人身事故で通院した場合…治療費の請求はできる?慰謝料などの損害賠償額は?
自動車を運転中に人身事故の被害に遭って怪我をした場合…。
病院に通院する必要がありますよね。
しかし、
- 通院中にかかった治療費は誰が支払うの?保険会社にちゃんと請求できるの?
- 通院した場合の損害賠償は?保険会社から提示された慰謝料は適正なの?
- むちうちの場合では、慰謝料が違うってホント!?
など、わからないことだらけのはずです。
そこで今回このページでは、人身事故で通院した場合の治療費や慰謝料などの損害賠償について、一緒に詳しく勉強していきましょう!
なお、専門的な解説は、テレビや雑誌でお馴染みの岡野武志弁護士にお願いしています。
よろしくお願いします。
通院慰謝料には、例外ルールなどもあり、ご自身だけの判断では適正な慰謝料を受け取れない可能性もあります。
そうならないためにも、これまでにたくさんの相談を受けてきた経験に基づき、具体例も交えながら、わかりやすく解説していきたいと思います。
目次
事故による怪我からは可能な限り早く復活したいですよね。
そのために、可能であれば、毎日通院したいところです。
しかし、仕事などで毎日通院できない方もいらっしゃるでしょう。
毎日ではないにしても、通院のために、仕事を休まれている方もいらっしゃるはずです。
その間の治療費は?生活費はどうしたら良いの?
そのような不安を抱えながら通院を続けるのは非常に辛いですよね…。
不安を少しでも解消できるように、通院中に受け取れる補償について、ここから一緒に見ていきましょう。
自動車での人身事故の通院にかかった治療費は請求できる!?
自動車での人身事故が原因で怪我をした場合、病院に入院や通院をすることになると思います。
そうなった場合の治療費の支払いはどうなっているのでしょうか。
治療費の支払いは誰がするの?
実は、交通事故による怪我の治療をする場合であっても、病院との関係では、治療費の支払義務は患者である被害者の方にあることになるそうです。
よって、原則的な治療費の支払い方法としては、被害者の方が病院に治療費を立替え、立替えた治療費を加害者側に請求するという形になります。
ただし、加害者側が任意保険会社に加入している場合、治療費を相手側の保険会社から治療機関に直接支払うという一括対応という手続きがあります。
この場合、被害者の方は病院の窓口で治療費を立て替える必要がなくなります。
一括対応とは、相手側の任意保険会社が窓口となり、自賠責保険と任意保険の賠償金を一括して取り扱い、被害者に対して支払いをする対応のことです。
ちなみに、相手側の任意保険会社に一括対応してもらうにあたっては、任意保険会社に対して「同意書」を提出することが求められるそうです。
同意書は、
①医療機関に対して治療内容や治療の経過、既往症などについて照会し、回答を得ること
②医療機関に対して照会をしたり回答をもらうにあたって、必要な範囲で患者についての情報を医療機関に提供すること
などが主な内容となっているとのこと。
任意保険会社はこの同意書に基づき、被害者の方の診断書や診療報酬明細書を医療機関から受け取り、その内容に従って治療費の支払いを行っているのですね。
交通事故でも健康保険で通院できる!?
もしも一括対応を行わない場合には、いったん被害者の方が治療費を立て替えることになります。
後から請求できるとしても、出費は可能な限り抑えたいところですよね。
そのためには、健康保険などの保険を使用できればありがたいですが…。
交通事故では健康保険を使用できないと思っていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。
https://twitter.com/Kagiroi21/status/948741605384642560
しかし、厚生労働省は、以下のように交通事故でも健康保険を使えるという通達(通知)を出しています。
犯罪や自動車事故等の被害を受けたことにより生じた傷病は、医療保険各法(健康保険法、船員保険法、国民健康保険法及び高齢者の医療の確保に関する法律)において、一般の保険事故と同様に、医療保険の給付の対象とされています
ただし、健康保険を使用する場合には、病院に対して健康保険証を呈示し、健康保険を使用する意思を伝える必要があるとのことです。
健康保険証の呈示だけではなく、使用の意思をはっきりと伝えるのがポイントということです。
ここで、健康保険を使わない自由診療と、健康保険診療との違いをまとめてみましたので、良ければ参考にしてみてください。
自由診療 | 健康保険診療 | |
---|---|---|
費用 | 高額 | 低額 |
治療方法 | 制限なし | 制限有り |
病院によっては、健康保険の使用を拒否したり、一括対応に応じてくれないところもあります。
そういった場合に、弁護士が介入することにより、病院の対応が変わった事例もあります。
病院での対応にお困りの方は、弁護士に相談だけでもしてみた方が良いかもしれませんね!
