後遺障害等級11級|認定基準・慰謝料金額や逸失利益の計算・労災11級の金額

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後遺障害等級11級|認定基準・慰謝料金額や逸失利益の計算・労災11級の金額

後遺障害認定11級の場合、どんな症状が対象になるの?」

交通事故で後遺障害の11級が認定された場合の慰謝料金額逸失利益計算方法はどうなっているの?」

「後遺障害の11級は自賠責労災とでどんな違いがあるの?」

後遺障害の11級は、7号の脊柱の変形障害をはじめ、関わりを持つ可能性が比較的高い等級といえます。

そこで、このページでは、

  • 後遺障害等級第11級の認定基準
  • 後遺障害等級第11級の慰謝料の金額の相場逸失利益の計算方法
  • 後遺障害等級第11級の自賠責と労災との違い

についてご紹介していきたいと思います!

専門的な部分や実務的な部分は交通事故と刑事事件を数多く取り扱っている岡野弁護士に解説をお願いしております。

弁護士の岡野です。よろしくお願いします。

後遺障害等級11級は、交通事故に最も多いむちうちで問題となる14級12級に次いで認定率の高い等級になります。

そして、後遺障害等級11級が認定された場合に受け取れる慰謝料の金額や逸失利益にも争いがあります。

さらに、同じ後遺障害等級11級でも、自賠責と労災とでは様々な違いがあります。

こちらで、後遺障害等級11級についてしっかりと理解し、適切な慰謝料や逸失利益の金額を受け取れるようにしましょう。

交通事故により深刻な症状が残った場合、当然それに対する賠償を請求していくことになります。

しかし、症状毎に全て一から判断するのは、とても時間が掛かり、同じような症状でも事案により金額が大きく違う不公平が生じてしまいます。

そこで、交通事故では、迅速かつ公平な賠償をするため、症状の程度ごとに後遺障害等級を1級~14級に分けて定められています。

そして、後遺障害の慰謝料逸失利益についても、自賠責認定された等級に応じて、一定の金額の相場や計算方法が決まっています。

では、後遺障害の認定対象となる症状は11級の場合、どんなものになるのでしょうか?

後遺障害等級11級の認定基準

後遺障害等級11級の認定基準

後遺障害等級11級の認定率は全等級の三番目

お伝えしたとおり、後遺障害等級には1級~14級までありますが、その認定率(構成比率)は等級により大きく異なります。

具体的な後遺障害の等級の1級~14級までの認定率(構成比率)は、以下の表のようになっています。

後遺障害の等級別認定件数及び認定率(構成比率)
等級 認定件数 認定率
1級(別表第1 874 1.41%
2級(別表第1 462 0.75%
1級(別表第2 36 0.06%
2級(別表第2 108 0.17%
3 316 0.51%
4 180 0.29%
5 405 0.65%
6 528 0.85%
7 1008 1.63%
8 1984 3.20%
9 2200 3.55%
10 2020 3.26%
11 4369 7.05%
12 10592 17.08%
13 592 0.95%
14 36335 58.60%
合計 62009 100.00%

※損害保険料率算出機構「2016年度 自動車保険の概況」参照

後遺障害の等級の中で、11級の認定率は、交通事故に最も多いむちうちで問題となる14級12級の次に高い三番目になります。

後遺障害等級11級の認定基準を満たす症状は?

では、後遺障害等級の中で三番目に認定率の高い11級認定基準を満たす症状とはどのようなものになるのでしょうか?

