後遺障害の慰謝料計算の相場|14級・12級・非該当の慰謝料の相場を事例別に紹介!
「交通事故により後遺障害が残ってしまったけれど、その分の慰謝料の計算に相場はあるの?」
「後遺障害の慰謝料計算の相場のポイントは?」
「同じ頸椎捻挫やむちうちでも、後遺障害の慰謝料は等級や基準により金額が全然違うって聞いたけれど本当なの?」
交通事故により後遺障害が残ってしまった方は、今後の生活のことを考えると、その分の慰謝料の金額がどれくらいになるかが気になるかと思います。
このページでは、そんな方のために、
- 交通事故による後遺障害の慰謝料計算の相場を決めるポイント
- 交通事故による後遺障害の慰謝料計算の等級ごとの相場
- 交通事故による後遺障害の慰謝料計算の用いられる基準ごとの相場
についてご紹介していきたいと思います!
専門的な部分や実務的な部分は交通事故と刑事事件を数多く取り扱っている岡野弁護士に解説をお願いしております。
弁護士の岡野です。よろしくお願いします。
交通事故により後遺障害が残ってしまった方は、その後長期にわたって生活上の不便を強いられるなどの精神的苦痛を受けることになります。
被害者にとり、そのような後遺障害が残ったことによる精神的苦痛に対する金銭的な補償である慰謝料がどれくらいになるかは非常に重要といえます。
しかし、残ってしまった後遺障害に対する適切な慰謝料を受け取るためには、いくつかの大事なポイントがあります。
こちらで後遺障害の慰謝料についてしっかり理解し、適切な後遺障害の慰謝料の金額を受け取れるようにしましょう。
目次
交通事故により、治療をしていたものの、残念ながら後遺障害が残ってしまったという方もいらっしゃるかと思います。
そういった方は、今後の生活のことを考えると、その分についての慰謝料もしっかりと払ってもらいたいと思うのが当然かと思います。
暮れの事故の治療費と休業補償、数か月かかって半年分払わせた。今度は慰謝料。治療費が半年分出ているので、当然慰謝料もそれに見合ったものにならないとおかしいし、後遺障害になっているので、その分も当然払って頂かないと。それにしても謝罪の言葉一つも出ないのが区会議員になれるって豊島区変
— rachvocalise(土偶部名:アマリブラ) (@rachvocalise) September 21, 2017
もっとも、具体的な後遺障害に対する慰謝料に計算の相場があるかや金額を決めるポイントについてはご存じない方も多いかと思います。
実は、同じ頸椎捻挫やむちうちでも、後遺障害の慰謝料の相場は、そのポイントにより金額が全然変わってくるんです!
そこで、まずは、後遺障害の慰謝料計算の相場を決めるポイントについてお伝えしていきたいと思います!
後遺障害の慰謝料計算の相場は等級と基準がポイント!
症状固定後の後遺障害の認定で慰謝料は決まる
交通事故の後遺障害の慰謝料とは
交通事故の被害者の方は、当然、事故による怪我の治療に励むことになります。
しかし、残念ながら、治療を行っても完治せず、怪我による痛みや症状が後遺症として残ってしまう場合があります。
そのような後遺症が残ってしまうと、今後、生活上の不便を強いられるなどの精神的苦痛を負うことになります。
そして、生活上の不便を強いられるなどの精神的苦痛を負うのであれば、当然、そのことに対する補償がなされるべきです。
そこで、交通事故では、上記のような後遺症のうち、後遺障害として認定されたものに対し、金銭的補償として慰謝料が支払われます。
後遺障害の認定が必要となる理由
では、なぜ交通事故では、後遺症のうち、後遺障害として認定されたものに対してしか慰謝料が支払われないのでしょうか?