支払いが難しい場合はどうしたら?
ところで、事故による怪我が重症で、治療が長引いた場合など、支払いが困難になってしまうことも考えられます。
そういった場合には、どうすれば良いのでしょうか?
被害者の方ご本人が人身傷害保険に加入している場合、過失割合に関係なく契約に応じた保険金が支払われます。
また、加害者が加入している自賠責保険の仮渡金制度を利用するという方法もあります。
仮渡金制度とは、
損害賠償金の確定前に、被害者の方が相手側の自賠責保険会社に前もって治療費を請求できる
という仕組みのことです。
ただし、最終的な賠償額よりも多い金額を受け取ってしまった場合には、差額を返却する必要がある点には注意が必要です。
自動車での人身事故で通院した場合の損害賠償、むちうちでは金額が違う!?
治療費は保険会社に請求できることはわかりましたが…。
怪我をして通院を続けることによる精神的苦痛や、仕事を休んだことに対する損害賠償を受け取ることはできないのでしょうか?
事故による怪我で通院した場合には、治療費などの実費以外に、
- 治療による精神的苦痛に対する通院慰謝料
- 仕事を休んだ場合の休業損害
などの損害賠償も請求することができます。
では、まずは通院慰謝料について詳しく見ていきましょう。
通院慰謝料は「通院期間」により決まる!
交通事故で怪我をして通院が必要となった場合、治療時間中には別の予定を入れることができず、自由を奪われてしまいますよね。
それだけではなく、検査や治療行為の辛さ、怪我により日常生活に不便が生じる苦痛なども無視できません。
そこで、自動車の人身事故が原因で怪我をして通院をした場合には、通院慰謝料を受け取ることができます。
その慰謝料の金額は、痛みの程度ではなく、通院期間によって決まっているそうなのです。
たとえば、通院を6ヶ月した場合には116万円の慰謝料を受け取れることになります。
怪我が非常に重症で、入院を2ヶ月、その後に通院を3ヶ月したような場合には、154万円の慰謝料を受け取れることになります。
通院期間以外に知っておきたい3つの慰謝料相場の基準
通院期間により、慰謝料の相場が決まっているということはわかりました。
ところで、慰謝料の相場といっても、
- 自賠責保険に請求する場合
- 任意保険会社が提示する場合
- 弁護士が相手側や保険会社に請求する場合
の3つの基準が存在しているって知っていましたか?
自賠責基準
自賠責保険会社の慰謝料とは、自賠法に基づく省令により設定されているものです。
自賠法は、交通事故の被害者が最低限の補償を受けるためのものであり、その金額は低く設定されています。
任意保険基準
保険会社でも、任意保険会社による慰謝料基準も存在しています。
ただし、任意保険会社は営利企業のため、もちろん少ない金額で済ませたいと考えているハズですよね。
よって、自賠責の基準よりは高いものの、慰謝料の金額は少ないことが多いということです。
弁護士基準
保険会社の基準と比較して、最も高い基準となっているのが、裁判所や弁護士の基準です。
これは、裁判を行った場合や相手側と示談をする場合に用いられる基準のこと。
ただし、自分ひとりで裁判を起こし、相手側と争うのは、どう考えても難しいですよね…。
よって、高額の慰謝料を獲得するためには、弁護士に依頼をして示談や裁判を行うことが必要ということになるのです。
自賠責基準 | 任意保険基準 | 弁護士基準 | |
---|---|---|---|
内容 | 交通事故被害者が最低限の補償を受けるためのもの | 営利企業の保険会社が支払うもの | 弁護士を付けて裁判や相手側との示談をする場合に用いられるもの |
金額 | 金額は低め | 自賠責基準よりは高いが、金額は低め | 自賠責基準や任意保険基準よりも高い |
基準ごとの通院慰謝料の相場
では、それぞれの基準ごとの通院慰謝料の相場について見てみましょう。
まず、自賠責保険からの入通院慰謝料の計算方法は、以下のいずれか短い方に、4200円をかけるという方法になります。
- 入院日数と、実通院日数の2倍の合計
- 総治療期間
そして、任意保険基準と弁護士基準については、以下の表のようになっています。
経過月数 | 任意保険基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
1ヶ月 | 12.6 | 28 |
2ヶ月 | 25.2 | 52 |
3ヶ月 | 37.8 | 73 |
4ヶ月 | 47.9 | 90 |
5ヶ月 | 56.7 | 105 |
6ヶ月 | 64.3 | 116 |
7ヶ月 | 70.6 | 124 |
※ 単位:万円
一目瞭然ですが、しっかりとした補償を受けるためには、弁護士基準での慰謝料を受け取るべきですよね。
ただし、被害者ご本人だけで保険会社と交渉しても、低い示談金しか提示してもらえないことがほとんどということです。
加害者が任意保険に入っている場合には、弁護士に依頼して交渉してもらうと、弁護士基準の慰謝料を回収できることがほとんどです。
弁護士基準の慰謝料を獲得するためにも、ぜひ弁護士に相談いただければと思います!
