追突事故の被害者がやることの流れ|もらえるお金を損しない対応は?

  • 追突事故,被害者

この記事のポイントをまとめると
  • 事故の直後にやるべきなのは、道交法上の義務を果たすこと・保険会社を確認し連絡すること・必ず病院に行くことなど
  • 治療期間中にやるべきなのは、すぐに車の修理や買い替えをすること・定期的に通院すること・休業補償の請求をすること
  • 治療終了後にやることは、後遺障害等級認定の申請をし、自分で示談交渉することであり、弁護士に依頼をすべき

追突事故被害者やることの流れを知りたい方は、ぜひご一読ください。

author okano
岡野武志弁護士
交通事故と刑事事件を専門とするアトム法律事務所の代表弁護士。

追突事故とは、停止または低速で前進している車両の後部に、後続の車両が前進して衝突する類型の交通事故のことをいいます。

警察庁交通局が公表している「平成30年中の交通事故の発生状況」によると、平成30年の交通事故発生件数は430,601件のうち、

追突事故は149,561件で全体の34.7%

を占めており、最も多い交通事故の類型になります。

この統計からもわかるとおり、追突事故は注意してても避けられないことも多く、誰もが追突事故の被害者になる可能性があります。

しかし、たとえ被害者であっても、適切な時期にやることをやっておかないと、思わぬ不利益を受けてしまう可能性があります。

そこで、本記事ではそのような事態を避けるために、追突事故の被害者がやることを交通事故の流れに沿ってお伝えしていきます。

追突事故被害者がやること①事故の直後

追突事故の被害者がやること①事故の直後

交通事故の流れを大まかにチャートで表すと以下のとおりです。

交通事故の流れ

このチャートに沿って、まずは追突事故直後に被害者がやるべきことをお伝えします。

負傷者救護・安全確保と警察への報告

最優先でやるべきことは

  1. ① 負傷者の救護
  2. ② 道路上の安全確保
  3. ③ 警察への報告

です。

これは道路交通法上の義務になります。

条文は以下のとおりです。

交通事故があつたときは、当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員(略)は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。

この場合において、当該車両等の運転者(運転者が死亡し、又は負傷したためやむを得ないときは、その他の乗務員。以下次項において同じ。)は、警察官が現場にいるときは当該警察官に、警察官が現場にいないときは直ちに最寄りの警察署(略)の警察官に当該交通事故が発生した日時及び場所、当該交通事故における死傷者の数及び負傷者の負傷の程度並びに損壊した物及びその損壊の程度、当該交通事故に係る車両等の積載物並びに当該交通事故について講じた措置を報告しなければならない。

具体的には、①は119番通報をして救急車を呼び、できる範囲で応急処置を行うという対応が求められます。

  1. ② は、二次災害を防ぐため事故車を安全な場所に移動させ、必要に応じて三角表示板や発煙筒で事故を知らせる対応が求められます。
  2. ③ は条文にあるとおり、事故の日時や場所・損害の状況・講じた措置などの報告が求められます。

注意すべき点としては

  • 上記の道路交通法上の義務は被害者・加害者を問わず課せられている
  • 運転していた人だけでなく同乗者にも義務が課せられている
  • 負傷者のいない軽微な物損事故でも警察へ報告する義務がある

