参考可動域角度を前提とした「強直」に該当する角度は以下のとおりです。

肩関節の各運動の参考可動域角度
運動の名称 参考可動域角度 「強直」に該当する角度
屈曲 180° 20°
外転 180° 20°

肩関節が強直したといえるためには、上記の屈曲・外転の数値をいずれも満たす必要があります。

肘関節の強直

次に、肘関節が強直したかは

屈曲(肘を伸ばした状態から前方に肘を曲げる)・伸展(肘を伸ばした状態から後方に肘を曲げる)

の運動の可動域の合計の数値が問題となり、参考可動域角度を前提とした「強直」に該当する角度は以下のとおりです。

肘関節の各運動の参考可動域角度
運動の名称 参考可動域角度 「強直」に該当する角度
屈曲 145° 15°
伸展 5° 5°
合計 150° 20°
手関節の強直

そして、手関節が強直したかは

屈曲(掌屈)(手を手のひら側に曲げる運動)・伸展(背屈)(手を手の背側に曲げる運動)

の運動の可動域の合計の数値が問題となり、参考可動域角度を前提とした「強直」に該当する角度は以下のとおりです。

手関節の各運動の参考可動域角度
運動の名称 参考可動域角度 「強直」に該当する角度
屈曲(掌屈) 90° 10°
伸展(背屈) 70° 10°
合計 160° 20°
指の用廃

「手指の用を廃した」とは、具体的には

  • 末節骨の長さの1/2以上を失った場合
  • 中手指節関節又は近位指節間関節(親指の場合は指節間関節)のいずれかの可動域が健康な指の1/2以下になった場合
  • 手指の末節の指腹部及び側部の深部感覚及び表在感覚が完全に脱失した場合

のことをいいます。

後遺障害1級4号が認定されるためにはすべての手指が上記の場合に該当する必要があります。

なお、指の後遺障害の内容をより詳しく知りたい方は、以下の記事もぜひご覧ください。

後遺障害の1級4号(別表第2)は、上肢の機能障害に区分されます。

後遺障害1級5号

そして、交通事故における後遺障害の1級5号(別表第2)は、

「両下肢をひざ関節以上で失ったもの」

と定められており、「下肢をひざ関節以上で失」うとは、具体的には以下のいずれかに該当するものをいいます。

  • 股関節において寛骨と大腿骨を離断
  • 股関節とひざ関節との間において下肢を切断
  • ひざ関節において、大腿骨と脛骨及び腓骨とを離断

後遺障害の1級5号(別表第2)は、下肢の欠損障害に区分されます。

後遺障害1級6号

また、交通事故における後遺障害の1級6号(別表第2)は、

「両下肢の用を全廃したもの」

と定められています。

具体的には

両方の3大関節(股関節、ひざ関節及び足関節)のすべてが強直したもの

のことをいいます。

そして、「関節の強直」とは

可動域が健康な方の下肢の可動域角度の10%程度以下に制限

されることをいいます。

具体的な下肢の3大関節の可動域制限が問題となる運動や参考可動域角度を前提とした「強直」に該当する角度は以下のとおりです。

股関節の強直

まず、股関節が強直したかは

  • 屈曲(仰向けの状態で脚を挙げ、上体に近づける)・伸展(うつ伏せの状態で脚を挙げる)
  • 外転(仰向けで脚をまっすぐさせた状態で、股を広げる)・内転(仰向けで脚をまっすぐさせた状態で、股を閉じ(内側に移動させ)る)

という主要運動の可動域のそれぞれの合計の数値が問題となり、参考可動域角度を前提とした「強直」に該当する角度は以下のとおりです。

股関節の各運動の参考可動域角度
主要・参考運動の区別 運動の名称 参考可動域角度 「強直」に該当する角度
主要運動 屈曲 125° 15°
伸展 15° 5°
合計 140° 20°
主要運動 外転 45° 5°
内転 20° 5°
合計 65° 10°

股関節が強直したといえるためには、上記の屈曲・伸展の合計値及び外転・内転の合計値をいずれも満たす必要があります。

膝関節の強直

次に、膝関節が強直したかは

屈曲(膝を伸ばした状態から膝を曲げ、上体に近づける)・伸展

の運動の可動域の数値が問題となり、参考可動域角度を前提とした「強直」に該当する角度は以下のとおりです。

膝関節の各運動の参考可動域角度
運動の名称 参考可動域角度 「強直」に該当する角度
屈曲 130° 15°
伸展 0° 0°
足関節の強直

そして、足関節が強直したかは

屈曲(底屈)(足を足の裏側に曲げる運動)・伸展(背屈)(足を足の甲側に曲げる運動)

