交通事故対応マニュアル|フローチャートで手順や処理・対処法を確認!
「はじめての交通事故でどう対応すればいいか全然わからない・・・」
多くの方にとって、交通事故は初めての経験でしょうから、交通事故の対応・処理・対処法を知らなくても当然のことかと思います。
このページでは、そんな方のために
- 交通事故発生直後の初動対応
- 交通事故の治療で気をつけるべき対応や必要な手続き
- 交通事故で後遺障害の認定を申請する際の手続き
- 交通事故の示談に至るまでの手順・流れ
- 交通事故で保険会社の対応が悪い場合の対処法
といった点のマニュアルをフローチャートも交えてご紹介していきたいと思います!
専門的な部分や実務的な部分は交通事故と刑事事件を数多く取り扱っている岡野弁護士に解説をお願いしております。
弁護士の岡野です。よろしくお願いします。
交通事故では発生直後から示談に至るまでの間に様々な対応・処理・対処が求められます。
適切な対応ができないと、十分な治療を受けられなかったり、十分な賠償金を受け取れないおそれもあります。
ここで交通事故の適切な対応・処理・対処法を学んで、どのような場面でも、適切に対応できるようにしておきましょう。
まず、いきなりですが、交通事故の大まかな対応の流れについてフローチャートにしてみましたので、ご覧ください。
ご覧いただいてわかるとおり、交通事故発生直後にもいきなり適切な対応が求められます。
そこで、まずは交通事故発生直後の初動対応についてお伝えしていきたいと思います!
交通事故発生直後の初動対応
まずは交通事故の負傷者への適切な対処を!
①負傷者の救護
交通事故が発生した場合に、一番最初に対応しなければいけないことは何だと思いますか?
- 警察に電話?
- 保険会社に電話?
- 家族に電話?
もちろん、これらのことも非常に大切ですべて対応しなければいけないことです。
しかし、一番最初に対応しなければいけないことは別にあります。
それは、道路交通法という法律によって、以下のように明確に記載されています。
交通事故があつたときは、当該交通事故に係る(略)「運転者等」(略)は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。
正解は自動車などの運転を停止して、負傷者を救護するという対処をすることです。
言われてみれば当たり前のことと思うかもしれませんが、事故直後は気が動転して負傷者の救護に頭が回らない可能性もあります。
しかし、この負傷者の救護という対処をしなかった場合には、以下のように重い罰則が科せられてしまう可能性があります。
車両等(略)の運転者が、当該車両等の交通による人の死傷があった場合において、第72条(略)第1項前段の規定に違反したときは、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
出典:道路交通法第117条1項
ここで注意しなければいけないのは、この交通事故の負傷者への対応は、加害者だけでなく被害者も対処しなければいけないという点です。
交通事故では、加害者の方が被害者よりも怪我が重い場合もあります。
そのような場合には、被害者が加害者や事故に巻き込まれてしまった方の救護という対処をしなければいけません。
具体的な救護措置としては
- 負傷者の確認
- 救急車の要請
- 可能な範囲での応急措置
などになります。
明らかに軽微な交通事故であれば必ずしも救急車を呼ぶ必要はないですが、そうでなければ、目立った外傷がなくても救急車を呼んだ方がいいでしょう。
また、適切な応急処置は怪我人の命を救ったり、後遺障害を軽減させたりしますが、逆効果の場合もあるので、あくまで可能な範囲ですべきといえます。
②危険防止措置
さきほどご紹介した道路交通法第72条1項前段は、負傷者の救護のほかに道路における危険防止措置という対応を当事者に求めています。
具体的な危険防止措置としては、二次災害を防ぐために
- 事故車両を安全な場所に移動させる
- 三角表示板や発煙筒などで交通事故を後続車に知らせる
- 怪我人が道路上などに倒れている場合には安全な場所に移動させる
などの対応が求められます。
ただし、怪我人が頭を打っているような場合には、特に慎重に移動させる必要があります。
交通事故直後に対応すべき点チェックリスト
人身事故で必要な対警察の手続き
警察官への報告
さきほどご紹介した道路交通法第72条1項には後段があり、以下のように記載されています。
当該車両等の運転者(略)は、(略)警察官に当該交通事故が発生した日時及び場所、当該交通事故における…損壊した物及びその損壊の程度、当該交通事故に係る車両等の積載物並びに当該交通事故について講じた措置を報告しなければならない。
出典:道路交通法第72条1項後段
道路交通法は、交通事故の発生直後、負傷者の救護及び危険防止措置の対処が終わったら、続いては
警察官への報告
という対応を求めています。
この警察官への報告という対応をしなかった場合には、以下のように重い罰則が科せられてしまう可能性があります。
次の各号のいずれかに該当する者は、3月以下の懲役又は5万円以下の罰金に処する。
(略)
十 第72条(交通事故の場合の措置)第1項後段に規定する報告をしなかつた者
(以下略)
出典:道路交通法第119条
ここで注意しなければいけないのは、負傷者の救護同様、加害者だけでなく被害者も警察官の報告義務を負っているという点です。
警察官への報告は加害者側がすることが多いですが、加害者側が連絡していないような場合には、被害者であっても必ず警察に連絡しましょう。
軽い事故だと、加害者側から警察を呼ばずに当事者間で解決しようと持ちかけられることもあるようですが、絶対に応じないで下さい。
警察に連絡しないことは、先ほどお伝えした道路交通法違反になるだけでなく、警察(自動車安全運転センター)から
交通事故証明書
を発行してもらえず、後に事故があったことが証明できず、色々な支障が生じる可能性があります。
警察官への報告は具体的には
- 交通事故が発生した日時及び場所
- 死傷者の数及び負傷者の負傷の程度並びに損壊した物及びその損壊の程度
- 講じた負傷者の救護措置や危険防止措置
が必要になります。
実況見分
交通事故直後に当事者がけがをしている人身事故であることが判明している場合、警察が事故現場に到着次第
実況見分
が行われることになります。
実況見分では、
- 事故の当事者や目撃者等からの聴取
- 距離や位置関係の測定
- 事故現場や事故車両の撮影
などが行われます。
ただし、当事者のけがが重く、救急車で搬送されたような場合には、後日に実況見分が行われることになります。
この実況見分によって作成される実況見分調書は事故状況(過失割合)に争いが生じたときに重要な証拠となります。
交通事故直後の対応|対加害者編
また、交通事故直後に加害者から、以下の事項を確認する必要があります。
- ① 加害者の氏名・住所・連絡先
- ② 加害車両の自賠責保険の保険会社・契約番号
- ③ 加害車両の任意保険の保険会社・契約番号
- ④ 加害車両の自動車登録番号
また、可能であれば、
⑤ 加害車両の所有者
⑥加害行為者の勤務先の名称・連絡先
も確認できると良いでしょう。
① については運転免許証で確認できるとより確実です。
② については自動車損害賠償責任保険証明書で確認できます。
③ については、保険証券で確認できます。
⑥については、社員証や名刺などで確認が可能です。
④ 、⑤については自動車検査証で確認できます。
出典:https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/c/ca/Jidousha_Kensasho_futsu.JPG
- ① については、今後の損害賠償のやり取りのために必要となります。
- ② 、④については、後ほど詳しく説明する自賠責保険への被害者請求の際に必要となります。
- ③ については、通常、その後の損害賠償のやり取りは、任意保険会社と行うことになるので確認する必要があります。
ただし、事故直後にわからなくても、加害者が任意保険会社に連絡してくれれば、任意保険会社から連絡が来ることになります。
⑤ については、所有者が運転者とは別の場合、所有者にも賠償請求できる可能性があるので確認する必要があります。
⑥についても、勤務先に賠償請求できる可能性や勤務先の保険が使われる可能性があるので確認する必要があります。
こうやって見ると、確認しなければいけないことがたくさんありますね・・・。
でも、事故直後だと気が動転して確認漏れが出てきてしまいそうです・・・。
また、加害者が素直に情報を教えてくれない場合にはどうすればいいのでしょうか?
