遷延性意識障害|植物状態の原因、治療で回復する可能性は?弁護士相談に意味はある?
遷延性意識障害とは、交通事故などによって頭部に強い衝撃を受けて、植物状態になることをいいます。
被害者のご家族や身近な方にとっては、被害者の方が寝たきりになり、意思疎通もできなくなってしまった苦痛は計り知れません。
このページでは、遷延性意識障害の治療や回復の可能性と、後遺障害慰謝料等をご紹介します。
目次
遷延性意識障害の原因と治療法とは
遷延性意識障害とは、一般的に植物状態と呼ばれている状態に陥ってしまう障害のことをいいます。遷延とは、長引くことの意味であり、重度の意識障害が長期間続くことからこのように呼ばれます。
この症状は、大脳という脳の部位の広範囲が損傷又は壊死することが原因で発生します。
遷延性意識障害とは
遷延性意識障害に関し、日本脳神経外科学会によって定められた基準は以下のとおりであり、基準を満たすと遷延性意識障害と認定されます。
遷延性意識障害の認定基準
1、自力移動が不可能である
2、自力摂食が不可能である
3、糞・尿失禁がある
4、眼球は動いていても、認識できない
5、声を出しても意味のある発語が全く不可能である
6、簡単な命令には辛うじて応じることも出来るが、ほとんど意思疎通は不可能である。
※治療にもかかわらず、上記6項目を全て満たした状態が3カ月以上継続
遷延性意識障害の原因
遷延性意識障害の原因は、大脳の広範囲にわたる損傷・壊死といった外傷による場合と、脳梗塞や心筋梗塞といった身体内部の異常による場合とに大別できます。
頭部の外傷の場合で最も多いのは交通事故が要因となる場合であり、全体としても遷延性意識障害となる場合の約半数は交通事故が原因となっているといわれています。
遷延性意識障害の原因
原因の種類 | 具体例 |
---|---|
身体内部の要因 | 心筋梗塞、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血、脳腫瘍、脳炎、髄膜炎 |
外部的要因 | 交通事故等での頭部外傷による脳挫傷、びまん性枢軸索損傷 |
遷延性意識障害の治療と回復可能性
遷延性意識障害の治療
遷延性意識障害について、現在、確立された治療方法は存在しません。
そのため、寝たきり状態による体への悪影響(唾や食べ物が肺に入って起こる肺炎、体の一部が長期間圧迫され続けることによる潰瘍など)を防ぎつつ、五感を通じて脳を刺激し、大脳機能の回復を待つといった治療にとどまることが多いです。
なお、最近では電気刺激療法などが注目されていますが、保険の適用もなく、治療方法として確立されるまでには至っておりません。
遷延性意識障害の回復可能性
遷延性意識障害の確立された有効な治療法が存在しないことから、残念ながら、回復の可能性は少ないのが現状です。
しかしながら、回復の程度は様々ではあるものの、意識が回復したという報告事例も寄せられており、今後の研究により、有効な治療方法の確立が期待されています。
遷延性意識障害と脳死との違い
遷延性意識障害と脳死は、共に寝たきりの状態になりますが、両者は明確に異なります。
遷延性意識障害は、大脳の広範囲の部分が機能しなくなることにより、重度の意識障害が継続しているものの、生命維持機能は活動しており自力で生命を維持しています。そして、ごく少数ながら回復したケースもあります。
一方、脳死は、呼吸や循環といった生命維持機能をつかさどる脳幹を含めた脳機能のすべてが不可逆的に機能停止している状態をいいます。この場合、生命維持装置がないと自力での生存はできません。また、脳死は、回復する可能性はありません。
遷延性意識障害と脳死の違い
遷延性意識障害 | 脳死 | |
---|---|---|
自力での生命維持 | あり | なし |
回復の可能性 | 可能性はあり | なし |
遷延性意識障害の後遺障害への対処法
遷延性意識障害で認定される後遺障害等級
交通事故で重度の意識障害となってしまい、遷延性意識障害と認定された場合、後遺障害等級は、最も重度の1級が認定されます。