の運動の可動域の合計の数値が問題となり、参考可動域角度を前提とした「強直」に該当する角度は以下のとおりです。

足関節の各運動の参考可動域角度
運動の名称 参考可動域角度 「強直」に該当する角度
屈曲(底屈) 45° 5°
伸展(背屈) 20° 5°
合計 65° 10°

後遺障害の1級6号(別表第2)は、下肢の機能障害に区分されます。

最後に、交通事故(自賠責保険)の後遺障害等級1級の等級表をご紹介しますので、参考にしてみて下さい。

後遺障害1級の等級表(別表第1)
1 後遺障害
1 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
2 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
後遺障害1級の等級表(別表第2)
1 後遺障害
1 両眼が失明したもの
2 咀嚼及び言語の機能を廃したもの
3 両上肢をひじ関節以上で失ったもの
4 両上肢の用を全廃したもの
5 両下肢をひざ関節以上で失ったもの
6 両下肢の用を全廃したもの

重度後遺障害である1級の症状が残ってしまった場合、日常生活を送ることが困難になってしまうことからすれば、確実に認定を受ける必要があります。

そして、このあとご紹介するとおり、後遺障害等級の1級が認定されるかどうかで、受け取れる慰謝料や逸失利益の金額には大きな違いが出てきます。

後遺障害の1級が認定される見込みがあるかどうかの判断は難しい部分もありますので、まずは専門家である弁護士への相談をおすすめします。

後遺障害等級1級の慰謝料・逸失利益の金額

後遺障害等級1級の慰謝料・逸失利益の金額

自賠責保険において、後遺障害1級が認定されると

  • 後遺障害慰謝料
  • 逸失利益

という項目の損害賠償金を受け取ることが可能になります。

では、後遺障害の1級が認定されることで受け取れる慰謝料や逸失利益の具体的な金額はいくら位になるのでしょうか?

後遺障害等級1級の慰謝料の金額の相場とは?

交通事故慰謝料後遺障害が認定されると、認定された等級に応じて、傷害慰謝料とは別途受け取れるようになります。

そして、1級が認定された場合に受け取れる後遺障害慰謝料の具体的な金額の相場は、用いられる基準によっても違いがあります。

そこで、ここからは、代表的な後遺障害の1級が認定された場合の慰謝料の基準の種類及び基準ごとの金額の相場をご紹介したいと思います。

後遺障害等級1級の慰謝料の基準

自賠責基準

まず、加入が義務付けられている自賠責保険から支払われる保険金の金額を算出する際に用いる自賠責基準というものがあります。

自賠責保険は、被害者の損害を最低限度保障する保険のため、自賠責基準で計算された後遺障害の慰謝料の相場は低額になっています。

後遺障害の1級~14級までの各等級ごとに、慰謝料の金額が自賠責基準で定められています。

任意保険基準

次に、各任意保険会社が慰謝料などの損害賠償の金額の提示額を計算する際に用いる任意保険基準というものがあります。

任意保険基準は、保険会社ごとに基準が異なり、かつ非公開とされているので、詳細はわかりません。

もっとも、かつては各任意保険会社共通の基準が存在し、現在もその基準が基礎になっていると考えられています。

旧統一任意保険基準では、自賠責基準で計算された金額よりも若干高い程度の相場になっていました。

旧統一任意保険基準でも後遺障害の1級~14級までの各等級ごとに慰謝料の金額が任意保険基準で定められています。

裁判基準

そして、交通事故の後遺障害の慰謝料などについて裁判で認められる相場である裁判基準というものがあります。

この裁判基準は、通称赤い本(赤本)と呼ばれている本に掲載されています。

交通事故の赤本については、以下の記事に詳しく記載されていますので、興味のある方はぜひご覧になってみて下さい!

裁判基準は、3つの基準の中で慰謝料の金額の相場が最も高額になっています。

後遺障害の1級~14級までの各等級ごとに慰謝料の金額が裁判基準でも定められています。

このように、後遺障害の慰謝料の相場は自賠責で認定される等級と用いられる基準によって決まってきます。

なお、裁判基準は、弁護士が相手方任意保険会社と交渉する際にも用いられているため、弁護士基準とも呼ばれます。

そして、弁護士に依頼することにより、裁判をすることなく、裁判基準での慰謝料の金額を前提とする示談交渉が可能になります。

後遺障害の慰謝料を計算する基準
基準 いつ用いられるか 金額
自賠責基準 自賠責への請求 低い
任意保険基準 任意保険の提示 自賠責基準よりは高い
裁判基準
(弁護士基準)
・裁判
・弁護士の交渉
最も高い

後遺障害等級1級の慰謝料の相場

では、後遺障害等級1級が認定された場合の慰謝料の金額の相場は各基準ごとにいったいどれ位になるのでしょうか?