交通事故の被害者の方は多かれ少なかれ何らかの後遺症が残ってしまうことがほとんどですが、その症状や苦痛の程度は様々です。
しかし、それを交通事故ごとに全て個別に検討して慰謝料を計算することになると、
- 迅速な解決が図れない
- 事案ごとにばらつきが大きくなり公平性を欠く
ことになります。
そこで、自賠責保険は、後遺症のうち、
自賠法施行令の後遺障害として認定されたものだけを慰謝料支払の対象とする
ことにしました。
なお、この自賠責の後遺障害の認定は、慰謝料計算の場面全般において尊重されています。
症状固定が後遺障害の認定基準時
そして、後遺障害の認定にあたっては、どの時点の後遺症を対象にするかという基準が必要になります。
その基準時として用いられているのが症状固定という概念になります。
症状固定とは、元々労災保険における概念であり、労災保険では以下のように定義されています。
症状固定
傷病に対して行われる医学上一般に認められた治療方法を行っても、その医療効果が期待できなくなった状態
症状固定の大まかなイメージとしては、これ以上治療を続けても良くも悪くもならない状態として捉えておけばよいでしょう。
以上をまとめると、症状固定時の症状を対象とした後遺障害の認定により慰謝料の金額が決まってくるということになります。
なお、症状固定については、以下の記事に詳しく記載されていますので、興味のある方はぜひご覧になってみて下さい!
症状固定後の後遺障害の認定までの流れは、大まかには以下の表のようになります。
上記の表をご覧いただけるとわかるかと思いますが、症状固定から後遺障害が認定され、慰謝料の支払までにはかなりの期間を要する点は要注意です。
ただいま〜っ今日で症状固定になって、治療は終了!これから診断書を弁護士に送って後遺障害の審査やら諸々掛かるから…慰謝料はまだまだ先だわorz
— 華澄 (@kasumidos) October 27, 2014
なお、後遺障害の認定の流れについて、より詳しく知りたいという方は、以下の記事もぜひご覧になってみて下さい!
後遺障害が非該当だと慰謝料は認められない!?
お伝えしたとおり、交通事故の後遺症のうち、後遺障害として認定されたものだけを慰謝料支払の対象に自賠責はしています。
いいかえると、後遺障害が非該当として認定された人には、その分の慰謝料は支払われないのが原則ということになります。
では、後遺障害が非該当として認定された人には、一切慰謝料は支払われないのでしょうか?
入通院慰謝料の支払は受けられる
まず、交通事故による慰謝料は後遺障害による慰謝料だけではありません。
後遺障害が非該当として認定された人も、怪我の治療のため入通院をしていたはずです。
その交通事故による怪我の治療により入通院せざるを得なくなったことに対する精神的苦痛の金銭的補償としての入通院慰謝料の支払は当然受けられます。
任意保険との交渉
先ほど、自賠責の後遺障害の認定は、慰謝料計算の場面全般において尊重されているとお伝えしました。
そのため、後遺障害の慰謝料についての任意保険との交渉も基本的には自賠責の後遺障害の認定が前提になります。
とはいえ、あくまで、自賠責の後遺障害の認定は、任意保険とは別の機関が判断しているものです。
そのため、任意保険との交渉により、任意保険が同意さえすれば、自賠責の後遺障害の認定が非該当でも、理論上は慰謝料を受け取れる可能性があります。
ただし、実際には任意保険がそのような交渉に応じる可能性はほとんどないと考えられます。
非該当で慰謝料が認められた裁判
そのため、後遺障害が非該当として認定された場合に、その分の慰謝料を請求するのであれば、現実的には裁判をすることになります。
裁判所では自賠責の認定を尊重するにとどまり、その判断に拘束されるわけではないことになっています。
そのため、下記のような、自賠責保険では後遺障害が非該当と判断されながら、後遺障害の慰謝料の支払いを認めた裁判例も存在します。
(略)
原告は、平成19年2月23日、自賠責保険の後遺障害に該当しないとする自賠責保険の支払不能の通知を受けた。
(略)