交通事故による後遺障害に対する損害賠償額は、認定された等級に応じて算出されることになります。
そこで、後遺障害等級認定が1級に該当することで、この等級認定に基づき逸失利益との関係では労働能力を100%喪失したものとして、高額の損害賠償請求をすることができます。
成年後見人の必要性
遷延性意識障害となってしまった場合、損害賠償請求をする上で大きな障害となるのは、被害者自身の意識がないか、明確な意思表示ができないことから、ご本人が損害賠償にかかる手続を進めることが出来ないことです。
ご本人が未成年であれば、両親が法定代理人として当然に損害賠償請求等を行うことが出来ます。しかし、ご本人が成人であった場合には、成年後見人を選任する必要があります。
この場合も、基本的に親族が家庭裁判所に届出をすれば認められることになります。ご本人に親族等適当な方がいない場合には、弁護士が成年後見人になることもあります。
遷延性意識障害となった場合には、長期にわたる介護を要し、介護をする方にとっても精神的・経済的に厳しい状況にさらされることになります。
遷延性意識障害に対する損害賠償請求をする際には、適正かつ十分な賠償を受けられる様、交通事故に強い弁護士に相談することをおすすめします。
請求できる損害の種類
交通事故による後遺障害に対して損害賠償を請求すると一口にいっても、何に対する損害かによって損害の種類が異なります。大きく分けると、財産的な損害と精神的な損害があります。
そして、財産的な損害には、物的損害、積極損害、消極損害が含まれます。精神的な損害としては、精神的・肉体的な苦痛を損害としてこれに対する慰謝料が含まれます。
物的損害
交通事故による物的損害としては、他の人的な損害と分けて処理されます。代表的なものとしては、車の修理費や評価損、代車使用料等の車関係の損害と、車以外に損壊した物に対する損害があります。
積極損害
交通事故の積極損害には、交通事故にあったことにより余計に支出した費用が含まれます。
代表的なものとして、怪我の回復のための治療費や交通費の他、後遺障害のための家や車の改造費、裁判になった場合の弁護士費用等も含まれます。
消極損害
交通事故の消極損害としては、いわゆる減収の損害といわれ、得られたはずの利益が得られなかったことに対する損害で、休業損害と逸失利益があります。
休業損害とは、交通事故の被害者が、入院や治療のために働けなかったことで実際に収入が減った場合の損害です。仕事をしている方はもちろん、実収入がない専業主婦(夫)にも認められます。
逸失利益とは、交通事故による後遺障害に起因して仕事の能率低下や仕事自体が出来なくなってしまったことで将来得られたはずの収入を得られなくなったことによる損害をいいます。
こちらは、実収入がない専業主婦(夫)の他、学生にも認められます。
慰謝料
交通事故が原因で精神的苦痛を受けた場合、慰謝料を請求することが出来ます。この場合の慰謝料として、入通院慰謝料と後遺障害慰謝料に分類されます。
また、遷延性意識障害の場合、近親者が、被害者が死亡した場合に並ぶべき精神的苦痛を受けたといえるので、被害者自身の慰謝料とは別に、近親者に固有の慰謝料の請求が認められることも多いです。
入通院慰謝料とは、入通院の治療を余儀なくされたことによる精神的苦痛に対する慰謝料です。こちらは後遺障害の認定がない場合でも受け取ることが出来ます。
一方、後遺障害慰謝料とは、交通事故により後遺障害を負ってしまった場合、それによる精神的苦痛に対する慰謝料です。この場合、後遺障害が残っていない場合はもらうことが出来ません。
なお、後遺障害が認定済みの場合はもちろん、認定がなくても裁判で認められれば、支払いを受けることができます。
交通事故による損害の種類
損害の種類 | 代表的な損害 |
---|---|
物的損害 | 損壊した物に関する損害 ・車の修理費・評価損 ・代車使用料 ・積荷の費用 |