自賠責基準

交通事故で後遺障害の1級が認定された場合の慰謝料は、自賠責保険の場合、受け取れる金額は別表第1の場合と別表第2の場合とで違いがあります。

具体的には、後遺障害等級1級の別表第1が認定された場合の慰謝料の金額は、1600万円(被扶養者がいるときは1800万円)になります。

一方、後遺障害等級1級の別表第2が認定された場合の慰謝料の金額は、1100万円(被扶養者がいるときは1300万円)になります。

後遺障害の等級が1級の場合、自賠責保険からは上記の金額以上の慰謝料を受け取ることはできません。

後遺障害等級1級は、普通の社会生活を送るのは困難な重度後遺障害であることからすれば、上記の金額では少ないと感じるかもしれません。

任意保険基準

先ほどお伝えしたとおり、現在の任意保険基準は各会社ごとに異なり、非公開なので、ここでは旧統一任意保険基準を前提にお伝えします。

後遺障害が1級の場合の慰謝料の旧統一任意保険基準の金額の相場は1300~1800万円になっています。

自賠責基準の慰謝料の相場よりは増額していますが、その増額幅が200万円程度ではまだまだ不十分と思われる方もいるでしょう。

裁判基準

そして、後遺障害が1級の場合の慰謝料の裁判基準(弁護士基準)の相場は2800万円になっています。

比較していただければわかりますが、自賠責基準や任意保険基準の場合より1000万円以上も高額な相場になっています。

さらに、自賠責基準の場合と異なり、裁判基準の慰謝料はあくまで相場であり、絶対的なものではありません。

そのため、裁判などでは、上記の相場の金額とは異なる慰謝料が認められる場合もあります。

以下の記事では、後遺障害等級1級が認定された場合の判例が紹介されていますので、興味のある方はぜひご覧になってみて下さい!

後遺障害等級1級の基準別の慰謝料
基準 金額
自賠責基準 11001800万円
任意保険基準※ 13001800万円
裁判基準
(弁護士基準)
2800万円

※ 旧統一任意保険基準を参照した

後遺障害等級1級の逸失利益の金額の計算方法

そして、後遺障害1級が認定された場合の逸失利益の金額の計算方法は、基本的に以下のようになります。

後遺障害1級の逸失利益の計算方法

(基礎収入)×(労働能力喪失率)×(労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数)

また、逸失利益の計算方法の各項目の簡単な意味は以下の表のとおりです。

逸失利益の計算方法の項目と意味
項目 意味
基礎収入 後遺障害が残らなければ、得られていたであろう収入
労働能力喪失率 後遺障害が残ったことによる減収の割合
労働能力喪失期間 後遺障害によって減収が発生する期間
中間利息控除係数 逸失利益を症状固定時の金額にするための係数

そして、労働能力喪失率につき、自賠責では1級100%と定められており、この喪失率は他の基準でも基本的に準用されます。

また、労働能力喪失期間は症状固定時の年齢から一般的な就労可能な年齢の終期である67歳までの期間で計算するのが原則です。

なお、より詳しい後遺障害の逸失利益の計算方法は以下の記事に記載されていますので、ぜひご覧になってみて下さい!

自賠責保険の後遺障害等級1級の保険金限度額

交通事故により後遺障害1級が認定された場合の慰謝料逸失利益の計算方法は以上のとおりです。

もっとも、自賠責から後遺障害1級が認定された際に受け取れる保険金は、上記の慰謝料と逸失利益の合計とは限らない点に注意が必要です。

自賠責保険の後遺障害による損害につき支払われる保険金の金額には限度額が法令上定められているからです。

責任保険の保険金額は、政令で定める。

法第十三条第一項の保険金額は、死亡した者又は傷害を受けた者一人につき、次のとおりとする。

(略)

三 傷害を受けた者(略)

