自転車事故の加害者になった場合のその後の対応とは?【弁護士監修】
この記事のポイントをまとめると
- 自転車事故加害者が直後にやるべきことは、法律上の義務を果たし、保険の加入状況を確認し、被害者のお見舞いに行くこと
- 自転車事故加害者は、無保険なら自分で示談交渉の必要があり、後遺障害や過失割合に争いがあれば裁判での対応も検討すべき
- 子供が自転車事故加害者の場合、未成年なら責任能力が問題となり、親が監督義務違反を理由に支払い義務を負う可能性がある
ご自身やお子様が自転車事故の加害者となってしまった方に、この記事は特におすすめです。
目次
子供から大人まで自転車事故の加害者となってしまう可能性は誰にでもあります。
実際に加害者になってしまった場合に困らないよう、その後の対応をどうすべきかについての知識は重要といえます。
まずは、自転車事故発生直後に加害者がやるべきことをお伝えしていきます。
自転車事故直後に加害者がやるべきこと
①負傷者救護・危険防止・警察に連絡
自転車事故による負傷者がいる場合、加害者はまず負傷者を救護しなければなりません。
そして、二次損害が発生することを防ぐため、周囲に事故の発生を伝えるなどの危険防止措置を取る必要があります。
その上で、自転車事故であっても必ず警察に連絡しなければいけません。
上記の行為は、道路交通法上の義務として規定されています。
交通事故があつたときは、当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員(略)は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。
この場合において、当該車両等の運転者(略)は、警察官が現場にいるときは当該警察官に、警察官が現場にいないときは直ちに最寄りの警察署(略)の警察官に当該交通事故が発生した日時及び場所、当該交通事故における死傷者の数及び負傷者の負傷の程度並びに損壊した物及びその損壊の程度、当該交通事故に係る車両等の積載物並びに当該交通事故について講じた措置を報告しなければならない。
出典:道路交通法第72条1項
この道路交通法が適用される「車両」には自転車(軽車両)も含まれます。
(略)
八 車両 自動車、原動機付自転車、軽車両及びトロリーバスをいう。
(略)
十一 軽車両 自転車(略)をいう。
(以下略)
出典:道路交通法第2条1項
②保険の加入を確認し保険会社に連絡
上記の対応を終えたら、次にやるべきことは使える保険に加入しているかどうかについての確認です。
相手方(被害者)からの損害賠償請求に使える保険
自動車事故の場合と違い、自転車には自賠責保険のような法律上加入が義務となっている保険はありません。
自転車事故に使える主な任意保険としては
- 自転車保険
- 個人賠償責任保険
- TSマーク付帯保険
などがあります。
加害者の怪我の治療費や慰謝料を請求できる保険
自転車事故の加害者であっても、転倒した際に怪我をしてしまう可能性があります。
この場合、自転車保険に加入をしていれば、怪我の治療費や慰謝料を請求できます。
一方、人身傷害保険に加入をしていた場合であっても、怪我の治療費や慰謝料については請求できないのが原則です。
人身傷害保険は交通事故のうち、自動車事故だけを対象にしているのが通常だからです。
もっとも、人身傷害保険に
交通乗用具事故特約
などの人身傷害保険の適用範囲を自転車事故にまで拡大する特約を付帯していれば、請求することが可能になります。
なお、治療費の支払いについては、交通事故でも健康保険は使えることになっています。
さらに、勤務中・通退勤中の自転車事故であれば、労災保険も使えます。
このことは、被害者でも加害者でも違いはありません。
使える保険に加入していたことが確認できた場合、その保険会社に連絡を入れておくようにしましょう。
③被害者のお見舞いに行き謝罪をする
加害者となった場合には、被害者のお見舞いになるべく早く行くべきです。
特に、保険会社が対応してくれる場合ですと、お見舞いに行くのを忘れがちです。
しかし、相手方は加害者本人の謝罪がないと、示談交渉の場で態度を硬化させることが多いです。
さらに、示談が成立せず、相手方の処罰感情が強い場合、刑事上の責任においても不利に働く可能性が高いです。
具体的な交通事故でのお詫びの仕方についても、ケースに応じて適切な対応をする必要があります。
対応 | 備考 | |
---|---|---|
⓵ | ・負傷者救護 ・危険防止 ・警察に連絡 |
自転車事故にも 道交法適用 |
② | 保険の確認 | 自転車事故は自動車と 使える保険異なる |