後遺障害等級の11級は1号~10号まで自賠責では規定されています。

そこで、ここからは後遺障害等級の11級の1号~10号までの各号の認定基準を満たす症状について、具体的にお伝えしていきたいと思います。

後遺障害11級1号

まず、後遺障害の11級1号は、

「両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの」

と自賠責では定められています。

両眼の眼球の著しい調節機能障害

「眼球に著しい調節機能障害…を残すもの」とは、具体的には

調節力(遠くの物や近くの物を見た時にピントを合わせる機能)が通常の1/2以下になったもの

のことをいいます。

調節力は、年齢と密接な関係があり、年齢と共に衰えます。

そのため、被害者が55歳以上の場合の眼球の調節機能障害は、原則として後遺障害として認定されないのが現状です。

両眼の眼球の著しい運動機能障害

また、「眼球に著しい…運動障害を残すもの」とは

眼球の注視野の広さが1/2以下になったもの

のことをいいます。

「注視野」とは、頭部を固定し、眼球の運動のみで見える範囲のことであり、単眼視では、平均で各方面(8方向)約50度になります。

後遺障害の11級1号は、両方の眼球の調節機能障害及び運動障害に区分されます。

後遺障害11級2号

次に、後遺障害の11級2号は、

「両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの」

と自賠責では定められており、具体的には

  • まぶたを開けても瞳孔領(眼球の中心)が完全に隠れた状態
  • まぶたを閉じても、角膜を完全に覆うことのできない状態

のことをいい、まぶたが開けきれない又は閉じきれないというイメージです。

後遺障害の11級2号は、両方のまぶたの運動障害に区分されます。

後遺障害11級3号

また、後遺障害の11級3号は、

「1眼のまぶたに著しい欠損を残すもの」

と自賠責では定められています。

「まぶたに著しい欠損を残すもの」とは、具体的には

まぶたを閉じたときに角膜を完全に覆うことができない状態

のことをいいます。

後遺障害の9級4号は、片方の眼(まぶた)の欠損障害に区分されます。

後遺障害11級4号

そして、後遺障害の11級4号は、

「10歯以上に対し歯科補綴を加えたもの」

と自賠責では定められています。

「歯科補綴を加えたもの」とは、具体的には

現実に喪失又は著しく欠損した歯牙に対して歯の働きを補うために行われる適切な治療

のことをいいます。

この場合の歯の喪失には、治療のための抜歯も含まれます。

また、著しい欠損とは歯冠部(歯茎の上の外から見える部分)の3/4以上の欠損・切除のことをいいます。

後遺障害の対象となる歯科補綴については、以下の記事に詳しく記載されていますので、ぜひご覧になってみて下さい!

このように、後遺障害の11級4号は、の後遺障害になります。

後遺障害11級5号

次に、後遺障害の11級5号は、

「両耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの」

と定められています。

「聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度」とは、具体的には

平均純音聴力レベルが40db以上70db未満の場合

のことをいいます。

この平均純音聴力レベルはオージオメーターを使用し、気導聴力検査骨導聴力検査を用います。

気導とは空気中を伝わってきた音、骨導とは頭蓋骨を伝わってきた音のことをいい、額と耳たぶに電極を付け、ヘッドホンからの音を聞いて検査します。

検査は7日程度の間隔をあけながら複数回行い、その2回目と3回目の平均鈍音聴力レベルの平均を後遺障害の認定基準に用います。

後遺障害の11級5号は、両耳の聴力障害に区分されます。

後遺障害11級6号

また、後遺障害の11級6号は、

「1耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの」

と自賠責では定められています。

「1耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの」とは、具体的には

  • どちらかの耳の平均純音聴力レベルが70db以上80db未満又は
  • どちらかの耳の平均純音聴力レベルが50db以上かつ最高明瞭度が50%以下

のものをいいます。

平均純音聴力レベルはオージオメーターを使用し、気導聴力検査骨導聴力検査を用います。

明瞭度は、スピーチオージオメーターを使用し、語音聴取閾値検査語音弁別検査を用います。

後遺障害の11級6号は、一耳の聴力障害に区分されます。

後遺障害11級7号

そして、後遺障害の11級7号は、

「脊柱に変形を残すもの」

と自賠責では定められており、具体的には

  • 脊椎圧迫骨折や脱臼による脊柱の変形がレントゲンなどで確認できる場合
  • 脊椎固定術が行われた場合(ただし、移植した骨が脊椎に吸収された場合を除く)
  • 3個以上の脊椎に椎弓切除術などの椎弓形成術(脊柱管を広げて脊髄の圧迫を取り除く)を受けた場合