ヘ 別表第二に定める等級に該当する後遺障害が存する場合(略)における当該後遺障害による損害につき

当該後遺障害の該当する等級に応ずる同表に定める金額

そして、自賠責保険から後遺障害の1級が認定された際に支払われる保険金額の限度額は、別表第1の場合と別表第2の場合とで違いがあります。

具体的には、後遺障害等級1級の別表第1が認定された場合の保険金額の限度額は、4000万円になります。

一方、後遺障害等級1級の別表第2が認定された場合の保険金額の限度額は、3000万円になります。

この限度額があることにより、自賠責保険から受け取れる後遺障害の逸失利益は、計算上どんなに大きくなっても

各等級の限度額と後遺障害慰謝料の差額

までとなり、具体的には、自賠責保険から後遺障害の1級が認定された場合に支払われる後遺障害の逸失利益は

  • 別表第1の場合:4000万円-1600万円=2400万円まで
  • 別表第1の場合:3000万円-1100万円=1900万円まで

になります(被扶養者がいない場合)。

年収や年齢にもよりますが、自賠責保険の後遺障害の慰謝料及び逸失利益を支払基準で計算した金額は限度額を超える可能性も十分にあります。

また、交通事故では、後遺障害の認定の有無にかかわらず、入通院分の慰謝料や休業損害も別途請求することができます。

これらの損害賠償の金額の総額を計算するのはかなり手間が掛かると思われる方もいらっしゃるかもしれません。

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労災と自賠責との後遺障害等級1級の違い

労災と自賠責との後遺障害等級1級の違い

交通事故通勤・勤務中に起こった場合には労災が適用され、労災でも後遺障害等級1級が認定される可能性があります。

もっとも、労災と自賠責とでは、後遺障害等級1級に関し違いがあります。

そこで、最後に労災と自賠責との後遺障害等級1級の違いについてお伝えしたいと思います。

労災と自賠責は後遺障害等級1級の号数が違う

まず、労災の場合、自賠責の場合とは異なり、後遺障害1級別表1・2に分かれていないという違いがあります。

自賠責における後遺障害別表第1の1級1号及び2号の症状は、労災の労災の後遺障害第1級3号及び4号として規定されています。

実際の労災の後遺障害等級1級の等級表は以下のとおりです。

労災の後遺障害等級1級の等級表
号数 後遺障害
1 両眼が失明したもの
2 咀嚼及び言語の機能を廃したもの
3 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し常に介護を要するもの
4 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し常に介護を要するもの
5 削除
6 両上肢を肘関節以上で失ったもの
7 両上肢の用を全廃したもの
8 両下肢を膝関節以上で失ったもの
9 両下肢の用を全廃したもの

労災と自賠責との後遺障害1級の違いは慰謝料

労災において後遺障害1級が認定された場合、労災からもそれに応じた補償を受けられることになります。

もっとも、自賠責の場合と異なり、労災から後遺障害の1級が認定された際に受け取れる金額には慰謝料が含まれない点が違いになります。

労災保険は、あくまで被災労働者やその家族の生活の保障を目的とするものであり、精神的苦痛の慰謝は目的としていないからです。

労災で後遺障害等級1級が認定された時の金額

労災後遺障害等級1級が認定された場合、下記の項目の金額が受け取れることになります。

  • 障害(補償)給付
  • 障害特別金
  • 障害特別支給金

このうち、障害(補償)給付及び障害特別金については年金の形式で受け取れる点が違いになります。

重度後遺障害である1級の症状が残った場合、生涯金銭的な問題が続くため、労災からの年金の形式での給付は非常に有益といえます。

ただし、交通事故で労災が適用される場合、労災と自賠責の双方に請求は可能ですが、二重取りにならないよう金額の調整がされます。

このような金額の調整は複雑な部分も多いため、ご自身だけでは判断せずに弁護士などの専門家にしっかりと相談した方がよいといえます。

具体的な労災から後遺障害が認定された場合に受け取れる金銭や自賠責との調整の方法については、以下の記事をぜひご覧になってみて下さい!

最後に、お伝えしてきた労災と自賠責の後遺障害等級1級の違いについて表にまとめてみましたので、参考にしてみて下さい。

労災と自賠責の後遺障害1級の違い
労災 自賠責
後遺障害1級の種類 一種類のみ 別表12の二種類
慰謝料 受け取れない 受け取れる
年金払い あり なし

後遺障害等級1級に関する問題を弁護士に相談したい方へ

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ここまで、後遺障害等級1級に関する問題についてお伝えをしてきましたが、読んだだけではわからないことがあった方もいるのではないでしょうか?

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最後に一言アドバイス

それでは、最後になりますが、後遺障害等級1級の問題についてお悩みの方に一言アドバイスをお願いします。

後遺障害等級1級が認定されるかどうかは、お伝えした1級の各号の認定基準を満たしているかどうかを判断する必要があります。

また、同じ後遺障害の1級が認定された場合でも、受け取れる慰謝料は用いられる基準によって大きな違いがあることも覚えておく必要があります。

後遺障害等級1級の認定可能性を高め、適切な慰謝料の金額を受け取るのであれば、弁護士に依頼するのが有効な手段であるといえます。

まとめ

いかがだったでしょうか。

このページを最後までお読みの方は、

後遺障害等級の1級に関する問題

について理解を深めていただけたのではないかと思います。

これを読んで弁護士に相談した方が良いと思った方も多いハズです。

自宅から弁護士と相談したい場合には、スマホで無料相談の機能を利用してみて下さい!

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また、このホームページでは、交通事故に関する関連記事も多数掲載していますので、ぜひ参考にしてください!

皆さまのお悩みが早く解決するよう、お祈りしています。

この記事の監修弁護士

岡野武志弁護士

アトム法律事務所弁護士法人
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-11-28 合人社東京永田町ビル9階

第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。

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