ことが挙げられ、上記義務を怠られば、たとえ被害者であっても罰則を科せられる可能性があります。

また、警察への報告は、その後の保険金や損害賠償の請求の上でも重要になります。

保険金や損害賠償を請求する際には、交通事故証明書という書類が必要になります。

しかし、警察への報告を怠るとこの交通事故証明書が取得できずに、保険金や損害賠償を請求できなくなる可能性があるからです。

事故現場や被害状況の記録

道路交通法上の義務を果たした後、被害者は

  • 事故現場の状況の撮影
  • 事故車両など被害にあった物の撮影
  • 事故の目撃情報や目撃者の連絡先確認

などを行う必要があります。

示談交渉の際は、加害者側から被害の有無・程度や過失割合が争われることがあります。

それに対し、上記の対応を怠っていると、被害者が適切な反論をできず、もらえるお金が少なくなってしまう可能性があるからです。

追突事故の過失割合10対0が原則ですが

状況によっては被害者(追突された側)にも過失割合が認められる場合がある

ので、たとえ追突事故であっても上記の対応をやっておくことが望ましいといえます。

加害者と自分の保険会社の確認・連絡

その後、被害者は

  • 加害者側の保険の加入状況や保険会社の確認
  • 自分の保険会社に追突事故に遭った旨の連絡

をする必要があります。

相手が保険に入っているかどうかは、その後の流れに大きく影響するので確認は重要です。

任意の自動車保険に入っていた場合、その後の加害者側の対応は保険会社の担当者が行うので、保険会社の確認も必要です。

また、追突事故の被害者は自分の保険からも保険金をもらえる場合があり、その請求の前提として事故に遭った旨の連絡が必要です。

なお、被害者が車の同乗者であった場合も、同乗していた車の運転手の保険会社から保険金をもらえる可能性があります。

【参考】仕事中に追突事故に遭った場合

仕事中に追突事故に遭った場合、被害者は自動車保険からだけでなく、労災保険からも保険金をもらえる可能性があります。

そのため、勤務先に追突事故に遭ったことを報告し、労災保険の担当者などを確認する必要があります。

詳しくは、「交通事故の労災保険|自賠責・任意保険と比べたメリット・デメリット及び申請の手続き」の記事をご覧ください。

怪我なしと思う場合も必ず病院に行く

追突事故に遭った被害者は、たとえ怪我なしと思う場合でも必ず病院行きましょう。

交通事故では後から痛みが出てくる場合も珍しくないからです。

特に追突事故で発生することの多いむちうちでは、後から痛みやしびれといった症状が出てくるケースも比較的多いようです。

そのケースで病院に行っていないと、追突事故と症状との因果関係を疑われ、治療費や慰謝料などがもらえない可能性があります。

病院に行った結果、怪我をしていることが判明した場合は、診断書を警察に提出し、人身切り替えの手続きを取っておくことが望ましいといえます。

物損事故扱いのままだと、保険会社から怪我についての保険金をもらえなくなる可能性があるからです。

ただし、追突事故の被害者にも過失割合が認められる場合、人身切り替えにより免許の違反点数が加算される可能性がある点には注意が必要です。

追突事故被害者がやること②治療期間中

追突事故の被害者がやること②治療期間中

車の修理または車買い替えをすぐ行う

追突事故に遭った被害者の車両は、程度の差こそあれ必ず破損しているはずです。

そのため、車の修理に出す必要があります。

ただし

  • 修理が不可能な(廃車)状況
  • 修理費用の方が買い替え費用よりも高額になる(全損)状況

の場合には、修理ではなく車買い替えをする必要があります。

いずれの場合もすぐに行うことがもらえるお金を損しないためには必要です。

追突事故の被害者の車両が破損すると、通常代車が必要となり、それを借りるための費用が掛かることになります。

この費用も、物損の損害賠償項目の一つとして加害者側に請求可能ですが、掛かった金額がそのままもらえるとは限りません。

損害賠償として認められるのは、車の修理・買い替えに必要な相当期間に限られるからです。

そのため、修理に出したり買い替えの手続きが遅れたりしてしまうと、その分代車費用を全額もらえない可能性が高まります。

したがって、車の修理・買い替えをすぐに行うというのが、もらえるお金を損しないための対応ということになります。

なお、冒頭のチャートは怪我などの身体の損害(人損)についての流れになっています。

物損については、車の修理・買い替えが完了し、損害が確定した段階で先行して示談交渉が可能になります。

その結果示談が成立すれば、物損の示談金を先にもらえることができます。

病院(及び整骨院)への定期的な通院

追突事故の被害者となった方が、病院に定期的に通院して怪我の治療をすることは、

身体の面だけでなく、お金の面でも重要です。

交通事故の慰謝料は、通院期間や日数に大きく左右されるからです。

むちうちで通院することの多い整骨院の通院期間や日数も、慰謝料計算の基礎に含めることができます。

特に、むちうちの場合、定期的に通院していたかどうかが後遺障害等級認定を左右することもあります。

整骨院に通院する際にやるべきことは?

