交通遺児に対する奨学金|交通遺児育英会・日本学生支援機構
この記事の内容をまとめると以下の通りです
- 交通遺児とは、交通事故で片親、もしくはご両親を亡くされたお子様のこと。
- 交通遺児の方は、「交通遺児育英会」や「日本学生支援機構」などによる奨学金の給付を受け取れる可能性がある。
- 死亡事故の損害賠償については、弁護士に相談した方が良い。
交通事故でご両親を亡くされ、奨学金について知りたいという方は、こちらの記事をご覧ください。
目次
非常に悲しいことですが、交通事故によりご両親を亡くされてしまったお子様(交通遺児)は多くいらっしゃいます。
大きな悲しみとともに、今後の生活や学費など、心配・不安が尽きないはずです。
これですべてをまかなえるというわけではないかもしれませんが、交通遺児に対する奨学金を提供している団体がいくつかありますので、ここでご紹介したいと思います。
交通事故でご両親を亡くされ、お悩みの皆さまの少しでもお役に立てれば幸いです。
公益財団法人「交通遺児育英会」
まず有名な団体として、「交通遺児育英会」というものがあります。
こちらは、交通遺児などで経済的に修学が困難となった児童の方に対し、奨学金を無利子で貸与している組織となります。
こちらの組織では、ご両親もしくは、父親か母親が、
- 道路上の交通事故で亡くなった
- 自動車損害賠償保障法施行令の別表第1および第2の1級~7級の後遺症認定を受けた
- 身体障害者福祉法の1級~4級の後遺症認定を受けた
ことにより働けず、経済的に困っている高校生以上の学生に対する奨学金の貸与を行っています。
自動車損害賠償保障法施行令と身体障害者福祉法の別表についてはこちらをご覧ください。
1級 | 2級 | 3級 | 4級 |
5級 | 6級 | 7級 |
視覚障害 |
聴覚又は平衡機能の障害 |
音声機能、言語機能又はそしゃく機能障害 |
上肢不自由障害 |
下肢不自由障害 |
体幹不自由障害 |
脳原性運動機能障害 |
心臓機能障害 |
じん臓機能障害 |
呼吸器機能障害 |
ぼうこう又は直腸の機能障害 |
小腸機能障害 |
免疫機能障害 |
肝臓機能障害 |
貸与対象者
高校生以上が対象ということですが、支給される奨学金と対象となる学校は、具体的には以下の通りということです。
奨学金の種類 | 貸与対象校 |
---|---|
高校・高専奨学金 | ・高等学校 ・高等専門学校 ・中等教育学校後期課程(定時制・通信制含む) ・高等学校専攻科 ・特別支援学校高等部 |
大学・短大奨学金 | ・大学 ・短期大学(通信制含む) |
大学院奨学金 | ・大学院(修士課程、博士課程、専門職学位課程) |
専修学校・各種学校奨学金※ | ・専修学校専門課程 ・専修学校高等課程 ・専修学校専門課程と同等の各種学校 ・諸官庁設置校(大学校、職業能力開発校) ・准看護師養成所 |
※ 無認可校や予備校は対象外
出願者の学業成績は関係ないようですが、奨学生となった後に留年した場合、原則として、留年中は奨学金が停止されるということです。
年齢制限
また、高校生以上が対象となりますが、応募時の年齢が25歳までの方が対象ということです。
ただし、交通遺児育英会から高校奨学金を受けとっていた方については、29歳まで応募可能ということです。
家計基準
また、無利子で奨学金を受けることができる家計の基準額は、交通遺児の保護者にあたる方の収入金額が選考の対象となり、家族の人数によって異なるそうです。
たとえば、保護者と交通遺児2人、計3人世帯の場合では、家計の基準はおよそ次の金額以内ということです。
給与所得者 | 給与以外の所得者 | |
---|---|---|
高校・高専 | 780万円 | 360万円 |
大学・短大 | 940万円 | 520万円 |
専修学校専門課程・各種 | 940万円 | 520万円 |
給与所得者とは主に、会社員のことで、パート・アルバイトも含むそうです。
基準となる金額は、源泉徴収票の支払額で確認されます。
一方、給与以外の所得者とは、自営業や農業などに携わっている方のことで、所得証明書の所得金額が基準の対象となるそうです。
重要なポイントとしては、交通事故で相手側から受け取った損害賠償や保険金などは、選考基準には関係ないということです。
また、他の団体からの奨学金と併せて利用でき、1家庭/1学校から何人でも応募可能となっています。
貸与期間
奨学生一名に対する奨学金の総貸与期間は、高校・大学・大学院・専修学校などを合わせて9年間までとなっているようです。
ただし、同一学校種別では、
- 高校:3年間
- 高専:5年間
- 大学:4年間(医学・薬学系は6年間)
- 専修学校:2年間(3年以上の就業年限は当該年間)
が最長貸与期間となっています。
たとえば、4年制の大学に入学して1年間奨学金の貸与を受けた後、退学などで他の4年制の大学に再入学した場合。
大学での同一学校種別での最長貸与期間に従い、新大学での奨学金の貸与は3年間で終了となることになります。
また、奨学金や入学一時金を合わせた総貸与額は812万円までとなっているようです。
奨学金の種類と貸与額について
毎月の奨学金
奨学生となった場合には、毎月、以下の表に示した金額が受け取れるということです。
奨学金のため、将来返還する必要がありますが、すでにお伝えの通り無利子となっています。
学校 | 奨学金月額 | 募集人数 |
---|---|---|
高等学校・高等専門学校 | 2万円、3万円、4万円から選択 | 400人 |