原告のPTSDによる後遺障害は、自賠責後遺障害11級相当(労働能力喪失率20%)として扱うのが相当である。
(略)
キ 後遺障害逸失利益 530万947円
(略)
ケ 後遺障害慰謝料 400万円(11級相当額)
(以下略)
出典:京都地判平成23年4月15日
このように、たとえ後遺障害が非該当として認定された場合でも、入通院慰謝料は請求できますので、その点は忘れないようにしましょう。
また、後遺障害分の慰謝料についても、裁判によって認められる余地があることも覚えておくとよいでしょう。
ただし、裁判でも、自賠責の後遺障害の認定を尊重し、その認定を前提とした判断をするのが通常ですので、その点は注意する必要があります。
裁判でも、自賠責の後遺障害の認定を尊重される以上、可能な限り、自賠責で後遺障害が認定されていた方がいいということですね。
たとえ、一度後遺障害が非該当として認定された場合でも、その認定の再判断を求める異議申立などの手続きがあります。
後遺障害の認定結果が出た後の慰謝料支払いまでの流れについては、おおまかには以下の表のようになります。
なお、異議申立については、以下の記事に詳しく記載されていますので、興味のある方はぜひご覧になってみて下さい!
後遺障害の慰謝料計算の相場は等級ごとに決定
先ほど、後遺障害の認定は、迅速かつ公平な慰謝料の支払のためであるとお伝えしました。
もっとも、後遺障害として慰謝料支払の対象とすべき症状の中でも、その程度は様々です。
にもかかわらず、それらを全て個別に検討して慰謝料を計算することになると、結局
- 迅速な解決が図れない
- 事案ごとにばらつきが大きくなり公平性を欠く
ことになります。
そこで、自賠責保険は、後遺症のうち、
障害の程度に応じて等級を定め、その等級ごとに慰謝料の金額や労働能力喪失率を定める
ことにしました。
なお、この自賠責の後遺障害の等級の認定も、慰謝料計算の場面全般において尊重されています。
つまり、後遺障害の慰謝料は、後遺障害が認定されるかどうかだけでなく、適切な等級が認定されるかどうかも非常に重要になってきます。
なお、先ほどご紹介のあった異議申立は、非該当の認定に対する再判断だけでなく、等級の認定の再判断を求める場合にも利用できます。
後遺障害が認定されている場合でも、慰謝料は、認定された等級により大きく変わるので、結論は慎重に出す必要があります。
後遺障害の慰謝料は基準次第で金額が変わる!
お伝えしたとおり、後遺障害の慰謝料計算の相場は、自賠責で認定された等級により決まってきます。
もっとも、たとえ同じ等級であっても、後遺障害の慰謝料は用いられる基準によって大きく変わってくるんです!
そこで、ここからは、後遺障害の慰謝料の基準について、代表的なものを3つほどご紹介したいと思います。
①自賠責基準
自賠責基準とは、その名のとおり、加入が義務付けられている自賠責保険から支払われる保険金額を算出する際に用いる基準のことをいいます。
自賠責保険は、被害者の損害を最低限度保障するための保険であることから、自賠責基準で計算された金額の相場は低額になっています。
後遺障害の慰謝料について、自賠責基準では等級ごとに金額を定めています。
②任意保険基準
任意保険基準とは、その名のとおり、各任意保険会社が慰謝料などの損害賠償の金額の提示額を計算する際に用いる基準のことをいいます。
任意保険基準は、保険会社ごとに基準が異なり、かつ非公開とされているので、詳細はわかりません。
もっとも、かつては各任意保険会社共通の基準が存在し、現在もその基準が基礎になっていると考えられています。
旧統一任意保険基準では、自賠責基準で計算された金額よりも若干高い程度の相場になっていました。
後遺障害の慰謝料について、旧統一任意保険基準でも等級ごとに金額を定めています。
③弁護士基準
弁護士基準とは、その名のとおり、交通事故の後遺障害の慰謝料などの計算において弁護士が用いる基準のことをいいます。
この弁護士基準は、通称赤い本(赤本)と呼ばれている本に掲載されています。
交通事故の赤本については、以下の記事に詳しく記載されていますので、興味のある方はぜひご覧になってみて下さい!