のことをいいます。

交通事故では、比較的脊椎圧迫骨折が生じやすく、その場合には後遺障害として11級7号が認定されるかが争いになることが多いようです。

また、脊椎圧迫骨折や脊椎固定術に伴い、運動障害を伴うような場合には、11級よりも上位の等級が認定される可能性があります。

後遺障害の11級7号は、脊柱の変形障害に区分されます。

後遺障害11級8号

次に、後遺障害の11級8号は、

「1手のひとさし指、なか指又はくすり指を失ったもの」

と自賠責では定められており、「手の…指を失った」とは、具体的には

近位指節間関節

以上を失った場合のことをいいます。

近位指節間関節とは、手の指先から数えて第2関節のことをいいます。

後遺障害の11級8号は、手指の欠損障害に区分されます。

後遺障害11級9号

そして、後遺障害の11級9号は、

「1足の第1の足指を含み2以上の足指の用を廃したもの」

と自賠責では定められています。

「足指の用を廃した」とは、具体的には

  • 親指では末節骨の長さの1/2以上、その他4本の指では遠位指節間関節以上を失った場合
  • 中足指節関節又は近位指節間関節(親指の場合は指節間関節)の可動域が健康な指の1/2以下になった場合

のことをいいます。

なお、足の指先から数えて第1関節が遠位指節間関節(親指だと指節間関節)第3関節が中足指節関節(親指だと第2関節)になります。

後遺障害の11級9号は、足指の機能障害に区分されます。

なお、11級8号や9号のような指の後遺障害については、以下の記事もぜひご覧ください。

後遺障害11級10号

最後に、後遺障害の11級10号は、

「胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの」

と自賠責では定められており、具体的な症状としては

  • 動脈血酸素分圧は正常だが、動脈血炭酸ガス分圧は限界値範囲外又は軽度(健常者と同様には階段の昇降ができない)の呼吸困難などの呼吸器の障害
  • 心機能の低下による軽度の運藤耐用能の低下、継続的な抗凝血薬療法の伴わない心臓の弁の置換、大動脈の偽腔開存型解離などの循環器の障害
  • 胃の切除による消化吸収障害等の障害、小腸や大腸の狭窄、大腸の大量の切除、便秘、便失禁、慢性肝炎などの腹部臓器の障害
  • 腎臓を亡失した軽度の障害又は腎臓を亡失しない中度の障害、外尿道口形成術を行ったもの、50ml以上の残尿障害、頻尿などの泌尿器の障害
  • 狭骨盤又は比較的狭骨盤などの生殖器の障害

などがあります。

後遺障害の11級10号は、胸腹部臓器の障害に区分されます。

最後に、お伝えしてきた自賠責保険の後遺障害等級11級の認定基準を等級表にまとめてみましたので、参考にしてみて下さい。

自賠責保険の後遺障害等級11級の等級表(認定基準)
号数 後遺障害
1 両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの
2 両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの
3 1眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
4 10歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
5 両耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの
6 1耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
7 脊柱に変形を残すもの
8 1手のひとさし指、なか指又はくすり指を失ったもの
9 1足の第1の足指を含み2以上の足指の用を廃したもの
10 胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの

後遺障害等級11級は併合により認定される事も

交通事故により、後遺障害認定基準を満たす症状が複数ある場合もあります。

この場合、自賠責保険労災保険では、併合という取り扱いが行われます。

自賠責保険や労災保険において、後遺障害の併合とは以下のように定義されています。

併合

系列を異にする身体障害が2以上ある場合に、重い方の身体障害の等級によるか、又はその重い方の等級を1級ないし3級を繰り上げて当該複数の障害の等級とすること

そして、後遺障害が2以上ある場合における等級の定め方につき、自動車損害賠償保障法施行令には以下のように記載されています。

三 傷害を受けた者(略)