ただし、治療を整骨院で行う際には医師の許可をもらっておくことが原則として必要になります。

また、病院にも引き続き通院する(整形外科と整骨院を併用する)ことも必要です。

上記の対応を怠ると、整骨院通院分につき、慰謝料計算に含まれないだけでなく、治療(施術)費すらもらえない可能性があります。

病院代の支払いに関しやるべきことは?

追突事故の被害者は、病院に通院する前に、加害者側の任意保険会社に病院の連絡先を伝えるという対応をすべきです。

これにより、保険会社が病院に直接病院代の支払い(一括対応)をしてくれ、被害者が立て替えをする必要がなくなるからです。

ただし、加害者が任意保険会社に加入していない場合は、病院の窓口で支払い(立て替え)をする必要があります。

その場合には、健康保険を使うという対応をすべきです。

交通事故でも健康保険は使えることは、全国健康保険協会のホームページにも明記されています。

交通事故(略)によってケガや病気をした場合でも、仕事中または通勤途上のもの以外であれば、健康保険を使って治療を受けることができます。

追突事故の被害者にも過失割合が認められる場合、健康保険を使うことは最終的にもらえるお金が増えるというメリットもあります。

休業補償の保険金を示談前に請求する

追突事故の慰謝料がいつもらえるかはケースにより様々ですが、基本的に治療が終了し、示談が成立した後になります。

しかし、追突事故発生から示談などによる解決までには時間が掛かることも多いです。

その間も、お金が色々と必要になってきます。

そこで、被害者は休業補償の保険金を保険会社に請求するという対応をすべきです。

交通事故の休業損害は、示談前でも先行してもらえることが多いからです。

なお、追突事故の被害者が主婦の場合でも、交通事故の慰謝料とは別に主婦手当が休業損害としてもらえるので、忘れずに請求しましょう。

追突事故被害者がやること③治療終了後

追突事故の被害者がやること③治療終了後

後遺障害等級認定の申請

治療をしたものの、追突事故の後遺症が残ってしまった被害者のやることは

後遺障害等級認定の申請

です。

二つの申請方法

申請方法には

の二種類がありますが、できれば被害者自らが申請する被害者請求の方法でやった方がいいと考えられます。

適切な等級認定に有利な書類を添付したりすることが可能になるからです。

むちうちのケースで想定される後遺障害

追突事故で多いむちうちでは

の神経症状が認定されるケースがほとんどです。

むちうちの後遺障害認定確率を高めるには後遺障害診断書の書き方に注意する必要があります。

自分で加害者側保険会社との示談交渉

後遺障害等級認定の結果が出た後、基本的に追突事故の被害者は

自分で加害者側保険会社と示談交渉

する必要があり、自分の保険会社は示談交渉を代行してくれません(できません)。

先ほどお伝えしたとおり、追突事故の被害者には過失割合が認められない場合がほとんどです。

その場合、相手に支払う保険金がないため、自分の保険会社は示談交渉をする根拠がなくなってしまうからです。

被害者が交渉のプロである保険会社と対峙することになる結果、本来もらえるはずの損害賠償がもらえなくなる可能性があります。

たとえば、新車(に近い車)が事故車扱いになった場合、本来はその車両の経済的価値の低下に対して

評価損

を物損の損害賠償項目の一つとして請求することができます。

しかし、被害者が直接保険会社と示談交渉する場合に、評価損を認めさせるのは極めて困難です。

被害者の泣き寝入りを防げる自分の保険

追突事故の加害者が無保険(任意保険未加入)の場合、被害者・加害者は本人同士で示談交渉をする必要があります。

この場合、示談交渉の難航が予想されるだけでなく、示談できたとしても加害者側に示談金を支払えるお金がない可能性があります。

その場合、被害者は泣き寝入りせざるを得なくなってしまいかねません。

そのような事態を避け、追突されたことによる慰謝料や車両補償などを自分の保険から受けられるようにしておくには

  • 人身傷害保険
  • 車両保険

などに加入しておくとよいといえます。

追突事故被害者は弁護士に頼むべき!?