弁護士基準は、裁判の場でも用いられているため、裁判基準とも呼ばれます。
弁護士基準は、3つの基準の中で慰謝料の金額の相場が最も高額になっています。
後遺障害の慰謝料について、弁護士基準でも等級ごとに金額を定めています。
このように、後遺障害の慰謝料計算の相場は自賠責で認定される等級と用いられる基準によって決まってきます。
そして、適切な後遺障害の等級の認定を受け、最も高額な基準である弁護士基準で計算した慰謝料を受け取るには弁護士への依頼が確実です。
後遺障害の慰謝料について適切な金額を受け取りたいという方は、後遺障害の等級認定の申請前に弁護士に相談してみるのがよいでしょう。
基準 | いつ用いられるか | 金額 |
---|---|---|
自賠責基準 | 自賠責への請求 | 低い |
任意保険基準 | 任意保険の提示 | 自賠責基準よりは高い |
弁護士基準 (裁判基準) |
・弁護士の交渉 ・裁判 |
最も高い |
後遺障害が14級の場合の慰謝料計算の相場
後遺障害の慰謝料は同じ等級でも、用いられる基準により金額が大きく違うとお伝えしました。
では、具体的には、用いられる基準によりどれくらい金額が変わってくるのでしょうか?
ここでは、交通事故に多い追突事故で頸椎捻挫(むちうち)となった事例の後遺障害の慰謝料を基準ごとに計算していきます。
後遺障害が14級の慰謝料の自賠責基準の相場
追突事故で頸椎捻挫(むちうち)となった事例の後遺障害の認定で一番考えられる等級は14級9号になります。
そして、後遺障害が14級の場合の慰謝料の自賠責基準の相場は32万円になっています。
むちうちといえど、後遺障害が認定される場合には、かなりの痛みが残っていると考えられますので、上記の金額では少ないと思われる方もいるでしょう。
後遺障害が14級の慰謝料の任意保険基準の相場
先ほど、お伝えしたとおり、現在の任意保険基準は各会社ごとに異なり、非公開なので、ここでは旧統一任意保険基準を前提に計算します。
後遺障害が14級の場合の慰謝料の旧統一任意保険基準の相場は40万円になっています。
自賠責基準の慰謝料の相場よりは増額していますが、その増額幅が8万円ではまだまだ不十分と思われる方もいるでしょう。
後遺障害が14級の慰謝料の弁護士基準の相場
弁護士基準は厳密には複数ありますが、ここでは一番広く用いられている赤本に掲載されている基準を前提に計算します。
後遺障害が14級の場合の慰謝料の弁護士基準(赤本基準)の相場は110万円になっています。
後遺障害が14級の場合の慰謝料の弁護士基準(赤本基準)の相場は、上記の2つの基準の相場に比べて倍以上の高額な相場になっているんですね!
基準 | 金額 |
---|---|
自賠責基準 | 32万円 |
任意保険基準※ | 40万円 |
弁護士基準 (裁判基準) |
110万円 |
※旧統一任意保険基準
後遺障害が併合14級だと慰謝料計算は変わる?
追突事故によるむちうちは、頸椎捻挫と腰椎捻挫の両方が生じる事例も多いです。
そのような事例の後遺障害の認定では、頸椎捻挫と腰椎捻挫の両方に14級の等級が認定され、併合14級になる場合があります。
では、後遺障害が併合14級の場合、慰謝料計算において、14級が単独で認定された場合となにか違いはあるのでしょうか?