ロ 別表第二に定める第五級以上の等級に該当する後遺障害が二以上存する場合における当該後遺障害による損害につき

重い後遺障害の該当する等級の三級上位の等級に応ずる同表に定める金額

ハ 別表第二に定める第八級以上の等級に該当する後遺障害が二以上存する場合(ロに掲げる場合を除く。)における当該後遺障害による損害につき

重い後遺障害の該当する等級の二級上位の等級に応ずる同表に定める金額

ニ 別表第二に定める第十三級以上の等級に該当する後遺障害が二以上存する場合(ロ及びハに掲げる場合を除く。)における当該後遺障害による損害につき

重い後遺障害の該当する等級の一級上位の等級に応ずる同表に定める金額(その金額がそれぞれの後遺障害の該当する等級に応ずる同表に定める金額を合算した金額を超えるときは、その合算した金額)

ホ 別表第二に定める等級に該当する後遺障害が二以上存する場合(ロからニまでに掲げる場合を除く。)における当該後遺障害による損害につき

重い後遺障害の該当する等級に応ずる同表に定める金額

(以下略)

条文だけだと後遺障害の等級が併合によりどうなるかがわかりにくいと思うので、以下のとおり、表にまとめてみました。

後遺障害の併合が行われた場合の等級早見表
次に重い等級 一番重い等級
15 68 813 14
15 重い等級+3
68 重い等級+2 重い等級+2
813 重い等級+1 重い等級+1 重い等級+1
14 重い等級 重い等級 重い等級 併合14

※別表第一の後遺障害の場合除く

例えば、後遺障害の12級に該当する症状と13級に該当する症状がある場合、併合により12級の等級が1級繰り上がり併合11級が認定されます。

上記のツイートのとおり、併合により等級が繰り上がると、その分受け取れる慰謝料などの金額も増えることになります。

また、後遺障害の11級に該当する症状が複数残った場合には、併合により11級の等級が1級繰り上がり、併合10級が認定されます。

なお、後遺障害の等級の併合については、以下の記事に詳しく記載されていますので、ぜひご覧になってみて下さい!

後遺障害の11級は、7号の脊柱の変形障害をはじめ、比較的認定されるかどうかが争いになることの多い等級といえます。

そして、このあとご紹介するとおり、後遺障害等級の11級が認定されるかどうかで、受け取れる慰謝料などの金額には大きな違いがあります。

後遺障害の11級が認定される見込みがあるかどうかの判断は難しい部分もありますので、まずは専門家である弁護士への相談をおすすめします。

後遺障害等級11級の慰謝料の金額・逸失利益の計算方法

後遺障害等級11級の慰謝料の金額・逸失利益の計算方法

後遺障害11級自賠責認定されると

  • 後遺障害慰謝料
  • 逸失利益

という項目の金額を受け取ることが可能になります。

では、後遺障害の11級が認定されることで受け取れる慰謝料の金額や逸失利益の計算方法などに決まりはあるのでしょうか?

後遺障害等級11級の慰謝料の金額の相場とは?

お伝えしたとおり、交通事故後遺障害11級が認定されると、後遺障害慰謝料を受け取れることになります。

しかし、11級が認定された場合に受け取れる後遺障害慰謝料の具体的な金額は、用いられる基準によって相場に違いがあります。

そこで、ここからは、代表的な後遺障害の11級が認定された場合の慰謝料の基準の種類及び基準ごとの金額の相場をご紹介したいと思います。

後遺障害等級11級の慰謝料の基準

自賠責基準

まず、加入が義務付けられている自賠責保険から支払われる保険金の金額を算出する際に用いる自賠責基準というものがあります。

自賠責保険は、被害者の損害を最低限度保障する保険のため、自賠責基準で計算された後遺障害の慰謝料の相場は低額になっています。

後遺障害の1級~14級までの各等級ごとに、慰謝料の金額が自賠責基準で定められています。

任意保険基準

次に、各任意保険会社が慰謝料などの損害賠償の金額の提示額を計算する際に用いる任意保険基準というものがあります。

任意保険基準は、保険会社ごとに基準が異なり、かつ非公開とされているので、詳細はわかりません。

もっとも、かつては各任意保険会社共通の基準が存在し、現在もその基準が基礎になっていると考えられています。

旧統一任意保険基準では、自賠責基準で計算された金額よりも若干高い程度の相場になっていました。

旧統一任意保険基準でも後遺障害の1級~14級までの各等級ごとに慰謝料の金額が任意保険基準で定められています。

裁判基準

そして、交通事故の後遺障害の慰謝料などについて裁判で認められる相場である裁判基準というものがあります。

この裁判基準は、通称赤い本(赤本)と呼ばれている本に掲載されています。

交通事故の赤本については、以下の記事に詳しく記載されていますので、興味のある方はぜひご覧になってみて下さい!