③ | 被害者のお見舞い | 示談交渉だけでなく 刑事上の責任にも影響 |
自転車事故加害者の賠償金請求への対応
相手方(被害者)との示談交渉の対応
自転車事故の場合、加害者が無保険のケースも多いです。
その場合、加害者は相手方(被害者)と直接示談交渉をしなければいけません。
また、自転車保険や個人賠償責任保険に加入していた場合であっても、その保険に
示談代行サービス
がついていない場合には、加害者自らが示談交渉をする対応が求められます。
後遺障害等級認定・過失割合への対応
自転車事故で怪我をさせてしまった被害者の方に後遺症が残る可能性もあります。
その場合、後遺症に対する損害賠償の金額が争いになります。
交通事故では、後遺障害等級によって、賠償金額の目安が決まります。
しかし、自転車事故の場合は、自動車事故における自賠責保険の損害調査事務所のような専門の後遺障害認定機関がありません。
そのため、自転車事故の加害者には、被害者の後遺症が後遺障害の何級に相当するかについての対応が求められます。
また、加害者が最終的に支払い義務を負う賠償金額がいくらになるかは、過失割合が大きく影響します。
もっとも、自転車事故の過失割合は
- 加害者と被害者とが直接争うことも多く、冷静かつ合理的な判断がつきにくい
- 自転車同士の事故の場合は過失割合についての明確な基準がない
ことなどから、自動車事故の場合以上に対応が難しいケースが多いです。
自動車事故 | 自転車事故 | |
---|---|---|
後遺障害 | 専門認定機関あり | 専門認定機関なし |
過失割合 | 明確な基準がある | 明確な基準がない場合も※ |
※自転車同士の事故の場合
損害賠償に関する裁判についての対応
上記のとおり、自転車事故では後遺障害や過失割合について争いになりやすく、その分、示談交渉がまとまらない可能性も高いです。
そのため、被害者から損害賠償請求の裁判を起こされてしまう可能性も高くなります。
加害者が無保険(示談代行サービスの付いた保険に未加入)だった場合、自分で対応するか弁護士に対応を任せる必要があります。
自転車事故であっても、裁判の対応を誤ると高額賠償の支払い義務を負うことになる可能性があります。
そのため、弁護士費用の問題はありますが、裁判を起こされた場合、裁判の専門家である弁護士に依頼するという対応をすべきです。
【コラム】相手の損害賠償請求が不当に高額な場合
加害者といえども、不当に高額な損害賠償請求に応じる義務は当然ありません。
相手の損害賠償請求が不当に高額な場合は
債務不存在確認訴訟
という裁判を加害者の方から起こして、解決を目指すという方法も考えられます。
債務不存在確認訴訟は、被害者に対して一定の金額以上の損害賠償義務を負っていないことの確認を求める裁判になります。
加害者が被害者から裁判を起こされた場合でも、自ら裁判を起こす場合でも
弁護士に相談・依頼
することが、妥当な解決となる可能性を高める方法といえます。
子供が自転車事故の加害者になったら?
子供が自転車事故の加害者になる割合
自転車は自動車とは異なり、年齢制限がなく子供でも自由に乗れる乗り物です。
そのため、子供が自転車事故の加害者になってしまう可能性も十分に考えられます。
実際、自転車事故の頻度は
- 高校生(16~18歳)が一番
- 中学生(13~15歳)がその次に
高く、その分加害者となる割合も高いと考えられます。
具体的な年齢層別の自動車事故頻度の割合は以下の表のとおりです。
年齢層 | 割合 |
---|---|
6歳以下 | 0.3% |
7~12歳 | 2.4% |
13~15歳 | 4.1% |
16~18歳 | 5.6% |
19~24歳 | 2.0% |
25~54歳 | 1.1% |
55~64歳 | 1.2% |
65~74歳 | 1.4% |
75歳以上 | 1.0% |
出典:公益財団法人交通事故総合分析センター イタルダ・インフォメーション No78 「その自転車の運転では事故になります」
加害者が未成年の場合責任能力が問題
子供が自転車事故の加害者となった場合、その子供が成人した大学生などであれば、その子供が当然に損害賠償責任を負います。
一方、子供が未成年者の場合は、その子供が損害賠償責任を負うかどうかは
その子供に責任能力が認められるかどうか
により判断されます。
このことは、民法で以下のように規定されています。
未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない。
出典:民法第712条
未成年者に責任能力が認められるかどうかは
- 年齢
- 生育環境
- 行為の種類
など様々な要素から総合的に判断されますが、一般的には中学生(12歳)以上であれば、責任能力が認められるようです。