後遺障害が併合されることにより、慰謝料や逸失利益の金額が増えるのは等級が繰り上がる場合です。
しかし、14級の後遺障害は複数あり、併合されても等級は繰り上がらず、等級は14級のままです。
そのため、基本的には後遺障害が併合14級の場合、慰謝料計算においては、14級が単独で認定された場合と違いはないことになります。
しかし、等級が繰り上がらない場合でも、後遺障害が複数ある方からすれば、一つしかない場合よりも高額の賠償金を受け取りたいはずです。
併合14級の場合の慰謝料の裁判例
下記の裁判例は、右下腿部前面にてのひらの大きさの醜いあとが残り、かつ顔面部にも10円銅貨大以上の療痕という外貌醜状が残った事例です。
下肢の醜状障害には14級5号の等級に、改正前は男性の外貌醜状には14級10号の等級に該当したため、併合14級が認定されています。
そして、後遺障害慰謝料について、以下のような判断を行っています。
顔面の醜状を含む後遺障害につき症状固定した当時、原告は19歳であった。
一般に、成人前の18~19歳前後の青年期にある者にとって、顔面に療痕等が残り続けるということにより、将来の私生活や就労に対する大きな不安が生じたり、積極性を失ったりする可能性があるということができる。
原告自身、顔面の醜状により、何事にも自信がもてなくなったと供述している。
また、(略)右下腿部の醜状もあることを考慮すべきである。
もっとも、(略)相応の逸失利益を算定していることからすれば、原告の外貌醜状による後遺障害慰謝料としては、180万円を認めるのが相当である。
出典:横浜地裁平成24年3月29日判決
上記裁判例では、外貌醜状による逸失利益を認めた上で、後遺傷害慰謝料につき14級の裁判基準(弁護士基準)を上回る180万円を認定しています。
そして、その理由の一つに「右下腿部の醜状もあることを考慮すべき」ともう一つの後遺障害の存在を挙げています。
このように、後遺障害の等級が併合14級の場合、後遺障害が複数あることを理由として、慰謝料が14級の基準よりも増額する余地があるといえます。
むちうちの併合14級の場合の裁判例
下記の裁判例は、頸椎捻挫後に頸部に神経症状が残り、かつ腰椎捻挫後に腰部にも神経症状が残った事例です。
そして、頸部の神経症状及び腰部の神経症状それぞれに14級10号の等級が認定された結果、併合14級が認定されています。
そして、後遺障害の逸失利益について、裁判所は以下のような判断を行っています。
逸失利益
(略)
イ 労働能力喪失率
(略)原告の後遺障害については、別表第二第14級に該当し、通常5%とされるところ、原告の症状等に鑑み、9%とするのが相当であると解される。
ウ 労働能力喪失期間
原告の症状等に鑑み、10年間とするのが相当であると解される。
(以下略)
出典:福岡地裁平成26年2月13日判決
上記裁判例においては、原告側の代理人が
- 2箇所に14級に該当する後遺障害が残存しており,1箇所に14級に該当する後遺障害が残存している場合に比べて,労働能力の喪失の程度が大きいこと
- 本件事故により激しい衝撃を受け,通常のむち打ちよりも重い症状を残しており,現実に労働への影響も大きいこと
ことなどを主張立証した結果、自賠責保険の14級の労働能力喪失率である5%を上回る9%の労働能力喪失率が認定されたと考えられます。
また、労働能力喪失期間につき、神経症状の場合、併合14級でも5年程度と判断されることが多いですが、上記裁判例では10年と判断されています。
このように、後遺障害の等級が併合14級の場合でも
- 1箇所に14級に該当する後遺障害が残存している場合よりも労働能力の喪失の程度が大きいこと
- 被害者の残存する具体的な症状や実際の労働への支障の程度
などを的確に主張・立証することにより、通常の14級の場合よりも高額な逸失利益が認められる余地があるといえます。
この裁判例は、逸失利益を増額したものですが、この裁判例からすれば、むちうちでの併合14級の場合でも、慰謝料が増額する余地もあると考えられます。
このように、併合14級の場合、慰謝料や逸失利益の金額は単独の14級の場合と変わらないのが原則ですが、争う余地もあるといえます。
ただし、実際に通常の14級の基準以上の慰謝料や逸失利益を受け取るには、的確な主張・立証が必要であり、裁判にまで至る可能性も十分考えられます。
そのため、後遺障害の併合14級の慰謝料などの金額に納得がいかず争いたいと考える場合には弁護士などの専門家に依頼するのが確実といえます。
なお、後遺障害の等級の併合については、以下の記事に詳しく記載されていますので、興味のある方はぜひご覧になってみて下さい!
