交通事故で植物状態に…植物人間の慰謝料はいくら?遷延性意識障害の慰謝料解説
交通事故でご家族が植物状態になってしまった場合の悲しみは、想像を絶するものだと思います。
治療と介護の狭間に立ちながら、終わりの見えない介護生活を送る介護者の精神的苦痛は、計り知れないものだと思います。このまま目を覚まさない可能性があるなら、せめて加害者からできるだけ多くの慰謝料を獲得したいと考えることも、自然なことです。
このページでは、交通事故で植物状態になってしまった方のご家族に向けて、植物状態の後遺障害認定や慰謝料の相場などについて紹介します。
目次
植物状態の基礎知識
植物状態とは
植物状態とは、大脳の機能を一部失い、重度の昏睡状態に陥ることをいいます。一方、生命維持のための呼吸機能、循環機能などは維持される点で、脳死状態とは区別されます。
また、植物状態のことを、医学用語では遷延性意識障害といいます。
植物状態の原因
植物状態は、なんらかの事情により、認知機能(知覚、記憶、判断など)をつかさどる大脳が壊死・損傷することにより生じます。
一番多いと言われている原因は交通事故で、植物状態の約50%は交通事故により生じているといわれています。
また、心筋梗塞や脳梗塞などで、大脳部分に血液が行き渡らなくなった結果、大脳の一部が酸素不足で壊死し、植物状態になることもあります。
植物状態の診断基準
植物状態(遷延性意識障害)の診断基準は、1976年に日本脳神経外科学会が提唱した、以下のものによることが一般的です。
この基準では、以下の6つの症状が、3カ月以上続いた場合、植物状態(遷延性意識障害)と診断されます。
・自力移動が不可能である。
・自力摂食が不可能である。
・糞・尿失禁がある。
・声を出しても意味のある発語が全く不可能である。
・簡単な命令には辛うじて応じることも出来るが、ほとんど意思疎通は不可能である。
・眼球は動いていても認識することは出来ない。
植物状態からの回復可能性
現在では、植物状態から回復させる確立された治療方法は存在しません。
そのため、寝たきり状態による体への悪影響(唾や食べ物が肺に入って起こる肺炎、体の一部が長期間圧迫され続けることによる潰瘍など)を防ぎつつ、五感を通じて脳を刺激し、大脳機能の回復を待つといった治療にとどまることが多いです。
そして、植物状態から意識が回復する可能性は、極めて低いものとされています。特に、脳に外傷が加わらずに植物状態になった場合(脳梗塞など)には3カ月、外傷により植物状態になった場合(交通事故)には12カ月経過すると、その回復可能性は低いものとされています。
植物状態とは | 生命維持のための呼吸や循環などは機能しているものの、意識障害により重度の昏睡状態に陥った状態 |
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植物状態の原因 | ・大脳が壊死・損傷すること ・交通事故が全体の50%を占めると言われている |
植物状態の診断基準 | 1976年日本脳神経外科学会の診断基準によることが一般的 |
植物状態からの回復可能性 | 極めて低く、特に非外傷性の場合のは3カ月、外傷性の場合には12カ月が経過すると低くなる傾向 |
交通事故による植物状態の後遺障害
植物状態の後遺障害等級
植物状態は、交通事故による後遺障害として、後遺障害1級に認定されます。
1級は、後遺障害のなかでも最も重い等級です。寝たきりで意識が戻らないことも多く、常に介護を必要とすることからすると、当然でしょう。
植物状態の後遺障害等級認定の方法
交通事故による植物状態について、後遺障害の認定を受けるためには、以下の手順を踏む必要があります。
成年後見人の選任
植物状態になってしまった本人は、自らの意思で後遺障害の申請をすることができません。そのため、その後の事件の処理を行う者が、家庭裁判所から成年後見人としての選任を受ける必要があります。
もっとも、本人が未成年者の場合には、この手続きによらなくとも、法定代理人である親が代わりに後遺障害の申請をすることができます。
申請方法の選択
後遺障害の申請方法には、事前認定と被害者請求の2つの方法があります。
「事前認定」とは、簡単にいえば、加害者側の保険会社に申請を任せる方法です。被害者側としては、加害者側に診断書を送付することで、あとは保険会社が手続きを進めてくれます。
