後遺障害の慰謝料|14級・12級の事例で見る相場と計算方法|2020決定版
人身事故でケガを負ったとき、「後遺症が残ってしまわないか?」という点が、最初に不安に感じられると思います。
無事に完治するのが一番ですが、後遺症が残ってしまったときは、その後の生活に支障を来すことがあります。
そのような場面では、後遺障害の認定を得て、保険会社から適正な金額の慰謝料や補償を受け取ることが肝要です。
この記事では、弁護士などの専門家でないとよくわからない後遺障害の慰謝料の相場や計算方法の正確な情報を整理しました。
また、しっかり補償を受け取るために不可欠な弁護士基準慰謝料の基礎知識も、後遺障害14級や12級の事例を交えて、説明していきます。
目次
後遺症で負う不利益に見合った、適正な金額の慰謝料や補償を受け取るためには、正確な知識を得る必要があります。
正確な情報をお届けするため、法律のみならず、損害保険会社との交渉や慰謝料請求の実務にも詳しい専門家に記事監修を依頼しています。
交通事故など都市型トラブル解決の専門弁護士である岡野弁護士です。
読者の方、交通事故で負傷して後遺症の不安をお持ちの方に、正しい情報が提供できるようチェックしていきます。
よろしくお願いします。
それでは、後遺障害慰謝料の相場や計算方法を勉強していきましょう。
後遺障害の慰謝料と計算
後遺障害とは?
後遺症との違い
最初に確認しておきたいのが、「後遺症」と「後遺障害」の意味です。
後遺症と後遺障害の違いについて教えてください。
出典:Yahoo!知恵袋2011年6月8日質問
ネット上でも、両者の意味の違いに疑問を感じる人は多く、「辞書では同じ意味」という旨の回答もなされています。
たしかに、一般用語的には、同じかもしれませんが、実は、法律的には違いがあります。
後遺症
ケガの治療後に完治せず残ってしまった、症状や障害一般のこと。
後遺障害
治療後に完治しなかった症状のうち、法律が定める条件を満たして、等級の認定を受けたもの。
後遺症 | 後遺障害 | |
---|---|---|
意味合い | 一般用語的 | 専門用語的 |
具体的意味 | 完治せず残った症状 | 完治しなかった症状のうち、条件満たして等級認定されたもの |
後遺障害の等級認定
後述するように、後遺障害の認定をされると、等級に応じた金額の慰謝料を受け取ることができます。
そのため、認定を受けることができるか否か、は重要な分かれ目です。
後遺症が後遺障害として認められるためには、以下の条件を満たすことが必要です。
- 交通事故が原因
- 将来においても回復が困難と見込まれる
- 存在が医学的に証明・説明可能
- 労働能力の低下を伴う
後遺障害の認定について、詳しく知りたい方は、こちらの記事をご参照ください。
後遺障害の認定に関するオススメ記事
慰謝料とは?
後遺障害の残っているということは、労働能力の低下を伴う症状が残っているということです。
今まで行っていた仕事ができなくなったり、仕事はできるけど働ける時間が減ってしまったり・・・。
そうなれば収入も減ってしまうので、しっかり、事故の相手方・保険会社に補償をしてもらう必要があります。
「慰謝料を請求したい」と考える場面ですが、ここでも注意が必要な点があります。
それは、一般用語としての「慰謝料」と法律用語としての「慰謝料」の意味が異なる点です。
狭い意味での慰謝料
「慰謝料」と言えば、保険会社から補償してもらう金銭全体をイメージしがちですが、法律的な意味での「慰謝料」はその一部分です。
「後遺障害慰謝料」の法律的な意味は以下の通りです。
事故によるケガが原因で後遺障害が残存したことにより、生活上の不便を強いられるなどの精神的苦痛に対して支払われる金銭。入通院慰謝料とは別に支払われる。
慰謝料は精神的苦痛に対して支払われるものである、ということがポイントです。
また、入通院が必要になって大変な思いをした、という精神的苦痛に対しては、別の入通院慰謝料が生じることもポイントです。
慰謝料以外で受け取れる補償金