後遺障害が12級の場合の慰謝料計算の相場
後遺障害が12級の慰謝料の自賠責基準の相場
追突事故で頸椎捻挫(むちうち)となった事例の後遺障害の認定の等級は12級13号の可能性もあります。
そして、後遺障害が12級の場合の慰謝料の自賠責基準の相場は93万円になっています。
12級13号の後遺障害が認定される場合、むちうちでも非常に強い痛みが残ってると考えられますので、上記の金額では少ないと思われる方もいるでしょう。
後遺障害が12級の慰謝料の任意保険基準の相場
上記の14級の場合同様、現在の任意保険基準は各会社ごとに異なり、非公開なので、ここでは旧統一任意保険基準を前提に計算します。
後遺障害が12級の場合の慰謝料の旧統一任意保険基準の相場は100万円になっています。
自賠責基準の慰謝料の相場よりは増額していますが、その増額幅が7万円ではまだまだ不十分と思われる方もいるでしょう。
後遺障害が12級の慰謝料の弁護士基準の相場
弁護士基準は厳密には複数ありますが、ここでも14級の場合と同様、一番広く用いられている赤本に掲載されている基準を前提に計算します。
後遺障害が12級の場合の慰謝料の弁護士基準(赤本基準)の相場は290万円になっています。
後遺障害が14級の場合の慰謝料の弁護士基準(赤本基準)の相場は、上記の2つの基準の相場に比べて約3倍もの高額な相場になっているんですね!
基準 | 金額 |
---|---|
自賠責基準 | 93万円 |
任意保険基準※ | 100万円 |
弁護士基準 (裁判基準) |
290万円 |
※旧統一任意保険基準
後遺障害が12級でも慰謝料は事例により違う?
お伝えしているとおり、後遺障害の慰謝料は原則として自賠責で認定された等級により相場が決まってきます。
しかし、自賠責で定められている後遺障害の等級は、同じ等級であっても症状ごとに号数が分かれています。
では、後遺障害が同じ12級であっても、慰謝料は事例(号数)により違いが出てくるのでしょうか?
後遺障害が12級6号・7号の慰謝料
後遺障害の12級6号・7号は、上肢又は下肢の関節の機能に一定の障害(3/4以下の可動域制限)を残す場合に認定されます。
第十二級
(略)
六 一上肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの
七 一下肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの
(以下略)
出典:https://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/04relief/jibai/payment_pop.html
この場合の後遺障害の慰謝料は、相場どおりの金額が支払われるケースが多いと考えられます。
また、後遺障害が認定された場合、慰謝料以外に請求できる逸失利益も原則どおり67歳までの期間を請求できるケースが多いといえます。
なお、後遺障害の逸失利益の計算方法については、以下の記事に詳しく記載されていますので、興味のある方はぜひご覧になってみて下さい!