むちうちでは通院慰謝料が低いってホント!?
ところで、自動車事故で負うことの多いむちうちの場合には、弁護士基準であっても、少し慰謝料の金額が低くなるのだそうです。
というのも、むちうちでは、心理的な原因で痛みが続き、通院が長引くケースも多いとのこと。
よって、他の怪我よりも慰謝料の相場は低く設定されているということでした。
下に、それぞれに対する慰謝料の相場を示しました。
経過月数 | 通常の怪我 | むちうち |
---|---|---|
1ヶ月 | 28 | 19 |
2ヶ月 | 52 | 36 |
3ヶ月 | 73 | 53 |
4ヶ月 | 90 | 67 |
5ヶ月 | 105 | 79 |
6ヶ月 | 116 | 89 |
7ヶ月 | 124 | 97 |
8ヶ月 | 132 | 103 |
9ヶ月 | 139 | 109 |
10ヶ月 | 145 | 113 |
11ヶ月 | 150 | 117 |
12ヶ月 | 154 | 119 |
13ヶ月 | 158 | 120 |
14ヶ月 | 162 | 121 |
※ 単位:万円
以上より、人身事故が原因の怪我に対する慰謝料を把握するにあたっては、通院に要した期間と怪我の内容を把握する必要があるということですね。
基本的に、通院慰謝料は通院期間によりますが、通院期間だけが慰謝料を決める唯一の基準ではありません。
特に重症の場合、相場から2~3割増額できる可能性があります。
具体的には、以下のような症状と治療の状況、いずれの条件も満たす場合には、一般の相場水準よりも2~3割程度増額してもらえる可能性があるということです。
症状 |
---|
・脳、脊髄に損傷がある場合 ・骨折が多数の箇所にわたる場合 ・内臓破裂を伴う傷害の場合 ・その他上記に準じる重症の場合 |
治療の状況 |
・絶対安静を必要とする期間が比較的長く継続した場合 ・症状の回復が思わしくなく重度の後遺障害が残る場合 ・長期にわたって苦痛の大きい状態が継続した場合 ・その他上記に準じる苦痛がある場合 |
とはいえ、このような状況を自分だけで明確に主張するのは難しいですよね。
そのような場合は、ぜひ交通事故の弁護に強い弁護士に相談してみてください!
慰謝料を増額できる可能性が高まるはずです。
自分で慰謝料を計算してみたい
ここまで読んで、自分の事故ではどれほどの慰謝料が受け取れるものなのか…。
今すぐに知りたいと思った方も多いのではないでしょうか。
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【注意】通院頻度によっては慰謝料が減額されてしまうかも!!
ところで、通院慰謝料は、通院期間によるということでした。
それなら、頻度を低く、長期間通院した方が慰謝料を多くもらえてしまいそうです。
たとえば、同じく10回通院したのに、
①月に1回の通院を10ヶ月続けた場合
②月に10回通院し、1ヶ月で通院が終了した場合
で、①の方が多く慰謝料をもらえるというのは、なんだかおかしい気がします。
上記のような弊害を是正するために、通院日数を慰謝料に反映させる例外ルールが存在しています。
よって、
通院頻度が少ない場合
には、慰謝料が減額されてしまうケースもあります。
なるほど…。
通院日数と通院期間、慰謝料の関係について知らなかったがために、慰謝料が減額してしまうのだけは避けたいです!