積極損害 | 余計に出費した費用 ・治療費・通院交通費 ・後遺障害のための家・車の改造費その他費用 ・訴訟に要した弁護士費用 |
消極損害 | 本来得られたはずの利益を逃した損害 ・入通院のため働けなかった減収分(休業損害) ・後遺障害で失った将来の収入(逸失利益) |
慰謝料 | 精神的苦痛に対する慰謝料 ・入通院自体の精神的苦痛に対するもの(入通院慰謝料) ・後遺障害が残ったことの精神的苦痛に対するもの(後遺障害慰謝料) |
弁護士相談のメリット
遷延性意識障害の後遺障害慰謝料相場
交通事故で遷延性意識障害と認定された場合、後遺障害等級認定は1級となります。後遺障害に対する慰謝料は、後遺障害等級認定が何級かによって概ね相場水準が決まってきます。
弁護士が裁判の際用いる基準によると、1級の場合の後遺障害慰謝料額の相場は、2800万円といわれています。
しかし、具体的な慰謝料額については、個別具体的なケースによって、大きく異なります。
弁護士相談のメリット
交通事故で遷延性意識障害となってしまった場合、ご本人はもちろん周りの方も、以前の日常生活を送ることがほぼ不可能となってしまいます。ご本人との意思疎通もままなくなり、その精神的苦痛は想像を絶するものとなります。
また、寝たきりの状態となってしまうので介護の労力や費用も甚大なものになります。そのため、少しでも多く慰謝料を受け取りたいと思うことは、当然であるといえます。
しかし、自賠責の基準や保険会社の提示額は、裁判で用いられる相場の半分以下であることも稀ではありません。
弁護士に依頼すれば、まず適切な後遺障害等級認定に基づいて、保険会社と交渉することが出来ます。弁護士が交渉するだけで、保険会社が金額を増額することも珍しくありません。
そして、いざ裁判になった場合にも、後遺障害1級の相場水準をもとに、それに加えて、周りの方の日常生活での支障や精神的苦痛を具体的かつ適切に主張・立証することで慰謝料の増額が望めます。
特に、遷延性意識障害の場合、後遺障害としても最も重度であり、慰謝料が非常に高額となります。弁護士に依頼して増額した方が、慰謝料が高額となることが多く、費用倒れになることもあまりないと考えられます。
弁護士に 依頼する メリット |
・適正な等級認定をサポート ・裁判での基準により保険会社提示額をはるかに上回る水準での慰謝料を期待できる ・等級以外にも、裁判で被害者の精神的苦痛を具体的に主張・立証することで、適正な慰謝料額に増額する活動が可能(交通事故に強い弁護士) ・被害者の不安が和らぐ |
---|---|
慰謝料額に影響する 諸要素の例 |
・後遺障害等級 ・労働能力への影響 ・日常生活上の不利益 ・精神的苦痛の程度 |
遷延性意識障害に強い弁護士の見分け方
交通事故で遷延性意識障害となってしまった場合、その後、ご本人が自力で日常生活を送ることはほぼ不可能です。そのため、介護を行うご家族にとっても、精神的、体力的、経済的にも大きな負担となります。
この負担を少しでも軽減すべく、適正な慰謝料を受け取るためには、遷延性意識障害に強い弁護士に依頼することがベストといえます。
特に裁判での主張・立証が少し違うだけでも、認められる慰謝料額に大きく影響することから、ご本人やご家族の日常生活上の不利益や精神的苦痛の程度を丁寧に主張・立証していくことが必要不可欠となります。
このように、遷延性意識障害のケースについては、豊富な実績に基づき、ご本人・ご家族の精神的苦痛やその後の生活を見据えて、適正な対応ができる遷延性意識障害に強い弁護士に依頼することがかなり重要といえるでしょう。
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この記事の監修弁護士
岡野武志弁護士
アトム法律事務所弁護士法人
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-11-28 合人社東京永田町ビル9階
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