裁判基準は、3つの基準の中で慰謝料の金額の相場が最も高額になっています。

後遺障害の1級~14級までの各等級ごとに慰謝料の金額が裁判基準でも定められています。

このように、後遺障害の慰謝料の相場は自賠責で認定される等級と用いられる基準によって決まってきます。

なお、裁判基準は、弁護士が相手方任意保険会社と交渉する際にも用いられているため、弁護士基準とも呼ばれます。

そして、弁護士に依頼することにより、裁判をすることなく、裁判基準での慰謝料の金額を前提とする示談交渉が可能になります。

後遺障害の慰謝料を計算する基準
基準 いつ用いられるか 金額
自賠責基準 自賠責への請求 低い
任意保険基準 任意保険の提示 自賠責基準よりは高い
裁判基準
(弁護士基準)
・裁判
・弁護士の交渉
最も高い

後遺障害等級11級の慰謝料の相場

では、後遺障害等級11級が認定された場合の慰謝料の金額の相場は各基準ごとにいったいどれ位になるのでしょうか?

自賠責基準

交通事故で後遺障害の11級が認定された場合の慰謝料として、自賠責保険から受け取れる金額は135万円になっています。

後遺障害の等級が11級の場合、自賠責保険からは上記の金額以上の慰謝料を受け取ることはできません。

後遺障害の等級の11級は、労務の遂行に相当な程度の支障がある比較的重い症状であることからすれば、上記の金額では少ないと感じるかもしれません。

任意保険基準

先ほどお伝えしたとおり、現在の任意保険基準は各会社ごとに異なり、非公開なので、ここでは旧統一任意保険基準を前提にお伝えします。

後遺障害が11級の場合の慰謝料の旧統一任意保険基準の金額の相場は150万円になっています。

自賠責基準の慰謝料の相場よりは増額していますが、その増額幅が15万円ではまだまだ不十分と思われる方もいるでしょう。

裁判基準

そして、後遺障害が11級の場合の慰謝料の裁判基準(弁護士基準)の相場は420万円になっています。

比較していただければわかりますが、自賠責基準の3倍以上、任意保険基準の3倍近くの高額な相場になっています。

さらに、自賠責基準の場合と異なり、裁判基準の慰謝料はあくまで相場であり、絶対的なものではありません。

そのため、裁判などでは、上記の相場の金額とは異なる慰謝料が認められる場合もあります。

以下の記事では、後遺障害等級11級が認定された場合の判例が紹介されていますので、興味のある方はぜひご覧になってみて下さい!

後遺障害等級11級の基準別の慰謝料
基準 金額
自賠責基準 135万円
任意保険基準※ 150万円
裁判基準
(弁護士基準)
420万円

※ 旧統一任意保険基準

後遺障害等級11級の逸失利益の計算方法の基礎

そして、後遺障害11級認定された場合の逸失利益計算方法は、基本的に以下のようになります。

後遺障害11級の逸失利益の計算方法

(基礎収入)×(労働能力喪失率)×(労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数)

また、逸失利益の計算方法の各項目の簡単な意味は以下の表のとおりです。

逸失利益の計算方法の項目と意味
項目 意味
基礎収入 後遺障害が残らなければ、得られていたであろう収入
労働能力喪失率 後遺障害が残ったことによる減収の割合
労働能力喪失期間 後遺障害によって減収が発生する期間
中間利息控除係数 逸失利益を症状固定時の金額にするための係数

そして、労働能力喪失率につき、11級20%自賠責では定められており、この喪失率は他の基準でも基本的に準用されています。

また、労働能力喪失期間は症状固定時の年齢から一般的な就労可能な年齢の終期である67歳までの期間で計算するのが原則です。

なお、より詳しい後遺障害の逸失利益の計算方法は以下の記事に記載されていますので、ぜひご覧になってみて下さい!