後遺障害が12級13号の慰謝料
後遺障害の12級13号は、局部に頑固な神経症状を残す場合に認定されます。
第十二級
(略)
十三 局部に頑固な神経症状を残すもの
(以下略)
出典:https://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/04relief/jibai/payment_pop.html
こちらは、先ほどお伝えしたとおりむちうち(頸椎捻挫)などの器質的損傷を伴わない場合にも認定される可能性があります。
この場合の後遺障害の慰謝料については、相場どおりの金額が支払われるケースが多いと考えられます。
ただし、逸失利益を計算するための労働能力喪失期間について、67歳まででなく、期間が制限されるケースもあると考えられます。
後遺障害が12級14号の慰謝料
後遺障害の12級14号は、外貌に醜状を残す場合に認定されます。
第十二級
(略)
十四 外貌に醜状を残すもの
(以下略)
出典:https://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/04relief/jibai/payment_pop.html
この場合、後遺障害の慰謝料については、相場どおりの金額が支払われるケースが多いと考えられます。
ただし、外貌の醜状は直ちには労働能力の喪失と結びつかないため、労働能力の喪失を前提としている逸失利益の請求が認められない場合があります。
もっとも、逸失利益の請求が認められない場合には、妥当な損害額を算定するために、慰謝料の増額が認められる場合があります。
このように、後遺障害が12級の場合の慰謝料の用いられる基準による差は14級の場合以上であるといえます。
ただし、同じ12級の等級が認定されている場合でも、事例(号数)により慰謝料・逸失利益を合計した損害額が変わってくる場合があります。
後遺障害が12級の場合の慰謝料を含めた合計損害の金額に疑問がある場合には、示談の前に必ず弁護士に相談してみましょう。
後遺障害の慰謝料の全等級・基準別の相場
お伝えしているとおり、後遺障害の慰謝料計算は原則として自賠責で認定された等級により相場が決まってきます。
ここまでは、14級の場合と12級の場合に絞って、慰謝料の相場をお伝えしてきましたが、当然他の等級の場合の相場も気になるかと思います。
そこで、最後に後遺障害の慰謝料について、全等級・基準別の相場をお伝えしていきたいと思います!
後遺障害の慰謝料の全等級の自賠責基準の相場
まず、後遺障害の慰謝料計算の全等級別の自賠責基準での相場は以下の表のとおりです。
等級 | 金額 |
---|---|
第1級(別表第1) | 1600万※ |
第2級(別表第2) | 1163万※ |
第1級(別表第2) | 1100万※ |
第2級(別表第2) | 958万※ |
第3級 | 829万※ |
第4級 | 712万 |
第5級 | 599万 |
第6級 | 498万 |
第7級 | 409万 |
第8級 | 324万 |
第9級 | 245万 |
第10級 | 187万 |
第11級 | 135万 |
第12級 | 93万 |
第13級 | 57万 |
第14級 | 32万 |
※被扶養者がいる場合は金額増加
なお、後遺障害を含む慰謝料の自賠責基準については、以下の記事に詳しく記載されていますので、興味のある方はぜひご覧になってみて下さい!
後遺障害の慰謝料の全等級の任意保険基準の相場
続いて、後遺障害の慰謝料計算の全等級別の旧統一任意保険基準での相場は以下の表のとおりです。
等級 | 金額 |
---|---|
第1級 | 1300万 |
第2級 | 1120万 |
第3級 | 950万 |
第4級 | 800万 |
第5級 | 700万 |
第6級 | 600万 |
第7級 | 500万 |
第8級 | 400万 |
第9級 | 300万 |
第10級 | 200万 |
第11級 | 150万 |
第12級 | 100万 |
第13級 | 60万 |
第14級 | 40万 |
なお、後遺障害を含む慰謝料の任意保険基準については、以下の記事に詳しく記載されていますので、興味のある方はぜひご覧になってみて下さい!
後遺障害の慰謝料の全等級の弁護士基準の相場
最後に、後遺障害の慰謝料計算の全等級別の弁護士基準での相場は以下の表のとおりです。
なお、後遺障害を含む慰謝料の弁護士基準については、以下の記事に詳しく記載されていますので、興味のある方はぜひご覧になってみて下さい!