この点は専門家にお尋ねしてみましょう。
①、②、④の事項は後日、交通事故証明書を取得することで確認可能ですので、加害者が教えてくれない場合に無理に聞き出す必要はありません。
ひとまず、加害者の連絡先さえ確認しておけば、それ以外の事は後からでも確認可能ですので、連絡先交換だけは必ず行いましょう。
事項 | 確認方法 | 目的 |
---|---|---|
氏名・住所・連絡先 | 運転免許証 | 今後の賠償のやり取り |
自賠責保険会社・契約番号 | 自賠責保険証明書 | 被害者請求 |
任意保険会社・契約番号 | 保険証券 | 今後の賠償のやり取り |
自動車登録番号 | 車検証 | 被害者請求 |
車両の所有者 | 車検証 | 賠償請求の余地の確認 |
勤務先の情報 | 名刺など | 賠償請求の余地の確認 |
その他事故直後に対応すべきこと
その他、交通事故直後に被害者が対応すべきこととして
- ① 事故現場の状況の撮影
- ② 事故車両など被害にあった物の撮影
- ③ 事故の目撃情報や目撃者の連絡先確認
などがあります。
でも、先ほど、人身事故の場合は警察が実況見分を行って、①〜③と同じような行為をするということでした。
そうであれば、わざわざ被害者自身が同じような行為をしなくてもいいような気もします・・・。
なぜ、被害者が警察の実況見分で行うようなことを自分でも対応しなければいけないのでしょうか?
この点は、専門家にお尋ねしてみましょう。
事故が発生し、警察に連絡をしても、警察が事故現場に到着し、実況見分が行われるまでにはある程度の時間が掛かることになります。
たとえば、事故現場は警察が到着するまで、そのままにしておくのが望ましいですが、交通の妨げになる場合には車両を移動させる必要があります。
そういった場合、車両を移動させる前に、現場の状況を撮影したり、目印をつけたりしておく必要があります。
また、実況見分はあくまで、刑事手続に必要な限度でしか撮影をせず、被害にあった物の細かい部分までは撮影しません。
そのため、被害者自身で被害にあった物をしっかりと撮影しておく必要があります。
なお、事故直後に被害にあった物を撮影しておくことは、その後の加害者側との物損の交渉にも有効です。
さらに、事故に関係のない目撃者は事故直後に事故現場を立ち去ってしまうことがほとんどです。
でも、よく街中でこんな看板を見かけます。
事故直後は現場を立ち去っても、後でこういった看板を見て、目撃者が警察に連絡してくれるのではないですか?
統計があるわけではないですが、そういった看板を見て目撃者からの連絡があることはまれのようです。
目撃者からすれば、自身に何の得もないのに、警察などで色々話す手間がかかることからすれば、仕方のないことだと思います。
そのため、事故直後、警察が到着する前に、目撃者を探し、連絡先を確認しておくことが重要といえます。
保険会社への連絡対応は被害者も
交通事故の加害者は、事故の被害者への対応や賠償をしてもらうために保険会社へ連絡するという対応をします。
ここで注意すべきなのは、追突事故のように被害者に過失割合がない場合でも、被害者には保険会社に連絡するという対応が求められる点です。
被害者に過失割合が認められない交通事故の場合でも、被害者の保険の
- 人身傷害保険
- 搭乗者傷害保険
- 車両保険
などを使用する可能性があり、その保険の使用の前提として、事故報告をしておく必要があるからです。
このように、交通事故直後だけをとってみても、被害者が対応しなければいけないことは数多くあります。
交通事故直後は気が動転してしまうかと思いますが、事故直後の適切な対応が、その後の事故処理や示談交渉を円滑に進める要因となります。
そのためにも、交通事故直後に対応すべきことをあらかじめ頭に入れておき、交通事故に巻き込まれた場合に適切に対応できるようにしておきましょう。
最後に、交通事故直後に対応すべきことを頭に入れる手助けとして、チェックリストを作成してみましたので、参考にしてみて下さい。
番号 | チェック項目 | 備考 |
---|---|---|
1□ | 負傷者の救護 | □ 負傷者の確認 □ 救急車の要請 □ 可能な範囲の応急措置 |
2□ | 危険防止措置 | □ 事故車両の移動 □ 後続車に事故知らせる □ 怪我人の移動 |
3□ | 警察官への報告 | □ 交通事故の発生日時・場所 □ 死傷者の数及・程度 □ 講じた負傷者の救護措置や危険防止措置 |
4□ | 加害者の確認 | □ 加害者の氏名・住所・連絡先
□ 加害者の保険情報 □ 加害者量の情報 |
5□ | 事故状況の記録 | □ 事故現場の状況の撮影
□ 事故車両などの撮影 □ 目撃情報や目撃者の連絡先確認 |
6□ | 保険会社へ連絡 | 被害者に過失がない場合でも連絡 |
適切な処理には人身事故切替を警察で手続き
人身事故ではない時の警察の処理
先ほどは、交通事故発生直後に当事者がけがをしている人身事故であることが判明している場合を前提にお話をしました。
しかし、交通事故発生直後には、当事者のけがが判明していない場合もあります。
その場合、警察には人身事故ではなく、物件事故(物損事故)として処理されます。
物件事故扱いの場合、警察は軽微な事故として簡略な処理をします。
具体的には、人身事故の場合に実施される実況見分が実施されず、物件事故報告書という簡易な書類が作成されるだけになります。
痛みが出てきた場合の適切な処理
もっとも、交通事故発生直後はけがをしていないと思っていたものの、その後痛みが出てきて、通院することになる場合があります。
その場合の適切な処理としては、人身事故への切り替えを警察で手続きするということになります。
具体的には、事故を管轄(担当)している警察署に診断書を持っていく必要があります。
この人身事故への切り替え手続きという対応をしておかないと
- 原則、自賠責保険などから治療費や慰謝料などを受け取れない
- 実況見分調書が作成されず、事故状況(過失割合)につき争いが生じたときの証拠が得られない
- 自賠責保険が使えても、軽微な事故とみなされて、治療の終了時期の判断や後遺障害の認定で不利に働くことがある
といったリスクが生じます。
人身事故への切り替え手続きを行った場合、実況見分の手続きが行われることになります。
なお、人身事故に切り替えなくても保険会社が対応をしてくれる場合もありますが、きちんと切り替え手続きを行うことが適切な処理といえます。
交通事故の治療対応・手続き
交通事故にあった場合、幸い無傷であればよいですが、怪我をしてしまうことも多いはずです。
交通事故による怪我の対処である治療の対応の手順をフローチャートに表すと、以下のようになります。
治療対応の手順は最初に整形外科(病院)!