慰謝料以外で、事故の相手方・保険会社から償いとして受けられる金銭として、以下のものが挙げられます。
医療費
ケガの治療のために支出した費用。
休業損害
事故でケガをしたことにより、治癒あるいは症状固定までの期間、働くことができずに収入が減少したことによる損害分の賠償。
逸失利益
事故がなければ被害者が得られたであろう経済的利益を失ったことによる損害分の賠償。
逸失利益は慰謝料以上に大きくなることも多い
休業損害と逸失利益は、端的に言えば、仕事できなくなって収入が減った分の補償です。
よく似ていますが、前者は実際に休業して減った過去の収入、後者は将来の収入に対しての償いと言えます。
被害に遭った方の年齢・収入・障害の重度によって異なりますが、一般的には、逸失利益の金額が大きくなることが多いです。
後遺障害の等級認定がされると、慰謝料だけで数百万円というお金を支払ってもらえるケースも多いです。
数百万円の支払いを提示されると、妥当な補償金額だと感じてしまう方も多い印象です。
しかし、その後の後遺障害を抱えての生活を考えると、慰謝料ばかりではなく逸失利益にも着目すべきです。
適正な金額の逸失利益と補償を受けるため、正しい情報をおさえることが重要です。
名称 | 何の補償か? |
---|---|
入通院慰謝料 | 入通院することの精神的苦痛 |
後遺障害慰謝料 | 後遺障害が残り不便を強いられることの精神的苦痛 |
休業損害 | 治療期間に働けず減収した分 |
逸失利益 | 事故なければ得られた経済的利益が減った分 |
具体的な計算方法
すぐ上の表でまとめた4つ以外でも、説明・証明できれば、事故に起因して支払ったお金や損害は全て補償されます。
例えば、事故で、装着していた高価な時計が壊れてしまったような場合、時計の経済的価値の分を弁償してもらえます。
細かく見ると、色々な費用を請求することができますが、上の表の4つの総額を見れば、受け取れる補償の大枠は捉えられます。
後遺障害慰謝料、入通院慰謝料、休業損害、逸失利益を見れば、受け取れる総額の大枠はわかる
後遺障害慰謝料
後遺障害慰謝料は認定された等級に応じて、金額が定められています。
なお、事故の加害者が任意保険に入っておらず、資産もない場面では、以下の金額を受け取ることはできないので、注意が必要です。
後遺障害慰謝料について、もっと知りたい方には、こちらの記事がオススメです。
入通院慰謝料
入通院慰謝料は入通院した期間に応じて、金額が定められています。
なお、ムチウチや軽症とされる事故の場合は、金額が異なるので、注意が必要です。
入通院慰謝料について、もっと知りたい方には、こちらの記事がオススメです。
休業損害
休業損害は、事故の治療等で休んだ分の収入です。
通常、直近三か月分の給与を90日(または実勤務日数)で割って算出するのが一般的です。
なお、事故の加害者が任意保険に入っていないような場面では、実際の収入に応じた金額を請求できないので、注意が必要です。
休業損害について、もっと知りたい方には、こちらの記事がオススメです。
逸失利益
逸失利益は、被害者の事故時の年齢や年収、後遺障害等級に基づいて、計算を行います。
具体的には、事故時の年収で、67歳まで働いた場合、どれだけ収入=経済的利益が得られたか計算します。
重度の後遺障害ほど労働能力喪失率が大きく、失う経済的利益が大きくなるので、補償額も大きくなります。
また、将来受け取れる金額を保険会社から即時に受け取る関係で、ライプニッツ係数という値も計算過程に出てきます。
ここでは割愛しますが、逸失利益の計算方法等について、もっと知りたい方には、こちらの記事をお読みください。
カンタン慰謝料の自動計算機
以上の説明やリンクページの説明を踏まえて、自分で慰謝料計算をしようと思うと・・・4つだけでも、すごく大変です。
そこで、当サイトでは、わずか6項目を入力するだけで受け取れる補償金額の目安がわかる慰謝料の自動計算機を用意しました。
かんたん1分!慰謝料計算機
通院期間などを入れるだけでかんたんに慰謝料の相場がわかる人気サービス!あなたが保険会社から提示されている慰謝料は正しいですか?