3つの表を比較すればお分かりいただけるかと思いますが、同じ等級であっても、弁護士基準を用いることにより慰謝料の金額は大きく変わります。
そして、弁護士基準の相場で計算された慰謝料の請求を認めてもらうためには、弁護士への依頼が一番確実と考えられます。
弁護士へ依頼する場合、弁護士費用特約が利用できない場合には、弁護士費用の負担が生じることになります。
しかし、後遺障害が認定されている場合には、弁護士に依頼したことによる慰謝料などの増額幅が弁護士費用を上回ることがほとんどです。
そのため、後遺障害が認定されている場合で、お手元に入る慰謝料などの金額を少しでも増やしたい被害者の方は、弁護士を依頼すべきといえます。
後遺障害の慰謝料の相場の金額がわかる計算機
後遺障害の慰謝料の相場の金額は以上のとおりです。
お伝えしたとおり、後遺障害の慰謝料の相場は等級により決まっているので、後遺障害の慰謝料だけであれば、計算はそれほど難しくありません。
しかし、慰謝料には、後遺障害によるもの以外にも、入通院慰謝料があり、こちらの計算はやや複雑です。
また、後遺障害が認定された場合は、慰謝料以外に逸失利益も請求できるところ、この逸失利益の計算はさらに複雑です。
そこで、後遺障害の慰謝料を含む損害賠償額全体を、一番高額な弁護士基準の相場で計算した金額が簡単に算定できる計算機がコチラです!
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また、交通事故によるケガが重症で、弁護士事務所に訪問できない方を対象に、無料出張相談も行っているそうです。
まずは、電話してみることから始まります。
きっと、被害者の方が取るべき対応について、適切なアドバイスをしてくれるはずです。
地元の弁護士に直接相談をしたい方はコチラ
スマホを持っていない場合など、直接弁護士と会って相談されたいという方も当然いらっしゃると思います。
また、既に弁護士へのご依頼を決めていて、交通事故に強い地元の弁護士をお探しの方もいらっしゃるかもしれません。
そんなときには、以下の全国弁護士検索サービスがおすすめです。
- ① 交通事故専門のサイトを設け交通事故解決に注力している
- ② 交通事故の無料相談のサービスを行っている
弁護士を特選して、47都道府県別にまとめています。
何人かの弁護士と無料相談したうえで、相性が良くて頼みやすい弁護士を選ぶ、というのもお勧めの利用法です。
最後に一言アドバイス
それでは、最後になりますが、交通事故でお悩みの方に一言アドバイスをお願いします。
後遺障害の慰謝料について、適切な金額を受け取るためには、まず適切な後遺障害の等級の認定を受けることが必要です。
さらに、それだけでは足りず、一番高額な慰謝料計算の基準である弁護士基準での算定額を認めてもらうことが必要になります。
上記の2点をしっかりとクリアするためには、弁護士への依頼が一番確実と思われますので、まずは相談だけでもしてみることをおすすめします。
まとめ
いかがだったでしょうか。
このページを最後までお読みの方は、
- 交通事故による後遺障害の慰謝料計算の相場を決めるポイントは認定される等級と用いられる基準である
- 交通事故による後遺障害の慰謝料計算の等級ごとに相場が決まっている
- 交通事故による後遺障害の慰謝料は計算に用いられる基準により相場の金額が大きく変わる
点について理解を深めていただけたのではないかと思います。
これを読んで弁護士に相談した方が良いと思った方も多いハズです。
自宅から弁護士と相談したい場合には、スマホで無料相談の機能を利用してみて下さい!
そうではなく、やっぱり直接会って話がしたいという場合は、全国弁護士検索を使って弁護士を探してみてください。
また、このホームページでは、交通事故に関する関連記事も多数掲載していますので、ぜひ参考にしてください!
皆さまのお悩みが早く解決するよう、お祈りしています。
この記事の監修弁護士
岡野武志弁護士
アトム法律事務所弁護士法人
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-11-28 合人社東京永田町ビル9階
第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。