交通事故による怪我の対処である治療の対応の手順はフローチャートのとおり、まず最初に病院での受診です。
怪我の内容にもよりますが、通常、対応は整形外科で行われる流れになります。
病院での受診対応について、なにか注意しなければいけない点はあるのでしょうか?
交通事故の怪我は、直後には自覚がなくても、後から痛みを感じるようになることがあります。
そのため、交通事故の直後には特に自覚症状がない場合でも、病院で受診するという対応をとることが重要です。
最初の通院が交通事故から時間が経つにつれて、後に痛みがあることや事故との因果関係を疑われる可能性が高くなります。
最初に病院で受診するという対応が遅れてしまうと、保険会社から事故とは無関係の治療と見なされ、治療費が払われない可能性が高まるんですね。
それは要注意です。
事故当日に行けなかったとしても、少なくとも2〜3日以内に最初の通院を行うという対応をしましょう!
治療で入院する際の手続き・対応
交通事故による怪我が重傷の場合には、治療の対応として、病院に入院するという流れになる場合があります。
交通事故で加害者が任意保険に加入している場合、その保険会社が病院に入院費を直接支払うという一括対応をしてくれる場合が多いです。
もっとも、保険会社に一括対応してもらうには、保険会社に入院する病院の連絡先を伝えるという手続きが必要となります。
保険会社が病院に入院費を直接支払うには、当然保険会社が病院と連絡を取る必要があるからです。
保険会社に入院する病院の連絡先を伝えるためにも、交通事故直後の初期対応として、加害者の任意保険会社を確認しておくことが重要になります。
加害者の任意保険会社がすぐに確認できない場合には、一旦入院費を立替する必要が出てくる可能性があるので注意しましょう。
なお、入院する際、保険会社から国民健康保険を利用する手続きを求められることがあるようです。
このような保険会社からの求めに対しては、どのように対応すればいいのでしょうか?
まず、被害者にも過失が認められる場合には、国民健康保険を利用したほうが基本的にはよいと考えられます。
被害者にも過失がある場合、過失分の治療費は自己負担となるところ、国民健康保険を利用すれば負担する治療費の額を抑えられるからです。
また、被害者にも過失が認められない場合でも、国民健康保険を利用したほうがいいことが多いといえます。
入院した場合の自由診療による治療費は高額になるため、後ほどお伝えする治療打ち切りの時期が早まる可能性があるからです。
ただし、国民健康保険には適用される治療の範囲が決まっているため、適用外の治療が必要な場合には別途検討が必要になります。
国民健康保険を利用する場合には、病院に対して健康保険証を呈示し、健康保険を使用する意思を伝えるという手続きが必要となります。
健康保険証の呈示だけではなく、使用の意思をはっきりと伝えるのがポイントということです。
ここで、健康保険を使わない自由診療と、健康保険診療との違いを簡単にまとめてみましたので、良ければ参考にしてみてください。
自由診療 | 健康保険診療 | |
---|---|---|
費用 | 高額 | 低額 |
治療方法 | 制限なし | 制限有り |
また、交通事故での健康保険の利用について詳しく知りたい方は、「交通事故で健康保険は使える!切り替え手続や使用のメリット・デメリットを紹介!」の記事をご覧ください。
治療で通院する際の手続き・対応
入院の必要が無いような場合や、怪我が回復し、入院治療の必要がなくなった場合、治療の対応として、病院に通院するという流れになります。
入院から通院治療に切り替える場合、
- 同じ病院に継続して通院する
- 自宅近くなど通いやすい病院に転院する
というどちらの対応でも問題ないようです。
交通事故で転院したい場合にとるべき手続き
交通事故の転院は、上記の入院から通院に治療が切り替わる場合だけでなく、以下の理由等で通院先を変更したい場合もあります。
- 事故現場から救急車で運ばれた病院が自宅から遠い
- 引っ越しをする
- 主治医との相性が合わない
どこで治療するかは被害者の自由なので、転院自体は被害者が自由に決めることができます。
転院の手続きは、通常、従前の主治医に事情を説明して紹介状を書いてもらい、それを持って転院先の病院に行くという流れになります。
ただし、紹介状を書いてもらえない場合もあり、その場合には、紹介状なしでも転院が可能な場合もあるようです。
転院のその他の手続き及び注意点
交通事故で転院する際、保険会社が一括対応している場合には、事前に転院の旨と転院先を伝えておく手続きも必要になります。
相手側の保険会社に転院の了承を得ておかないと、転院後の治療費について一括対応してもらえない可能性があります。
転院の手続きの注意点
その他、転院の流れの中で注意すべきポイントには、
- ① 経過の診断書の記載方法
- ② 転院は可能な限り早期に行うこと
などがあります。
① については、転院の際、経過の診断書に誤って「治癒」や「中止」と記載されてしまうことがあるようです。
誤って「治癒」や「中止」と記載されてしまうと、転院後の治療費が損害として認められなくなってしまう可能性があります。
そのため、診断書にはしっかりと転医と記載してもらう必要があります。
② については、事故から時間が経過した後の通院は、相手側の保険会社の了承を得られにくくなるそうです。
また、事故からしばらくして転院した場合、新しい担当医は転院までの間の治療経過を見ておらず、十分な後遺障害診断書が書けない可能性があります。
そのため、後遺障害の認定の申請を行う予定の場合には、転院する際に上記の点も考慮した対応が必要になります。
治療対応を整骨院で行う場合にすべき手続き
お伝えしたとおり、交通事故による怪我の対処である治療の対応の手順はまず最初に病院ということになります。
もっとも、被害者の方の中には、特にむちうちなどの場合に、治療の対応を整骨院でもしてもらうことを希望する方も多いようです。
もっとも、交通事故の治療としての整骨院での施術は病院の医師の同意がない場合には原則として認められないことになっています。
治療・診断ができるのは医師のみであり、整骨院の施術は医療行為ではなく、あくまでも補助的な医療類似行為と呼ばれるものだからです。
そのため、治療の対応を整骨院で行ってもらうには、原則として事前に病院で医師の同意を得るという手続きが必要になります。
なお、当然医師にもよりますが、どちらかと言うと医師の方々は整骨院での施術を好ましく思わない傾向にあるようです。
医師の同意を得るためには、整骨院へ通院する必要性などにつき十分かつ丁寧に説明する必要がありますが、被害者の方だけでは困難なことも多いです。
弁護士が介入することで、当初は同意を拒否していた病院の対応が変わった事例もあります。
病院の医師からの同意がなければ、保険会社から治療費を受け取れない可能性もあるということですね…。
では、病院の医師からの同意がない場合、治療の対応を整骨院で行ってもらう余地はないのでしょうか?