前述の通り、実際の人身事故では、これ以外にも請求できる金銭があります。
また、休業損害は、わかりやすく計算できるようにするため、「年収÷250」で計算していて、実際認められる金額とズレることがあります。
しかし、この計算機を使えば、保険会社から受け取るべき金額の大枠は見えるので、是非、使ってみてください。
後遺障害の慰謝料相場
狭い意味での、つまり、精神的損害としての慰謝料相場については、上でまとめました。
しかし、読者の方が知りたいのは、逸失利益も含めた受け取れる補償金額の総額だと思われます。
そこで、実際にあり得る事故を想定して、以下の事故があったと仮定します。
事故の被害者 |
---|
Aさん40歳 |
事故時の年収 |
400万円 |
入通院等の日数 |
入院10日 会社20日休み 事故から治療終了まで120日 |
事故後の状況 |
一部症状は回復せず 後遺障害認定を受けた |
このような事例で、受けられる補償総額の相場を見ていきましょう。
後遺障害14級の慰謝料相場
上記の仮定事例で、認定された後遺障害等級が14級だったとしましょう。
その場合の各慰謝料や逸失利益の目安は以下の通りです。
金額 | 総額 | |
---|---|---|
入通院慰謝料 | 98万円 | 532万円 |
後遺障害慰謝料 | 110万円 | |
休業損害 | 32万円 | |
逸失利益 | 292万円 |
なお、ムチウチなど、他の症状と比べると相対的に軽いとされる症状でも後遺障害14級に認定されることがあります。
ムチウチの場合は、計算方法が違い、金額が大きく異なるので、ご注意ください。
ムチウチの慰謝料相場について、詳しく知りたい方には、こちらの記事がオススメです。
後遺障害12級の慰謝料相場
次に上記の仮定事例で、認定された後遺障害等級が12級だったとしましょう。
14級との違いは、後遺障害慰謝料と逸失利益の金額です。
より症状が重い12級だと、精神的苦痛が大きくなるので、慰謝料の金額が増えます。
また、労働能力喪失率が14級だと5%、12級だと14%と計算されるので、逸失利益も大幅に増えます。
金額 | 総額 | |
---|---|---|
後遺障害慰謝料 | 98万円 | 1240万円 |
入通院慰謝料 | 290万円 | |
休業損害 | 32万円 | |
逸失利益 | 820万円 |
なお、ムチウチの場合の最も重度の後遺障害等級は12級ですが、14級と同様、計算方法が違い、金額が異なるのでご注意ください。
等級ごとの慰謝料相場
上記の仮定事例で、後遺障害が10級、8級と上がっていった場合、総額がどう変わるか、まとめたのが下の表です。
総額 | |
---|---|
8級 | 2635万円 |
10級 | 1581万円 |
12級 | 1240万円 |
14級 | 532万円 |
等級が上がるほど大きく金額が増えること、等級が何級であるかが重要であることがわかると思います。
後遺障害等級の認定基準について詳しく知りたい方には、こちらの記事をオススメします。
「弁護士基準」慰謝料の基礎知識と具体例
「弁護士基準」で慰謝料が大幅増額?
ここまで、慰謝料や保険会社から受け取れる補償の計算方法や相場について見てきました。
・・・が、ここまで読んで「現実と全然違う」と感じている方もいるかもしれません。
そう感じられるのは、保険会社から提示を受けている金額との差が大きいからだと考えられます。
これまで説明してきた金額は弁護士基準や裁判基準と呼ばれる基準によって計算した数字です。
それに対して、保険会社から提示される金額は任意保険基準という異なる基準によって計算した数字です。
後遺障害の慰謝料を例に、各基準でどれだけ金額が違うか見てみましょう。
等級 | 任意保険基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
1級 | 1300 | 2800 |
2級 | 1120 | 2370 |
3級 | 950 | 1990 |
4級 | 800 | 1670 |
5級 | 700 | 1400 |
6級 | 600 | 1180 |
7級 | 500 | 1000 |
8級 | 400 | 830 |
9級 | 300 | 690 |
10級 | 200 | 550 |
11級 | 150 | 420 |
12級 | 100 | 290 |
13級 | 60 | 180 |
14級 | 40 | 110 |
任意保険基準は1989年まで統一的に用いられていた旧基準。現在は保険各社で自由に設定できるが、今でも旧基準を参考にしていると言われている。
弁護士基準とは
弁護士基準とは、弁護士が付いて裁判を起こした場合に認められる慰謝料の算定基準で、裁判基準とも呼ばれます。
交通事故の慰謝料等の金額は、事故の状況や被害者の属性によって、ある程度一般化されて、裁判で示されてきました。
その一般化されてきた金額は「民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準」という専門家向けの書籍(赤本)に掲載され、実務で参照されています。
なお、低額の慰謝料を提示するなら裁判を辞さず、という姿勢で弁護士が交渉することで、裁判をせずとも弁護士基準に近い金額が支払われることも多いです。
慰謝料増額のために必要なことは?