親の監督義務違反に関する判例を紹介
責任能力が認められない子供が自転車事故の加害者になった場合、損害賠償責任はその親が原則として負うことになります。
このことは、民法で以下のように規定されています。
前二条の規定により責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。
ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
出典:民法第714条1項
上記の条文のただし書きに記載のあるとおり、親権者が監督義務を怠らなかった場合、例外的に親権者は損害賠償責任を負いません。
もっとも、実際には、親権者が監督義務を怠らなかったと判断されることはほとんどないと考えられています。
自転車事故の加害者が未成年者であった場合における親権者の監督義務違反を認めた裁判例として有名なものは、以下の裁判例です。
Fは、本件事故当時11歳の小学生であったから、未だ責任能力がなかったといえ、本件事故により原告Aに生じた損害については、Fの唯一の親権者で(略)監督義務を負っていた被告が、民法714条1項により賠償責任を負うものといえる。
被告は、Fに対し、日常的に自転車の走行方法について指導するなど監督義務を果たしていた旨主張するが、(略)Fの加害行為及び注意義務違反の内容・程度、また、被告は、Fに対してヘルメットの着用も指導していたと言いながら(略)、本件事故当時はFがこれを忘れて来ていることなどに照らすと、被告による指導や注意が奏功していなかったこと、すなわち、被告がFに対して自転車の運転に関する十分な指導や注意をしていたとはいえず、監督義務を果たしていなかったことは明らか
(以下略)
出典:神戸地判平成25年7月4日
この裁判例は、小学生が加害者の自転車事故で、約9500万円という高額な損害賠償が認定されたとして、大きく報じられました。
加害者が無保険の場合、高額な損害賠償責任を果たす資力がないため、その後自己破産をせざるを得なくなるケースも多いようです。
【コラム】子供に責任能力がある場合の親の監督義務
自転車事故の加害者である子供に責任能力があると、被害者は資力のある親に賠償請求できず、かえって不都合な可能性があります。
そのため、未成年者に責任能力が認められる場合であっても、
- 親権者が未成年者に対する監督義務を怠っており
- その義務違反と未成年者の自転車事故に因果関係が認められる
場合、民法709条に基づき親権者が固有の損害賠償責任を負う可能性があります。
このような場合に親権者の損害賠償責任を認めるべきかについて、判例では判断が分かれています。
最後に、親権者の損害賠償責任を肯定した裁判例と否定した裁判例をそれぞれ一つご紹介します。
肯定例
下記裁判例は、
- 13歳の加害者の自転車が前方を歩行していた被害者の背部に衝突した事故につき、
- 加害者に責任能力を認めるとともに、
- その両親に監督義務を果たしていたとはいえない
として民法709条の不法行為責任を認めた事例になります。
一郎は13歳であり、不法行為責任無能力者であるとはいえない。
したがって、民法714条の適用はない。
(略)
二郎及び梅子は、極めて若年である一郎に対し、自転車の歩道通行は少なくとも例外的なものであり、歩行者に絶対的な優先権があって、歩行者の存在を認めた時にはいつでも停止できるような低速度でのみ走行すべきことを十二分に教育しておく必要があったものと考えられる。
しかし、二郎及び梅子は、この点について一郎に対し効果的な教育を行えていたとは認められず、その結果、一郎は歩道上を上記のような態様で走行し、事故を起こしたものといえる(略)。
したがって、二郎及び梅子は監督義務を果たしていたとはいえず、不法行為責任を負う。
(以下略)
出典:大阪地判平成27年1月29日
否定例
下記裁判例は、
- 中学3年生の加害者の自転車が追越の際に前方を走行していた被害者の自転車と接触した事故につき、
- 加害者に責任能力を認め、
- 具体的危険性を予見可能であるなどの特別な事情が認められない限り、子に対する指導監督義務を尽くしていなかったとはいえない
として、親の責任を認めなかった事例になります。
本件事故当時,被告Bは14歳11箇月の中学3年生であり(略),責任を弁識する能力があった者であること,親権者の直接的な監視下にない子の行動についての日頃の指導監督は,ある程度一般的なものとならざるを得ず,自転車の運転においても,日頃の運転態度において,事故を惹起する具体的な危険性を予見可能であるなどの特別の事情が認められない限り,子に対する指導監督義務を尽くしていなかったということはできない。