症状により、整骨院や接骨院での治療が有効かつ相当であると認められた場合、医師の同意がなくとも整骨院での施術費が損害として認められます。
なお、治療の対応を整骨院で行う場合でも、並行して整形外科などの病院にも定期的に通院するという対応が求められます。
先ほどもお伝えしたとおり、治療・診断ができるのは医師のみであり、整骨院の施術は医療行為ではなく、あくまでも補助的なものだからです。
特に、後遺障害の認定の申請手続きに必要となる診断書は医師しか書けず、定期的に通院していないと書いてくれない場合があるようです。
後遺障害認定の手続きの流れ
交通事故による怪我の対処である治療の対応を一定期間継続した後も、残念ながら痛みなどの症状が残ってしまうことがあります。
そうなった場合の対応としては、その残った症状を後遺障害として認定してもらう必要があり、その申請の手続きが必要になります。
後遺障害等級の認定の申請の大まかな流れをフローチャートにしたものがこちらになります。
ここからは、このフローチャートに沿って、後遺障害の認定の手続きの流れをご紹介していきたいと思います!
整形外科(病院)で診断書をもらう際の手順
①症状固定判断
交通事故の後遺障害の診断書を作成してもらう手順としては、フローチャートのとおり、まず症状固定の判断があります。
もっとも、この「症状固定」とはいったいどういう意味なのでしょうか?
症状固定
傷病に対して行われる医学上一般に認められた治療方法を行っても、その医療効果が期待できなくなった状態
に達したときのこと。
簡単に言うと、治療を続けてもこれ以上症状が良くならない状態ということですね。
症状固定とは、痛みなどの症状がなくなった段階のことではないという点には注意が必要です。
交通事故の治療中に、保険会社から通院治療費打ち切りを宣告されることがあります。
そうすると、相手側の保険会社が通院治療費打ち切りを宣告してくる時期は、保険会社が症状固定の時期と判断した時期ということですね。
でも、症状固定の判断は相手側の保険会社がするものなのでしょうか?
症状固定とは、損害賠償において意味を持つ概念ですので、争いがある場合最終的には裁判で判断されることになります。
もっとも、先ほどの定義からも分かるとおり、症状固定は医学的な判断要素を含むため、主治医の判断が重視されます。
そうなんですね。
症状固定とは、損害賠償において意味を持つ概念という説明でしたが、より具体的にはどういった意味を持つのでしょうか?
傷害分の損害賠償の終期
こちらは具体的には
- 治療費、通院交通費、休業損害が交通事故の損害として認められるのは(最大で)症状固定日まで
- 入通院慰謝料は症状固定日までの期間により計算される
という意味を持ちます。
後遺障害の判断基準時
こちらは具体的には
症状固定時に残存する症状が後遺障害の判定の対象となる
という意味を持ちます。
つまり、治療や後遺障害に対する賠償金の額は、症状固定までの期間やそのときの症状によって決まるということなので、非常に重要ですね。
最後に、混同しやすい治療打ち切りと症状固定の違いを表にまとめてみました。
治療打ち切り | 症状固定 | |
---|---|---|
判断する人 | 相手方保険会社 | 裁判所(主治医) |
影響 | 相手方保険会社が治療機関に直接治療費を支払わなくなる | ・傷害分の損害賠償の終期 ・後遺障害の判断基準時 |
②診断書の作成
先ほども少し触れましたが、怪我に対する診断を行えるのは、医師免許を持つ医師だけとなります。
そのため、後遺障害の診断書は医師だけが作成できることになっています。
整骨院では作成してもらうことができないので、その点は注意しましょう。
具体的には、症状固定時に治療を受けていた(主に整形外科の)病院の主治医に作成を依頼するという手続きの流れになります。
通常は、主治医に作成を依頼すれば、後遺障害診断書を作成してもらえますが
- 主治医が書いてくれない
- 主治医が書き方をよく知らない
- 主治医への依頼のポイントがよくわからない
といった問題が生じることもあります。
そういった問題に対する対処法は以下の記事に詳しく記載されていますので、実際に問題に直面されている方や関心のある方はぜひご覧ください。
後遺障害診断書の作成についての関連記事
申請方法①相手方保険に処理を任せる手続き
後遺障害の診断書を作成してもらったら、いよいよ後遺障害の等級認定を求める申請手続きを行うという流れになります。
そして、この等級認定を求める申請手続きには
- ① 相手方任意保険会社に処理を任せる事前認定
- ② 自賠責保険に被害者が直接申請する被害者請求
という二つの申請方法があります。
ここからは、まず①の事前認定の手続きについてお伝えしていきたいと思います!