ここから詳しく見ていきましょう。
むちうちにおける通院日数と慰謝料の関係
実は、通院日数に関しても、通常のケガとむちうちの場合で違いがあるようです。
まずは、むちうちの場合はどのようなルールになっているのでしょうか。
むちうちの場合、通院が長期にわたる場合には、実治療日数の3倍の日数を通院期間とみて慰謝料を算定することがあります。
ちょっとわかりにくいかもしれないので、具体的に説明しますね。
たとえば、月に10日の通院を6ヶ月続けた場合には、60×3=180日が基準となるということになります。
180日は6ヶ月であり、通院期間内でもあるため、6ヶ月に対応する89万円が慰謝料ということになります。
一方、6ヶ月間通院しても、月に9日しか通っていなかった場合は、54日×3=162日となり、6ヶ月に満たなくなります。
よって、慰謝料の額が減額されてしまうのです。
つまり、むちうちの場合には、月に10日以上通院しなければ、慰謝料を減額されてしまう可能性があるということになります。
通常のケガにおける通院日数と慰謝料の関係
では、その他の通常のケガの場合はどうなのでしょうか??
通院が長期にわたり、
- 通院日数が月2回に満たない場合
- 治療よりも経過観察の意味合いが強い場合
には、実通院日数の3.5倍を基準に慰謝料を算定することがあります。
これも、もう少し具体的に説明しますね。
たとえば、極端ではありますが、通院期間が1年で、実通院日数が17日しかなかったとしましょう。
通院期間が基準ということなので、1年間通院=慰謝料154万円もらえるのかというと違います。
この場合、通院頻度が1ヶ月あたり2回に達していないので、17×3.5=59.5日(≒2ヶ月)が適用され、慰謝料は52万円ということになってしまうのです。
原則 | |
---|---|
通院期間により算定 | |
例外 | |
通常の怪我の場合 | むちうち等の軽傷の場合 |
通院期間を限度として、実治療日数の3.5倍程度により算定 | 通院期間を限度として、実治療日数の3倍程度により算定 |
保険会社に慰謝料を請求する段階では、既に治療が終わっていることがほとんどのはずです。
その場合、通院の仕方が適切でなかったとして、慰謝料を減額されてしまってもやむを得ないということになってしまいます。
少しでも心配な方は、今のままの頻度で治療を続けても問題ないかどうか、弁護士に相談してみた方が良いかもしれません。
適切な慰謝料を獲得できる可能性が大きく高まるはずです!
仕事を休んだ場合に受け取れるのは休業補償!?休業損害??
また、通院により仕事を休んだような場合には、休業損害が請求できるということでしたね。
というのも、有給が使えたとしても、有給がその分減ってしまいますし、有給を超える日数を欠勤してしまった場合は、お給料が減ってしまいます。
自動車事故が原因ならば、その分も補償してもらわなければなりませんよね。
休業補償と休業損害の違い
ところで、休業損害以外に、休業補償という言葉も聞いてことがありませんか?
休業補償キッチリもらえ
— カントリーマン (@2LCwqib93XOhh1F) January 26, 2018
休業損害と休業補償って、同じものだと思っていたのですが、実は違うものなのだそうです!!
確かにどちらも、
交通事故が原因の障害により、働けなくなった期間の損害を補償するもの
ではあります。
しかし実は、以下のように、まったく別物なのです。
- 休業損害:自賠責保険の請求
- 休業補償:労災保険の請求
仕事が原因で怪我を負ったり病気になったりしたとき、それは「労働災害」と認められ、国から保険金の支給を受けることができます。
そのために用意されているのが、「労災保険制度」です。
「休業補償」の方がわかりやすくて、よく使っている方も多いようですが、休業補償とは労災から支払われるものです。
一方、勤務中や通勤途中の自動車事故でない限りは、自賠責保険から休業損害が支払われることになります。
「休業補償」という言葉は、正式には「休業(補償)給付」というもので、労災に関係する用語です。
このように、自賠責の「休業損害」は「休業補償」とは違うものになりますが、
”一般人には馴染みのない「損害」という言葉よりも「補償」の方が聞こえが良い”
という理由で、自賠責の休業損害の場面においても、「休業補償」という言葉が使われることも多いのが現実です。
ちなみに労災の休業補償については、以下の条件をすべて満たす場合、労災保険から休業(補償)給付と休業特別支給金が支給されるということです。
- 業務上の事由または通勤による負傷や疾病による療養のため
- 労働することができないこと
- 賃金を受けていないこと
出典:http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/rousai/dl/040325-13-02.pdf
休業特別支給金とは、労災保険の給付に付加して支給されるものになります。
休業損害 | 休業補償 |
---|---|
自賠責保険などにおける用語 | 労災保険における用語 |
休業損害が支給される | ・休業(補償)給付 ・休業特別支給金 が支給される |
交通事故による障害で働けなくなった期間の損害を補償するもの |
休業補償と休業損害はどちらも受け取れる!?