本件においては(略)上記特別の事情があると認めることはでき(略)ない。
出典:横浜地判平成29年3月29日
自転車事故加害者が弁護士相談する方法
相談・依頼に必要な弁護士費用の相場
お伝えしてきたとおり、自転車事故の加害者となってしまった方は、様々な対応を迫られることになります。
そういった対応を適切にできるようにするには、弁護士への相談・依頼が有益です。
もっとも、弁護士に相談・依頼する場合弁護士費用がどれくらいの金額になるか心配な方も多いかと思います。
交通事故加害者側の弁護士費用は、明確な相場があるわけではないものの、被害者の場合と異なり
- 相談料や着手金が掛かるケースが多い
- 損害賠償請求だけでなく、刑事責任の対応も問題となる
という違いがあります。
加害者が弁護士に無料相談をする方法
もっとも、自転車事故の加害者であっても、弁護士に無料相談する方法があります。
民事責任の部分について
民事責任(損害賠償請求)の部分については、法テラスで弁護士に無料相談できる可能性があります。
収入等が一定額以下であるなどの条件を満たせば、無料相談が可能です。
なお、生活保護受給者が自転車事故の加害者のケースでは、依頼した場合の弁護士費用についても(分割)支払いが猶予されます。
刑事責任の部分について
刑事責任の部分については、法テラスでは相談できませんが、下記刑事カタログ掲載の弁護士に無料相談できる可能性があります。
ただし、各弁護士事務所によって無料相談できるケースには違いがありますので、その点には注意してください。
弁護士費用特約が使えるケースとは?
弁護士費用特約とは相手方に損害賠償請求する際の弁護士費用を保険会社が負担してくれるものです。
そのため、自転車事故の加害者であっても、被害者に損害賠償請求できるケースであれば弁護士費用特約を使える可能性があります。
一方、刑事責任の対応を依頼する際の弁護士費用には、弁護士費用特約は使えないのが原則です。
ただし、近年、一部の保険会社が刑事責任の対応を依頼した際の弁護士費用を負担する保険を発売しています。
いずれにせよ、事故直後に使える保険に加入していないか確認する際は、弁護士費用特約の加入の有無や内容も確認しましょう。
最後に一言アドバイス
それでは、最後に、自転車事故の加害者となってしまった方に一言アドバイスをお願いします。
自転車事故の加害者となってしまった場合、気持ちが動揺する中で様々な対応が求められます。
その際に、正しい知識がないと、高額な損害賠償や刑事上の責任を負うことになる可能性があります。
そうならないよう、こちらの記事をよくお読みいただき、弁護士に相談や依頼をすることも検討してみて下さい。
自転車事故の加害者になった場合のQ&A
自転車事故の加害者になった場合どうすればいい?
自転車事故の加害者になった場合、その後の対応が非常に重要です。①負傷者の救護と二次被害が起きないための危険防止措置を取り、そして警察に連絡しましょう。②保険の加入を確認し、もし加入していた場合は保険会社に連絡してください。③被害者にお見舞いと謝罪をしに行きましょう。加害者本人の謝罪がないと、示談交渉の場で相手方が態度を硬化させてしまったり、示談交渉の場や刑事責任で不利に働く可能性も高くなります。 自転車事故直後に加害者がやるべきこと
加害者として賠償金を請求されたら裁判になるの?
自転車事故の加害者として賠償金を請求された時の対応は状況によって異なります。相手方(被害者)との示談交渉では、保険に入っていない場合や保険に加入していても代行サービスがない場合、直接相手方と示談交渉をしなければいけません。また相手方へ後遺症を残してしまった場合、損害賠償の金額が争いになります。もしも示談や金額交渉がまとまらず裁判を起こされた場合は、弁護士に依頼するという対応をすべきです。 自転車事故加害者の賠償金請求への対応
子どもが自転車事故の加害者になってしまったら?
子どもが未成年者の場合、その子供に責任能力が認められるかどうかが重要なポイントになります。もし責任能力が認められればその子供が賠償責任を負うことになります。一方で責任能力が認められない子供が自転車事故の加害者になった場合、損害賠償責任はその親が原則として負わなければなりません。 子供に責任能力がある場合の親の監督義務
自転車事故の加害者でも弁護士に相談できる?
自転車事故の加害者になったとしても条件を満たせば法テラスで弁護士の無料相談サービスを利用できます。また刑事責任を問われた場合は、本記事に記載されている刑事カタログ掲載の弁護士に無料相談できる可能性があります。 自転車事故加害者が弁護士に相談する方法