一括払制度
交通事故の加害者が、自賠責保険だけではなく任意保険にも加入している場合、被害者は、任意保険会社から、
- 自賠責保険金分
- 自賠責保険金分を超える任意保険会社負担分
を一括して支払ってもらうことになります。
この制度のことを一括払制度といいます。
加害者請求
相手側の任意保険会社は、被害者に一括払いをした後、自賠責保険から、自賠責保険金分を回収します。
この制度のことを、加害者請求というそうです。
この制度が自賠法15条を根拠としていることから、15条請求とも呼ばれています。
被保険者は、被害者に対する損害賠償額について自己が支払をした限度においてのみ、保険会社に対して保険金の支払を請求することができる。
この加害者請求の前提として、一括払いをする相手側の任意保険会社は、自賠責から支払われる保険金分をあらかじめ確認する必要があります。
そのための手段として事前認定という手続きがあります。
事前認定は、相手側の任意保険会社から第三者機関である損害保険料率算出機構に損害調査を委託する方法で行われます。
具体的には、以下のような流れになるそうです。
事前認定の手続き
具体的な事前認定の手続きの流れは以下のフローチャートのようになります。
先ほどお伝えしたとおり、事前認定は相手方任意保険会社が処理する手続きであり、相手方任意保険会社が必要書類を準備し申請する流れになります。
そのため、被害者が対応すべき手続きは、基本的に後遺障害の診断書を作成してもらい、相手方任意保険会社に提出することのみとなります。
申請方法②自賠責保険へ被害者請求の手続き
被害者請求の手続き
一方、②の自賠責保険に被害者が直接申請する被害者請求の手続きの流れは以下のフローチャートのようになります。
事前認定とは異なり、後遺障害の申請を被害者請求で行う場合の必要書類は被害者自ら準備する流れになります。
2つの手続きのメリット・デメリット
2つの手続きのメリット・デメリットを大まかに表にまとめると以下のようになります。
事前認定 | 被害者請求 | |
---|---|---|
メリット | ・資料収集の負担なし ・費用負担なし | ・提出書類や時期を決定できる ・示談前にお金が入る |
デメリット | ・手続が不透明 ・示談までお金入らない | ・資料収集の負担 ・費用負担 |
事前認定のデメリットの1つである「手続が不透明」とは、保険会社が提出した書類の内容や時期を被害者が把握できないということです。
具体的には、事案によってですが、
後遺障害が認められにくい方向に働く内容の顧問医の意見書
を付けて被害者の後遺障害の等級の認定を損害保険料率算出機構に依頼することがあるようです。
また、保険会社の担当者は多くの案件を抱えているため、申請を後回しにされてしまうケースもあるようです。
さらに、悪質な事案として、以下のようなニュースがありました。
交通事故の後遺障害を訴えた被害者に、(略)保険(略)の担当者が「該当しない」とする文書を偽造して渡していた。
同社は偽造だと認め「担当者が手続きを怠っていたため」と説明している。
(略)
男性は15年8月、後遺障害診断書を医師に書いてもらい、弁護士を通じ、相手の任意保険会社(略)に後遺障害の手続きを頼んだ。
4カ月ほど経っても決定が出ず、担当者は「調査に時間がかかっている」と回答。
16年4月になって「(外部の調査機関により)後遺障害としては非該当と判断された」との文書が届いた。
疑問に思った男性が問い合わせを続けたところ、今年4月になって、後遺障害の認定手続きをしていなかったことがわかった。
(略)男性は、後遺障害に該当しないことを不服として異議申立書も出したが、この担当者は、申立書や後遺障害診断書を持ち帰り、ゴミと一緒に捨てていた。
(略)調査したところ、他にも同じような事案があり、詳しく調べている。
出典:朝日新聞デジタル 2017/5/4 18:23
手続きを忘れられたうえに、偽造文書を渡されるおそれがあるのであれば、被害者請求の方法で申請した方が安心かもしれませんね…。
これ以外に、被害者請求をすべき理由としてはどんなことが考えられますか?
事前認定の場合、相手側の任意保険会社は必要最低限の書類しか提出してくれません。
それに対して、被害者請求の場合、必要資料以外に認定に有利な医療関係の資料や意見書の添付も可能になります。
そのため、後遺障害の等級認定に争いのあるケースでは、被害者請求の手続きで申請するのが望ましい対応といえます。
とはいえ、ご本人だけで被害者請求の手続きに対応することはなかなか難しいように感じます。
そのような場合、弁護士に依頼をすれば、
- 書類収集の手間が省ける
- 認定に有利となる医療関係の資料や意見書の収集やアドバイスを受けられる
というメリットがあるそうです。
被害者請求をする場合には、特に弁護士に依頼するメリットが大きいといえるかもしれません。
後遺障害の申請をする時期は、弁護士に相談・依頼するタイミングとして適切な時期ですので、ぜひ積極的に相談だけでもしてみてください。
交通事故の示談の手順・流れ
交通事故の示談に至るまでのフローチャート
交通事故の示談は冒頭のフローチャートにもあったとおり、
症状固定となった時点(治療が終了した時点)
又は
後遺障害の等級認定の手続きが終了した時点(結果に納得した時点)
から交渉が開始される流れになります。
具体的な示談の手順については、以下のフローチャートのとおりです。
ここからは、このフローチャートに沿って手順を一つ一つ確認していきたいと思います!