後遺障害等級11級7号は逸失利益が争点になる

後遺障害逸失利益は、任意保険との交渉や裁判の場合でも、上記の自賠責計算方法で算出された金額になるのが原則です。

しかし、後遺障害の11級7号の場合には、逸失利益金額について争いになることが多いようです。

11級7号のような変形障害自体からは、直ちに仕事に支障を及ぼさないとも考えられるからです。

もっとも、脊柱変形は、脊柱の支持性及び運動性を減少させるとともに、骨折した脊椎の部分に神経症状を生じさせるものと考えられています。

そのため、醜状障害とは異なり、逸失利益の金額が全く認められないということはほとんどないようです。

しかし、圧迫骨折した部分の神経症状は改善の可能性があるとして、喪失期間を制限する主張が相手方からなされることは比較的多いようです。

もっとも、裁判所も喪失期間等の限定には慎重であり、最近でも、喪失率や喪失期間を自賠責の計算方法どおりに認めた以下のような判例があります。

脊柱の変形障害については,第1腰椎圧迫骨折が認められることから,「脊柱に変形を残す」ものとして後遺障害別等級表第11級7号に該当(略)と判断された

(略)

第1腰椎前方(略)の圧潰の程度は必ずしも軽度のものとすることはできず、原告に残存する背部の疲労感、両臀部のしびれについては、同症状によるものと認めることができる。

(略)

原告は、本件事故当時(略)運送トラックの運転手として、運転や荷物の積み下ろしの業務に従事していたが、上記後遺障害の内容及び程度に照らすと、同業務にそのまま従事し続けることは困難なものと考えられ、また、その余の業務を前提としても、一定の支障が生じることが避けられないものと考えられる。

加えて、原告は,症状固定時に既に39歳に至っており、後遺障害を抱える中、新たな就業先を確保することが必ずしも容易とはいえないこと、今後、加齢に伴い、上記脊柱変形に伴う症状が悪化又は新たに出現する蓋然性があることをも考慮すると、原告については、本件事故により負った後遺障害により、今後、就労可能年数の28年間にわたり、後記基礎収入額の20%に相当する程度の収入の減少を生じる蓋然性を認めることができる。

上記のとおり、後遺障害11級7号の場合、逸失利益の喪失期間等を制限するのが適当でない場合も多く、争う余地は十分にあるものと考えられます。

もっとも、実際に裁判で争うには、被害者の職業、神経症状等その他の症状の有無等から、将来の減収の蓋然性を適切に主張・立証する必要があります。

このような主張・立証は一般の方では困難なことも多いので、弁護士などの専門家に依頼して行うのが確実と考えられます。

自賠責の後遺障害等級11級の場合の保険金額

上記のような後遺障害逸失利益が争われるのは裁判などの場合であり、自賠責では、11級7号でも原則どおり計算されます。

しかし、自賠責保険から後遺障害11級認定された際に受け取れる金額は、上記の慰謝料と逸失利益の合計とは限りません。

自賠責保険の後遺障害による損害につき支払われる保険金の金額には限度額が法令上定められているからです。

責任保険の保険金額は、政令で定める。

法第十三条第一項の保険金額は、死亡した者又は傷害を受けた者一人につき、次のとおりとする。

(略)

三 傷害を受けた者(略)