休業補償と休業損害が別物であるということはわかりました。
別物ということは、「休業損害と休業補償をどちらも受け取ることができる」ということなのでしょうか!?
自賠責保険と労災保険はまったく別物と思われがちですが、いずれも国が補償を行う制度です。
よって、重複して損害が填補されることがないよう調整が行われることになります。
…つまりは、
休業損害と休業補償の二重取りはできない
ということですね。
厚生労働省からは、自賠責保険を先行させるといった通達が出されています。
しかし、拘束力はないため、どちらの補償を受け取るか自由に選択することは可能です。
また、二重取りはできないけれど、たとえば支給される休業(補償)給付の額が休業損害の金額を下回る場合、その差額については別途休業損害として支払われることになるそうです。
つまり具体例を挙げると、計算した結果、休業(補償)給付額が20万円で、休業損害額が25万円だったとしたら、
休業(補償)給付金を20万円、休業損害を5万円(合計25万円)受け取れる
ということなんですね。
一方、休業特別支給金は、労働福祉の増進を図るために行われるものであり、休業損害と異なる性質を有します。
そのため、休業特別支給金分は休業損害から差し引かれません。
これも具体的に説明しますね。
もし計算した結果、休業(補償)給付額が20万円で、休業特別支給金が5万円、休業損害額が25万円だったとしたら、
休業(補償)給付金を20万円、休業特別支給金を5万円、休業損害を5万円(合計30万円)受け取れる
ということになります。
休業補償と休業損害の計算方法
では最後に、それぞれの計算方法を見ておきましょう。
休業補償の計算方法
まずは、労災の休業補償の計算方法は、以下の通りになっています。
休業(補償)給付の計算式
休業(補償)給付=給付基礎日額の60%×休業日数
給付基礎日額とは、原則として、労働基準法の平均賃金に相当する金額のことになります。
平均賃金とは、直前3ヶ月間に支払われた賃金の総額(ボーナスや臨時に支払われる賃金を除く)を日数で割った1日当たりの賃金額のことです。
休業特別支給金の計算方法
これとは別に、休業特別支給金が支給されるということでしたね?
休業特別支給金は、休業4日目以降、休業1日につき給付基礎日額の20%相当額が支給されます。
つまり、休業特別支給金の計算式はこのようになりますね。
休業特別支給金の計算式
休業特別支給金=給付基礎日額の20%×休業日数
これは、自動車での人身事故が業務中であっても通勤中であっても支給されるということです。
まとめると、勤務中や通勤中に人身事故に遭った場合、休業4日目以降、合計で給付基礎日額の80%が受け取れるということになります。
休業損害の計算方法
一方、自賠責の休業損害の計算方法は、以下の通りになっています。
自賠責の休業損害の計算式
休業損害=5700円×休業日数
ただし、1日の休業損害が5700円を超えることを資料などで証明できれば、最大で19000円まで日額の増額が認められているということです。
上限がある一方、日額が5700円以下の方でも休業による収入の減収さえあれば日額5700円で計算されるため、収入の低い人にとっては有利ですね。
※任意保険での計算方法
ところで、休業損害については、任意保険や裁判所に対しても請求することができます。
その場合の計算方法は以下の通りとなっているそうです。
任意保険の休業損害の計算式
休業損害=1日あたりの基礎収入×休業日数
1日あたりの基礎収入をどうやって割り出すかは職業別に異なります。
日額5700円未満の人は実際の日額で計算される反面、証明できれば、19000円を超える日額も認められるので、収入の高い人にとって有利となります。
この話の中で誤解されがちですが、休業損害の請求において、日額が最低5700円になるわけでは必ずしもないということは注意しましょう。
よく自賠責保険は最低限の補償をする保険と言われるため、日額が自賠責で定められた5700円以下になるのはおかしいとおっしゃる方がいます。
しかし、自賠責保険の基準が用いられるのは、治療費や慰謝料などを合わせた損害賠償の総額が120万円以内の場合のみとなります。