①損害額の計算
損害額を計算するためには、病院から症状固定時(治療終了時)までの診断書や診療報酬明細書の取り付けという対応の必要があります。
これらの書類は、「治療費の確定」に必要なだけでなく、
- 付添看護費
- 入院雑費
- 通院交通費
- 休業損害
- 入通院慰謝料
などの算定にも必要とななります。
加害者側の任意保険会社が一括対応をしている場合には、任意保険会社から診断書・診療報酬明細書の写しを受け取ることが可能です。
②相手側の保険会社への請求
損害額の計算が終わった段階で、相手側の保険会社へ請求をする流れになります。
具体的には、
- ① 計算書
- ② 裏付資料
を送付することになります。
① の計算書には、損害額から既払額、過失割合が認められる場合には過失割合相当額を差し引いた請求額を記載するという対応が求められます。
②裏付資料の具体例
- 治療費の領収証
- 通院交通費明細書
- タクシーの領収証
- 休業損害証明書
- 源泉徴収票/確定申告書
- 後遺障害等級認定票
などが挙げられます。
加害者側の任意保険会社が対応している場合、既払額は、保険会社に確認すれば教えてもらえることが多いです。
また、相手側の保険会社の方から損害額を計算して提案書を送ってくることもあります。
③示談交渉
相手方保険会社へ計算書を送付すると、一定期間経過後、相手方保険会社からの回答がきます。
被害者は通常、弁護士基準に従って損害額を計算しますが、相手方保険会社がその請求をそのまま受け入れることは少ないです。
被害者本人からの請求の場合
に従った損害額での回答になることが多いです。
これに対して、弁護士が請求した場合
弁護士基準を基礎にそこから減額
した損害額での回答になることが多いです。
どれくらい減額するかは、弁護士と保険会社の交渉次第であり、双方が内容に合意すれば示談という流れになります。
④示談
内容が合意に至ると、相手側の保険会社から免責証書(示談書)という書類が送付されてくるようです。
この書類に署名・捺印し、相手側の保険会社に返送します。
すると、金額にもよりますが、通常1~2週間で示談金が指定の口座に振り込まれることになるそうです。
示談金が振り込まれると、交通事故の紛争は解決ということになります。
まとめ
示談までの流れと注意点
流れ | 注意点 | |
---|---|---|
① | 損害額の計算 | 計算には診断書などが必要 |
② | 相手方保険会社への請求 | 裏付資料の送付も必要 |
③ | 示談交渉 | 弁護士が入らないと弁護士基準が使われない |
④ | 示談 | 入金まで1〜2週間掛かる |
示談の前に確認しておきたいチェックリスト
交通事故の示談までの流れは以上のようになりますが、一度示談をしてしまえば基本的にその後追加で請求できないことになります。
そのため、示談書への署名・捺印については、慎重な対応が求められます。
そこで、ここからは、示談をする前に特に確認しておきたい点についてお伝えしていきたいと思います!
①弁護士基準との差額がどれ位か
弁護士基準とは最も高額な基準であり、裁判を起こした場合に受け取れる金額の相場になります。
裁判をせずに示談で解決する場合には早期解決というメリットがあることから、弁護士基準満額での示談は中々難しいといえます。
とはいえ、あまりに弁護士基準との差額が大きい場合には、早期解決のメリット以上に受け取れる金額の減少というデメリットの方が大きいといえます。
そこで、早期解決のメリットと受領金額の減少のデメリットを比較した上で判断すべく、示談の前に弁護士基準との差額を確認しておく必要があります。
なお、弁護士基準だといくらになるかを簡単に計算したい方は、以下の慰謝料計算機が便利なので、ぜひご利用ください!
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②損害項目に漏れがないかの確認
慰謝料の金額が妥当な場合でも、その他の損害項目に漏れがあると、全体の示談金が妥当でない金額になってしまいます。
漏れが生じやすい損害項目としては
などが挙げられます。
- ① の主婦の休業損害は、実際に働かれている人の休業損害とは違い、本来入ってくるお金が入ってこなくなるわけではないため、見落としがちです。
- ② の後遺障害の逸失利益は、特に相手方の保険会社から先行して提案書が送られてくる場合に見落としてしまいがちです。
自賠責保険の後遺障害による損害の保険金の限度額は、慰謝料と逸失利益を合わせたものになります。
そのため、保険会社からの後遺障害による損害の提案も、慰謝料と逸失利益を合わせた自賠責保険金の限度額になっていることがあります。
なお、この場合、相手方の保険会社は、後遺障害による損害について、自分の会社からの実質的な支出はないことになります。
また、後遺障害の逸失利益についても、先ほどご紹介した慰謝料計算機で簡単に計算できますので、ぜひご利用ください!
③請求漏れの金額がないかの確認
こちらは、被害者が損害費用の一部を立て替えている場合によく確認する必要がある点です。
当然とも言えますが、先ほど損害の裏付け資料の具体例としてご紹介した
- 治療費の領収証
- タクシーの領収証
などに漏れがあった場合には、漏れがあった分の費用は損害額には含まれないことになってしまいます。
領収証は一か所にまとめて保管しておくことなどが、請求漏れの金額をなくす適切な対処法の一つ考えられます。
最後に、示談の前に確認しておきたい点をチェックリストにしてまとめてみましたので、よろしければ参考にしてみて下さい。
番号 | チェック項目 | 備考 |
---|---|---|
①□ | 弁護士基準との差額 | □ 慰謝料計算機で確認 |
②□ | 損害項目に漏れがないか | □ 主婦の休業損害 □ 後遺障害の逸失利益 |
③□ | 請求漏れの金額がないか | □ 送り忘れている領収証がないか |
交通事故の処理に要する時間はどれくらい?
確認を終えて示談をし、示談金を受け取ることができれば、交通事故の処理は解決できたということになります。
では、交通事故を示談で処理するまでに要する時間はどれくらいなのでしょうか?
当然、事案によって様々ではありますが、ここでは、冒頭のフローチャートのように
後遺障害の認定を申請した上で示談により解決した場合
に要する大まかな時間についてお伝えしたいと思います!