ヘ 別表第二に定める等級に該当する後遺障害が存する場合(略)における当該後遺障害による損害につき

当該後遺障害の該当する等級に応ずる同表に定める金額

そして、自賠責保険から後遺障害の11級が認定された場合に支払われる保険金額の限度額は331万円になります。

自賠責保険の限度額331万円を超える部分については、任意保険に請求していくことになります。

上記の限度額があることにより、自賠責保険から受け取れる後遺障害の逸失利益は、計算上どんなに大きくなっても

各等級の限度額と後遺障害慰謝料の差額

までとなります。

具体的には、自賠責保険から後遺障害の11級が認定された場合に支払われる後遺障害の逸失利益は、331万円-135万円=196万円までです。

年収や年齢にもよりますが、自賠責保険の後遺障害の慰謝料及び逸失利益を支払基準で計算した金額は限度額を超えることがほとんどになります。

後遺障害等級11級の裁判基準の金額の相場計算

また、交通事故では、後遺障害認定の有無にかかわらず、入通院分の慰謝料や休業損害も別途請求することができます。

これらの損害賠償の金額の総額を計算するのはかなり手間が掛かると思われる方もいらっしゃるかもしれません。

そんな方におすすめなのが、以下の慰謝料計算機のサービスです。

こちらでは、後遺障害等級11級が認定された場合の最も高額な裁判基準での損害賠償総額の相場を簡単に確認することができます。

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実際に計算していただければわかりますが、後遺障害等級11級が認定された場合の慰謝料は、裁判基準とその他の基準とでは大きく金額が違います。

また、後遺障害等級11級7号などは逸失利益が争いになることも多いですが、逸失利益の金額は受け取れる金額の総額に大きく影響します。

適正な慰謝料や逸失利益の金額を受け取る可能性を高めるには、弁護士への依頼が有効な手段であるといえます。

後遺障害等級11級の自賠責と労災との違い

後遺障害等級11級の自賠責と労災との違い

後遺障害等級11級は自賠責と労災で号数が違う

交通事故が勤務中や通勤中に発生した場合、後遺障害11級自賠責だけでなく労災でも認定される可能性があります。

そして、実は自賠責保険は、労災保険の後遺障害の認定基準を準用しています。

等級の認定は、原則として労働者災害補償保険における障害の等級認定の基準に準じて行う。

もっとも、認定基準は基本的に同じですが、認定における審査方法には違いがあります。

それは、労災保険の場合、地方労災医員という医師が後遺障害の等級認定の判断にあたり、原則として被害者との面談を行います。

それに対し、自賠責保険の場合、醜状障害等一部の例外を除き、原則書面審査であり、提出された資料から後遺障害の等級認定を判断します。

面談にて書面で伝わりづらい症状を正確に把握し、その点が書面よりも優先して考慮される結果、労災の方が高い等級が認定されやすいともいわれます。

また、後遺障害11級は、労災と自賠責とで、等級の号数に違いがあります。

例えば、自賠責の11級7号は、労災では11級5号になります。

具体的な労災保険の後遺障害等級11級の等級表は以下のとおりです。

労災保険の後遺障害等級11級の等級表(認定基準)
号数 後遺障害
1 両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの
2 両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの
3 1眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
3号の2 10歯以上に対し歯科補てつを加えたもの
3号の3 両耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの
4 1耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
5 脊柱に変形を残すもの
6 1手示指、中指又は環指を失ったもの
7 削除
8 1足の第1の足指を含み2以上の足指の用を廃したもの
9 胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの

後遺障害11級の労災の金額は慰謝料含まれない

また、後遺障害11級認定された場合に、労災から受け取れる金額には慰謝料が含まれないのが自賠責との違いです。

労災の保険金は、加害者の有無にかかわらず支払われるものだからです。

ここまでお伝えしてきた、労災と自賠責との後遺障害の違いをまとめると、以下のような表になります。

まとめ

労災と自賠責の後遺障害の違いについて

労災 自賠責
認定基準 労災の認定基準 労災の認定基準を準用
審査方法 原則面談審査 原則書面審査
慰謝料 含まれない 含まれる

後遺障害11級の労災の金額は?

では、労災後遺障害11級認定された場合に受け取れる金額や内容はどうなっているのでしょうか?