損害賠償の総額が120万円を超えた場合には自賠責保険の基準は用いられなくなり、任意保険基準や弁護士基準が用いられることになるそうです。
「他の項目では任意保険基準や弁護士基準を用い、休業損害の項目だけ自賠責保険の基準を用いる」というように、良い基準だけ採用することはできないので注意が必要です。
自賠責保険 | 任意保険 | |
---|---|---|
原則 | 5700円 | 1日あたりの基礎収入 |
上限 | 19000円 |
なお、職業別の基礎収入などについては、こちらの記事で詳しく説明されていますので、良ければご覧ください。
休業補償や休業損害は、当面の生活に影響するため素早い対応が求められます。
しかし、受け取るべき金額の根拠をしっかりと示せなければ、もらえるべき補償を受け取れない危険性も考えられます。
よって、休業中の補償についても、弁護士に相談してみるのが良いはずです。
事故後の生活の不安もなくなり、治療に専念できる状況を生み出せる可能性も高まります。
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そんなときは、迷わず弁護士に相談することをおすすめします。
なぜなら、辛い思いをした分、適正な金額の補償を受けるべきだからです。
しかし、保険会社から示談金を提示され、書類にサインしてしまうと、あらためて慰謝料などを請求することは極めて困難になります。
そうなる前に、ぜひ弁護士無料相談を活用してみてください。
面倒な手続きや交渉などのお力にもなれるはずです。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
最後までお読みいただけた方には、
- 人身事故による怪我の通院中にかかった治療費の請求
- 通院した場合の損害賠償や慰謝料の相場
- むちうちと通常の怪我の違い
などについて、理解を深めていただけたのではないかと思います。
通院慰謝料や休業損害などの損害賠償に関して、今すぐに弁護士に相談したいと感じた方もいらっしゃるかもしれません。
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交通事故の通院治療費についてのQ&A
治療費は誰が出すべき?
原則として、病院への治療費は被害者本人が立て替えて支払います。その後、加害者側に請求するという形になります。ただし、加害者が任意保険に加入している場合、治療費を相手方の任意保険会社が直接治療期間に支払う「一括対応」を受けられる可能性があります。この場合、被害者が立替て支払う必要はありません。 交通事故の治療費は誰が支払う?
通院慰謝料はどうやって決まる?
まず、通院慰謝料は通院期間をもとに算定されます。しかし、同じ通院期間でも、慰謝料算定の基準が違えば結果が変わります。算定基準は①自賠責保険基準②任意保険基準③弁護士基準(裁判基準)の3つがあります。弁護士基準(裁判基準)とは、弁護士に依頼して示談や裁判を行った場合に用いられる基準で、もっとも慰謝料の金額が高くなります。 通院慰謝料を算定する3つの基準
長く通院すればするほど慰謝料は増える?
通院期間に対して通院頻度が少ない場合、通常よりも慰謝料が減額されてしまうケースがあります。また、むちうちに関しては、通院が長期間にわたるとき、実治療日数の3倍の日数を「通院期間」とみなして慰謝料を算定することがあるのです。適切な通院の仕方が、適切な慰謝料の獲得につながるでしょう。 通院頻度によって慰謝料が減る可能性あり
休業補償と休業損害の違いは?
休業補償と休業損害は、どちらも交通事故が原因の障害により働けなくなった期間の損害を補償する金銭です。しかし、支給する機関が異なります。①休業損害:自賠責保険/②休業補償:労災保険と分けることができます。しかし、現状としては自賠責保険の「休業損害」についても「休業補償」と表現されていることが多いそうです。 休業補償と休業損害は支払元がちがう
この記事の監修弁護士
岡野武志弁護士
アトム法律事務所弁護士法人
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-11-28 合人社東京永田町ビル9階
第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。