事故発生から症状固定までの時間
先ほどもお伝えしたとおり、後遺障害の認定の申請にはまず症状固定の判断があります。
そして、症状にもよりますが、後遺障害の認定の申請をする場合には、事故発生から症状固定まで、最低でも半年の時間を要することが多いです。
なぜなら、症状固定は、治療などの効果による症状の改善が見込めなくなった状態をいうところ、通常半年程度は症状の改善が見込めるからです。
症状固定から後遺障害認定までの時間
そして、症状固定から後遺障害認定までの時間は大きく
- 後遺障害の申請の準備に要する時間
- 後遺障害の申請から認定までに要する時間
の二つに分けられます。
準備に要する時間
こちらは、申請の方法や申請者の忙しさ・能力・やる気などにより、要する時間は変わってきます。
もっとも、必要書類である診断書の取得などには症状固定から最低でも2週間~1か月程度の時間を要することが多いようです。
申請から認定までに要する時間
こちらは、損害保険料率算出機構という機関が、自賠責調査事務所による申請の受付から調査の完了までに要する日数につき統計を公開しています。
統計によると、後遺障害の事案では、30日以内に調査が完了した事案が78.4%となっています。
また、31日~60日で調査が完了する事案は11.6%となっています。
そのため、通常の後遺障害の事案では、9割は、 遅くとも2か月以内には調査が完了していることになります。
具体的な日数と割合については、以下の表に記載されているとおりとなります。
後遺障害 | 全体 | |
---|---|---|
30日以内 | 78.4% | 96.8% |
31日〜60日 | 11.6% | 1.9% |
61日〜90日 | 5.5% | 0.7% |
90日超 | 4.5% | 0.5% |
両方合わせると、症状固定から後遺障害認定までにはスムーズにいっても2か月程度の時間を要するといえます。
後遺障害認定から示談までの時間
後遺障害の認定から示談成立までに要する時間は、保険会社との交渉状況により様々です。
もっとも、示談書作成や示談金の振込手続き等も考えると、後遺障害の認定から示談金の受領までに最低でも1か月程度の時間を要するといえます。
一方で保険会社との示談交渉がなかなかまとまらない場合もあります。
示談交渉をいつまですべきかですが、半年経過しても交渉がまとまらない場合、それ以上示談交渉に時間を費やしても成立の見込みは薄いといえます。
示談交渉がまとまらない場合には、冒頭のフローチャートにもあるとおり、裁判などを起こす流れになります。
ちなみに、裁判になった場合、裁判を起こしてから解決するまでには平均して1年~1年半程度の時間を要するようです。
交通事故の裁判の流れを詳しく知りたいという方は、「交通事故裁判の流れ|期間は判決まで平均1年以上?出廷は何回?慰謝料額は?」の記事をぜひご覧ください。
ご紹介した処理に要する時間は比較的スムーズに処理が進んだ場合の時間になります。
被害者の方が適切な対応ができなかったり、この後ご紹介する保険会社の対応が悪い場合には、さらに時間を要する可能性が高い点には注意が必要です。
交通事故で保険会社の対応が悪い場合は?
保険会社からの治療打ち切りの対処法とは?
交通事故の対応の流れは以上になりますが、この流れの様々な場面で、保険会社との対応が求められることになります。
そして、保険会社の対応が悪いと不満に思われる被害者の方も多いようです…。
https://twitter.com/sekinepontan/status/912174582022291456
https://twitter.com/TakeUreHeart/status/818798049371619328
https://twitter.com/61701791wmjmwam/status/389704684107079680
そんな中でも、特に保険会社の対応が悪いと感じられるのは、治療打ち切りを一方的に宣告されることのようです。
被害者の方としては、痛みが残っているから治療しているのに、保険会社から一方的に治療打ち切りを宣告されて納得できないのも当然かと思います。
また、保険会社が、治療するかどうかの判断をするのはおかしいと疑問に思われる方もいらっしゃるかと思います。
その疑問はある意味で正しく、治療するかどうかは保険会社が判断できるものではなく、治療するかどうか自体は被害者が自由に決定できます。
ここでいう、治療打ち切りとは、正確には先ほどもご紹介した一括対応の打ち切りになります。
つまり、保険会社の治療打ち切りとは、保険会社から病院に治療費を直接支払う手続きを中止するという宣告になります。
そして、一括対応自体は保険会社の義務ではなく、いわばサービスのため、一括対応の打ち切り自体は保険会社が判断できることになります。
もっとも、治療をするのは自由でも、自分で治療費を支払い、その治療費が自分の負担になるのは避けたいというのが正直なところかと思います。
そこで、ここからは、保険会社からの治療打ち切りの対処法についてお伝えしていきたいと思います!
主治医による治療の必要性の主張
まず考えられる対処法は、保険会社に対し、主治医から治療継続の必要性を説明してもらうことです。
保険会社は、治療打ち切りの理由として、症状固定、つまり、治療による症状の改善の見込みがないことを挙げてきます。
法的には、加害者は症状固定時までの治療費を負担するということになるからです。
もっとも症状固定の判断については医学的な見地も重視され、特に主治医の判断が尊重されることになります。
そのため、主治医が治療による症状の改善の見込みがまだあると判断している場合、その判断を尊重し、治療打ち切りを待ってくれることがあります。
事故から半年という期限を区切る
保険会社が治療打ち切りを主張してくるのは、治療が長引くと、治療費が高額になり、自社の支払の負担が増えるからです。
そして、保険会社はいつまで治療が続くかわからないという状況を最も嫌がるようです。
逆に言うと、治療の終了時期が決まっていれば、治療費がどれ位になるかの予測が立てられるため、そこまでは治療費を負担してくれることがあります。
とはいえ、治療の終了時期が決まっていても、それが事故からあまりに先だと結局治療費が高額になるので、治療打ち切りの交渉には応じてくれません。
そこで、治療の終了時期の区切りとしては事故から半年が目安にするのがいいと考えられます。
先程お伝えのとおり、事故から半年程度は症状の改善が見込めることが多く、後遺障害の認定の申請には通常半年以上の通院が必要だからです。
症状がある程度重く、後遺障害の申請の必要があると思われる事案であれば、事故から半年までは、治療費支払いの延長に応じてくれることがあります。
健康保険の切り替えを条件にする
先ほどもお伝えしたとおり、保険会社は最終的な治療費の総額を気にしています。
そのため、健康保険を使用して、治療費を抑えれば、治療期間の延長を認めてくれる可能性があります。
なお、交通事故では途中から健康保険に切り替えることも可能ですので、その点は心配ありません。
対処法 | 理由 | |
---|---|---|
① | 主治医による治療の必要性の主張 | 症状固定までの治療費は加害者負担 |
② | 事故から半年と期限を区切る | ・保険会社が治療費の予測を立てられる ・後遺障害の認定申請には通常半年の通院が必要 |
③ | 健康保険の切り替えを条件にする | 保険会社が負担する治療費が抑えられる |
治療継続には労災や健康保険利用の手続きを
上記のような保険会社からの治療打ち切りの対処法をとったものの、保険会社がそのまま治療打ち切りをしてしまう場合もあります。