大学・ 短期大学 | 4万円、5万円、6万円から選択 | 300人 |
大学院 | 5万円、8万円、10万円から選択 | 20人 |
専修学校専門課程・各種学校 | 4万円、5万円、6万円から選択 | 150人 |
専修学校高等課程 | 2万円、3万円、4万円から選択 |
入学一時金
また、それぞれの学校への入学後、希望者に対しては入学一時金も貸与されるようです。
こちらも無利子になります。
ただし、大学院および各専攻科奨学生には貸与されないということです。
学校 | 入学一時金の額 | 募集人員 |
---|---|---|
高等学校・高等専門学校 | 20万円、40万円、60万円から選択 | 300人 |
大学・短期大学 | 40万円、60万円、80万円から選択 | 200人 |
専修学校専門課程・各種学校 | 100人 | |
専修学校高等課程 | 20万円、40万円、60万円から選択 |
進学準備金
また、育英会の高校奨学生3年生で、大学・専修学校奨学生にも申し込む方のうち、希望者に対しては進学準備金が貸与されるそうです。
もちらも無利子です。
ただし、入学一時金の前倒し制度ということなので、入学後に一時金は受け取れなくなります。
学校 | 進学準備金 | 募集人員 |
---|---|---|
高校奨学生 かつ 大学/専修予約申込者 |
40万円、60万円、80万円から選択 | 100人 |
奨学金の貸与期間は、正規の卒業期までで、基本的には年4回(5月、8月、11月、2月)に振り込まれるそうです。
独立行政法人「日本学生支援機構」
次に、「日本学生支援機構」という組織名を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
こちらは、交通遺児専門というものではなく、特に優れた学生及び生徒で経済的理由により著しく修学困難な方に貸与されるものです。
貸与対象者
国内の大学院・大学・短期大学・高等専門学校・専修学校(専門課程)に在学する学生・生徒が対象となっています。
貸与額は、学校種別や国立、私立、入学年度、通学形態などにより異なってきます。
家計の水準が高い場合は利子ありとなりますが、交通遺児の方は無利子の「第Ⅰ種奨学金」を受けることになるでしょう。
貸付金額(無利子)
第Ⅰ種奨学金の貸与額は、以下の通りということです。
①大学 |
---|
・国公立自宅通学:30,000円または45,000円/月 ・国公立自宅外通学:30,000円または51,000円/月※1 ・私立自宅通学:30,000円または54,000円/月 ・私立自宅外通学:30,000円または64,000円/月※1 |
②短期大学 |
・国公立自宅通学:30,000円または45,000円/月 ・国公立自宅外通学:30,000円または51,000円/月※1 ・私立自宅通学:月額30,000円または53,000円/月 ・私立自宅外通学:30,000円または60,000円※1 |
③大学院 |
・修士課程相当:50,000円または88,000円/月※2 ・博士課程相当:80,000円または122,000円/月※3 |
④高等専門学校 |
・国公立自宅通学(1~3年生):10,000円または21,000円/月 ・国公立自宅通学(4~5年生):30,000円または45,000円/月 ・国公立自宅外通学(1~3年生):10,000円または22,500円/月※1 ・国公立自宅外通学(4~5年生):30,000円または51,000円/月※1 ・私立自宅通学(1~3年生):10,000円または32,000円/月 ・私立自宅通学(4~5年生):30,000円または53,000円/月 ・私立自宅外通学(1~3年生):10,000円または35,000円/月※1 ・私立自宅外通学(4~5年生):30,000円または60,000円/月※1 |
⑤専修学校(専門課程) |
・国公立自宅:30,000円または45,000円/月 ・国公立自宅外通学:30,000円または51,000円/月※1 ・私立自宅通学:30,000円または53,000円/月 ・私立自宅外通学:30,000円または60,000円/月※1 |
※1 自宅通学の月額も選択可能。
※2 修士課程、博士前期課程、専門職学位課程(専門職大学院)、一貫制博士課程前期相当。
以上、交通遺児の方が受け取れる奨学金について見てきました。
交通事故が原因でご両親を亡くされた場合、奨学金を受け取る以外にも、様々な支援を受けられる可能性があります。
その他の支援については、こちらの記事もご覧になってみてください。
また、交通事故が原因の場合、相手側からの損害賠償も受け取る必要があります。
今後の生活費や学費に充てられるものですから、非常に重要なものです。
詳しくは、こちらの記事をご覧ください。
お読みいただけるとわかるかと思いますが、適正な損害賠償を受け取るためには、弁護士に相談することをお勧めします。
なぜなら、被害者の方だけで相手側の保険会社と交渉した場合、非常に低い損害賠償額しか提示してくれないからです。
また、保険会社との交渉は、非常にストレスのかかるものです。
弁護士に依頼すれば、そういったストレスの軽減にもつながるはずです。
弁護士費用特約があれば弁護士費用を抑えられますし、付いていない場合でも、弁護士費用を支払っても損害賠償の増額幅の方が大きいはずです。
お困りの場合はお一人で悩まず、ぜひ弁護士に相談してみてくださいね。
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