事前認定は手続きが簡単ではありますが、被害者と利益が相反する加害者側の保険会社に申請を任せることは、不安な面もあるでしょう。また、必要な書類が十分に提出されないこともあるようです。
「被害者請求」は、被害者本人やその代理人が行う方法です。関係書類の提出など、申請処理を全て自ら行うため、手続きが煩雑ではありますが、弁護士などと相談したうえで、等級認定のために最善な申請をすることができます。
必要書類の準備と申請
後遺障害の認定を、事前認定ではなく被害者請求の方法による場合には、診断書に加え、印鑑証明書や事故証明書などの書類が必要になります。これらの書類を集め、申請を行います。
被害者申請の場合、申請は加害者加入の自賠責保険会社に対して行います。
植物状態の後遺障害慰謝料の相場
植物状態の後遺障害慰謝料(1級)の相場は、2800万円と言われています。
この相場は、実務に大きな影響を持つ法律雑誌「赤い本」に記載されており、過去の裁判例をもとに作成されている相場です。
もっとも、相場はあくまで相場であり、被害者の年齢や事故の態様、加害者の過失の大きさなどにより、金額が変化することもあります。
植物状態の後遺障害等級 | 1級 |
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植物状態の後遺障害等級認定の方法 | ・成年後見人の選任 ・申請方法の選択 ・必要書類の準備と申請 |
植物状態の後遺障害慰謝料の相場 | 2800万円 |
弁護士相談のメリット
植物状態の賠償金の計算方法
植物状態の賠償金には、様々なものが含まれます。その中でも特に一般的なものが、入通院費、休業損害、逸失利益、慰謝料です。
「休業損害」とは、事故により実際に働くことができず、得ることができなくなった収入のことです。「逸失利益」とは、将来にわたって働けない場合に、将来得ることができなくなった収入をいいます。「慰謝料」とは、事故についての悲しみや苦しみなどを賠償する目的で支払われるものです。
これらのほかに、車の修理代や将来の介護費用、ご自宅での介護が必要となれば家屋改造や介護用品の購入費用などのもろもろの費用をあわせた額が賠償額となります。
弁護士相談のメリット
交通事故による植物状態について、弁護士に相談をするメリットは、その段階によって賠償額増額のための必要十分な活動について、アドバイスをすることができるという点にあります。
後遺障害等級認定段階について
賠償額のうち、逸失利益や慰謝料については、後遺障害等級ごとに相場があります。そのため、適正な後遺障害等級認定を受けることが極めて重要です。
交通事故に詳しい弁護士であれば、申請の際に、認定のための必要十分な内容を盛り込むことができますし、担当医と相談してより充実した内容の診断書の作成を促すこともできます。
賠償金請求段階について
実際に賠償金を請求する段階では、加害者側とその金額について争いになることも多いです。
例えば、逸失利益の計算において、被害者側が、67歳まで(一般的に67歳まで働くこととして計算します)の年収を基準に金額を主張するのに対し、加害者側は、今後5年のうちに被害者は死亡するであろうから、5年分の逸失利益のみ支払うと主張したりします。
弁護士であれば、事故の態様や被害者の状態、年収などの具体的事情を踏まえ、かつ弁護士の経験とノウハウに基づき、適正な賠償金額を得るための必要十分な主張をすることができます。
植物状態の賠償金の計算方法 | 入通院費、休業損害、逸失利益やその他の費用を合算 |
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弁護士相談のメリット | 各段階に応じ、適正な賠償金獲得に向けて、弁護士の経験やノウハウに基づき必要十分な主張をすることができる。 |
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いかがでしたか?
この記事をお読みの方には、「交通事故で植物状態に…植物人間の慰謝料はいくら?遷延性意識障害の慰謝料解説」というテーマに関して、理解を深めていただけたのではないかと思います。
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この記事の監修弁護士
岡野武志弁護士
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