その場合、被害者は
- ① 治療を継続するか
- ② 後遺障害の認定の申請手続きをするか
という2つの対応を迫られ、その対応をどうするかにより、その後の流れが変わってきます。
①治療継続するか
治療を継続する場合
保険会社からの治療打ち切り後も治療を継続する場合、少なくとも一度治療費を立替するという対応が求められます。
この際健康保険を使用すれば、立替をすべき治療費が抑えられ、立替の負担を軽減することができます。
そのため、自由診療で治療を受けていた場合には、病院に健康保険診療への切り替えする手続きをとるという対応が必要になります。
また、通勤災害や業務災害の交通事故の場合には労災保険を利用する手続きをとるという対応が望ましいです。
労災保険を利用できる場合には、治療費の自己負担分が0になります。
立替えた治療費は後に、相手側に請求します。
治療打ち切り後の治療費に関しては、その治療の必要性が争われることになります。
治療の必要性の争いに備え、病院に治療継続の必要性を記した書類の作成依頼をするという対応が求められます。
治療を継続しない場合
一方、治療を継続しない場合には、後遺障害の認定の申請の有無により、その後の流れが異なってきます。
②後遺障害の認定の申請をするか
後遺障害の認定申請をする場合
後遺障害の認定の申請をする場合、後遺障害の認定結果が出た後に示談交渉を行う流れになります。
後遺障害の認定の申請のために、先ほどもお伝えしたとおり、病院で医師から後遺障害の診断書を記載してもらうという流れになります。
後遺障害の認定申請をしない場合
一方、後遺障害の認定の申請をしない場合、そのまま示談交渉という流れになります。
その場合、病院には、示談交渉の前提として診断書や診療報酬明細書を治療費を支払った被害者や相手方保険会社に送付してもらう流れになります。
治療打ち切り(一括対応の打ち切り)後の対応についてのフローチャートや対応の差による病院とのやり取りをまとめた表は以下のとおりです。
後遺障害申請する | 後遺障害申請しない | |
---|---|---|
治療継続する | ・健保切替 ・治療継続必要という書類作成依頼 ・後遺障害診断書作成依頼 | ・健保切替 ・治療継続必要という書類作成依頼 ・診断書等送付依頼 |
治療継続しない | ・後遺障害診断書作成依頼 | ・診断書等送付依頼 |
対応に困って弁護士に依頼をする場合の手順
保険会社からの治療打ち切りに対する対処法は以上のとおりです。
もっとも、実際に被害者ご自身で対処法を実行し、保険会社とやり取りをするのは難しい部分もあるかと思います。
また、お伝えしたとおり、治療打ち切り以外にも交通事故では保険会社の対応が悪い・遅いことがあり、困ってしまうかもしれません。
そんな場合には、弁護士に依頼をすることでお困りの問題が解決できる場合があります。
そこで、最後に交通事故の問題を弁護士に依頼する手順についてお伝えしていきたいと思います!
まず弁護士を探す
交通事故の問題を弁護士に依頼するには、当然のことですが、まずは弁護士を探す必要があります。
交通事故の弁護士の探し方には注意をしないと、有能な弁護士に依頼できる確率が少なくなってしまいます。
とはいえ、この記事に書かれているような注意点やポイントを被害者の方ご自身で一つ一つチェックするのは難しく、時間も掛かるかと思います。
そこで、おすすめしたいのが、以下の全国弁護士検索サービスです。
このサービスなら、お住まいの都道府県を選択するだけで、交通事故専門のサイトを設け交通事故解決に注力しているお近くの弁護士が探せます!
弁護士に相談する
弁護士を探すことができたら、続いてはその弁護士に相談するという手順になります。
弁護士に相談する場合には相談費用が掛かることがあります。
もっとも、先ほどご紹介した全国弁護士検索サービスで探せる弁護士は無料相談に応じているようです。
相談方法としては、通常は弁護士の事務所に行った上での面談になります。
ただし、弁護士事務所によっては、電話やメールでの相談に応じているところもあるようです。
スマホで無料相談できる事務所も
さらに、電話相談だけでなく、スマホからLINEで弁護士に無料相談できる事務所もあります。
※無料相談の対象は人身事故のみです。
物損事故のご相談はお受けしておりません。
広告主:アトム法律事務所弁護士法人
代表岡野武志(第二東京弁護士会)
コチラの事務所では、人身事故にあわれた方は、お手元のスマホで弁護士に無料相談できます。
24時間365日、専属スタッフが待機するフリーダイヤル窓口で受付しているので、いつでも電話できるのは非常に便利ですね。
また、夜間・土日も、電話やLINEで弁護士が無料相談に順次対応しています。
また、交通事故によるケガが重症で、弁護士事務所に訪問できない方を対象に、無料出張相談も行っているそうです。
弁護士に依頼する
そして、弁護士に相談してみて、困っている問題に対応してほしいと考えた場合、正式に弁護士に依頼するという手順になります。
何人かの弁護士と無料相談したうえで、相性が良くて頼みやすい弁護士を選ぶ、という対応がいいかもしれません。
実際に弁護士に依頼する際には、契約書を取り交わすという手続きが必要になります。
契約書に署名・捺印する前には内容をよく確認し、わからないことがあれば、弁護士に質問するという対応が求められます。
特に、弁護士費用の部分については、契約締結前にしっかりと確認するという対応が必要です。
交通事故で保険会社の対応が悪い場合でも、弁護士に依頼することにより、保険会社の対応が変わる場合もあります。
保険会社の対応についてお困りの方は、まず弁護士に相談してみることをおすすめします。
なお、弁護士費用特約が使える場合は、ご自身の費用負担なく弁護士が依頼できることが多いです。
そのため、弁護士費用特約の有無や弁護士費用特約の使い方を確認するという対応も必要です。
最後に一言アドバイス
それでは、最後になりますが、交通事故の対応でお悩みの方に一言アドバイスをお願いします。
ここまで交通事故の様々な場面で求められる数多くの適切な対応・処理・対処についてお伝えしてきました。
もっとも、交通事故の問題に直面した時にお伝えした数多くの適切な対応・処理・対処をお一人ですべてこなすのは、実際にはかなり困難かと思います。
交通事故の対応・処理・対処でお困りの場合には、お一人だけで解決しようとはせず、ぜひ一度弁護士に相談だけでもしてみて下さい。
まとめ
いかがだったでしょうか。
このページを最後までお読みの方は、
- 交通事故発生直後の対応方法
- 交通事故の治療で気をつけるべき対応や必要な手続き
- 交通事故で後遺障害の認定を申請する際の手続き
- 交通事故の示談に至るまでの手順・流れ
- 交通事故で保険会社の対応が悪い場合の対処法
について理解を深めていただけたのではないかと思います。
これを読んで弁護士に相談した方が良いと思った方も多いハズです。
自宅から弁護士と相談したい場合には、スマホで無料相談の機能を利用してみて下さい!
そうではなく、やっぱり直接会って話がしたいという場合は、全国弁護士検索を使って弁護士を探してみてください。
また、このホームページでは、交通事故に関する関連記事も多数掲載していますので、ぜひ参考にしてください!
皆さまのお悩みが早く解決するよう、お祈りしています。
この記事の監修弁護士
岡野武志弁護士
アトム法律事務所弁護士法人
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-11-28 合人社東京永田町ビル9階
第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。