追突事故の被害者がやるべきことは以上のとおりです。

しかし、もらえるお金を損しないようにするには、弁護士依頼という方法を選択するのがおすすめです。

理由は以下のとおりです。

適切な後遺障害等級認定の確率が高まる

後遺障害が認定されるかどうかやその後遺障害等級により

などのもらえるお金の種類や金額が大きく変わってきます。

この点、交通事故に強い弁護士に依頼をすれば、認定基準を踏まえた診断書の書き方や提出資料についてのアドバイスをもらうことができ、適切な後遺障害等級認定を受けられる可能性が高まります。

もらえる慰謝料相場が大幅に引きあがる

そして、弁護士を依頼することにより、交通事故の慰謝料を弁護士基準で計算した金額で示談交渉できる結果、もらえる慰謝料相場が大幅に引きあがるというメリットがあります。

交通事故の慰謝料を計算する基準には

  • 自賠責基準
  • 任意保険基準
  • 弁護士基準

があるところ、弁護士基準で計算した金額は他の二つの基準で計算した金額とは大きな差があります。

追突事故に多いむちうちのケースを例に挙げると、以下の表のような差があります。

追突事故の慰謝料相場(むちうちのケース)
自賠責基準 任意保険基準※ 弁護士基準
通院3ヶ月の慰謝料
(実通院日数30日)
25.2万円 37.8万円 53万円
通院6ヶ月の慰謝料
(実通院日数60日)
50.4万円 64.3万円 89万円
後遺障害14級の慰謝料 32万円 40万円 110万円

※旧統一任意保険基準を参照

自分で保険会社との対応をしなくて済む

先ほど、後遺障害等級認定の申請は被害者自らが行う被害者請求の方法が望ましいとお伝えしましたが、被害者請求は提出資料の収集・作成に手間が掛かるのがデメリットです。

また、追突事故では、弁護士に依頼しない限り、自分で保険会社と示談交渉しなければならないところ、自分での示談交渉は時間的にも精神的にも負担が掛かります。

この点、弁護士に依頼するのは、上記のお金の面だけではなく、このような手続面の負担も解消できるというメリットもあります。

弁護士依頼のメリット
  1. ① 適切な後遺障害等級認定
  2. ② もらえるお金の増額
  3. ③ 手続的負担の解消

弁護士依頼をすべきかどうかの判断基準

このように、弁護士依頼には様々なメリットがありますが、唯一のデメリットは弁護士費用が掛かるということです。

弁護士依頼によりもらえるお金が増えても、それ以上に弁護士費用が掛かってしまうのであれば、金銭的なメリットはありません。

つまり、弁護士依頼をすべきかどうかの判断基準

弁護士依頼による増額が弁護士費用を上回るかどうか

になります。

この判断については、弁護士依頼をする前に弁護士に相談すれば、被害者の方が損をしないようなアドバイスが受けられるはずです。

なお、弁護士費用特約が使える場合には、自分の保険会社が弁護士費用を負担してくれます。

そのため、追突事故の被害者は、弁護士費用特約が使えるか確認し、使える場合には弁護士に依頼するという対応をすべきです。

弁護士費用特約については、以下の動画で弁護士が分かりやすく解説しています。

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最後に一言アドバイス

それでは、最後になりますが、追突事故の被害者がやるべきことについてお悩みの方に一言アドバイスをお願いします。

追突事故の被害者の方は、多くの場合、自分で保険会社との対応をやらなければならないため、色々な疑問がおありかと思われます。

そのようなときには、お一人で悩まれるのではなく、弁護士に相談してみるのがよい解決方法といえます。

その上で、保険会社との対応を弁護士に頼むべきかどうかよくご検討ください。

まとめ

いかがだったでしょうか。

このページを最後までお読みの方は、

追突事故被害者がやることの流れ

について理解を深めていただけたのではないかと思います。

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