まず、労災で後遺障害の等級が認定された場合、等級に応じて下記の内容の金額が受け取れることになります。

  • 障害(補償)給付
  • 障害特別金
  • 障害特別支給金

障害(補償)給付

そして、労災で後遺障害の11級が認定された場合の、障害(補償)給付の金額を計算する基準は以下のとおりです。

給付基礎日額×223日

給付基礎日額とは、原則として、労働基準法の平均賃金に相当する金額のことです。

平均賃金とは、直前3ヶ月間に支払われた賃金の総額(ボーナスや臨時に支払われる賃金を除く)を日数で割った1日当たりの賃金額のことです。

障害特別金

次に、労災で後遺障害の11級が認定された場合の、障害特別金の金額を計算する基準は以下のとおりです。

算定基礎日額×223日

算定基礎日額とは、原則として、事故前1年間に労働者が事業主から受けた特別給与の総額(算定基礎年額)を365で割った金額のことです。

特別給与とは、給付基礎日額の算定から除外されているボーナスなど3か月を超える金額ごとに支払われる賃金をいい、臨時で支払われた賃金は含まれません。

もっとも、特別給与の総額が給付基礎年額(給付基礎日額の365倍に相当する額)を上回る場合には、給付基礎年額の20%に相当する金額が算定基礎年額になります。

ただし、150万円が限度額になります。

なお、労災でも、後遺障害の等級が11級の場合には、年金ではなく、すべて一時金として支払われます。

障害特別支給金

さらに、労災で後遺障害の11級が認定された場合、障害特別支給金として29万円が支給されます。

労災と自賠責保険との支給調整

勤務中や通勤中交通事故により、後遺障害等級の11級が認定された場合、労災自賠責双方から一定の金額が受け取れます。

もっとも、あくまで対象は一つの交通事故のため、公平の観点から、いわゆる二重取りがなされないようにする必要があります。

そこで、労災と自賠責の後遺障害の認定により受給できる金額の調整をする必要が出てきます。

このことは実務上支給調整と呼ばれています。

もっとも、二重取りを防ぐためには、労災と自賠責から支払われる金額のうち、同一の性質を有するものだけ支給調整すれば足りることになります。

そして、自賠責保険と労災保険から支払われる金額の項目のうち、同一の性質を有するのは

自賠責保険の逸失利益と労災保険の障害(補償)給付のみ

ということになります。

労災の障害特別(支給)金の支給は、労働福祉事業の一環であり、労働者の損害を填補する性質のものではないからです。

したがって、支給調整されるのは自賠責保険の逸失利益の金額と労災保険の障害(補償)給付の金額だけということになります。

つまり、労災から先行して後遺障害に関する金額を受給していたとしても、その金額を自賠責の慰謝料から控除することはできないことになります。

また、労災の障害特別金や障害特別支給金は、自賠責の逸失利益の控除の対象とはならないことになるので、その点注意が必要です。

さらに、労災から受け取れる金額に慰謝料が含まれないため、労災を利用しても、慰謝料は別途自賠責などに請求する必要があります。

最後に、労災と自賠責との後遺障害の支給調整の対象となる項目について、表にまとめてみましたので、よろしければ参考にしてみて下さい。

労災と自賠責の後遺障害の支給調整の対象項目
労災\自賠責 慰謝料 逸失利益
障害(補償)給付 ×
障害特別金 ×
障害特別支給金 ×

なお、労災の後遺障害については、以下の記事により詳しく記載されていますので、興味のある方はぜひご覧になってみて下さい!

後遺障害の11級に関する問題を弁護士に相談したい方へ

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それでは、最後になりますが、後遺障害の11級の問題についてお悩みの方に一言アドバイスをお願いします。

後遺障害等級の11級が認定されるかどうかは、ご紹介した11級の各号の認定基準を満たしているかどうかを判断する必要があります。

また、同じ後遺障害の11級が認定された場合でも、受け取れる慰謝料や逸失利益の金額は、計算方法によって大きな違いがある点も注意が必要です。

後遺障害の11級の認定可能性を高め、適切な慰謝料や逸失利益の金額を受け取るのであれば、弁護士に依頼するのが有効な手段であるといえます。

まとめ

いかがだったでしょうか。

このページを最後までお読みの方は、

  • 後遺障害等級第11級の認定基準
  • 後遺障害等級第11級の慰謝料の金額の相場逸失利益の計算方法
  • 後遺障害等級第11級の自賠責と労災との違い

について理解を深めていただけたのではないかと思います。

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皆さまのお悩みが早く解決するよう、お祈りしています。

この記事の監修弁護士

岡野武志弁護士

アトム法律事務所弁護士法人
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-11-28 合人社東京永田町ビル9階

第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。

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