適正な金額の後遺障害慰謝料を受け取るには、まず、以上の情報をしっかり把握することが必要です。
弁護士を付けない状況で保険会社が提示する慰謝料は、弁護士基準と異なる基準で算定した低い金額である可能性が高いです。
それを知った上で、個人で保険会社と交渉したり、紛争処理センター等の裁判外手続きを利用して交渉することも可能です。
しかし、個人の交渉では適正な金額まで増額してもらうのが難しいことも多いため、弁護士を活用するのが最善といえます。
この記事で説明されてきたよう、保険会社から支払われる金額は慰謝料だけではありません。
逸失利益や休業損害などもありますが、それらの金額を計算に関して、保険会社側と被害者側で解釈が異なることが多いです。
保険会社側は支払う保険金を減らすため、低く算定することが多いので、被害者側としては反論をする必要があります。
弁護士は、被害者側に有利な解釈をして、保険会社から支払われる金額が多くなるよう交渉できるので、一度相談してみることをお勧めします。
慰謝料増額のためには、弁護士に相談するのが重要ということがおわかりいただけたと思います。
では、弁護士に相談して、そして保険会社との交渉を依頼したら、どれくらい受け取れる金額が増額するのでしょうか?
岡野弁護士の事務所の増額例をいくつか教えてもらったので、下で紹介します。
後遺障害14級の2倍増額事例
出典:https://xn--3kq2bv77bbkgiviey3dq1g.com/wp-content/uploads/pc_8.png
人身事故により足の関節を捻挫してしまい、後遺障害14級9号が認定された方のケースです。
支払いや交渉までは時間がかかるイメージが強いですが、弁護依頼から3週間で倍増したという点が驚きです。
ご依頼者様は、保険会社から既払い金を差し引いた合計1,237,565円の示談金を提示されました。
(略)
弁護士のアドバイスにより、示談金の大幅な増額が見込まれることが分かったため、事務所に訪問した上で保険会社との示談交渉を依頼しました。
その結果、依頼からわずか3週間後、弁護士による示談交渉を経て、当初提示額の約2倍である2,515,876円まで大幅に増額しました。
後遺障害12級の4.6倍増額事例
出典:https://xn--3kq2bv77bbkgiviey3dq1g.com/wp-content/uploads/pc_11.png
人身事故により左足首の骨折をしてしまい、足の可動域が制限される後遺症を負い、後遺障害12級7号が認定された方のケースです。
この事例でも弁護依頼からわずか3週間で、保険会社の当初提示額の4.6倍まで増額したとのことです。
ご依頼者様は、保険会社から慰謝料43万円、後遺障害の損害224万円などから既払い金を差し引いた合計257万円の示談金を提示されました。
(略)
弁護士のアドバイスにより、示談金について大幅な増額が見込まれるることが分かったため、事務所に訪問した上で保険会社との示談交渉を依頼しました。
その結果、依頼してから3週間あまりの示談交渉により、当初提示額の約4.6倍の1185万円まで大幅に増額することとなりました。
後遺障害非該当の130倍増額事例も
後遺障害の中では該当される方が多い14級・12級の事例を取りあげました。
上の2つだけでなく、こちらのホームページでは、後遺障害非該当での慰謝料増額事例も掲載されています。
保険会社の当初提示額の130倍になった事例も紹介されているのでご参照ください。
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まとめ
この記事の監修弁護士
岡野武志弁護士
アトム法律事務所弁護士法人
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-11-28 合人社東京永田町ビル9階
第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。